あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

櫻會 ( 國家改造の目論見 )

2018年12月13日 19時43分52秒 | 十月事件


櫻會
ロンドン条約によって海軍が先づ硬化し、
引續いて陸軍部内に於ても中堅將校、殊に參謀本部を中心として、
鞏硬な革新熱が捲き起り遂に櫻會の結成を見るに至った。
陸軍省調査班員田中清少佐の執筆と云はるゝ手記に依れば、
桜会の構成活動及び其の影響は次の如くである。
(一)  櫻會の構成
 同會は昭和五年九月下旬陸軍省參謀本部の少壮將校が中心となり、
國家改造を目論み組織せられたものである。
その發起者は
 橋本欣五郎   樋口季一郎

參謀本部    橋本砲兵中佐 ( 二十三期 )
陸軍省    坂田歩兵中佐 ( 二十一期 )
警備司令部    樋口歩兵中佐 ( 二十一期 )
を始め二十數名。
目的    國家改造を以て終局の目的とし、必要ならば武力の行使も辭せず。
會員    現役陸軍將校中にて階級は中佐以下國家改造に關心を有し私心無き者に限る。
準備行動
一、一切の手段を尽して國軍將校に國家改造に必要なる意識を注入
二、會員の擴大鞏化 ( 昭和六年五月頃には約百五十名に達す )
三、國家改造の爲め具體案の作成
(二)  櫻會の活動
國軍將校の啓蒙、同志の獲得の外に櫻會員活動の結果と見られる特筆すべき重大事があつた。
昭和五年參謀本部に於ては、恒例に依る第二部の情勢判斷が行はれた。
從來のものは單に作戰に資するためのものであつて、敵國をのみ眼中に置いたものであつたが、
昭和五年の判斷に於ては、積極的に満蒙問題を解決せんとせば必然的に國家の改造を専攻条件とせざるを得ず、
之が爲め先づ國家の改造を決行すべしとの重大な一項が加へられた。
參謀本部第二部が從來の例に見ざる判決を下すに至つたのは時世の變化にも依るであらうが、
第二部の部員班長中に多數の櫻會員を有して居り中にも橋本砲兵中佐 ( 露班 ) 根本歩兵中佐 ( 支那班 )
等の有力者が存して活動した結果である。
(三)  櫻會の影響
櫻會は、是の如くにして情勢判斷に當つてその主張の一部を貫徹せしめ、
又海軍將校との連絡機關  星洋會 ( 陸海軍幕僚將校中佐以下の會 ) を作り 屢〃會見した。
又改造の具體案の作成に着手した。
斯の如き實力ある一段が陸軍部内に生じ、改造を目的として運動を進めた事は、
一般の國家改造機運を躍進せしむるのに役立つたのは勿論、直接的には
三月事件
十月事件
の機縁をなした。

右翼思想犯罪事件の綜合的研究 ( 司法省刑事局 )
---血盟団事件より二 ・二六事件まで---
これは「 思想研究資料特輯第五十三号 」 (昭和十四年二月、司法省刑事局 ) と題した、
東京地方裁判所斎藤三郎検事の研究報告の一部である
現代史資料4  国家主義運動1  から

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