アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

ウクライナ国会決議に賛成しなかった「れいわ」、高良議員の見識

2022年03月10日 | 日本の政治と政党

    

 国会は衆参両院で「ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議」を挙げました(衆院1日、参院2日=写真左。全文を後掲)。これに、政党としては「れいわ新選組」以外のすべての党が賛成しました。「れいわ」は衆参で反対。また参院では高良鉄美議員(無所属・沖縄選出、憲法学者、写真右)が棄権しました。

 「れいわ」も高良議員も、ロシアの軍事侵攻を批判し、直ちに停戦を求める点では共通しています。ではなぜ賛成しなかったのか。

 「れいわ」は「声明」(2月28日)で、「国会として強く政府に求める」べきこととして、「人道支援のさらなる拡大と継続」などとともに、次の点を挙げています。

今回の惨事を生み出したのはロシアの暴走、という一点張りではなく、米欧主要国がソ連邦崩壊時の約束であるNATO東方拡大せず、を反故にしてきたことなどに目を向け、この戦争を終わらせるための真摯な外交的努力を行う(こと)」

 高良議員も「声明」(3月3日)を発表し、こう述べています。

「決議案で述べているとおり、武力行使に抗議することは当然であり、その点に異論をはさむ余地はない。ウクライナ国民の生存権が危機に瀕していることを深く憂慮しているが、決議案で「ウクライナと共にある」という言い回しには違和感がある。今こそ平和憲法を持つ日本が、欧米とは違う立場で、独自にロシア、ウクライナに平和的解決を求める積極的な外交を行うべきである

 ウクライナ政府は武力による「徹底抗戦」を貫いており、各国に支援を求めています。NATOに対しても「制空権」を確保することで事実上参戦することを再三要求しています。NATO加盟国など米欧諸国はウクライナに武器を供与しています。

 その「ウクライナと共にある」(「ウクライナ国民と共に」ではありません)とは、ウクライナ政府の戦闘行為を支持し、それを支援することに通じます。高良議員が「違和感がある」として賛成しなかったのはきわめて賢明です。

 その高良議員の危惧が決して杞憂でなかったことは、参院決議の2日後の4日、岸田政権が「防衛装備移転三原則」を恣意的に解釈してウクライナに「防弾チョッキ」などの「防衛装備品」すなわち武器を送ることを決め、8日実行したことで証明されました(写真中は岸防衛相とウクライナの駐日大使)。

 武器供与は戦争(たとえそれが「防衛戦」であっても)への加担であり、平和的解決とその後の平和的世界の創設に逆行することは明らかです。

 高良議員は「今こそ平和憲法を持つ日本が、欧米とは違う立場で、独自にロシア、ウクライナに平和的解決を求める積極的な外交を行うべきである」と述べていますが、まったくその通りです。

 高良議員が勇気をもって国会決議に賛成しなかったことは称賛に値します。
 逆に、「れいわ」を除くすべての政党が決議案に賛成したことは、この国の議会がいかに思考停止の大政翼賛会状態に陥っているかを示しています。

 憲法9条を持つ日本は、アメリカに追随するのでなく、あくまでも非戦を貫いて停戦・平和に力を尽くすべきです。

◇ロシアによるウクライナ侵略を非難する参議院決議(全文)(2022・3・2)

 ウクライナをめぐる情勢については、昨年末以来、国境付近におけるロシア軍増強が続く中、我が国を含む国際社会が、緊張の緩和と事態の打開に向けて、懸命な外交努力を重ねてきた。
 しかし、二月二十一日、プーチン・ロシア大統領は、ウクライナの一部である、自称「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」の「独立」を承認する大統領令に署名し、同二十二日、ロシアは、両「共和国」との間での「友好協力相互支援協定」を批准した。そして、同二十四日、ロシアは、ウクライナへの侵攻、侵略を開始した。
 このようなロシアの行動は、明らかにウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、ウクライナ国民が有する戦争による恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を侵害するものであり、武力の行使を禁ずる国際法の明確な違反であり、武力による威嚇及び武力の行使を禁ずる国連憲章の重大な違反である。
 力による一方的な現状変更は断じて認められない。この事態は、欧州にとどまらず、日本が位置するアジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがしかねない極めて深刻な事態である。
 本院は、ロシア軍による侵略を最も強い言葉で非難する。そして、ロシアに対し、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう強く求める。また、プーチン大統領が核使用を前提とするかのような発言をしているのは言語道断であり、唯一の被爆国として非難する。
 本院は、改めてウクライナ及びウクライナ国民と共にあることを表明する。
 政府においては、本院の意を体し、ウクライナに在住する邦人の安全確保に全力を尽くすとともに、国際社会とも連携し、速やかな平和の実現のため、ロシアに対する制裁、ウクライナに対する人道支援を含め、事態に迅速かつ厳格な対応を行うことを強く要請する。
 右決議する。

(衆院の決議はほぼ同じ内容で、核の問題に触れている分だけ参院の方が長くなっています)。


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