2月18日
山口大尉から西田税に電話・・・西田、栗原中尉を呼付ける
午後六時過 栗原中尉、西田税を訪る ・・「 貴方には関係ない 」 ・・・私は諸君と今迄の関係上自己一身の事は捨てます
夜 目黒区駒場の栗原宅に安藤、村中、磯部、 河野が集合
2月19日
磯部淺一、西田税を訪る・・・大体の計画を打明ける ・・・行動記 第十一 「 僕は五一五の時既に死んだのだから諦めもある 」
午前10時 磯部、豊橋の對馬中尉宅へ
夜 栗原宅で会合 磯部、村中、安藤、栗原
2月20日
夕方 安藤大尉、西田税を訪る
「 最近何カヤロウト云フ空氣ニナツテ居テ、自分(安藤) ハヤルトナレバ重鎭デアルガ、
後ノ事ガヨイカ惡イカ判断ガツカヌト申シマシテ、一週間位前ニ將校ガ集ツテ相談シ、
其時、野中大尉ニ話ヲシマシタ処、叱ラレマシタ。
ソコデ一應斷リマシタ。村中ニモ話シマシタガ、同ジ様ニ叱ラレマシタ。
ソレデ從來ノ例カラ、今度ハ全般ノ空氣ガ治まラナクナツタト申シテ居リマシタ。
尚、ノツピキナラナイカラ、若シ貴方ガ反對スレバ命モ取ラナケレバナラナイト申シテオリマシタ。
私ハ安藤ニ、僕ノ意見トシテハ直接行動ハヤツテ貰ヒタクナイ。
場合ニヨツテハヤルベキダガ、現在ハ時機デハナイト申シマスト、
安藤ハ大體私ノ意見ヲ聞イタ様デシタ。
今回ノ原因ハ、一ツハ満洲ヘ行ク爲デシタカラ、私ハ一般ノ人ハ實際ニ感心シナイダロウシ、
諸君ガヤレバ僕モ一緒ニヤラレテシマフ。
ドウシテモヤルナラ押ヘテモ押ヘ切レナイ時ニヤルベキダト申シマシテ、
藤井 (藤井齊海軍大尉) ガ上海デ戰死シタ話ヲシテ、
私ハ自分ノ以前ノ體驗カラシテ、永年情誼ノ人ガヤル事デアルカラ、之ヲ理解サシテ、
ヤル事ヲ留メナケレバ私ノ一生モ棒ニ振ツテ仕舞フト申シマシテ、
諸君ガ是非ヤルナラ私ハ留メナイガ、間違ヒナイ様ニ僕ハ覺悟シテ居ルトモウシマシタ 」・・・西田税憲兵調書原文のまま
・私は諸君と今迄の関係上自己一身の事は捨てます
・行動記 ・ 第十一 「 僕は五一五の時既に死んだのだから諦めもある 」
2月21日
西田税、山口大尉宅を訪る
磯部と村中、歩一の山口大尉を訪ねる
夕刻 豊橋部隊会合、對馬中尉、竹嶌中尉、鈴木一等主計、塩田中尉、井上中尉・・・斯くて 興津の西園寺公望襲撃は中止された
午後11時頃 磯部、村中、澁川 は世田谷上馬の安藤宅へ
2月22日 第九回相澤公判
早朝 磯部浅一、安藤大尉私邸を訪ねる
「 磯部 安心してくれ、俺はヤル、本当に安心してくれ 」・・・安藤大尉の決意
安藤大尉、聯隊に到着し坂井中尉に参加の旨告げる
正午前 第一師団の満州派遣が師団命令により聯隊将兵に通達せらる
正午 安藤大尉週番指令に 野中大尉、安藤大尉より参加の決意を知らさる
昼食後 坂井中尉、将校集会所で高橋少尉に蹶起の時期切迫を告げる
午後4時 磯部、村中、四谷の野中大尉宅へ・・・「 野中大尉の決意書 」・・・『 蹶起趣意書』 ・・・※24日
夕刻 高橋少尉、中隊将校室で坂井中尉と会合・・遺書を認 したためる
夜 駒場の栗原中尉宅で栗原、中橋、河野、村中と磯部が集合 ・・・『 尊皇討奸 の合言葉 』 決める ・・・
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二 ・ 二六事件前夜
2月23日(日)
西田税、北一輝邸へ
磯部浅一、西田税を訪ねる ・・西田不在・・妻初子に26日早朝の蹶起を伝言を依頼 ・・・西田はつ 回顧 西田税 2 二・二六事件 「 あなたの立場はどうなのですか 」
朝まだき 林少尉、池田少尉を訪ねる ・・・池田俊彦少尉 「 私も参加します 」
午前中 栗原中尉、豊橋駅前の旅館 「 つぼや 」 で竹嶌、對馬と会合・・・栗原、深夜帰京
午前中、磯部、田中中尉に 「 本日午後四時磯部宅に来れ 」 の電報を打つ
午前11時 村中、香田大尉宅へ ・・・香田清貞大尉の参加
午後3時前 澁川善助、小石川道場を出る。
午後4時 田中中尉、磯部宅へ・・磯部、田中に決行の日時と計画内容を告げる
午後5時過 渡辺鉄五郎一等兵、帰営時間に間に合わず ・・・「 中隊長のために死のうと思っただけです 」
午後5時 澁川善助、湯河原駅に到着 ・・・渋川善助 ・ 湯河原偵察 「 別館の方には、誰か偉い人が泊っているそうだな 」
午後7時 歩三週番指令室に野中、香田、村中、磯部、安藤、坂井、集合す ・・・合言葉 「 尊皇討奸 」 「 三銭切手 」 を決める
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夕方
西田税、26早朝の蹶起を知る
わたくしはあの事件の起きますことを、二月二十三日に知ったのでございます。
西田の留守に磯部さんが見えまして、
「 奥さん、いよいよ二十六日にやります。
西田さんが反対なさったらお命を頂戴してもやるつもりです。とめないで下さい 」
と おっしゃったのです。
その夜、西田が帰って参りましてから磯部さんの伝言をつたえました。
「 あなたの立場はどうなのですか 」
「 今まではとめてきたけれど、今度はとめられない。 黙認する 」
西田はかつて見ないきびしい表情をしておりました。
言葉が途切れて音の絶えた部屋で夫とふたり、
緊張して、じんじん耳鳴りの聞こえてくるようなひとときでございました。
・・・西田はつ
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次頁 二 ・ 二六事件前夜 二月二十四日 村中孝次 『 蹶起趣意書 』を起草 に 続く