ブログ 「ごまめの歯軋り」

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文芸散歩  金田鬼一訳 「グリム童話集」 岩波文庫(1-5冊)

2013年03月31日 | 書評
ドイツ民俗研究の宝庫「児童と家庭向けのおとぎばなし」 第91回

* KHM 154  くすねた銅貨
良心の呵責に苦しむ子どもの魂を描いた小品ながら質の高い童話です。ある家にお客さんが来て食事をしていましたが、雪のように白い女の子がものもいわず入ってきて隣の部屋にゆき、物音立てずに出てゆくのを見ました。お客は2日目も見ました。3日目にその女の子を見ると、お客は家の夫婦に指さして尋ねましたが、夫婦には見えないようです。お客さんは隣の部屋をよく見ますと、女の子は床の板の隙間を指でほじくっているように見えました。この話を家の夫婦にしますと、それは一月ばかり前になくなった娘ではないかといいました。そこでお客と夫婦は隣の部屋の床をはがして調べますと銅貨が2枚出てきました。これは貧しい人にあげるといって、お母さんから子供が戴いたのですが、どうやら隠し持っていたようです。死んでからも心が落ち着かず、毎日お昼にその銅貨を探しに来ていたようです。夫婦はその金を貧しい人にあげますと、子どもの姿は見られなくなりました。

* KHM 155  嫁えらび(おみあい)
若い男は三人娘の誰をお嫁さんにしようかとお母さんに相談すると、チーズのきり方を良く見て御覧ということでした。一番上の娘は外皮ごと食べ、2番目の娘は外皮を切り取りましたが、まだ食べられる部分も一緒に捨ててしまいました。3番目の娘はちょうどいい具合に外皮を切り取りました。そこで男は末娘をお嫁さんにしました。

* KHM 156  ぬらぬらの亜麻のかたまり
お嫁入りする娘がいましたが、生来怠け者でものぐさでした。亜麻の糸を紡ぐとき少しでも結び目があると捨ててしまいました。働き者の女中はその結び目を拾っては、丹念に解き糸を紡いで自分の衣裳を作りました。結婚式で女中のきれいな衣装を見てお婿さんはそのわけを尋ねますと、ものぐさ嫁さんはあの女中娘は私の捨てた亜麻糸で衣裳をこしらえたと話しました。お婿さんはお嫁さんのものぐさに気がつき、働き者の女中を気に入って、婚約を破棄して女中と結婚しました。
(つづく)


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