ブルーベルだけど

君にはどうでもいいことばかりだね

薬剤師の実情

2020-07-25 00:09:51 | 日記
アンサング・シンデレラ 第2話を観ました。
珍しく病院薬剤師の世界を描いた話題のドラマです。


感想は、「ドラマらしく少々大袈裟で非現実的な描写もあるけど、病院薬剤師の仕事っていいもんだな」 といったところ。

薬剤師免許を持っていながら薬剤師らしい仕事をしてこなかった僕だからこそ、余計にそう思えるのでしょう。


薬剤師は6年制への移行時に生じた薬剤師不足が未だ色濃く残る売り手市場。
従って、就職にも再就職にも困らないだけでなく、景気の影響を受けにくいエリアに身を置くことができるため、比較的安定した職種とも言えます。


一方、 ある意味閉ざされた世界であり、知らないうちに損をしてしまっている面も。

前述の通り薬剤師不足ゆえ、採用施策として初任給は30万円程度と高く設定されている反面、入社後の昇給はあまり期待できません。


以前も書きましたが、完全リタイアするまでの2年間に、古い付き合いで断り切れなかった調剤チェーン2社のコンサルをしていて、そこでは業務上必要な資料として、給与データ(個人情報をマスクした形)を提供してもらっています。


両社のデータによると、調剤部署の部長職で概ね年収800万円程度 ・・・ 大手メーカーなら課長職で1000万円超なのですが ・・・ 病院は更に低賃金であるケースさえ少なくないとのこと。

初任給20万円程度の 「薬剤師免許を必要としないメーカーに就職した同期」 に、10年後には追い付き追い越されるイメージです。


ところが経営者は 「これでも高い」 と言います。
また、「薬剤師はスペシャリスト思考なので、研修制度があれば年収500~600万円で満足している」 とも伺いました。

実際、病院薬剤師として長く勤めた兄から、転職した調剤チェーンの 「店舗異動」 について適法かどうかアドバイスを求められた際に手渡された契約書には、キャリアや年齢に合わない金額が印刷されていて驚いた、という経験があります。

勿論、恥ずかしげもなく手渡す兄に 「薄給」 という自覚など全くなかったはずです。


どうやら、勉強会好きであること、情報に疎いことが一番の原因のようで、これが 「スペシャリスト思考」 ということなのでしょう。

はっきり言って、学費や業務内容に見合った収入が得られているとは思えませんし、休日・休暇をはじめとする福利厚生もメーカーに比べ見劣りします。


いずれドラマで収入の話が取り上げられるかも知れませんが、薬剤師の美徳でもある 「スペシャリスト思考」 に加え、一般社会の情報を入手すること、ビジネスパーソンとしての知識やスキルを持つことも、現状から脱却する方法の1つでしょう。

そもそも、「薬学部を卒業して国家試験に合格したから薬剤師免許を活かす仕事に就く」 という、自分を自分で縛ってしまう窮屈な考え方自体、理解しかねるのですが、これは6年制となった大学教育の影響(成果?)もあるようです。

更に、売り手市場であること、カリキュラムや国家試験対策で忙しいこと、就職先を 「企業単位」 ではなく 「職場単位」 で捉える傾向があることから、企業研究を疎かにして、志が低く経営状態も悪い零細企業に抵抗なく入社してしまうことさえあるとか。


以上の 「薬剤師の実情」 は、病院や調剤チェーン側にとって様々な面で好都合です。
それにしても、「薬剤師の実情」 と経営側の思惑が意外なところで絶妙なマッチングを見せるとは、何とも皮肉な話です。




最後に、売り手市場の薬剤師は採用人数が限定的な病院はともかく、出店を推し進める調剤チェーンならまず不採用になることはないでしょう。

つまり、暗黙の年齢制限等はあるにせよ、貴方が余程目に余る人間でない限り、薬剤師免許所持者(新卒採用なら取得予定者)であれば採用されるのです。

言い換えれば、企業が採用しているのは 「貴方という一人の人間」 ではなく 「薬剤師免許(新卒採用なら取得予定)」 だということ。

失礼を承知で更にストレートな表現をしてしまえば 「薬剤師は人間扱いをされていない」 ということ ・・・ 実はこれこそが薬剤師の実情に潜む 「闇」 であり最大の問題点だと思うのですが、いかがでしょう?








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする