ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文芸散歩 日本の乱世  室町時代を歩く

2008年01月19日 | 書評
戦乱に明け暮れた南北朝から戦国時代、混乱の中から豊かな日本文化が興った室町期

2) 山崎正和著 「室町期」 講談社文庫  第2回

本書「室町期」(講談社文庫)は1974年朝日新聞社から刊行された。著者は1963年戯曲「世阿弥」によって、将軍義満を光の存在とし世阿弥を影の存在とする、乱世の世における芸術の存在理由を追求した劇作家でもある。しかし私は劇作家よりは評論家としての山崎氏を読んできた。陰のような室町幕府の将軍の存在と乱れに乱れた戦乱の武将の戦いばかりが目立つ中世は分りにくい時代であった。この「中世」と云う言葉も正しくない。中世は平安時代から鎌倉じだいをさし、室町時代は近世と云うほうが正しい。この14、15世紀の時代は世界史的にはルネッサンス期に相当し、山崎正和氏の「室町期」は明らかに室町から戦国時代を文化的にはルネッサンスとして日本的文化の開花期としている。そして政治経済史的には、中央集権体制から分裂小国家群の乱立と価値観の多様的並立、貨幣経済の成立と商人・土豪といった中間階層の自立と捉えている。したがって本書は前半が室町期の政治・社会史、後半が文化史という構成である。勿論本書の主眼が文化史にある事は当然である。


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