ピアノにまつわる記憶は、楽しいことよりも、ちょっといやな事が多いかな?
私が高校のころの夏休みに、2歳年下の従妹家族がやってきた。
この家族は、ピアノをやっている姉を非常に高く評価しており、従妹は私には何の関心もなく、年上の私の姉にあこがれていた。
姉が子供好きだったのもあり、年下の従妹たちをかわいがったからでもある。
私は逆に子供嫌い(むしろ人間嫌い)だったので、慕われるわけもなかった。
そのころ、実家ではグランドピアノを買い、姉がピアノを教えていたものだから、ピアノを習っている従妹が弾いてみたいと言い、叔母もぜひ弾かせてもらいなさいよ等と言って、その時、姉がいなかったので、私がピアノのところに案内した。
そこで、その辺に出しっぱなしになっていた私の楽譜を従妹が見たわけだが、どれもレベルが低すぎて使えないというのだ。
こんなのは、ずっと前に終わっている。もっと上のは無いのか?と言うとともに、
こんなレベルの低いのをやってるの?と、口には出さずともその反応は見え見えだった。
完全に見下された。
私は、中学で中断し、別の先生に変わったばかりだったが、それまでの指導がなっていないから、初歩に戻ってやり直す必要があるとされ、昔、とっくに終わった教本をやり直していたのである。ソナチネアルバムとかツェルニーとかだったと思う。
だが、初歩に戻ってやり直しさせられているのだという説明もできないような社交性のない人間だった。
従妹は別の本棚から、もっと高度な姉の使った譜面等を出して演奏したんだったか、もうそのあとのことは何も記憶にない。
・・・
その1~2年後、その従妹がピアノの発表会に出るので、ぜひ見に来てくれと姉に連絡があったため、遠い場所に私もでかけた。従妹が高校生のころだろう。
従妹が弾いたのは、ベートーヴェンの月光の3楽章だった。
あきらかに、指が滑っている。鍵盤の上を上ずっている。基礎ができていない。
それは、私にも一目瞭然だ。
叔母は、「娘は音大に進んだ方がいいかしら?」と姉に聞いた。
姉は、「進まないほうが良い」と答えた。
・・・
もし、私が高校のときに、初歩に戻らずに、そのままレベルの高い曲に進んでいったら、きっとあんな弾き方になったんだと思う。
私はレベルは低いけど、あんなごまかしの弾き方はしない。
従妹がそこで、すごく素晴らしい演奏をしたら、敬服したんだろうけど、大したことなかったのは、私にとって幸いだったかもしれない。
だが、しかし、私はその後も月光の3楽章なんてとても弾けるレベルじゃない。
・・・
この都会育ちの従妹は、私より2学年年下だが、実際には1年とちょっとしか年齢差がないそうだ。
私の身体が小さかったので、ずっと従妹のほうが身体も大きかった。
プールでも競争をさせられ、あっちがクロールでこっちが平泳ぎだから負ける。
私は学校でクロールの指導を受けたことがない。平泳ぎも指導も受けたことはないが、海で自己流に泳ぐうちに泳げるようになった。
だから、とことん見下される。
従妹の眼中に私はなく、従妹は常に私の姉を慕っていたのだ。
だから、一緒に遊んだりもしない。
一番年齢の近い従妹だから、本当は仲よくなれてもよかったはずなのに、と思う。
・・・
大人になったらさらに何の交流もないが、学歴やら財産やら、社会的地位やら、面倒くさい比較材料が満載で、一生かかわりはなかろう。
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