「西側」情報に偏った不十分な情報の中でも、ベールの向こうの実体がのぞくことがあります。最近のウクライナ政府当局の発表から、その真実性に疑問を禁じ得ないものを2つ。
検証できないと認めた「化学兵器使用」
ウクライナ軍のアゾフ大隊は12日、SNSで「ロシア軍が化学兵器を使用」と流しました。NHKはじめ日本のメディアはこれを断定的に大きく報じました(写真左)。米国防省は「現時点では事実を確認できていない」と珍しく慎重なコメントをしました(写真中)。
結果、3日たった現時点でもその「事実」は確認できていません。
13日昼のANN(テレビ朝日系)ニュースによると、ゼレンスキー大統領はこう述べていました。
「ロシア軍に包囲されたマリウポリで適切な調査を行うことは不可能だ。ロシア側が化学兵器を使用したかどうか、100%の確固とした結論を出すことはできない」(写真右)
ということは、アゾフ大隊のSNS自体が「適切な調査」がないまま行われたものだということになります。「確固とした結論を出すことはできない」とは、「事実」を証明することはできないということです。
これではアゾフ大隊のSNSはフェイクだったと言わざるをえないでしょう。
そして14日(日本時間)には、ウクライナ当局もアメリカ政府も、そしてNHKはじめ日本のメディアも、「化学兵器使用」報道をピタリとやめました。
そもそもアゾフ大隊は極右ネオナチ集団です。
「アゾフ大隊は、2014年のウクライナの騒乱「ユーロマイダン」で頭角をあらわし、この流れで東部紛争で民兵となり、その武勇と悪名を同時に世界に発信した集団だ。そしてこのアゾフは現在、ウクライナ軍の中核的存在にまでなっている」「(ウクライナは)ネオナチが正規軍に組み込まれている世界で唯一の国」(清義明氏「ウクライナには「ネオナチ」という象がいる」3月29日「論座」)
NHKなどはアゾフ大隊のSNSを事実であるかのように報じながら、彼らがどういう組織かについてはまったく触れていません。
「民間人虐殺」の「容疑者」は「1600人」?「500人」?
キエフ近郊のブチャで「民間人大虐殺」が発表された4日、「ウクライナ国防省はブチャで「戦争犯罪に直接関与した」とするロシア兵約1600人の名簿を公開」(6日付共同配信記事)しました。
ところがその後、ウクライナのベネディクトワ検事総長は英メディアの取材に対し、「ロシアによる戦争犯罪」の「容疑者」として「軍幹部や政治家など約500人の容疑者を特定した」(12日のNHKニュース)と報じられました。
「戦争犯罪に直接関与した」とは「戦争犯罪の容疑者」だということでしょう。ウクライナ国防省はそれを「約1600人」だとして「名簿」まで発表。一方、検事総長は「約500人」だと公表。ウクライナ当局同士の発表でも3倍の食い違いです。
「真実」はどこにあるのでしょうか。