ある夜
西田宅で私と彼と二人だけの懇談のときであった。
西田税
君は武力行使をどう思っているのか
と、彼が突然質問を発した。
無暴に行使すべきではないと思います。
だが、何れはやらねばこの日本はどうにもなりますまい。
僕の理想は武力行使はやらずに維新が断行されることにある。
それは出来ない相談ではないと思っている。
蹶起すべき時には断乎として蹶起出来るだけの、協力な同志的結合の下にある武力、
その武力をその時々に応じてただ閃かすことによってのみ、
悪を匡正しつつ維新を完成してゆく。 つまり無血の維新成就というのが理想だ。
軍刀をガチャつかせるだけですね。
そうなんだ。ガチャつかせることは単なる、こけおどしではいけない。
最後の決意を秘めてのガチャつかせでなければならぬことは、もちろんだがね。
私もそう思います。だが、若い連中に無血が理想だなんてことを、
少しでもにおわしたら、それこそ大変ですよ。
もちろんそうだ。しかし、そういう考えを胸中奥深く秘めて、
僕は若い連中に対処したいと思っている。
大蔵栄一 ・・から