あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

澁川善助 ・ 昭和維新情報

2020年03月02日 06時28分55秒 | 赤子の微衷 2 蹶起した人達 (訊問調書)


澁川善助   

二・二六事件当日から、西田税宅で、
澁川善助、福井幸、加藤春海、宮本誠三などが、事件の情況をガリ刷に作製して全國の同志に直送したもの。
( 約二〇〇部くらい )
第三報まで出した。
二十七日午後からは、周知のように、情勢は急轉して叛亂軍が非常な苦境におかれはじめた。
二十八日早朝 原宿警察から西田税探索のため刑事數名がふみこんできた。 
リンク→西田はつ 回顧 西田税 2 二・二六事件 「 あなたの立場はどうなのですか 」 
( 西田は、岩田富美夫氏の入院していた東京巣鴨の某病院にいた )
これにより澁川は情勢の惡化を知り、
「 様子をさぐってくる 」
と 蹶起部隊に入ってそのまま歸らなくなり、
また西田宅も嚴重に監視されており、第三報で終わった。
この 「 情報 」 を 作製した一人 西田税夫人の談によれば、
第一報、第二報をつくっている時は、事件の動きがあまりに、自分らの期待以上に順調に進んだので、
これで 「 昭和維新 」 は 「 ついに成った 」 と 思いこんでしまった、
ということである。
なお、この 「 情報 」 をつくる費用、郵便代のため西田家でかねて親しい質屋を呼んで、
二〇〇圓の資金を得たが、事件終結後、
その質屋の主人は、
「 質草に對し、貸金が多すぎた 」
という理由で 「 叛亂罪幇助 」 の廉で四ヶ月の罪に處せられたというエピソードもある。

現代史資料4
国家主義運動1
から

昭和維新情報第一報  二月二十六日午後七時現在
二月二十六日 早朝四時 維新皇軍東京部隊 大擧蹶起し 皇城を奉じて
維新の大義を宣明し 反維新勢力の元兇、首脳を粉砕討滅せり。
概況左の如し
一、主力  皇道維新派 歩一、歩三の大部隊其他、近歩、豊橋部隊
一、配備  皇城を守護し奉り、丸ノ内各省官衛、大銀行、新聞社等を完全に占拠す。
一、斬奸  西園寺 ( 生死不明 ) 牧野、齋藤 ( 實 ) 岡田、高橋、後藤、渡邊教育總監、鈴木 ( 貫太郎 )
  小栗警視總監、川島 ( 參内の途中行方不明 )
一、反應  内閣總辭職、後藤内閣不明、陸軍首脳部混亂、海軍一致維新軍支持、芝浦に軍艦二艘入港、陸戰隊上陸
一、對策  維新軍の赤誠を上聞に達し 御親裁御嘉納を仰ぐべく工作進展中 ( 好望 ) 國民的意思表示の要あり。
  全國同志奮躍興起すべきは唯是千載一遇の今にあり。
各位不退轉の決意を以て大義に參ぜよ、先づ 環境に応じて左の処置を執られたし。
A、各地 皇軍の奮起を促進すべし。
B、大擧實力を示威し、地方長官に面接昭和維新に賛せしめ、
維新内閣出現の國民的翹望も上奏傳達せしむ。
C、侍従武官府宛 維新内閣出現の國民的翹望を上申すべく 電報書信の急霰を注ぐこと。
D、各地に聯絡すべきこと。
E、其他 適宜可能なる一切の手段を盡すこと。
以上
( 続報 ) 臨時首相大角大將、其他閣僚は其の儘、
維新同志会同人
 ・
昭和維新第二報  二月二十七日正午現在
一、維新軍は凡る困難に逢著せんも 萬死を屠して牢固たる初一念を貫徹するものなり。
  本舞台は之より始まり 今迄は序幕なりと心得、
全力を傾倒して斷乎たる處置を敢行せられ度し。
各地に於ては最後に至る迄 續々と國體擁護、國體生活權確立の蜂起を望むや切なり。
逆睹し難き情勢の經過聯續下に
維新軍の勝利を決するものは一に懸って各地の續々たる蜂起にありと信ず。
環境に應じての左の處置を斷行せられたし。
A、各地皇軍の奮起を促進すべし。
B、大擧實力を以て地方官廳、金融機關、通信機關等を占領し
  昭和維新實現の國民的翹望を上奏す。
C、侍従武官府宛 維新内閣出現の国國民的翹望を上申すべく電報書信の急霰を注ぐこと。
D、各地に聯絡すること。
E、其他適宜可能なる一切の手段を盡すこと。
一、維新軍の眞精神を軍首脳部及幕僚は混濁せる國體観念の故に理解する能はず、
  前後處置顚倒して遺憾の點のみなり。
速やかに全國の維新蹶起を以て彼らを正導するを要すべきや切なり。
第一報を左のごとく訂正す
一、主力  皇道維新派 歩一、歩三の大部隊 其他、近歩、有志將校
一、配備  部隊を集結し維新阻止勢力粉砕準備の大勢に在り。
一、斬奸  西園寺 ( 生死不明 ) 牧野 ( 不明 )、齋藤、岡田、高橋、渡邊、鈴木
  小栗警視總監、川島 ( 參内の途中行方不明 )
一、反應  内閣總辭職、後藤内閣不明、陸軍首脳部混亂、海軍一致維新軍支持、
  芝浦に軍艦一艘、駆逐艦二艘入港、陸戰隊上陸
( 続報 ) 臨時首相代理後藤文夫
維新同志会同人
昭和維新第二報續報  二月二十七日午後五時現在
一、蹶起せる部隊は尊皇軍と稱す。
一、尊皇軍は戒嚴令下にて小藤支隊として活動中なり。
一、尊皇軍は陸相官邸、首相官邸、警備司令部を占拠し 兵力を集結して和戰両様の備にあり。
      陸軍省本部は明渡したり。
一、最惡の場合は斬死の覺悟を以て士気旺盛なり。
以上
維新同志會同人

昭和維新第三報  二月二十七日午後八時現在
尊皇維新軍は愈々勇躍一路維新回天の大業に邁進しつゝあり。
一、蹶起の理由、趣意書に明白なり。
一、維新實現の爲めには維新を要する程に國家を亡狀に導き國民を塗炭の苦しみに呻吟せしめつゝある現支配階級
 而してこの國體的反逆の中樞として君側に仕へまつれる重臣と反國體的軍部の不逞とを討たねばならぬ。
一、是等の討伐は一つに軍の武装的實力に依ってのみ可能なる事柄であり、
 而して國體を體認せる維新的同志に依ってのみ果斷に決行し得られるものなり。
一、此の決行に對する幹部同志將校左の如し
  歩一、香田大尉、栗原中尉、林少尉等約三中隊
歩三、野中大尉、安藤大尉、新井中尉、坂井中尉等約六中隊
近歩三、中橋中尉等約一中隊
地方部隊、河野中尉、田中中尉、對馬中尉、竹嶌中尉等其他、村中大尉、磯部一等主計、
                中島中尉等將校約二十名、下士以下 ( 同志的集團 ) 約二千名、
一、襲撃占拠地点  首相官邸、陸相官邸、陸軍省、參謀本部、警備司令部、警視廳を占拠し、
  殲滅的決意を以て一切の非國體的現象を處理し、而して當局の反省處決を要望しつゝあり。
一、二十六日午後三時 戰時警備令發布さる。尊皇維新軍は現地占拠のまゝ之に編入さる。
一、二十六日深更以後 軍事參議官と幹部將校全部との間に於て磁極収拾の會議を開催交渉せるも、
  具體的一致を見るに至らず終れり。
一、二十七日午前三時戒嚴令下る。尊皇維新軍は現地のまゝ戒嚴部隊に編入さる。
一、二十七日午前十一時頃 尊皇維新軍は諸般の考慮を以て陸軍省、參謀本部より撤退し、
  他の各地區に全兵力を集注し待機中。
而してこれより以上は一歩も退かぬ不退轉の決意と行動に依りて目的貫徹に鋭意善処中。
一、其の間全く困惑狼狽せる當局は尊皇軍を鎮撫撤退せしむることに腐心しつゝあるも
  逐次尊皇軍の要望に接近し、維新展開以外に處置の方法なきを認識しつゝあり。
一、二十六日夕 陸軍大臣布告全軍に發布さる。
その内容。
一、青年將校等蹶起の趣旨は天聽に達しあり。
      ・・・蹶起の趣旨は天聽に達せられあり
一、諸氏は國體眞姿顯現の至情に發したるものなることを認む。
      ・・・諸子の行動は國體の眞姿顯現の至情に基ずくくものと認む
一、國體顯現の現況 ( 弊風も含む ) は寔に恐懼に堪へず。
      ・・・國體の眞姿顯現 ( 弊風含む ) に就いては恐懼に堪へず
一、各參議官も協力一致して右趣旨に邁進を申合せあり。
      ・・・軍事參議官も一致して右の趣旨に依り邁進することを申合せあり
一、それ以上は一に 大御心に俟つ。
      ・・・之以上は一に 大御心に俟つ
の意味のものを尊皇軍將校に提出した。
全く當局として尊皇軍に對する降伏の證文なることを意味するも、
但し観念的抽象的なり。
一、堀第一師團長は出撃部隊の趣旨を諒として反對論に鞏便に反對しつゝあり。
一、香椎戒嚴司令官は出撃部隊幹部將校と會見し、其の要望を諒承したり。
一、出撃部隊を反逆視せる情報曲報あるも然らず。
  命令通報等には 「 二十六日出撃部隊 」 と稱せられ、
歩兵第一聯隊長小藤大佐の指揮下に属し 戒嚴部隊として占拠する區劃の警備を命ぜられ、現に活動しつゝあり。
休息、補給等十分に与へられあり。
一、二十七日夕 軍事參議官眞崎大將、阿部大將、西大將と維新將校幹部一同との第二回會見行はる。
  阿部、西 両大將は眞崎大將の時局収拾を支持することを誓ひ、
眞崎大將は參議官の行動は一に上意によるも維新將校の要望に善処することを言明したり。
一、之を一大契機として各地自主的なる善処をなし、維新の展開に邁進する。
一、宮中の反國體的存在者を一掃し、宮中の維新化を圖り、軍の維新化、不純分子の一掃をなす。
一、大詔渙發の請願運動を全國的に捲き起こす。
一、之に依って全維新勢力が政治的に、社會的に凡てに亘って結合しつゝ 完全維新實現を期す。
( 各團体は右顧左耳丐 する事なく維新の本道に向って邁進すべし )。
以上
維新同志會同人