ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 井田 茂 著 「系外惑星と太陽系」 (岩波新書2017)

2018年12月16日 | 書評
天文学の進歩で相次いで発見される系外惑星と太陽系を比べると、多様な惑星の進化が見える 第6回

1) 銀河系と系外惑星 (その1)

宇宙には、織物模様のように「銀河」が存在する。銀河は一様に宇宙に分布しているのではなく、塊(銀河団、超銀河団)が会ったり、それらが繋がったようなパターンが見えてくる。銀河には多くの恒星と主として希薄な水素とヘリウムガスと正体不明の暗黒物質(ダークマター)が集って出来ている。階層的には、「大宇宙、おとめ座超銀河団、局所銀河群、天の川銀河、オリオン腕、太陽系、地球」となる。我々の銀河系(天の川銀河)も銀河の一つである。銀河系には数千億の恒星があり、その内の一つである太陽には、地球を含めて惑星がいくつも周回している。惑星は太陽に比べると小さな天体であり、最も大きな木星でも質量は太陽の約1/1000である。1940年代には天文学者は太陽以外の恒星の周りの惑星(系外惑星)探し始めた。最初の内は惑星の公転によって恒星の位置が周期的に変化するのを精密に測定することで惑星を探した。地球上での測定では大気の揺らぎがある中で恒星の位置を正確に求めること難しく、かつ公転周期が長い(数年ー何十年)ので観測期間が長いという欠陥を持っていた。そこで中心星の動きを色の変化で調べる「視線速度法」が採用された。しかし1990年までは何も発見できなかった。1995年のホット・ジュピターの発見後は次々と新惑星が発見され、2003年に系外惑星の発見数は100個を超え、2010年には500個、2016年には3500個となった。2009年にケプラー宇宙望遠鏡が打ち上げられて、惑星の発見数が加速された。観測によって系外惑星が多様な姿をしており、かつ系外惑星は偏在していることが分かった。太陽型恒星(重さ、表面温度、エネルギー)の実に半分くらいに惑星が回っている。太陽と地球間の距離(1天文単位)ほどで、地球くらいの大きさの小さな惑星は観測することは容易ではない。地球に似た惑星の存在確立は約10-20%になる。以上は銀河系で太陽の近くの恒星だけを探索したに過ぎない。太陽系ができたモデルに「遭遇説」という考えがあった。それは極めて事象確率の低い現象である。太陽、地球の存在をアプリオリに認める考えを「人間原理」、「太陽系中心主義」、「地球中心主義」と呼ぶ。太陽系は特別な存在という考えには西欧キリスト文化が影響してようである。それに対して標準的な惑星形成モデルの最も基本的な考えは、惑星系はガス円盤からできたとする「円盤仮説」である。ガス円盤が実際に観測されてからは仮説ではなくなった。銀河系には水素とヘリウムを主成分とする星間ガス雲が漂っている。その濃い部分で重力によりさらに密度が高まりやがてガス星の中心に原始星が形成される。その中心温度が1億年ぐらいには水素の核融合を起こして光り出し安定な恒星となる。収縮前の星間ガスはわずかながら回転しており、収縮が進行するにつれ回転が早まり遠心力で原始星から離れ、その周りを円盤状に周回するようになる。これが惑星系のもとになるガス円盤である。ほぼすべての原始星の周りにガス円盤が存在することが望遠鏡で観察される。太陽系では惑星の軌道面は揃っているので平たい円盤惑星系ができたと考えられる。銀河のガスの中には、酸素、炭素、ネオン、窒素、マグネシウム、ケイ素、鉄などの微量元素(重元素)が微量ながら含まれる。他の恒星が燃える時に中心部でつくられ、その星の最期のステージで超新星爆発をおこして銀河にばらまかれる。微小なチリに凝縮しガスの中を漂っている。これらが惑星のもとになる。地球や火星は岩石や鉄でできているが、天王星や海王星には氷も多い。木星や土星はガスの塊だが中心には岩石、鉄の芯があるようだ。これらの塵が衝突合体を繰り返し惑星を作ってゆく。こうして恒星の周りには必然的に惑星系が形成されるのである。

(つづく)



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