いよいよGWも明けて、本格始動といったところでしょうか。
熱流体解析では、運動量(=質量×速度)と熱変数(主に温度)のそれぞれについての支配方程式が必要となります。前者はナビエ・ストークス方程式、後者は熱エネルギー方程式として知られております。キャビティ流れや熱伝導のような工学問題を解く際には、熱エネルギー方程式で取り扱う変数は「温度」を使用します。しかし、局地気象のように(工学問題で扱うものよりも)スケールの大きな現象の場合は、そのまま温度を適用することができない事情があるのです。
図1.室内の水槽実験を考えてみると
仮想的な室内実験として、キャビティの内部に乾燥した空気を充填させまた状態を想定してみましょう。下から加熱して、上から冷却すると、初期状態における温度の鉛直勾配は、(∂T/∂Z)<0となるため不安定となり、時間が経つにつれて鉛直対流が発生します。上から加熱して、下から冷却すると、初期状態における温度の鉛直勾配は、(∂T/∂Z)>0となるため安定となり、時間が経っても内部流体は静止したままとなります。(※上向きに正となるような鉛直座標をZとします)
図2.温度と温位の数学的取扱
従って、小さな室内実験スケールのキャビティ流れを考えると
・(∂T/∂Z) < 0 ・・・ 不安定 ⇒ 対流が起こる
・(∂T/∂Z) = 0 ・・・ 中立 ⇒ 安定と不安定の境界線
・(∂T/∂Z) > 0 ・・・ 安定 ⇒ 対流は起こらない
と言う事は、想像に難くないと思います。
ところが、実際の大気現象はと言いますと、大気が乾燥状態にあると仮定した場合は
・(∂T/∂Z) < Γd ・・・ 不安定 ⇒ 対流が起こる
・(∂T/∂Z) = Γd ・・・ 中立 ⇒ 安定と不安定の境界線
・(∂T/∂Z) > Γd ・・・ 安定 ⇒ 対流は起こらない
※Γd =g/Cp:乾燥断熱減率
となります(尚、符号の取り方によっては不等号の向きが逆になる事があります)。
ここで注目したいのは、同じ温度Tであるにも関わらず、キャビティ流れと大気現象では中立の条件が異なると言う事です。すなわち、大気現象を解析するに際しては、温度Tに関しては、キャビティ流れと同じような感覚で扱う事ができないのです。数学的な取り扱いが異なるため、何らかの配慮をしなければならないのです(面倒くさいですね)。
実は、室内実験で扱う現象スケールでは、気圧は殆ど一定を見做す事が出来ます(無意識のうちにそのように扱っているのです)。大気現象スケールでは、気圧は大きく変化するので、空気塊の温度も熱エネルギーそれ自体に加えて、周囲の気圧の影響も加味しなければなりません。
大気現象の数値解析は、実際の現象を模擬した小さな模型を仮想的に作って実験を行うようなものです。そしてその究極の基本はキャビティ流れに通じます。従って、大気現象における熱的効果を加味するに当たっては、実際の大気現象の温度(非保存量)を何とかして、キャビティ流れの温度のような形(保存量)と同じように扱いたいとの要請が発生します。
この大気現象の温度をキャビティ流れのような室内実験の温度のように扱うためには、変数変換を行う必要があります。この変換されたパラメータが温位であり、この温位を用いる事により、実際の大気現象を室内スケールの模型と同じように考え、取り扱う事が可能になるのです。そんな訳で、私は数値シミュレーションの際には熱変数には「温位」を採用しています。
熱流体解析では、運動量(=質量×速度)と熱変数(主に温度)のそれぞれについての支配方程式が必要となります。前者はナビエ・ストークス方程式、後者は熱エネルギー方程式として知られております。キャビティ流れや熱伝導のような工学問題を解く際には、熱エネルギー方程式で取り扱う変数は「温度」を使用します。しかし、局地気象のように(工学問題で扱うものよりも)スケールの大きな現象の場合は、そのまま温度を適用することができない事情があるのです。
図1.室内の水槽実験を考えてみると
仮想的な室内実験として、キャビティの内部に乾燥した空気を充填させまた状態を想定してみましょう。下から加熱して、上から冷却すると、初期状態における温度の鉛直勾配は、(∂T/∂Z)<0となるため不安定となり、時間が経つにつれて鉛直対流が発生します。上から加熱して、下から冷却すると、初期状態における温度の鉛直勾配は、(∂T/∂Z)>0となるため安定となり、時間が経っても内部流体は静止したままとなります。(※上向きに正となるような鉛直座標をZとします)
図2.温度と温位の数学的取扱
従って、小さな室内実験スケールのキャビティ流れを考えると
・(∂T/∂Z) < 0 ・・・ 不安定 ⇒ 対流が起こる
・(∂T/∂Z) = 0 ・・・ 中立 ⇒ 安定と不安定の境界線
・(∂T/∂Z) > 0 ・・・ 安定 ⇒ 対流は起こらない
と言う事は、想像に難くないと思います。
ところが、実際の大気現象はと言いますと、大気が乾燥状態にあると仮定した場合は
・(∂T/∂Z) < Γd ・・・ 不安定 ⇒ 対流が起こる
・(∂T/∂Z) = Γd ・・・ 中立 ⇒ 安定と不安定の境界線
・(∂T/∂Z) > Γd ・・・ 安定 ⇒ 対流は起こらない
※Γd =g/Cp:乾燥断熱減率
となります(尚、符号の取り方によっては不等号の向きが逆になる事があります)。
ここで注目したいのは、同じ温度Tであるにも関わらず、キャビティ流れと大気現象では中立の条件が異なると言う事です。すなわち、大気現象を解析するに際しては、温度Tに関しては、キャビティ流れと同じような感覚で扱う事ができないのです。数学的な取り扱いが異なるため、何らかの配慮をしなければならないのです(面倒くさいですね)。
実は、室内実験で扱う現象スケールでは、気圧は殆ど一定を見做す事が出来ます(無意識のうちにそのように扱っているのです)。大気現象スケールでは、気圧は大きく変化するので、空気塊の温度も熱エネルギーそれ自体に加えて、周囲の気圧の影響も加味しなければなりません。
大気現象の数値解析は、実際の現象を模擬した小さな模型を仮想的に作って実験を行うようなものです。そしてその究極の基本はキャビティ流れに通じます。従って、大気現象における熱的効果を加味するに当たっては、実際の大気現象の温度(非保存量)を何とかして、キャビティ流れの温度のような形(保存量)と同じように扱いたいとの要請が発生します。
この大気現象の温度をキャビティ流れのような室内実験の温度のように扱うためには、変数変換を行う必要があります。この変換されたパラメータが温位であり、この温位を用いる事により、実際の大気現象を室内スケールの模型と同じように考え、取り扱う事が可能になるのです。そんな訳で、私は数値シミュレーションの際には熱変数には「温位」を採用しています。