ぶらぶら人生

心の呟き

『愛』

2023-02-26 | 身辺雑記
 久しぶりに、小説を読んだ。

    井上靖 作 『愛』

    


 角川文庫で、100ページほどの小説集。
 「結婚記念日」
   「石庭」
 「死と恋と波と」
 の3遍が、おさめられている。

 上掲の作品は、あらかじめ<愛>にまつわる作品集として書かれたものではなく、それぞれは独立した短編であったものを、たまたま文庫本として、3作品をまとめるにあたって、『愛』という表題がつけられたもののようだ。

 最近、小説を読みたいという意欲がわかず、もっぱら評論やエッセイの類を読んできた。その方が、読みがいがあると思っていた。
 が、久しぶりに、井上靖の小品を読んだところ、小説も読むに値すると、改めて思い直すことになった。
 人々の心の機微が細やかに描かれていて、理屈ではなく、読む者の心に直々訴えかけるものがある。 
 井上靖の作品はかなり読んできたし、その詩(散文詩)も含めて好きな作家である。しかし、この小冊子は、買ったまま、書棚で眠っていた。
 短編だけに、いっそう言葉が選び抜かれ、緻密な味わい深い文章となっているような気がした。
 ありふれた市井の人が織りなす平凡な出来事が描かれているにも関わらず、人と人との関わりのなかで生まれる、心中の機微が、読者の心に、しみじみと語りかけるように書かれている。
 小説でなくては味わえない妙味を改めて感じた。

 野村尚吾の解説が、本の最後に載っている。それによると、井上靖が、『闘牛』で芥川賞受賞を受賞された1950(昭和25)年当時に、この『愛』の3作品も書かれた様子である。

 いい作品は古びないものだなと、つくづく感心する。


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ツバキ 落日

2023-02-26 | 身辺雑記
 晴れやかな天気なのに、大気が妙に冷え冷えして、老体にこたえる。散歩に出かけたいという意欲をそいでしまう。

 気分転換に、家の周囲を折々歩く。

 白いツバキの一つが、やっと開花の気配を見せてくれた。明日は、完全に花開くだろう。

    


 ピンク色の椿は、毎年、花数が少ない。が、今年は例年よりやや多めに咲き続け、目を楽しませてくれている。

    


 夕方、犬走りを歩いていると、折から、夕陽が西の山に入ろうとするところだった。

   隣家の彼方に見える夕陽。
    


 遮るもののない広場に出て、今日の落日を眺める。
    


 目を中空に転ずると、暮れ残る空に、五日の月があった。
   


 空を眺め、夕陽を眺め、月影に会い、今日も一日無事であった。
 自然は無言だが、私のよき話し相手になってくれる。

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