あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

十月事件

2018年12月16日 15時49分27秒 | 十月事件

場所は青年会館の畳敷の広間だった。
目じるしは 「 郷詩会 」 と なっていた。
西田の考案しそうな名称だった。
全国からの陸海軍青年将校四五十人に、
民間人は西田税、井上日召、
それにのちの血盟団のメンバーの人々や 渋川善助、高橋空山などが加わっていた。
血盟団、五・一五事件、二・二六事件の主要メンバーが、
このとき一堂に会していたわけである。
どれが陸軍でどれが海軍か民間人かわからなぬほど、
一様にゆかた袴の若者が広間に雑然と坐っていた。
がそのなかで
一人だけ夏羽織をつけ、
威儀を正して端坐している年輩の人物が私の目をひいた。
「 あれは誰だ 」
と 渋川善助にきくと
「 愛郷塾の橘孝三郎氏だよ 」
と 教えてくれた。 ・・・郷詩会の会合


十月事件の橋本欣五郎中佐

十月事件
目次
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櫻會 ( 國家改造の目論見 ) 
三月事件 ( 宇垣の變心 )
十月事件 ( 錦旗革命 )
櫻會 ( 革新幕僚 )
・ 
三月事件と十月事件 ( 革新幕僚 ) 

井上日召 ・ 郷詩會の會合 前後
末松太平 ・ 十月事件の体験 (1) 郷詩会の会合
・ 
末松太平 ・ 十月事件の体験 (2) 桜会に参加 「 成功したら、二階級昇進させる 」
・ 
末松太平 ・ 十月事件の体験 (3) 「 それじゃあ空からボラを落として貰おうか 」

・ 
末松太平 ・ 十月事件の体験 (4) 「 なに、鉄血章、 誰が言った !! 」

やっと菅波中尉が現れた。
私はいきなり菅波中尉に欝憤をぶちまけた。
「 あんたは在京部隊の将校を利で誘いましたね。
道理で沢山集まっていますよ。
大岸中尉は同志十人あれば天下の事は成る、といったが、
十人どころか大変な人数ですよ。
私なんかもう出る幕じゃないから引込みますよ。」
菅波中尉は眼鏡の底で目をきらりと光らせると、
「 なんということをいうんだ。どうしたんだ。」
といった。
私はつづけていった。
「 クーデターが成功したら鉄血章をくれるそうじゃないですか。
野田中尉がだまって聞いていたところをみると、あんたも知っているんでしょう。」
「 なにッ、鉄血章、誰がいった。」
「 天野中尉がいいましたよ。」
「 よしッ、おれにまかして置け。」
菅波中尉はぐっと口を真一文字にむすんで広間にはいっていった。
私もそのあとにつづいた。

・ 西田税と十月事件 『 大川周明ト何ガ原因デ意見ガ衝突シタカ 』 
絆 ・ 西田税と末松太平


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