読書って楽しいね♪

好きな作家は東野圭吾さん☆他の作家さんのもいろいろ読んで感想を書いていきたいと思います♪

長嶋有「もう生まれたくない」~読んだ後にじわじわくる自分が生きてること・・死にゆくこと~

2022-09-29 02:45:56 | 


長嶋有「もう生まれたくない」読み終わりました。


タイトルを見て読んでみることにしました。


一体どういう事なんだろう?


でも読み終わってからもそのことについて考えてしまった。



何度も繰り返し頭の中で


登場人物のことを思い


起きた出来事を考えた。



そして


後からじわじわくる


自分が生きているということ


死にゆくこと


そんなことを考えさせられた。



震災後


春奈・美里・神子の三人の日常は


偶然もたらされた訃報に寄って変わっていく。



人の死・・


それは近しい人はもちろん悲しみに暮れる。。


でも

有名人やちょっと見知った人の死


それもまた「死」は人の心にダメージを与える。


それぞれの場所で知る「訃報」


その状況や一緒にいる人などに寄っても


受け取り方は変わるだろう。



人はちょっとしたきっかけで


行く道を変えてしまうこともある



そんなんことも思った。



この感想をどういう風に書こう?



そう悩んだ私


それもこの小説に出合い


再び「その人」の死に触れ


考えさせられる。



人の縁の不思議




天災や不慮の事故で亡くなった人


病気で亡くなった人


自らの手で自分を亡くしてしまった人



運命?


天命?



死はいろんなことを考えさせてくれる



自分が生きていることの意味


普段は考えないようなことを


じっくりと考える。



後からじわじわ~


それがこの小説の読み方なのかもしれません。


感じ方は人それぞれです。


私はそんな風に思いました。



空母に郵便局がある事


そんなことも勉強になりました。


郵便局に投函された手紙は


空母が着岸しない限り届ける事ができない。


なのに投函されてポストの中で


その手紙は待ち続ける。



なんだか今のスピードの時代に


それを考えるとすごく不思議



でも


そういう「待つ」という時間が


「思いの重み」を作っていくのかもしれません。



そんな手紙をもらったら・・


きっとすごくうれしいだろうなぁ




じっくりと


じんわりと


人の思いを感じる時間



今私たちに足りないのはそんな時間かもしれません。



あなたはこれを読んで


どんな感想を持つのでしょう?


それも聴いてみたい気がします。








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伊吹有喜「雲を紡ぐ」~傷ついた美緒を包んでくれたのは羊のふわふわの毛と祖父のあたたかさ☆

2022-09-14 03:24:16 | 



伊吹有喜「雲を紡ぐ」読み終わりました。


ずっと読んでみたかった。

やっと読む事ができました


伊吹さんの作品はいつも人に優しい


このお話も


心をふんわりと包み込んでくれる作品でした。



会ったことがなかった父方の祖父


美緒のお宮参りに祖父と祖母が来てくれて


贈ってくれた赤いショール


それは祖父と祖母が作ってくれたもの


ホームスパン


羊の毛を使った糸を染めて織る


その仕事をしている祖父


祖母は亡くなったらしい


でも

父の広志と祖父は疎遠で

美緒が生まれたその時から会っていなかった。



そんな祖父との再会



それは


高2になって美緒は学校に行けなくなった。


赤いショールをかぶり


自室にこもる毎日


教師の母はそれをネタにまた苦しめられていた。


祖母も出てきて学校に行くようにまくしたてられる。。



父はそのことから仕事が忙しいことを理由に逃げていた。



そして


仕方なく父に送られて行った学校



しかし!


美緒は逃げ帰ってしまう。。



そして


赤いショールを取り上げてしまった母



行き場を亡くした美緒は


ひとり会ったことのない祖父の元に向かう!



場所はスマホでいつも見ていたので知っていた。



突然やってきた美緒を


優しく迎え入れる祖父「紘治郎」



その日からホームスパンに魅せられ


そこで修業をすることになる


何とか学校に行かせようとする母と祖母


しかし


祖父は美緒を全力で守ろうとする


甘えだという母に


祖父は異議を唱える



言葉は多くないけれど


しっかりと包み込んでくれる優しさ


それを嬉しく思う美緒



自分の悪いところばかりをあげつらう美緒に


悪いところも裏を返せば長所になるという事


自分をじっくり見つめるという事


それを教えてくれる祖父


「せぐな」


そう言ってくれる



言葉でなかなか伝える事ができない美音



それもいいんだと教えてくれる祖父


『言はで思うぞ、言ふにまされる』


そう言ってくれた


言えないでいる相手を思う気持ちは、

口に出して言うより強い





自分が認められてそこにいることができる



そんな居心地の良さを感じる。



そして


自分がどんどんホームスパンに取りつかれていく


それを感じる美緒



紘治郎の後継者で父の従妹の「裕子」


指導は厳しいけれど心根は優しい


その息子の「太一」は美緒を妹の様に面倒を見てくれる



糸は切れてもまたつなぐ事ができる


それを教えてくれた太一



途切れた家族の交流


それを美緒がつないでいく



言う事はきっぱりと言うけれど


誰に対しても優しい紘治郎



その優しさに感動しました



ホームスパンがつないでいく


家族の絆



離れていても


受け継がれて繋がっている家族



美緒の中に


祖父も祖母も父も母も・・


みんながどこかにいて形成されている



あらためて


家族の絆


そして


受け継がれる血



そんなことを考えさせられました。



せぐな!


いつからでもそいということはない。


自分と向き合って


自分見つける




すごく勇気をもらえた作品でした



自分の中にもきっとあるいいところ


見つけていきたいよね









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彩瀬まる「不在」~小さい時に別れた父が死んだ。相続したのは父が住んでいた屋敷。そこには父がいた!

2022-09-08 02:04:52 | 



彩瀬まる「不在」読み終わりました。


実に深いお話でした。


心の奥のひだをグイグイまさぐられたような気持ちになった。



家族って何だろう?


とも考えさせられました。


家族の形に囚われれば囚われるほど・・


その形からは程遠いものになって行ってしまう。。


なんでこうなってしまうんだろう?


なんだかやるせない気持ちでいっぱいになりました




明日香が小さい時に家族で暮らしていた屋敷


父と母が離婚し


兄と明日香は母について屋敷を出た。



それから一切つながりのなかった父



その父が亡くなり


明日香は父の遺言に基づき「屋敷」を相続することになる



なぜ兄ではなく・・私に?


まずそこを不思議に思った明日香


自分は選ばれなかった子供


そう思っていた。



父と母の言い争いで聞いた


父が兄を選んだことをが尾を引いていたから。。



その疑問は解けぬままでも相続することを決める。



その屋敷を片付けに訪れる明日香


そこには


父はもういないのに


確かに父がいた



ひとつ一つ片づけるうちに


明日香は変わっていく・・


父が乗り移ったように


父に囚われていく



結婚を考えていた恋人の冬馬


その仲も


父の存在が大きくなるにつれ


上手くいかなくなっていく




医者だった厳格な祖父


その後を継いだ父の祖父の様にはなれなかった苦しみ



そんなことが見え隠れする。。



どこから入ったのか屋敷に迷い込んだ少年


その少年は一体誰なのか?!



不在なのに


徐々に大きくなっていく父の存在



それが明日香を苦しめ・・


しかし


呪縛から救ってくれることになる




父と一緒に歌いたかった「夕焼け小焼け」


そんな些細な望みもかなえてくれなかった父



父はずっと一人で孤独に耐え・・


傷ついた少年のまま動けずにいた。。


そんな父の姿が浮き彫りになっていく




父親


それは娘にとって大きな存在だ。


・・・と私自身も思う。



私も父に構われたことがほとんどない。


ちょっと遠くにいる家族


その存在は


亡くなった後の方が大きくなっていくのかもしれない。



初めて知る父の事



生きているときには見えなかったものが


不在であるからこそ見えてくるものなのかもしれないなぁ。



そんなことを思った。



心の動きの描写が実に繊細で


著者の彩瀬さんのお人柄がうかがわれます。



人間の感情っていうのは


一筋縄ではいかないものですよね



明日香が屋敷を片付け終わり


吹っ切れていく姿が


頼もしく


こちらまで元気になっていくような気がしました。



ステキなお話をありがとうございます











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松岡圭祐「新人作家・杉浦李奈の推論Ⅵ 見立て殺人は芥川」~李奈と母の関係が露天する☆毒母には毒母を!?~

2022-09-02 03:11:51 | 



松岡圭祐「新人作家・杉浦李奈の推論Ⅵ 見立て殺人は芥川」読み終わりました。



芥川龍之介が桃太郎の話を元に


独自の全く違う桃太郎のお話を書いていたことを初めて知った。


その中の桃太郎は英雄なんかじゃなく・・


おじいさんおばあさんに嫌われていた?!



ある殺人事件現場に残された


芥川の桃太郎の本



サルにそっくりな男


そして





桃太郎に見立てられた?男



芥川の桃太郎をなぞらえた殺人事件



現場に残された本のことで


李奈が警察の聞き込みに駆り出される!


本の知識に長けていて


難事件を解決するきっかけになった前回の事件


李奈の功績を大きく評価され警察が李奈に依頼してくる。


殺された桃太郎に見立てられた男「館野良純」


しかし


聞き込みをするも恨みを待たれるようなことは出てこない。



芥川の桃太郎とは異なる


非の打ち所がない人物像だった。。



そんな事件の糸口を見つけられない警察と李奈



そんな中李奈の兄の航輝に連れられて

三重から上京した母「愛美」が李奈宅にやってくる。


李奈と愛美の仲が良くないことを


いつも航輝は心配していた。


和解をしてもらいたいと場を設けるも・・


李奈の不安定な仕事に理解を示さず


三重に帰るようにいう愛美



2人の言い分は平行線のまま。。



しかし!


2人の仲に転機が転機が訪れる



それは事件の要を見つけた李奈が


犯人を追い詰めた時



毒母に愛美が言った一言



毒母には毒母を






愛美の母親としての素直な気持ちを表したことで


李奈の心は懐柔していく




見方次第で物語が変わっていく



芥川の桃太郎は読者にどんなことがいいたかったのか?



それを考える李奈



愛美のことも


ずっと同じ角度からしか見ていなかった自分


そんなことに気づいていく




毒母とはなに?


母親の愛情は時に子供を苦しめる。。


でもそれは


溢れる子供への愛情ゆえ



毒を毒で制する!


そんな言葉が今回の事件を読んでいて思い浮かびました。



時に重い母の愛情



きっと李奈も母になった時に分かるのかも




本が売れずに悩んでいた李奈に


今回はビッグチャンスが



李奈をついつい応援してしまうこのシリーズ



次回も李奈の活躍に期待しています











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