ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 福岡伸一著 「生物と無生物のあいだ」 講談社現代新書

2008年04月24日 | 書評
生物の動的平衡とはなにか 第5回

生命「動的平衡にある流れ」

実験に失敗はなかったとし、GP-2蛋白は小胞体形成に重要な役を演じるとして、この難問にどう立ち向かうのか。そこで著者はヒトクロイツフェルトヤコブ病の原因物質プリオンをノックアウトしたマウスの研究例を引用してくる。人クロイツフェルトヤコブ病は正常型プリオンが何らかの異常で異常型プリオンに変性すると、凝集して沈積して脳細胞を破壊する。正常型プリオン遺伝子ノックアウトマウスをつくると、マウスは全く正常である。ところがプリオン遺伝子の前1/3を欠損したマウスを作ると病気が発生した。そこで著者らはこう結論した「ある遺伝子をノックアウトしたにもかかわらず、受精卵から子供が生まれめでに、どうてき平衡すなわちその欠落を補充しつつ分化発生プログラムは何とか最後まで終えたのである。欠落に対してバックアップシステムやバイパスが可能な場合、動的平衡は何とか埋め合わせをしてシステムを最適化する。ところが正常なプリオンが持つ複数の機能が1/3の遺伝子を失ったプリオンでは一部失われてしまい、修復システムンが働かない」という推論である。これを信じるかどうかは別にして、やはり科学としては証明しなければならない。GP-2遺伝子を失ったマウスではGP-2遺伝子がない限りGP-2蛋白は作られない。すると正常に動いているノックアウトマウスにはGP-2 蛋白に似た機能をする別の蛋白がバイパスで合成されたのだろうか。それ何だろうか同定しなければならない。これは難しい話ではないはず。疑うわけではないがGP-2 ノックアウトマウスにはGP-2 蛋白はなかったことは確かなであろうか?それともやはりGP-2 蛋白は小胞体形成には関係ないものだったのか。疑問は尽きない。


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