ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 武田邦彦著 「環境問題はなぜウソがまかり通るのか 2」 洋泉舎

2008年01月19日 | 書評
地球温暖化、バイエタノール、ペットリサイクルの環境問題のウソ

地球温暖化防止枠組み条約「京都議定書」(1997年)での欧州・米国の政治的狙い (4)

地球温暖化防止条約が斯くも政治的問題に変形されたといえども、誠実に努力すれば本当に地球温暖化防止に役立つのかと云う疑問が湧く。この節では「地球温暖化に関する政府間パネル」IPCCが2007年2月に出した第4次報告書にしたがって地球温暖化予測を見て行こう。第4次報告書第一作業部会報告(英文)はhttp://www.ipcc.ch/ipccreports/ar4-wg1.htmで閲覧できる。IPCCと云う機構は1988年に設立された国際的気候変動研究機構であり、研究者の集まりで現在の科学的見解を知る上で欠かせないものである。科学的議論はここから始めなければならない。メディアや環境省や専門家はここから都合のいいデータのみを切り抜いて発表するので、おかしいと思ったらIPCCの報告書で検証すべきである。気象庁から第4次報告書第一作業部会報告書(日本語訳)「政策決定者向け要約」が出されている。こちらは日本語なのでお勧めする。URLはhttp://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/index.htmlである。先ず過去百年(1906-2005)の地球の温度は0.74℃上がった(詳細に言えば1900前後と1940年から1970年までは寒冷期があった)。地球温暖化の原因は7%が太陽活動で、93%が人間の活動である。炭酸ガスの影響は53%、メタンやフロンの影響が31%、オゾン層破壊が10%である。地球温暖化の原因のうち炭酸ガスの影響は0.93×0.53=0.49であり、ほぼ半分が人間が出す炭酸ガスによる。IPCC内部でも異論があるが、異論は記述されている。海面水位は過去40年(1961-2003)で70mm上がった。毎年1.8mmの上昇と云うことになる。海面上昇の原因は海水の温度による膨張が0.42mm、大陸の氷河の溶融が0.5mm、南極やグリーンランドの氷床の溶融は0.19mmとされる。いつもテレビに出てくるクリーブランドの氷床崩落映像(季節的な通常現象)は映像効果を高める故意の誤報か錯覚の報道である。北極の氷床はもともと水の中にあるのでアルキメデスの原理で解けても容積は変化しない。(厳密には密度の温度依存で寧ろ縮小し水位は下がる)そこで結論であるが、過去40年間の海面上昇は70mm(100年では160mm)、これを大きいと云うのか、なんだそんな程度かと云うのかは読者の理性に任せる。いずれにせよ地球表面の大変動という事態は経験したことがない。



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