土田の浜の突き当たりの丘の上に、同級生の家がある。
二月の七日、Mさんの葬儀があった日、Yさんの姿がなく、気になった。
その日は、同級生が多く集まり、Mさんとのお別れをした。
式の後には、ひとりでに同級生の環ができ、Mさんの思い出や近況を語り合ったのだった。
葬儀の後、海辺に向かって散歩した折には、幾度か坂を上ってYさんの宅を訪れた。が、いつも留守であった。カーテンは、長く開けられた気配がなかった。
今日も、丘の家を訪ねた。
やっとYさんに会うことができた。
一月の下旬から50日、入院していたのだと聞いて驚いた。
お寺参りをした帰り道で、石に躓いて転び、右膝の皿が壊れたのだという。
Yさんは寡黙な人である。
具体的な話はあまり聞けなかった。しかし、動かずにいる間に、大腿の筋肉がすっかり衰え、皺皺になったとの嘆きは聞いた。
とにかく、無事の退院に安堵し、海の見える玄関先でしばらく立ち話をした。
絶え間なく届く潮騒を聞きながら。
家主の不在の間にも、季節は春へと移ろっていた。
前庭にはヒヤシンスが咲き、アネモネも一輪、か細そうな花をつけていた。
「あの椿は、金魚椿というの」
と、Yさん。
まだ小木の椿である。木に近寄ってみた。
花はありふれたピンクである。
命名の由来は、葉の特徴にあるようだ。
よく見ると、葉先が金魚の尾に似ているのだった。
ヒヤシンス
アネモネ
金魚椿
二月の七日、Mさんの葬儀があった日、Yさんの姿がなく、気になった。
その日は、同級生が多く集まり、Mさんとのお別れをした。
式の後には、ひとりでに同級生の環ができ、Mさんの思い出や近況を語り合ったのだった。
葬儀の後、海辺に向かって散歩した折には、幾度か坂を上ってYさんの宅を訪れた。が、いつも留守であった。カーテンは、長く開けられた気配がなかった。
今日も、丘の家を訪ねた。
やっとYさんに会うことができた。
一月の下旬から50日、入院していたのだと聞いて驚いた。
お寺参りをした帰り道で、石に躓いて転び、右膝の皿が壊れたのだという。
Yさんは寡黙な人である。
具体的な話はあまり聞けなかった。しかし、動かずにいる間に、大腿の筋肉がすっかり衰え、皺皺になったとの嘆きは聞いた。
とにかく、無事の退院に安堵し、海の見える玄関先でしばらく立ち話をした。
絶え間なく届く潮騒を聞きながら。
家主の不在の間にも、季節は春へと移ろっていた。
前庭にはヒヤシンスが咲き、アネモネも一輪、か細そうな花をつけていた。
「あの椿は、金魚椿というの」
と、Yさん。
まだ小木の椿である。木に近寄ってみた。
花はありふれたピンクである。
命名の由来は、葉の特徴にあるようだ。
よく見ると、葉先が金魚の尾に似ているのだった。
ヒヤシンス
アネモネ
金魚椿