ぶらぶら人生

心の呟き

退院した友

2010-03-13 | 身辺雑記
 土田の浜の突き当たりの丘の上に、同級生の家がある。
 二月の七日、Mさんの葬儀があった日、Yさんの姿がなく、気になった。
 その日は、同級生が多く集まり、Mさんとのお別れをした。
 式の後には、ひとりでに同級生の環ができ、Mさんの思い出や近況を語り合ったのだった。

 葬儀の後、海辺に向かって散歩した折には、幾度か坂を上ってYさんの宅を訪れた。が、いつも留守であった。カーテンは、長く開けられた気配がなかった。

 今日も、丘の家を訪ねた。
 やっとYさんに会うことができた。
 一月の下旬から50日、入院していたのだと聞いて驚いた。
 お寺参りをした帰り道で、石に躓いて転び、右膝の皿が壊れたのだという。
 Yさんは寡黙な人である。
 具体的な話はあまり聞けなかった。しかし、動かずにいる間に、大腿の筋肉がすっかり衰え、皺皺になったとの嘆きは聞いた。
 
 とにかく、無事の退院に安堵し、海の見える玄関先でしばらく立ち話をした。
 絶え間なく届く潮騒を聞きながら。

 家主の不在の間にも、季節は春へと移ろっていた。
 前庭にはヒヤシンスが咲き、アネモネも一輪、か細そうな花をつけていた。

 「あの椿は、金魚椿というの」
 と、Yさん。
 まだ小木の椿である。木に近寄ってみた。
 花はありふれたピンクである。
 命名の由来は、葉の特徴にあるようだ。
 よく見ると、葉先が金魚の尾に似ているのだった。
 

              ヒヤシンス

             アネモネ

             金魚椿
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海に向かう

2010-03-13 | 散歩道
 一週間ぶりに、海に向かって歩いた。
 雪の後の野は、さらに春めいていた。
 鶯の声が増えている。
 鶯に限らず、名を知らぬ小鳥たちのさえずりも、しげくなった。
 ひとりでに心が弾む。

 今日は、早朝の6時半、ベッドに居て、鶯の声を幾度も聞いた。
 鶯がやっと里へ下りてきたと喜んでいると、枕元で鳴いて、私を喜ばせた。
 わが家の庭木に下りてきたのだ。
 息を潜めて、次の声を待っていると、すばやく場所を移したらしく、保育園の木立の方から聞こえ、やがてさえずりは遠くへ消えてしまった。
 鳥の大方は、一所に留まることをしないようだ。

 歩きつつ鶯を聞くときも、家にいてその声を聞くときも、私はいつも対話を楽しんでいる。まるで友人と語り合うかのように。

 国道わきの崖に、ノイチゴの花が咲いていた。
 この春、初めて出会った花である。
 こんなに純白だったかと、佇んで花の美しさを眺めた。色も形状も、私好みの野の花だ。

 国道と歩道のコンクリートの割れ目に、土筆の坊やが頭をそろえていた。
 何もこんな場所を選ばなくても、豊かな土壌はいくらでもあるのにと考えたのだが、それは人間の考える愚かしい価値観に過ぎないのかもしれない。
 土筆の方は、ただ幸せそうに、春の陽を浴びている。
 なまじっか意思を持つばかりに、ある面、人間は惨めかもしれない、など考えながら歩く。

 北浜に近い道の辺には、スノーフレークの花も、一叢咲いていた。


              今日の北浜

              ノイチゴ

              国道の傍の土筆

              道端のスノーフレーク
コメント (2)
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