サウジアラビア政府は20日になってようやく、ジャマル・カショギ記者(写真左)が在トルコの自国領事館内で「死亡」したことを認めました。「言論の自由の弾圧を懸念する国際世論の高まりを受け」(21日付朝日新聞)てです。
しかしトルコメディアなどはすでに、「トルコ当局が入手した事件時の音声データに基づく内容として、カショギ氏は館内に入って間もなく暴行され、拷問を受けた末に殺害されたと報じて」(同「朝日」)います。
サウジ政府の「けんかの末」だとか、サウジ王室=ムハンマド皇太子(写真中)の関与はまったくない、などの発表がウソであることは明白です。
そんなサウジ政府に対し、「欧州を中心に『説明が不十分だ』と厳しい非難の声が上がった」(22付共同配信記事)のは当然でしょう。
「ドイツのメルケル首相は『カショギ氏が死亡した状況とその背景』を明らかにするよう求める声明を発表。サウジ側の発表は『不十分で何も説明できていない』と指摘した」(同共同)ほか、フランス、EU、カナダなども「サウジにさらなる情報開示を要求」(同)しています
「国連のグテーレス事務総長や英国、オランダなどの政府も20日、事件を非難し、徹底調査を求め」(21日付朝日新聞)ています。
そんな中、唯一サウジを擁護し続けているのがアメリカのトランプ大統領です。その背景に、サウジへの巨額の武器売却、イスラエルへの配慮などの思惑があるとみられています。
そして私たちにとって最も問題なのは、日本政府(安倍政権)がこの件で沈黙し続けていることです。「サウジを最大の原油輸入先とする日本は、公式な反応を示していない」(22日付共同)のです。
安倍政権が口をつぐんでいるのは、「原油輸入」への配慮だけでなく、トランプ大統領に対する”忖度“があることは間違いないでしょう。安倍首相はこの問題でもトランプ大統領に追随して”世界の非常識“になっているのです。
しかし、日本政府がこうした姿勢をとっていることは想定内です。安倍政権ならありそうなことです。問題は、日本のメディアがこうした安倍政権に迎合し、その姿勢を追及していないことです。
メディアは「日本は公式な反応を示していない」と言う前に、記者会見で政府の見解をただすべきです。毎日行われている「官房長官会見」はなんのためにあるのでしょうか。記者団は菅官房長官にこの問題で質問したのですか?していれば記事になっているはずです。質問しても菅氏は「コメントを控える」と逃げるでしょうが、それをさらに追及するのがメディア(記者)の仕事でしょう。
事は、政府を批判してきたジャーナリストが、政府によって惨殺されるという前代未聞の重大事件です。世界の民主主義が問われています。まして同じ記者として、メディアとして、絶対に傍観できない問題です。
怒りをもってサウジ当局に対して真相公表を求めるとともに、沈黙によってサウジの蛮行を容認している安倍政権の姿勢を追及することが、日本のメディアの責務ではないでしょうか。