ブルーベルだけど

君にはどうでもいいことばかりだね

時の流れに final episode

2016-06-18 00:14:13 | 日記
勿論こんなかっこ良くなかったけど、僕はドタバタの就活で内定を獲得した。 あとは偶然、面接試験の最後に誓約してしまった薬剤師国家試験に合格するのみ。


単位も揃いつつあり、卒業試験のことを考えるようになった。 私立大学薬学部の人気度のバロメーターは国家試験合格率。 故に卒業試験は国家試験の倍程の難易度で構築され、卒業できれば国家試験は大丈夫 ・・・ という図式が出来上がっている。

下位校の中には卒業試験で半数以上を落とし、何とか体面を繕っているところもあるとか。 最終学年まで来て卒業できないなんて、あー恐ろしい。 そんなことを考えながら秋は過ぎ、冬を迎える。


この頃のアパートの様子は 2 年前、9 月 13 日のブログに、こう書いた。

当時住んでいたアパート “ 〇二〇谷〇荘 ” の 3 帖ほどのキッチンには、 親戚からもらった事務机を置いていた。 机上の本棚には、National の “ MAC ” っていうモノラルラジカセを置き、 ここから自作のスピーカーに繋いで、FM 放送を聴いていた。

スピーカーは 2 way で、ウーファーは高校時代に友人から「 買った当時は音の悪いソースばっかりだったんで、壊れてると勘違いしてツイーターは外して捨てちゃった 」との言い訳とともに譲り受けた CORAL 6CX-501 。

ツイーターは Technics SB-440 に使用されていたモデルを 2 年前の 8 月 10 日に書いた〇新電機の二代目にお願いしてパーツとして発注してもらったもの。 ささやかな機器だけど、流し台や冷蔵庫が机と肩を並べるコンパクトな空間には十分だった。

電灯はオレンジのプラスティック傘に 100 W の白熱電球というなかなかの雰囲気で、昼白色のスタンドを点灯しないと本も読めない(笑) そして季節は晩秋から冬へ。 狭い部屋は、秋葉原で買った赤くて小さな電気ストーブでもよく温まり、隣の 6 帖間へのアプローチをよりスリリングなものにした。

サントリー ローハイドの CM が流れていた時代。 付き合っていた女の子はいても、とにかく独りが好きだった。 性格が、吉田拓郎さんの “ 僕ひとり ” って曲の詞そのものなんだろう。

一帯が寝静まる深夜であっても FM は、イブで華やかな街の様子を伝える。 時々ぶらっと渋谷に出かけたり、〇中 という隣町の駅前通りを歩いたり。


そして大晦日に至る。


「1月3日は彼女を誘って明治神宮へ初詣に行く約束があるし、卒業試験の勉強は、初詣後にスタートするつもり」などと考えながら、「まだ早いが、どんなもんか見てみよ」ということで、薬剤師国家試験 過去問・例題集を開けてみた。

薬剤学 ・・・ まー苦手な科目だし。 生理学 ・・・ あれ、分かる問題がないぞ? なら得意な薬理だ。 薬理学 ・・・ こりゃヤバい。 僕は暫しトイレに籠り、汗を流しながら考えた。

死に物狂いで勉強して、春の卒業試験と国家試験で通すか? これを諦め、秋の卒業試験と国家試験に賭けるか? 僕は前者を選んだ。 だって、後者じゃ入社できないもん。

明明後日、待ち合わせ場所で彼女と会い、初詣に向かった。 初詣を済ませると、ALTEC A7 が設置された喫茶店でランチに付いた小さなゼリーを食べながら、僕は昨夜の決意を伝えた。 彼女も勿論、その方が良いと言う。


この日、帰宅と同時に思い切った改革を断行。 市境にある “ 〇二〇谷〇荘 ” 周辺は戸建か畑で、棟は吹きっ曝しで冷えた。 特にその冬は寒く、降雪が氷になって残り、午後 2 時頃まで水道管が凍って、水が出なかった。 なら、昼夜を逆転させよう! それは、午後 2 時に起きて勉強に注力し、翌朝 6 時に寝る、というもの。

当時のアルバムには卒業試験日へのカウントダウンや、やるべき科目、徹底すべき生活習慣(禁酒(笑))、そして卒業試験の 2 週間前には 「そろそろ昼と夜を逆にすること(夜寝て朝起きる生活に戻すこと)」、卒業試験の前日には「生死を決する前日」などと、スケジュールがカラフルに書かれた卓上カレンダーが今もスクラップされている。


もう一つ ・・・ 僕は本当の勉強をしたことがない。 勉強とはどうしたら良いのか分らない。 なら、 薬剤師国家試験 過去問・例題集を読み上げて、 聴覚で覚えてしまおう! 角部屋で遮音が不十分なアパートゆえ、僕の声は間違いなく外通路に漏れるだろう。

ということで、羞恥心を吹き飛ばすため、勉強開始時には「よし、今日もいくぞ!」と、先ず大きな声を上げることにした。

案の定、大家に家賃を払いに行くと「夜中に大声出してて気味が悪いって言ってるわよ」と注意された。 幸いにも「煩い」ではなく「気味が悪い」だったので、「勉強しているだけ、と伝えてください」とお願いし、難なきを得た。

聴覚による記憶力は想像以上に強力だ。 僕は A4 ほどの大きさの分厚く重い薬剤師国家試験 過去問・例題集 全 7 冊にびっしり書かれた恐ろしく多くの式や知識を隅から隅まで恐ろしいスピードで覚えていった。 ろくに勉強してこなかったから、脳が餓えていたのかも知れない。


たまに学校へ行くと、未だ研究を続けている後輩 (僕は1年留年している) の姿が。 「卒試の勉強してないの?」と訊くと笑顔で「やってません」と言う。 「なら」と、俄仕込みの知識を披露するため質問をしたところ、何と模範解答の他、「最近の研究では異なった説もあるので、一概には言えませんが」との注釈付きだ。

8 浪の同期もいれば、講義を聴いただけですべてを記憶し理解するひともいる。 入学当時に住んだ下宿を拠点に、友人の HBくんと一緒に飲んで遊んだ後、一緒に受けた試験で HBくんは合格点である一方、僕は赤点、という出来事を、このとき思い出していた。


ごくたまの外出は食材等生活必需品購入目的オンリー。 駅近のスーパーで見つけた冷凍ミニハンバーグは安くて美味しく、定番化してこの時期の僕を支えてくれた。 ついでに少々遠出し、入社後に住むエリアにおいて一番の繁華街となる 〇川駅周辺を流してくることも。


その年は春まで雪深かった。 訪ねてきた彼女を車で送る際、お気に入りの毛糸の手袋(大学のロッカー上に置き忘れられ、そのまま長期放置されていたもので、黒地に緑とピンクの模様が綺麗だった)を紛失した。 どうしても見つからなかったが、転居の際、車のドア下辺りで融けずに残る雪が凍った氷の中に閉じ込められている姿を発見した。


僕は卒業試験に合格した。 所属する研究室では僕の合格を、助手連中がダービーの如く「大穴が当たった!」と騒いでいた。

父親が地方市議で、JBL 4311 を左右逆相にして誇らしげに鳴らしていた同期は、まさかの不合格。 「電話したい」と言うと、助手連中は「なぜか君のこと嫌ってるみたいだったから、止めてあげて」と言われた。 「あれだけの恥を晒したのだから仕方ないな」と思った。


そして、いよいよ国家試験に臨む。 H社入社後に、研修を休んでの受験となった。

自己採点では 9 割以上できていたものの、苦手な薬事関係法規が毎年、足切り問題として活用されており、これが 3 問しかできておらず、何問で切られるのか心配だった僕は、合格発表日の早朝、発表エリアにある父母に電話をかけた。

受電した母親に新聞紙面で確認して欲しいとお願いすると、眠そうに「なに~、朝から ・・・(暫しの沈黙)・・・ 載ってるわ、〇〇の名前(方言修正)」との怠そうな声。 思わずガッツポーズをとった!

僕は ・・・ 国家試験に合格した。




フォトは Robert Plant 61歳。 〝おじいちゃん〟と言っても良い風貌に、驚く御方は少なくないかも。 これを〝老い〟と言うか〝円熟〟と捉えるか? ・・・ 僕は後者である。

あの、王子様の頃には表現できなかった曲が唄え、王子様時代の曲もなお味わいを増す。 衰えなど全く感じさせず〝進化〟を遂げる Robert Plant は、今後も目が離せない存在だ。







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