パピとママ映画のblog

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ダラス・バイヤーズクラブ ★★★★★

2014年03月13日 | た行の映画
1980年代当時無認可だったHIV代替治療薬を密輸販売し、アメリカのHIV患者が特効薬を手にできるよう奔走した実在のカウボーイの半生を映画化した人間ドラマ。HIV陽性と診断されたカウボーイを『マジック・マイク』などのマシュー・マコノヒーが演じ、21キロも減量しエイズ患者という難役に挑んだ。『チャプター27』などのジャレッド・レトー、『JUNO/ジュノ』などのジェニファー・ガーナーが共演。監督を『ヴィクトリア女王 世紀の愛』のジャン=マルク・ヴァレが務める。
<感想>実話を基にした今作の舞台は、1985年のテキサス。酒、タバコ、コカインにギャンブル、そして女に溺れる自堕落な生活を送っていたロン・ウッドルーフが、ある日突然倒れ、HIV陽性で30日の余命を宣告される。

この当時は、まだエイズは同性愛者だけの病気と誤解されている時期。特効薬AZTはまだ試験中で、それに毒性も副作用も強かった。このまま死ぬしかないと、生き延びるために彼は、未承認だった治療薬を求めてメキシコへ行くが、すぐに多くのエイズ患者たちに需要があることを発見する。
その薬は効果も高く副作用も弱いが、まだアメリカでは認可されてないこれらの薬物を大量に仕入れて、“ダラス・バイヤーズクラブ”という会員制システムを作り、月400ドルの会費を取って薬をサバクことで、法の網をくぐり抜けようとする。

ゲイ・コミュニストに人脈を持つ、やはりHIV陽性のトランスセクシャルのレイヨンを仲間に引き込み、モーテルの部屋を事務所に仕立てて、顧客は増える一方だった。その内に役所に目をつけられて、薬の供給を断たれそうになれば、世界中を飛びまわって、なんとか商売の薬を確保しようとする。
ロンが、その後7年間生きるが、彼と政府、製薬会社との闘いは、弱者が大きな権力に一人で立ち向かうという昔ながらのハリウッド映画の伝統を引き継いでいる。
何よりも脚本が素晴らしい。テンポのいい展開で観客をぐいぐいとドラマの中へ引き込んで行く。これまでにもエイズ患者を描いた映画はいくつかあったが、脆弱な身体になった主人公をこんなにも力強く描いた作品はなかったと思う。だからなおさら、感動的なのだろう。

もちろんストーリーのその部分も面白いのだが、一番の見どころは、下品で、偏見に満ちたテキサス育ちの男に扮したマシューの迫真の演技といっていいだろう。
死相、それが演技と分かっていても、俳優の顔にそれが漂うのを目撃してしまった瞬間、心がざわつくただならぬ不穏さ。本作は実話に基づくが、マッチョで堕落した男がHIVに感染したことから、生きることへの異様な執着を見せる活力の物語でもある。

死相と同時に旺盛な生命への熱量を見せるマコノヒーの、一筋縄ではいかない男の歪んだ魅力。病気の末期を具現化して逆痩せしたマコノヒーの熱演が強く心に残った。俳優もここまでやれば金メダル級のアスリートだろう。
そしてレイヨン役のジャレッド・レトーの可愛く、破滅的でありつつ死を恐怖する儚い美しさの対比。変貌した身体と顔つきには、まさに明日をもしれぬ男の戦いを描き、この人たちの壮絶な死にざまを思わせるような演技が凄すぎる。
ラストカットのストップモーションなど、編集も素晴らしい。
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