アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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報道されないユネスコ世界遺産委の「対日勧告文」

2018年07月02日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

     

 ユネスコ世界遺産委員会が6月30日、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を世界文化遺産に登録すると決定したことは、日本中のメディアが大きく報じました。

  一方、同委員会はそれに先立つ27日、日本政府に対してきわめて重要な勧告(再勧告)文を採択しました。ところがこの勧告文について報道した日本のメディアは(私が見た限り)皆無でした。私は韓国のハンギョレ新聞(電子版、6月29日付)で知りました。同紙から引用します。

  「ユネスコ世界遺産委員会が27日、1940年代に『軍艦島』(端島)など日本の産業施設で朝鮮人労働者が『強制労働』に動員された事実など『歴史全体』を理解できるようにすることを勧告した2015年決定文の忠実な履行を要求した。…こうした内容の決定文をコンセンサス(表決なし同意)として採択した。

  決定文は、2015年に日本近代産業施設23カ所が世界遺産に登録された当時、日本側に各施設の”歴史全体“を理解できる”解釈戦略“を用意するよう勧告した決定文を想起させ、この決定文を忠実に履行することを要求した。2015年の決定文には『韓国人などが自分の意思に反して動員され、苛酷な条件で強制労働』させられた事実に言及した駐ユネスコ日本大使の発言を含んでおり、これを再確認したわけだ」(6月29日付ハンギョレ新聞)

  2015年5月、安倍首相は自身が心酔する吉田松陰(朝鮮侵略の先導者)の「松下村塾」や、麻生副首相の地元・福岡を含む23施設を世界遺産に登録するため奔走。その際、「軍艦島」や「三菱長崎造船所」などで朝鮮人を強制労働させた事実を隠蔽しました。

 韓国政府は、「戦時中に九州の炭鉱や八幡製鉄所、三菱長崎造船所など23施設のうちの7施設に朝鮮半島から約6万人が徴用され、100人前後が死亡したと主張」(2015年5月5日付共同配信)し、登録に強く反対しました。しかし、安倍政権は韓国側の主張を無視しました。

 こうした安倍政権に対しユネスコ世界遺産委員会が、強制労働などの「歴史全体」を明らかにするよう勧告したのが「2015年の決定文」です。

 ところが安倍政権はこの勧告・決定文を無視したばかりか、逆に昨年11月、「産業遺産」がある現地ではなく東京に「産業遺産情報センター」なるものを設置。しかも強制労働を「日本の産業を支援した」労働と強弁する「報告書」をユネスコ世界遺産センターに提出しました。

  こうした安倍政権の黒を白と言いくるめる厚顔無恥な態度に対し、ユネスコ委員会が業を煮やし”いい加減にして3年前の勧告文を忠実に履行せよ“と再度勧告したのが、27日に採択された決定文なのです。

  これは安倍政権の度重なる大きな汚点であるばかりか、「日本国民」が、朝鮮の植民地支配・強制労働の歴史を直視し反省するのかどうかを問われているきわめて重大な問題です。

 それを日本のメディアは無視した。そして事実を知らされない「日本国民」は、3年前の登録に伴う責任には知らん顔で新たな世界遺産登録に狂喜乱舞する(写真右)。これがこの国の現実です。

  日本のメディアは今からでも27日採択されたユネスコ世界遺産委員会の再勧告・決定文を報じるべきです。

 そして私たちは、安倍政権に対し、「明治産業革命遺産」と不可分の「朝鮮人強制労働」(各施設への強制労働には朝鮮人だけでなく、中国人、さらには連合軍捕虜もかり出されました)の歴史とその反省を明確にさせ、世界に告知させなければなりません。

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