そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

漁民から漁場を奪い、農民には減反の中農地を増成し、野鳥たちの生息地を奪った天下の愚策、諫早湾干拓事業結審

2023-03-03 | 農業と食
諫早湾干拓事業は、「官僚の無謬主義」が生んだ机上論に農民と漁民を対立させて問題の本質をそらした公共事業である。
古くから洪水が頻繁にあることの対策と、狭い湾を埋め立てて水田をつくれば解決すると、長崎県知事の要請に国は取り組んだ。1952年のことである。食料問題と洪水問題を同時解決とするものであった。事業が取り組まれたのは、1989年のことである。相も変わらず暢気な公共事業は37年後に始まったのである。真っ先に漁民が不漁の原因は、干拓事業であると中止を訴えている。漁民には金を出して漁業権の放棄させたりしたが、海苔が作れないと佐賀地裁に提訴、佐賀地裁は工事中止の仮処分を命じた。国は控訴し福岡高裁は仮処分を取り消した。
農地の淡水化のために設けられた、潮受け堤防の開門をめぐっては、開門を命じる命じないが幾度も繰り返されている。今日(3日)最高裁は開門を求めた漁業者の訴えを退ける判決を出し結審した。
野村哲郎農相はこの最高裁決定を巡って、開門を命じた福岡高裁判決を上告しなかった民主党政権を長引いた原因と批判したが、事業への反省も何もない。
この事業は防災で多少の意味あったかもしれないが(現在の技術なら環境に配慮した方法も可能)、減反政策を尻目に農地拡大と干拓を進め、干潟と海の環境を大きく破壊した。水田は畑作地に変更したが、干潟を失って海が浄化されなくなったことや、野鳥をはじめとする生物の棲みかを奪ったことなど何ら考慮されていない。野生生物にも環境にも、国を訴える権利が認められていないからである。
幾度も行われた訴訟は、潮受け堤防開門の是非だけである。事業そのものが間違っていたという訴訟はない。机上論で制作された官僚の論文は無謬主義で貫かれ、公共事業は止まらない典型である。事業そのものへの反省も、批判すらない。
ところで国家最大の公共事業は、「戦争」である。


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