アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「辺野古世論調査」の2つの死角

2015年04月23日 | 沖縄・辺野古

         

 安倍首相と翁長沖縄県知事の会談(4月17日)直後、いくつかの新聞、テレビが、世論調査を発表しました。
 「普天間飛行場の辺野古移設についての安倍政権の対応」について、朝日新聞(21日付)では全国の55%が「評価しない」、毎日新聞(20日付)では53%が「反対」、沖縄タイムス(21日付、琉球放送と合同調査)では県民の72%が「評価しない」という結果です。
 辺野古新基地建設に反対する沖縄の民意を無視して工事を強行する安倍政権への批判が大きく、また前回調査よりも増えているのは当然です。

 しかし同時に、これらの世論調査には、世論をミスリードする重大な問題も含まれています。詳しく調査している「朝日」と沖縄タイムスの調査から、見逃すことができない“死角”を検証します。

 ①「朝日」はなぜ、普天間の「無条件封鎖・撤去」を聞かないのか

 「朝日」の調査で、「普天間の辺野古移設」への賛否は、全国で賛成30%に対し、反対41%(朝日は全国と沖縄と分けて調査しており、沖縄では賛成22%反対63%)。
 「反対」が多いことを明らかにしたうえで、「朝日」はこう聞いています。「普天間飛行場の移設問題を、どのように解決するのが最も望ましいと思いますか(択一)」。
 結果(全国)は、「沖縄県内に移設する」27%、「本土に移設する」15%、「国外に移設する」45%(沖縄県では順に、15%、20%、59%)です。

 この設問はきわめて問題だと言わざるを得ません。なぜなら、「普天間飛行場の移設問題」という前提で、移設先を選択させるのは、米軍と歴代政府の土俵に他ならないからです。「移設問題」だという前提に立てば、辺野古に代わる「移設先」が問われることになります。
 普天間基地は「移設問題」ではありません。世界一危険な基地は、無条件に撤去されるべきものです。世論調査でもその点が問われなければなりません。

 そこはさすがに沖縄タイムスです。同紙の調査では、「普天間飛行場の解決方法」として、「辺野古新基地建設」18・7%、「県外移設」18・3%、「国外移設」25・6%に対し、「無条件閉鎖・撤去」が32・4%と最も多いのです。これが沖縄の最大の民意です。それを覆い隠すような「世論調査」は、真の解決策を見えなくさせるものです。

 ②「翁長支持70%」の虚実―なぜ「取り消し・撤回」を聞かないのか

 「朝日」調査で「翁長知事を支持しますか」との質問に、70%の県民が「支持する」と答えています(回答は沖縄だけ)。また、沖縄タイムスの「翁長知事の姿勢を評価しますか」との問いには、72・1%が「評価する」と回答しています。
 これをもって、翁長氏が7割の県民から「支持」されているかのように言う向きがありますが、それはけっして正確ではありません。なぜなら、これらの調査にはいずれも、翁長氏の何を、どんな姿勢を「支持」するのかが明確にされていないからです。

 安倍首相や菅官房長官との会談でみせた翁長氏の姿勢には、2つの側面があります。
 1つは、沖縄に基地がおかれている不当性、差別性を歴史的に明らかにしながら、辺野古新基地を拒否する側面です。この面だけとり出せば、私でも「支持する」と答えます。

 しかし、翁長氏の姿勢には、もう1つの重大な側面があります。それは、辺野古で日々作業が強行されているにもかかわわず、「岩礁破砕許可の取り消し」「埋め立て承認の撤回」という「知事権限」をあくまでも行使しようとせず、政府と水面下の「話し合い」を進めようとしている側面です。

 翁長氏は22日、農水相に「審査請求に対する弁明書」を提出した後の記者会見で、「(農水相の)裁決までどれくらいかかるか分からない中で現場は工事が進む。裁決を待たずに知事が何らかのアクションを取ることはあるか」と質問され、こう答えました。「今それ(裁決が出る)までにどうだこうだというのは差し控えたい」(23日付琉球新報)。知事権限を行使しようとしない姿勢は変わっていません。

 辺野古の問題で翁長氏の評価を問うなら、この2つの側面の両方を問わねばなりません。しかし、「朝日」も沖縄タイムスも、他の調査も、事実上前者の面だけの評価を問う形になっています。その結果としての「翁長支持」は虚像にすぎないと言わざるを得ません。
 辺野古新基地反対の全国的な世論を高めていくことはもちろん重要です。しかしそのためにも、そしてなにより工事の進行を現実的に止めるためにも、翁長氏に「承認取り消し・撤回」という権限の行使を求めることは喫緊の課題です。

 「朝日」も沖縄タイムスも(地元紙なら特に)、他のメディアも、辺野古の世論調査には次の項目を加えるべきです。
 「辺野古新基地建設工事を止めるために、翁長知事は選挙で公約した『承認の取り消し・撤回』を早急に行うべきだという意見がありますが、あなたはそれに賛成ですか、反対ですか」

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