錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

錦之助映画祭り2010日誌(11月24日)

2010-11-26 11:05:25 | 錦之助映画祭り
 24日(水)、今日は、ぐっと昔にさかのぼって、錦ちゃんの映画デビュー作『ひよどり草紙』(1954年2月公開)を上映。もう1本は、昨年3月に錦之助映画ファンの会が作って東映に寄贈したニュープリントの『隠密七生記』だ。
 午前中は出版社の仕事。昼前に神楽坂の近くにある取次店(地方小出版流通センターという本の問屋)へ注文の本を持って行く。私の出版社で発行している英語の本と映画の本を全部で130冊、ダンボール箱とキャリングバッグに入れて持って行く。仕事場の飯田橋から取次店までタクシーで890円。タクシーに積むまでが大変で、あとは楽。
 取次店の40歳くらいの職員で、映画をよく観ている時代劇ファンと少し話をする。昨日、新文芸坐へ来てくれたので、感想を聞く。『江戸っ子繁昌記』を初めて観たそうで、大変面白かったとのこと。
 神楽坂を下りて、市ヶ谷まで歩き、有楽町線で池袋へ行く。
 
 今日の館内は7割くらいの入り。ひばりちゃんファンと千代之介ファンを何人か見かける。錦之助映画ファンの会の仲間も十数人来ている。
 13時半から『隠密七生記』を観る。錦・千代ががっぷり四つに組んだ作品。両者とも良い。女優陣は、美空ひばり、桜町弘子、長谷川裕見子。それに、大河内、月形、山形勲が加わり、いかにも松田定次監督らしい東映調の娯楽時代劇作品である。松田定次作品の特長は、何と言ってもカット割りの巧みさと登場人物の出し入れのうまさ。映画全体に観客を飽きさせないスピード感があり、豪華なセットと装飾は、まるで人形浄瑠璃の舞台でも観ているような絢爛さがある。
 
 15時半から、『ひよどり草紙』を観る。昨年、横浜・黄金町のジャック&ベティで観て以来だ。やはり、スクリーンが大きいと違う。16ミリフィルムの上映を感じさせない。今回初めてのスタンダードサイズの白黒作品である。
 芳紀15歳のひばりちゃんは、少女のあどけなさが残っていて可愛いし、21歳の錦ちゃんもういういしく、凛々しさがあってとても良かった。これはまさに当時の少年少女向けのアイドル・スター映画、いや、正確に言えば、アイドル・スター映画の先駆けだったといえよう。あの頃はまだアイドルという言葉が使われていなかったから。共演者も花柳小菊、堺駿二、嵯峨美智子のほか、川田晴久(ひばりちゃんの恩師)、山茶花究。そして、ベテラン脇役陣がこの映画を支えている。二人の剣道の師匠に澤村国太郎(マキノ輝子の夫で、長門裕之と津川雅彦の父)、錦ちゃんの父親役に藤間林太郎(藤田まことの父)、ひばりちゃんの父親役に野沢英一(映画初出演の錦ちゃんが世話になった)、悪役に香川良介(後年ずっと錦之助映画では欠かせぬ名優)、戸上城太郎(敵役が多かったが、『源氏九郎颯爽記 秘剣揚羽の蝶』での義手の剣客が凄かった)。
 
 新文芸坐へ集ったお客さんも、私同様、きっと『ひよどり草紙』の若い二人をうっとりと、また目を細めて観ていたにちがいない。そして、さぞや感激したのではないかと思う。もうあの昔には帰れない、一抹のさびしさを胸にひそめて……。



 


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