読書って楽しいね♪

好きな作家は東野圭吾さん☆他の作家さんのもいろいろ読んで感想を書いていきたいと思います♪

中江有里「トランスファー」~玉青は今まで知らなかった存在の妹?の洋海と体を入れ替わる?!

2021-08-29 02:59:28 | 

中江有里「トランスファー」読み終わりました。


「トランスファー」って何だろう?


って思ったら


飛行機の直行便がない時にどこかで飛行機を乗り換える


それが「トランスファー」なんだって。



小説の中で奈央が洋海に説明してくれていました。



そう!


正に玉青と洋海はトランスファーしたんです



ネタバレ?






生きていくことが辛くなっていた玉青


父は死に母は認知症で施設に入った。




父と母に反対された妊娠・出産


そして


子供の父親の「斎藤」は玉青から逃げた。。


子供は養子に出され・・


それでも玉青の子供「羽流」に対する思いは募った。


居場所を探し出す玉青


そっと遠くから見守るだけ


そんな日々が続く



交際相手の青島はいるものの

ぞんざいな扱いに

「愛」は感じていなかった。


自分はなんのために働き


何のために生きていくのか


分からなくなっていた玉青



そんな時朝の通勤電車で怪我をする


そして入院した玉青は


不思議な出会いをする


呼ばれた気がして入るある病室


機械につながれ眠っていた少女がいた。


その少女の心と玉青はなぜか話す事ができた。


頭の中での会話


その少女は「洋海」だという。


玉青と「姉妹」だという。



初めて知る妹?の存在


そして


もうすぐ死んでしまうという洋海



洋海からの「体を少しだけ貸してほしい」


その願いを玉青は聞き入れる。



洋海が初めて見る玉青の世界


そして


玉青が体験する洋海の動かない身体。。



そして


分からなかったことが分かったことで


お互いの気持ちを分かり合っていく



そして


玉青ができなかったことを


洋海は玉青に成り代わりつなげていく



繋がれなかった友人


離れる必要があった恋人


性質の違う姉妹が


入れ替わることで


玉青のこれからの人生を


豊かなものにしていく



知らない世界に触れていく


洋海の無邪気な姿が微笑ましかった


そんな洋海を快く思う同僚の奈央


今まで玉青が近づきがたい存在だと思っていた奈央


洋海に入れ替わったことで


友情が深まっていく



そんなところも読みどころになっています。


青島の玉青に対するぞんざいな対応も

理由があったことが分かる。



一緒にいることで傷つけあってしまう関係。。


それは辛いよね。。



「ろみちゃん」ばかり口にする母


そんな母が背負っていた悲しい過去



人は見えることで判断しがちだけど


真実は見えないところにこそある。


そんなことも教えてくれた作品でした。



姉妹愛っていいなぁ



読み終わると心があったかくなる











  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

近藤史恵「夜の向こうの蛹たち」~蛹の孵化を手伝って失敗した妙。その傷がさなぎに翻弄される!

2021-08-27 03:09:58 | 

近藤史恵「夜の向こうの蛹たち」読み終わりました。


読み終わった後

なんだかぞわぞわとしてきました。


さなぎから蝶が孵る。。


上手く殻を破れずに命を終えようとしていた蛹


それを手伝おうとして

妙は失敗する。。


結局救えなかった命


それが心の傷になっていた妙



作家になり


そこそこの地位を築いていた。


そんな妙が出会う


新人作家の「橋本さなぎ」


ここから妙はさなぎに翻弄されていく


さなぎの作品と本人のギャップ


そこを妙は訝しむ。。


さなぎの秘書だという「初芝祐」


その人に会った瞬間惹かれる妙



そして


近づけば近づくほど


祐と作品が結びついていく。


さなぎの見た目の美しさは人目を引く


逆に


祐の見た目は。。



一体この2人の関係はどういうもの?


偶然聞いてしまう


さなぎが祐に言っていた


酷い言葉



祐を助けてあげたくなる妙



そして


その差し伸べた手が


2人に翻弄される始まりだった



見た目の美しいさなぎ


人の心を読み先回りして尽くす


そこには


美しいからこその苦悩があった



一方


見た目の劣る祐


才能があるのに


見た目のせいで傷ついてきた過去が




2人のヒミツ


それを知った時


妙は




人は自分にないものに惹かれる


自分がもしそうだったら・・と憧れる



上手く生きていくために必要な術


それをみんな傷つきながら学んでいく


何が正解で何が間違っているのだろう?


本当のその人にとっての優しさって何だろう?



そんな難しいテーマを与えられた気がした。



それにしても


近藤さんの洞察力の鋭さに驚きます。



この世界を生き抜くためには

こういう方が生き残っていくのだなと

僭越ながら感じました。



生き抜いていく術


私も身につけなければ











  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

重松清「ひこばえ 下」~洋一郎は骨になった父と息子の「穴」を埋めていく☆~

2021-08-24 03:39:09 | 

重松清「ひこばえ 下」読み終わりました。


なんか読み終わったら心がポカポカになったよ


親子っていいなぁ~


血のつながりってあったかいなぁ~


そんな風に思えた作品でした



姉から聞かされていた父のダメぶり。。

酷い父親だった


洋一郎は父のことをあまり覚えていない


顔も声も良く思い出せず


父が洋一郎の中で形を成していなかった。。



しかし!


急に父の消息が分かり


父が亡くなったことを知り


骨になった父と対面した洋一郎



そこから父との付き合いが始まる。



父を知っている人たちからの


父とのエピソード


「いい人だった」


そんな声が多く聞こえる中


父の携帯に残された携帯番号の人たち


そこからは


嫌悪する感情がたくさん聞かされた。。



父が最後に自分史を本にしたいと考えていたこと


それを編集者の真知子から知る



父の思いを受け継ぐため


真知子に強引に押し切られながら


洋一郎は父と縁のある人と会うことになる。



父と親友だったという「神田」


洋一郎の息子「航太」に会ったときに


「あんちゃんはまだ孫じゃない」


そういう。


洋一郎の父と一度も会ったことが無い航太


知っていくことが大事だという。



神田が話す


ひこばえ



古い木が切り倒されることで


新しい命が生まれて森の世代が進む


古い木はそれを見ることはできない

でもしっかり次の世代に命を受け継ぎ

自分の役目を果たしていく



洋一郎の父「信也」


そこから洋一郎


航太へ



受け継がれていく命



洋一郎が父を覚えていなくても


航太が信也と関わっていなくても


そこには確かにつながってる命がある。



洋一郎は父の骨と一緒に思い出を作る


そして


息子の「穴」を埋めていく



洋一郎が


それまで気づけなかったことを


骨になった父は教えてくれる。



そして


洋一郎が施設長をするハーヴェスト多摩の


お騒がせ入居者「後藤」


お騒がせの原因は


「父親」という穴が埋まらずに


寂しさを募らせていたことだった




人のいろんな気持ちに気づいていく洋一郎


骨になった父と関わることで


洋一郎は変わっていく



そして


母や姉と骨の父を和解させるため


動き出す




ほこばえっていい言葉だなぁ



私の命もそんな風に


ずっとずっと受け継がれてここまで来てる


そういう風に考えられるようになった。



それはこの本と出合って読んだから


たとえその作家さんに会ったことが無くても

本を読むことでその作家さんの考えに触れる。


そういうこともひこばえなのかもしれないよね。


私が書いたコレを誰かが見てくれて

それがこの本を読むきっかけになって・・

それを読んだ人が誰かに伝えて・・

それがどんどん広がったら・・


そう考えるだけでワクワクするね



そんなことを考えさせてくれる作品でした













  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

重松清「ひこばえ 上」~親の離婚で7歳から父に会っていなかった洋一郎。48年ぶりに再会したのは父の骨壺だった?!

2021-08-21 02:45:58 | 
重松清「ひこばえ 上」読み終わりました。


やっぱり重松さんの作品は重みがある


人に厚みがあるんだよねぇ。


一人一人の人生


そして

その人にしかわからない感情


そういうことがすごく深く表現されていて

今回もそこにどんどん引き込まれていきました。



姉から父の悪口をずっと聞かされてきた。


洋一郎が7歳の時に別れたきり会っていなかった父


その父の骨壺と


55歳になった洋一郎は



再会する



父の顔を覚えていなかった。


覚えているのは

父が吸っていたハイライトのパッケージ


そして

ベランダでこいのぼりを立てているところ


そのくらいだった。



そして


その日は突然やってきた


姉が伯父経由で知らされた父の死


勘当されていた父は

叔父に引き取りを拒否され・・


姉ももちろん関わりたくない。


それで


父の借りていたアパートを片付けるために

洋一郎はアパートの大家さんに会うことになる。


大家の川端さんは面倒見のいい人で

父を弔い

知り合いのお寺に遺骨を預けてあるという。


父の骨壺に会うつもりはなかった。


しかし

川端さんにお寺に連れていかれ

対面することになる。


父親・・

そう言われてピンとこない洋一郎



アパートも業者に頼んで片付けてもらうはずだった。


しかし

川端さんと父の住んでいた部屋に入り


鍵を渡される。


そして


そこで父が使っていたもの

読んでいた本


そういうところから

父が洋一郎の中で厚みを増していく


カレンダーに〇がついていた母・姉・洋一郎の誕生日


携帯に残された電話番号のない洋一郎たちの名前


図書館で借りた本


川端さんや図書館の田辺さんから聞かされる

父の穏やかで優しい印象


今まで姉から聞かされていた父の印象とは

かけ離れていた



本当の父は一体どういう人だったんだろう


洋一郎は混乱する。。



洋一郎が施設長を務めるハーヴェスト多摩


そこに入居してきた後藤


まだ70代の後藤が息子の偉大な力で入所してくる。


人当たりのいい後藤


しかし

その裏に隠れていた・・


人をいたわるような言葉で傷つける


その言動


そして・・


洋一郎は後藤の背中に


父を重ねる



父のことをよく言う人


そして


悪く言う人


一体父はどういう人だったのか




突然のことに対応できない洋一郎の気持ち


それが自分のことのように迫ってきました


自分ならどうするだろう?


覚えていない父の事


もっと知りたくなるよなぁ。


でも


怖いという気持ちもあるだろうと思う。



まぁそれは想像の域を出ないのだけど



悪い人ではない・・


でも


人の感情を読み取れないことで


人を傷つけていることも気づかないまま・・


嫌われてしまうということはあるのかもしれない。



それはなんかわかる気がした。


そういう人って実際にいるもの。。



そういう人にそれをわからせるっていうのは

難しいことだよなぁ。。


施設長である洋一郎の苦悩が分かる気がする。。



家族にももしそういう人がいたら・・


自分ならどうするだろう?


そんなことも考えた。



骨壺って

関西と関東では大きさが違うんだってこと

今回これを読んで初めて知りました。



自分のこれまでを反省し


これからどう生きていくか?


そんなことも考えさせられる作品です



これから「下」を読んでいきます。


続きが楽しみ















  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

上畠菜緒「しゃもぬまの島」~死者を導くしゃもぬまが祐を死から救った?!~

2021-08-18 03:14:05 | 

上畠菜緒「しゃもぬまの島」読み終わりました。


「しゃもぬま」ってなんだ?

響きから魚?って思ってたんだけど

読んでみると動物でした


初めて聞く名前

そしてみたこともない動物


中型犬くらいの大きさの馬で

見た目はロバに似ている

体毛は薄橙色がかった灰色でところどころ色にムラ

頭が大きい

タテガミはない

蹄は小さくて薄い灰色

尾はあってないようなもの

尻のあたりに陰毛のような縮れた短い毛がまとまつてって生えている

見えているのか疑わしいほど伏せられた目

傘のように目を覆う毛

項垂れた頭

緩く弧を描く背

耳だけはピンと立って上を向いている



これがしゃもぬま



祐が生まれ育った島では

死者を弔うためだけに

しゃもぬまが育てられている


しゃもぬまは必ず天国に行くのだという。



広告出版社に就職して3年

自信も野望も大志もやる気も祐には欠けている

そう自分で思っていた。


中学進学を機に島を出て

今はコンテナターミナルのある港町で暮らしていた。


いつもよく眠れず

幼い時の夢ばかり見る

その時に必ず出てくるのはしゃもぬまだった。


眠れず食欲もなく・・


体調はどんどん優れなくなっていく。。


そんなとき


アパートのドアの外から聞こえる


コンコンという音



それが日増しに強くなっていく


ある日勇気を出してドアを開けると


そこにはしゃもぬまが


なぜ祐のところに?



自分を迎えに来たのか?


自分は死ぬのか?


しゃもぬまは祐の部屋に居つく


そして


天国に導くはずのしゃもぬまが


祐を



死から救い出す



祐が心の奥深くに沈めていた


しゃもぬまへの贖罪



夏ミカンを食べてしまったしゃもぬまは

天国に行くことができない


祐が置き忘れてしまった熟れた夏みかん


そのことがずっと気になっていた



島を牛耳る大きな力


そして


しゃもぬまの言い伝え



祐はしゃもぬまが自分の元にきてくれたことで


心が解放されていく




とっても不思議な話に

グイグイ引き込まれていきます。


読んだ人に寄って

とらえ方はきっと違うんだろうと思います。



もう島から卒業して

自分の道を生きなさい!



私はしゃもぬまが祐にそう言い残したのでは


そう思いました。



本当かどうかはわからない事


でもそこで生きていくには


それを信じていくしかない


そして


それに倣っていくしかない



でもそこから出たら

自分の人生を生きていく



そうしゃもぬまが誘ってくれた気がしました。



不思議なしゃもぬまのお話


ゆっくりじっくり


その世界に浸ってみるのもいいよね










  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする