アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

翁長知事「大義名分見えぬので反対させていただく」とは?

2015年04月18日 | 沖縄・辺野古

         

 安倍首相と翁長沖縄県知事の初めての会談が17日、首相官邸で行われました。「知事、強く対峙 決意揺るぎなく」(18日付琉球新報)、「民意背に『拒否』断言」(同沖縄タイムス)など、翁長氏賛美にあふれています。
 しかし、この日の翁長氏の発言を吟味すれば、評価できないどころか、菅官房長官との会談(5日)同様、ますます危険な方向へ向かっていると言わざるをえません。

 ①またしても“秘密会談”
 会談は約35分。公開されたのは冒頭の6分だけで、大半が菅氏との会談同様、非公開の“密室会談”となりました。ここで何が話されたのか。
 会談後の記者会見で翁長氏は、「それ(冒頭発言)を終わってからのやりとりは、ざっくばらんにいろいろ話し合いをさせてもらった」(18日付琉球新報)と述べました。内容の一部は会見で紹介されましたが、「ざっくばらん」な話し合いの全容は明らかにされていません。
 「県幹部によると、会談の事前調整で県は会談を全部公開するよう求めた」(18日付沖縄タイムス)といいますが、それならなぜ「非公開」で合意したのか。「ざっくばらん」な内容をすべて明らかにする必要があります。

 ②「造らせない」といいながら首相に「英断を期待」とは?
 翁長氏の「私は絶対に辺野古への新基地は造らせない」(配布された「冒頭発言」、琉球新報)という発言が大きく取り上げられています。ところが非公開の話し合いの中では、翁長は安倍首相にこう要求したと述べています。「辺野古への移設作業を中止するよう求めた。総理の英断を期待している、と」(琉球新報)。
 「英断を期待」するとは、どうか作業を中止(断念ではありません)してくださいと配慮を求めることです。それは「知事のあらゆる権限を行使して造らせない」(翁長氏の選挙公約)とはまったく違う姿勢です。安倍首相に「英断を期待」して辺野古新基地建設が阻止できるでしょうか。

 ③「造らせない」も“前提条件”付き
 しかも翁長氏の「造らせない」発言には、前置きがありました。それは、「このまま政府が地元県民の理解を得ることなしに、辺野古埋め立てを強行するようであれば」(「冒頭発言」)。
 新基地断固反対の民意は明白であり、その民意に背を向けて安倍政権が埋め立て作業を強行していることも天下周知のことです。にもかかわらず、いったい政府にどのような「地元県民の理解」を得よというのでしょうか。

 ④「大義名分が見えないから反対させてもらう」とは?
 「造らせない」に前提条件を付けた翁長氏の本音が、図らずも表れたのが、会談後の記者会見です。
 「きょうの会談を受け、今後の基地や辺野古への対応に何か変化はあるか」という記者の質問に、翁長氏はこう答えました。
 「私たちからすると、まだ大義名分も見えてこないので、やっぱり反対させていただくということは県民はじめ私もしっかり持っていると思う」(琉球新報)
 驚くべき発言です。「反対させていただく」という卑屈な姿勢もさることながら、「まだ大義名分も見えてこないので反対」だとはいったいどういうことでしょうか。それは、「大義名分」が見えてくれば「反対」は取り下げる、ということではないのですか。

 ⑤「話し合い」は「大義名分」を探すためなのか
 そもそも、翁長氏も安倍政権も、そしてすべてのメディアも、「話し合いが大切だ」といいますが、何を話し合うというのでしょうか。「話し合い」とは妥協点(落としどころ)をさぐるためのものです。たしかに、あくまでも新基地を建設しようとする側には、「妥協」の余地はあるでしょう。
 例えば、岡本行夫氏(元沖縄問題担当首相補佐官)は安倍・翁長会談後も、「政府は、辺野古移設は時限的なものだという展望も示すべきだ」(18日付朝日新聞)と、持論の「時限使用」論を、妥協点として提案しています。
 しかし、新基地は絶対造らせない側にどんな「妥協」がありうるでしょうか。ありえません。何年という期限をつけようが、日米地位協定「見直し」というアメを付けようが、基地使用料を付けようが、基地が新たに造られることに変わりはないのです。基地は造るか、造らせないかのどちらかです。
 だからもともと安倍政権との「話し合い」など無駄であり、必要ありません。まさに「あらゆる知事権限を行使して造らせない」以外にないのです。それこそが知事選の公約であり、県民の意思だったはずです。
 にもかかわらず、翁長氏が「権限行使」を避けて安倍政権との「話し合い」に固執するのは、「反対」の旗を降ろすための「大義名分」を探すためではないのでしょうか。

 ⑥知事選から5カ月。進んだのは埋め立て作業だけ。なぜ「錦の御旗」を引きずり降ろさないのか
 知事選挙(11月16日)からちょうど5カ月が過ぎました。このかん何が進展したでしょうか。進んだのは政府の埋め立て作業だけ、工事の既成事実化だけです。新基地を阻止するための権限行使を翁長氏は何も行っていません。
 安倍首相との会談で翁長氏は、「政府は・・・前知事が埋め立てを承認したことを錦の御旗として辺野古移設を進めている」と述べました。その通りです。ではなぜ翁長氏はその「錦の御旗」を引きずり降ろさないのでしょうか。埋め立て承認を、「瑕疵があれば取り消す。瑕疵がなくても撤回する」というのが選挙公約だったはずです。

 「妥協」の「大義名分」を探るような「話し合い」ではなく、知事権限を行使して直ちに「埋め立て承認」という「錦の御旗」を引きずり降ろす。それこそが翁長氏がやるべきこと、いや、翁長氏にやらせるべきことではないでしょうか。
 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする