そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

スギ花粉症は林野行政の誤り、木材の自由化からから生まれた

2023-03-04 | 環境保護と循環
私の長兄は戦時教育を受けている。その兄が友人たちと盛んに歌っていたのが、「お山の杉の子」である。♪むかし、むかし、そのむかし~ と歌い出すテンポのいい歌である。杉の子起きなさいと、小さくても頑張れと言うような内容であるが、これは杉の植林の歌である。
成長に速い杉は手っ取り早い造林になると思ったのであろうが、昭和10年代は全国一斉に杉の植林が始まった。
針葉樹の杉は根の張りが悪く、保水力もないが成長が早く手がかからない。直木で市場性も高く、国策を受けて最も多く植林された。伝統的な植林の教えを無視して山の頂上や水源などにも杉は広く植林された。

終戦後真っ先にGHQが日本に行った政策が農地解放である。しかし山林は解放されず、大地主が日本の山林のほとんどが手放すことがなかった。
こうした地主たちはほとんどが地方の有力者として治めていた。終戦直後の建築木材不足を背景に1051年(昭和26年)丸太に限って関税を撤廃した。そして、1964年(昭和39年)に木材を自由化し関税を撤廃したのである。いずれ農産物も自由化するための先駆として位置付けたのだろう。
木材自給率はみるみる下がり(上の表参照)、経済大国日本は世界中から木材を輸入した。熱帯雨林の破壊にも、タイガの針葉樹の伐採にも大いに貢献した。今世紀になり若干上昇しているのは、燃料向けの廃材が増えたためである。
その一方で日本の山林は荒れ放題となった。伐採適期を迎えて風媒花の杉は、特段微小な花粉を空気中にまき散らす。山では土砂崩れを引き起こす。
木材の自由化は、世界の熱帯雨林を破壊し、国内の山林を破壊し、花粉を大量のまき散らした。
木の持つ環境保全、即ち水の浄化や大気の浄化、二酸化炭素を固定し酸素を放出する機能など全く考えも及ばず、金だけで評価する自給化、関税の撤廃はこのような現実を引き起こすのである。
花粉症はスギだけではないが、花粉症の大きな引き金になる。伝統的に作られている、木材や米など農産物を価格だけで評価し、自由化することなどあってはならない。スギ花粉症は気の毒であるが、自由化の教訓だと肝に銘じてほしいものである。


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