アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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沖縄・翁長氏が「公約」しようとしなかったこと

2014年10月25日 | 沖縄と差別

 沖縄県知事選で立候補する翁長雄志氏(写真中央)の「公約」(政策)の検証を続けます。

「反原発」の実態は?
 翁長氏が21日発表した「公約」の中で、「カジノ反対」とともに注目されたのが、「原発建設」を「3つのNO」の1つにあげ、「美ら島・沖縄に原発は要りません。原発建設に断固反対します」としたことです。沖縄の原発建設に「断固反対」することはもちろん評価します。
 しかし、これをもって翁長氏の政治信条が「反原発」だと断定することは早計ではないでしょうか。なぜなら、「沖縄に原発」を建設することは当面問題にもなっておらず、おそらく少なくとも任期中の4年間でも俎上にはのぼらないでしょう。現実的に問題になっていないことに「断固反対」してもどれほどの意味があるでしょうか(もちろん「容認」より「反対」の方がいいことは言うまでもありませんが)。
 「反原発」で今現実的・具体的に問われているのは、「再稼働」の是非です。とりわけ現在最も焦点になっている、お隣、鹿児島県の川内原発の再稼働です。これほど問題になっているのに、なぜ翁長氏は「川内原発の再稼働」について触れなかったのでしょうか。翁長氏の「反原発」がホンモノなら、「川内原発をはじめ、既存の原発再稼働に断固反対」と明言していただきたいと思います。

「高江ヘリパッド反対」の不明瞭さ
 翁長氏の「公約」では「高江のヘリパッド建設」問題には一言も触れていません。そして記者会見で質問に答えてこう述べました。「『建白書』でオスプレイ配備撤回を求めていく中で、連動して反対することになると思います」。
 いかにも回りくどい言い方です。そもそも「建白書」には「高江」の文字は1つもありません。これは「建白書」の不備です。あるいは、一致点にならなかったから盛り込めなかったのかもしれません。後者なら、あくまでも「建白書」の実現を掲げる翁長氏が高江のヘリパッド建設に「反対」すると確信することには無理があります。だから「公約」には入れなかったのだと推測されます。
 しかし翁長氏は記者会見では「反対」と明言しました。記者会見で明言できることを、なぜ「公約」には盛り込まなかったのでしょうか。

「二重公約」の疑念
 ここで、「公約」と記者会見の関係を考えます。最大の焦点の「辺野古埋め立て承認の撤回・取り消し」についても、「公約」ではまったく触れず、記者会見で「選択肢の1つ」と答えたことは、前回検証しました。「高江」の問題も同様です。翁長氏は焦点の重要課題を「公約」には盛らず、記者会見で表明するという手法をとっています。
 これは奇妙なことです。通常、重要課題については「公約」に盛り込んだ上で、会見で補足説明がされるものです。「公約」ではまったくふれていない問題について、会見で重要な表明をするのは異例です。なぜでしょうか。
 記者会見での言明も公約と見なされるのが普通です。つまり翁長氏には、文書で発表した正式な「公約」と、記者会見で言明した「公約」と、重要問題について2種類の「公約」が存在することになります。二重帳簿ならぬ「二重公約」です。
 なぜこんなことをするのでしょうか。ここに、記者会見での「公約」は翁長支持の「革新」、市民の人たち向け、そして、文書の正式な「公約」はそれ以外の支持勢力(あるいは中央組織)向けではないのか、という疑念が生じます。
 そうでないというのなら、記者会見で言明した重要問題を、どうして正式な「公約」では一言も触れなかったのでしょう。今からでも、記者会見で言明した「撤回」「高江」を、文書の正式な「公約」として追加すべきではないでしょうか。

一貫してふれない「集団的自衛権行使容認」、自衛隊配備増強
 翁長氏が「公約」でも記者会見でも、一貫して触れないのがこの問題です。記者会見では質問がなかったので触れようがありませんでしたが、この重要問題を質問しないメディアの鈍感さにもあきれます。
 触れない代わりに、逆の懸念が「公約」にはあります。それは前回検証したように、「革新」との協定には盛り込まれていた「解釈改憲反対」が、「公約」ではすっぽり抜け落ちていることです。
 「解釈改憲」で目下、最大の焦点になっているのは、言うまでもなく、9条を骨抜きにする「集団的自衛権の行使容認」です。翁長氏は従来、その閣議決定の「稚拙さ」は批判していますが、集団的自衛権の行使自体には反対していません。そして今回のこの「解釈改憲反対」の削除です。
 同時に重大なのは、八重山諸島や沖縄本島への自衛隊配備増強です。これが集団的自衛権行使容認、さらに「日米防衛協力指針(ガイドライン)」見直しと密接不可分であることはいうまでもありません。
 安倍政権によるこうした自衛隊増強政策は、直接沖縄にかかわるきわめて緊急で重大な問題です。翁長氏はなぜ、この重大問題に対して口をつぐんでいるのでしょうか。
 そして翁長氏を擁立する社民党、共産党、社大党の各党は、この重大な情勢の中で行われる沖縄の県知事選で、「集団的自衛権行使容認反対」も訴えないで、訴えられない候補者の下で選挙を行うことが、自らに対して容認できるのでしょうか。
 今からでも、翁長氏、そして翁長氏を擁立する「革新」諸会派は、「集団的自衛権行使容認反対・閣議決定撤回」「自衛隊配備強化反対」を「公約」に掲げるべきです。

 私は、諸悪の根源である「日米安保条約」の「廃棄」も掲げて選挙を行うべきだと思っています。しかし、百歩譲って、今回の選挙では「日米安保条約」の是非は問わないとしても、前回と今回検証した諸問題は明確にされるべきだと考えます。 

 

 

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