歩三 某伍長
第五回 ( 27/2ゼ六、一〇 )
二月二十七日午前六時十分
於三宅坂 発簡者 中隊長
一、昨夜遅ク戦警下令ニテ勤務ニ就イタガ伝達セシ如ク戒厳令ノ布設ノ下ニ我々ノ所信ニ向ツテ前進スベキコト
二、独断部隊ハ小藤部隊トシテ歩一ノR大隊長ノ指揮下ヘ這入ル
三、之ニ関聯シテ全般ノ状況ヲ伝ヘテ維新ノ建設ニ向ツテ前進スルノデアルガ全般を任セルコトハ出来ヌコト
弾圧ヲ加ヘル者モ在ル、必ズシモ軍全部ノ者ガ我々ノ考ニ賛成スルモノ許リニアラズ
之ノ儘ノ編成デ頑張ル、ダンダン押シテ行ク、イイ流レに向ツテ流レツツアルカラ一寸油断ヲスルト失敗ス
企図ニ就テ
四、命令ガ来タラ歩一ニ引上ゲル筈ナリ ( 小藤部隊 ) 軍ハ通過ヲ許可ス
五、各自ノ信念ニ就テ
六、士気ノ振興
鈴木邸襲撃要図 兵力一中隊 ( МG3ヲ付ス )
二月二十七日午前五時ニ於ケル小藤部隊長陣地配置要図左ノ如シ
第七回 二七 ゼ 七 ・一〇 中隊長 二月二十七日午前七時十分
撤去ノ企図変更シ陸軍省参謀本部ヘハ上層部各官全部出入リヲ許可シ之ニ対シ彼等ノ行動ヲ監視セントス
外部ニ対スル警戒ハ銃前哨一名位ヲ設ケルノミニ止メルモノトス
第八回命令 二七 ゴ 〇 ・ 一〇 中隊長 二十七日午後零時一〇分
一、状況ハ更ニ我等ニ有利ニ進展シツヽアリ
二、中隊ハ只今ヨリ一聯隊長小藤大佐ノ指揮ニ入リ小藤部隊ト名付ク
小藤部隊ハ国会議事堂ニ集結シ次ノ行動準備センガ為メ現在地ヲ撤去スベシ
山王ホテル ニ於テ
二十九日午前七時五十分
⑴ 奥村分隊、中村分隊 再度 君ケ代 斉唱ス 感涙湧カザルヲ得ズ
⑵ 隣室巡察ノ際、我々ノ為ニ斯ノ如キ険悪ナル情勢ニ至リタルモ尚顧ズ、
ホテルに只一人握飯ヲ作リ居リシ健気ナ女性ヲ発見セリ、
頼ミテ氏名ヲ聞ク 伊藤葉子 ト云フ者ナリト
乞フ此ノ女性ノ名ヲ葬ル勿レ
⑶ 志気依然トシテ其ノ絶頂ニ達シアリ
八時三十分
⑴ 安藤大尉最後ノ言葉
「 聯隊ニ残リシ六中隊ノ幹部ハアレデモ幹部カ 」 ト
⑵ 大木伍長、渡辺軍曹巡察ニ来りて激励シ行ケリ
⑶ 安藤大尉、渡辺軍曹 敵ノ中ニ踏込メリ
「 討タバ討テ 」 ト 敵ハ銃剣ヲ突キツケテ取巻ケリ
安 「 ソレハ一体何ダ 」 スルト敵ハ銃ヲ立銃トナシ不動ノ姿勢ヲ取レリト
尊皇討奸軍ヲ何故討テル筈ガアルカ
午前九時〇分
⑴ 再度ノ雄叫ヲ唄フ
⑵ 外套ヲ整頓シ置キ水筒ヲ捨テテ身軽トナル思フ存分働カン意気昂シ
⑶ 朝日窓ニ冴ヘタリ 正ニ大内山ニ暗雲ナシ
⑷ 部下ニ発砲ヲ固ク禁ズル旨再度言渡ス
㈤ 部下ノ顔ニハ終始喜ビ顔見エタリ 至上ノ光栄ト存シ死ニ赴カン
二十九日午前十時三十分
旅団長閣下折衝ノ為メ来リテ歴史的光景
零時三十分
中隊長自決セントス
大隊長中隊長ヲ切ラントス
服装ヲ整ヘ引揚ク
尊皇の志士第三班二年兵発
麻布三聯隊第六中隊 残留幹部一同宛
中隊長殿を中心に昭和維新の為皇国のため全員身命をなげだして不眠不休で奮闘して居ります
幸に中隊幹部の各位が力添を得たなればどんなに力強く感じたでありませう
誠に残念でありました
然し吾々は飽く迄も一人になるまで尊皇討奸の許に雄々しく
早々