この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

差別と矜持と、そして希望、映画『ヘルプ 心がつなぐストーリー』。

2012-05-03 23:42:38 | 新作映画
 エマ・ストーン主演、テイト・テイラー監督、『ヘルプ 心がつなぐストーリー』、4/21、ワーナー・マイカル・シネマズ筑紫野にて鑑賞。2012年15本目。


 人はなぜ差別をするのだろう?
 映画『ヘルプ 心がつなぐストーリー』を観て、そんな疑問が頭をもたげた。
 が、その疑問について考える前に、そもそも差別が本当にいけないことなのかどうか、考えてみることにする。

 差別はいけないことに決まっている、多くの人はそういうかもしれない。
 しかし自分の考えはちょっと違う。

 差別という言葉には本来いい意味も悪い意味もない。
 ただし、差別には良い差別と悪い差別がある。

 人には誰でも大切な人と大切でない人がいる。
 大切な人と大切でない人に、同じ扱いが出来るはずがない。
 扱いに差が生じるのであれば、それはつまり差別だ。

 けれど、自分の中できちんと扱いに差をつける理由があるのならば、それは決して悪い差別というわけではあるまい。
 見知らぬ子と我が子が海に溺れていて、手元に浮き輪が一つしかなければ、当然浮き輪は我が子に向かって放るだろう。
 その行為は誰に責められるものでもないだろう。

 一方悪い差別というものもある。
 悪い差別とは言い換えればいわれのない差別のことだ。
 いわれのないというのは、差別される理由がない、ということである。

 例えば、性別、血液型、国籍、そういった本人の選択した結果に寄らない事象については人はそれを理由に差別をするべきではない。
 なぜなら自らが選択した結果でないのなら、責任を負うべきではないからだ。
 逆に言えば、人は自らが選択した結果、および行動については責任を負うべきであり、またそれに寄る事象を理由に差別されるのも仕方のないことだと思う。

 さて、最初の疑問に戻る。
 人はなぜ差別をするのか?(もちろんこの場合の差別とは悪い差別、いわれのない差別のことである)
 一つは無知に寄る。

 映画『ヘルプ』の中で、黒人メイドは白人が使うものとは別の、屋外のトイレを使うことを強いられる。
 理由は黒人は白人よりも不潔で不衛生だからだ。
 この理由が正しいのであれば、黒人メイドが屋外のトイレを使うことは当然と言えよう。
 が、今では我々は、黒人が白人よりも取り立てて不潔で不衛生ということはないということを知っている。
 だから、この差別は間違っていると言える。

 ネットではしばしば韓国人に対して差別的な発言をする人を見かける。
 実際韓国に行って感じたことを理由に差別をするのであればまだよい。
 もしくは韓国人の知り合いから直接感じ取ったことであれば。

 しかし、彼らの韓国人を差別する根拠は、ネットのニュースからだったりする。もしくは雑誌に書いてあったからとか、テレビ番組で誰かが言っていたとか、ともかく自分の目から見て、差別の根拠としては極めて薄弱に映る。

 自分は日本人であるが、日本の政治家の行動を持って、日本人は○○である、というような決めつけを外国の人にして欲しくはない。
 日本人であれば誰だってそうではないだろうか。
 
 さて、差別をするもう一つの理由、それは不安である(実際のところ無知と不安は常に絡み合うものであるが)。
 日々の生活に何一つ不自由も不満もなければ、人はあえて他者に対して差別をしようとは思わないものだ。
 逆に言えば、将来に希望を持てない人間は、誰かを貶めることによって心の平安を得ようとする。
 しかし誰かを貶めることによって得られる平安は長続きしないものであるのだが。
 今の日本において、将来に希望を抱けよ、といっても難しいことなのかもしれないが…。

 映画『ヘルプ』は1960年代前半の、アメリカ南部を舞台にした、黒人差別についての映画である。
 差別を取り扱った映画であるが、決して重苦しい内容ではなく、それどころか全般的にそこはかとないユーモアが漂い、ハッピーエンドではないが確かに希望が感じ取れるラストには勇気づけられるものがある。

 レビューを書くのがすっかり遅くなってしまったので、多くの映画館では上映が終了しているかもしれないが、このゴールデン・ウィーク、何か映画を観ようかと考えていて、近くのシネコンでまだ本作が上映されていたら、是非、観に行って欲しい一本です。


 お気に入り度は★★★★☆、お薦め度は★★★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
コメント
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