2月23日(日)
西田税、北一輝邸へ
磯部淺一、西田税を訪ねる ・・西田不在・・妻初子に26日早朝の蹶起を傳言を依頼 ・・・西田はつ 回顧 西田税 2 二・二六事件 「 あなたの立場はどうなのですか 」
朝まだき 林少尉、池田少尉を訪ねる ・・・池田俊彦少尉 「 私も参加します 」
午前中 栗原中尉、豊橋驛前の旅館 「 つぼや 」 で竹嶌、對馬と會合・・・栗原、深夜歸京
午前中、磯部、田中中尉に 「 本日午後四時磯部宅に來れ 」 の電報を打つ
午前11時 村中、香田大尉宅へ ・・・香田清貞大尉の参加
午後3時前 澁川善助、小石川道場を出る。
午後4時 田中中尉、磯部宅へ・・磯部、田中に決行の日時と計畫画内容を告げる
午後5時過 渡辺鐡五郎一等兵、歸營時間に間に合わず ・・・「 中隊長のために死のうと思っただけです 」
午後5時 澁川善助、湯河原驛に到着 ・・・渋川善助 ・ 湯河原偵察 「 別館の方には、誰か偉い人が泊っているそうだな 」
午後7時 歩三週番指令室に野中、香田、村中、磯部、安藤、坂井、集合す ・・・合言葉 「 尊皇討奸 」 「 三錢切手 」 を決める
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・・・前頁 二 ・ 二六事件前夜 二月二十三日 西田税『 今まではとめてきたけれど今度はとめられない、黙認する 』 の 続き
二 ・ 二六事件前夜
2月24日(月)
朝 歩一に出勤した栗原中尉、林少尉に蹶起計畫を告ぐ
朝食後 澁川、伊藤屋別館を視察す・・ 澁川善助 ・ 湯河原偵察 「 別館の方には、誰か偉い人が泊っているそうだな 」
午後 磯部、千駄ヶ谷の西田税宅へ・・西田税不在
午後3時頃 常盤少尉、鈴木 淸原少尉とともに野中大尉に呼ばれ蹶起の任務分隊を命ぜらる
午後7時半 西田税、歩一週番司令室の山口大尉を訪問 ・・「 實に弱ったことになった 」
午後9時頃 坂井中尉、高橋少尉、麦屋少尉と共に齋藤内府私邸を偵察す ・・高橋太郎少尉の四日間 1
午後9時頃 村中孝次、北一輝邸を訪問 ・・『 蹶起趣意書 』 を作成す
午後10時過 西田税、岩崎豊晴私邸を訪ねる
・・・この夜の寒さは格別だったので、岩崎は珍しく外出せず、自宅で晩酌を樂しんでいた。
すると十時過ぎになって、西田税がぶらりとやって來た。
早速二人で飲みはじめると、西田の表情がいつになく憔悴したように見えたので、
岩崎が問い詰めると、西田がようやく重い口を開いた。
「 近く、どうしてもやらなければならなくなった 」
「 やるというのは、實力行動か ? 」
「 う む、これまでのいきさつからいっても、今度ばかりはどうしても止められない。
無理に止めようとすれば、彼らは俺を殺してでも蹶起するだろう 」
「 だが、そこが先輩の責任だ。貴様が止めなくて一體誰が止めるんだ 」
「 いや、それでは、俺も職業革命家とか、西田は命が惜しいのだと非難される。卑怯者にはされたくない 」
「 馬鹿をいえ。今やって成功すると思うか。磯部や栗原に引きずられてどうするのだ 」
「 もう、俺も引くに引けないところまできてしまった。 それで今夜は貴様に別れに來たのだ 」
酒が冷えてしまった。
西田の沈痛な表情には、すでに、覺悟の色が歴然と現れていた。
岩崎は西田の表情から、今度は本物に違いないと思った。やがて熱燗がくると、
再び飲みはじめたが、いかにも苦い酒であった。
西田ほどの奴が、これほどまでに決心したのだから、恐らくもう止められないだろう
・・と 岩崎は察した。
・・・「 貴様が止めなくて一体誰が止めるんだ 」
午前0時半頃 西田税、歸宅 磯部の置手紙 ・・「 二月二十六日の朝だと都合が良いと云つてます 」
歩一週番指令室で野中、香田、村中、磯部、 山口、打合せ
野中四郎大尉 香田淸貞大尉 村中孝次 磯部淺一
・・・野中大尉は自筆の決意書を示して呉れた。立派なものだ。
大丈夫の意氣、筆端に燃える様だ。
この文章を示しながら 野中大尉曰く、
「 今吾々が不義を打たなかったならば、吾々に天誅が下ります」 と。
嗚呼 何たる崇嚴な決意ぞ。
村中も余と同感らしかった。
野中大尉の決意書は村中が之を骨子として、所謂 『 蹶起趣意書 』 を作ったのだ。
原文は野中氏の人格、個性がハッキリとした所の大文章であった。
・・・磯部浅一、行動記 第十 「 戒厳令を布いて斬るのだなあ 」
吾人の蹶起の目的は 『 蹶起趣意書 』 に明記せるが如し。
本趣意書は二月二十四日、
北一輝氏宅の仏間、
明治大帝御尊象の御前に於て神佛照覧の下に、
余 ( 村中孝次 ) の起草せるもの、
或は不文にして意を盡すと雖も、
一貫せる大精神に於ては
天地神冥を欺かざる同志一同の至誠衷情の流路なるを信ず。
・・・村中孝次、丹心録 「 吾人はクーデターを企図するものに非ず 」
北一輝宅の仏間
( 二月二十四日 村中孝次、北一輝邸ヲ訪ル )
明治陛下御尊像前デ法華經ヲ讀誦シタ際 妻ニ靈告ガアリ、
大内山ニ光射ス 暗雲無シ
ト現ハレタノデ、靑年將校蹶起ノ目的モ天聽ニ達シ、
比較的純心ノ人々デ内閣ヲ組織スルニ至ルモノト思ヒ、
「 豫テ皇室ノ事ヲ御心配申上ゲテ居ツタガ、之デ大ニ安心シタ 」
ト 村中ニ言ヒマシタ、
村中ガ野中大尉ノ書イタ 「 蹶起ニ關スル決意 」 ト題スルモノヲ見セタノデ、
私ハ夫レヲ一讀シ、
野中大尉ニハ一度モ面會シタコトガナイガ、
其ノ至誠ガ紙面に躍動シテ居ルノヲ感ジ、
實ニ名文デアルト思ヒマシタノデ、
「 名文ト云フモノハ至誠カラデナイト出來ナイモノデアル 」
ト感歎ノ辭ヲ漏シタ
・・・北一輝、予審訊問調書から
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・・・次頁 二 ・ 二六事件前夜 二月二十五日 林八郎 『 おい、今晩だぞ。明朝未明にやる 』 に 続く