アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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G7 広島サミットは核廃絶・非軍事化に逆行

2023年01月17日 | 核兵器廃絶と日米安保
   
   
 G7 広島サミット(5月19日~21日)へ向け、広島では「広島サミット県民会議」(会長・湯崎英彦知事)が結成され、地元メディアも含め官民合同でその「成功」へ向けたキャンペーンが繰り広げられています。

 市民からは「世界の行方を決める会議。住民が地元の魅力を見直し、誇りを持つ機会になる」(会場のホテルがある元宇品町内会長、2022年11月20日付中国新聞)、識者からも「G7に参加する首脳たちは、ヒロシマの史実を悲しいと嘆いて、政治的に利用するのではなく、廃絶へ向けて本気で取り組み、今までとは違う新しいテーゼを打ち出す出発点にしてほしい」(作家・高樹のぶ子氏、1月3日付中国新聞)などの声が出ています。

 あらゆる機会をとらえて核兵器廃絶の世論を高めていくのは被爆地の切実な要求です。しかし、広島サミットはその願いに沿わないどころか、逆行するものであることを銘記する必要があります。

 広島サミットへ向けて仏、伊、英、加各国を回った岸田文雄首相は、その仕上げに米国でバイデン大統領と会談し、「共同声明」を発表しました(日本時間15日未明)。そこにはこう明記されています。

「両首脳は、日米同盟がインド太平洋地域の平和と安全の礎と確認。バイデン氏は日米安保条約第5条に基づき、核を含むあらゆる能力を用いた対日防衛への揺るぎないコミットメント(責務)と沖縄県・尖閣諸島の同条約適用を改めて表明」(15日付共同配信)

 米政府が言う「対日防衛」とは、日本を米戦略の“不沈空母”にすることに他なりません。それは今回の「敵基地攻撃能力」保有決定の大歓迎でも明白です。広島サミットへ向けた会談で、日米両首脳は、日米安保条約が核軍事同盟であることを改めて明確にしたのです。

 エマニエル駐日米大使は、広島サミットを核兵器廃絶へ向けた機会にしたいという市民の声に対に、「核兵器なき世界というビジョンがあります。しかし同時に抑止力のビジョンもあります。核で脅されないようにするための抑止力をアメリカは備える必要があります」(10日のNHKインタビュー=写真右)とあらためて明言しています。

 広島サミットが核兵器廃絶へ向けた機会になると望むのはまったくの幻想です。それは核軍拡の「理論」である「核抑止力」論を再確認する場にほかなりません。

 それだけではありません。今回の「共同声明」で、「バイデン氏は国家安全保障戦略など安保関連3文書を踏まえ、防衛力や外交的取り組みを強化する日本の果敢なリーダーシップを称賛」「日本の取り組みは、国際社会全体を強化し、日米関係を現代化する」と確認し、その延長線上で「広島でのG 7 サミット成功へ緊密に連携」するとしました。

 広島サミットは、「軍拡3文書」に基づく軍事費大膨張・敵基地攻撃などで日米軍事同盟を深化(「現代化」)させ、日本がアメリカへの従属をいっそう強めて軍事面でも「果敢なリーダーシップ」を発揮するお披露目の舞台です。

 その軍拡サミットに、核廃絶・平和を希求する市民・若者たちが取り込まれ、キャンペーンの一端を担わされているのは、きわめて醜悪なパラドクスと言わざるをえません。

 ウクライナ戦争で世界がますます軍事ブロック対立を深めている中、広島サミットはアメリカを中心とする軍事ブロック(NATO、日米安保など)の結束・強化を表明する場以外のなにものでもありません。その政治的狙い・本質を批判し開催に反対することこそ、世界の核廃絶・非軍事化へ向かう道です。
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