そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

循環や環境を無視した大型化への農業政策の失態を、さらに繰り返そうとする

2024-04-16 | 農業と食

日本の農業従事者の平均年齢が、68.7歳という衝撃的な数字は、このままでは後10年もすれば農村・農業は崩壊することを意味している。このことは、1961年の「農業基本法」と1999年の「食料・農業・農村基本法」は失敗だったことを如実に物語っているのである。その検証がなければ先はない。
実体二、三次産業の高度経済成長に伴走しようとし、一次産業の本質を見失ったからに他ならない。農民にコメを生産しなければ金を出すとか、土地生産性には限度があるのに、労働生産性当たりの生産額に奔走した結果、勤勉な農民から労働意欲を奪い、化学肥料や農薬に大きく依存し、環境への負荷を高める農業を助成する結果になった。一方で農村から労働力を奪って都会へと大きな流れを加速させた。
日本農業は生産性が低く、土地が狭く規模が零細であるという妄信から、規模拡大を奨励したのである。
その結果として、食料自給率は基本法を作る度に下がり続けたのである。経済という商工業の論理で、農業を叱咤激励してみたが、日本の補助金は硬直した制度で、農家の自由度が全くない。
東京大学の鈴木宣弘氏の指摘するように、農業を金(補助金)で指図する、農民は非効率であるという考え方から脱却するべきである。コメにしろ牛乳にしろ、生産過剰となれば廃棄や転作を奨励したり、牛を淘汰すれば金を出す。これでは農業の経営の転換を自在にできはしない。EU諸国のように生産スタイルには手を付けずに、国が余剰精査物を買い取って、途上国などに捌けばいいのである。
こんな単純なことに日本が取り組めないのは、補助金が農家に回っているようで実際には、周辺産業が潤うしシステムになって、周辺産業が潤い政治に直結しているからである。
更に国が推奨する大型農業は、生態系を無視し化学肥料や農薬、畜産では輸入穀物を大量に投与する、大型機械を大量に操り、時には遺伝子組み換え作物にまで取り組む。
こうした国の奨励する大型農業は、大量のCO2を排出し、大量のエネルギーを消費し、大気も地下水など環境悪化に貢献するシステムでもある。
日本の少子高齢化は均等には起きてはいない。高度成長期に労働者を大量に送り込んだ僻地、農村が先行して起きている。限界集落の多くはすでに消滅集落へとなっている。
流石に国もあわてて、25年前の基本法を”検証”する姿勢を見せているが、時遅しの感もなくはないが、改正案が秋には国家にだされる見込みである。見直し案には、底流に食料自給の考えや、環境問題に取り組む姿勢も希薄である一方、IT化やスマート農業や規模拡大や、経済効率の考えが底流にある。
軍事拡大への勢いと対比される消極的な農業政策では、地域の疲弊も食料自給も上がるとは決して思えない。
この記事は、4月16日の鈴木先生の農業新聞記事である

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