天高く、馬肥ゆる秋。
まらが高く天を突き、馬並みに肥大する、そんな秋場所がいよいよ開幕する。
まず注目は先場所全勝優勝で新大関となった摩羅の川。まらずもう新世代の旗手は、「今場所も連覇」と意欲的。つまらないと評されていた取り口も深みが増し、報告文のうまさ、嫁のあしらいかたのうまさに評価も高まっている。過去まらずもう幕内で連覇を成し遂げた者は皆無。新大関お披露目の場所で快挙を達成し、即綱獲りになだれこめるか。東北の復興を願い、岩手からまらを奮い立たせて半年。今場所も期待したい。
摩羅の川の昇進で今場所から１横綱３大関時代へと突入したが、横綱・大関の顔ぶれを変える流れはまだまだ止まらない。今場所も綱獲り・大関獲りを賭ける力士がおり、まらに熱のこもった土俵が展開されそうだ。綱獲りを賭けるは型破りの技巧派力士・毛呂乃。２場所続けて１４勝と成績は申し分なく、あと横綱に必要なのは優勝実績のみ。今年初場所には全勝優勝を決めており、実力は誰もが認めるところ。その初場所の優勝と引き換えに最愛のダッチハズバンド・ダニー浜田を失い、それ以降優勝から遠ざかってはいるが、先場所はダッチからの脱却・幅広い新技の開発を見せ、通算１００勝、勃起師範認定、場所後には大日本毛呂乃教布教と勢いに乗っている。東西に横綱がそろう番付を期待したい。
さらに大関を目指す汚痔の山。先場所３５連勝の大記録を打ち立てた実力者、十両昇進以来、十両、平幕、小結をすべて１場所という最速ペースで番付を駆け上がっての新関脇。関脇も１場所で通過して大関の栄冠をつかめるか。自身「大関は通過点、一気に横綱へ」「現横綱・雲虎に引導を渡す」と息巻いており、上位陣にとっては怖い存在になってきた。昇進ラインは12～13勝程度、これまで15番取って全勝2回、最低成績で13勝とあって、プレッシャーにつぶされさえしなければ昇進の可能性は高い。だが誰よりも勝負へのこだわりを見せる男だけに、昇進ラインを越えるだけでは満足するまい。新鋭だけに当然であるのだが、役力士で幕内優勝していないのは汚痔の山だけ。悲願の初優勝に向けて虎視眈々とまらを研いでいる。
これら上を目指す新勢力の突き上げにより、旧勢力には厳しい場所になりそうだ。まらずもう草創期から幕内を支えてきた横綱・雲虎は横綱昇進後いまだ優勝できず、先場所も早々に優勝戦線から脱落。終盤、見苦しい取り直しの相撲もあり、非難を浴びている。「横綱になれたのは層が薄い時期に入ったからじゃないか？今の力士たちと戦っても横綱たりえるのか？」と厳しい声も寄せられる。今年に入って優勝なし、そろそろ進退問題にも発展しかねない。今場所こそ優勝は至上命題といえよう。幸い場所前のけいこでは好調そのもの。だが同時に宗教洗脳騒動が巻き起こっている。場所前のインタビューでもわかるとおり、雲虎は不調に悩んでいたせいか、新興宗教、大日本毛呂乃教に入信、信仰の日々を送っている模様。信教の自由は保障されているとはいえ、雲虎の行動に不安を感じる関係者は少なくない。
もう一人の古参大関・玉椿はついにカド番、今場所負け越せば大関陥落となる。場所前のけいこでも調子が上がらず、年齢からくる衰えも指摘される中での厳しい土俵となりそうだ。だがここはベテラン、いままでも場所前調子が上がらずとも、場所に入ればそれなりの成績を残してきた。一度は幕内最高優勝の栄誉も極めた力士だけに、復活を期待したい。
新大関摩羅の川・綱獲り毛呂乃・大関獲り汚痔の山と、さらに上の地位を目指す力士たちと、今の地位を死守せねばならない横綱雲虎・大関玉椿。どうしても欲しいものがある者の方がが強いのか、あるいはどうしても守りたいものがある者の方が強いのか。答えは2週間後に明らかになる。
上位陣以外でも、幕内に定着した蒼狼・月乃猫はそれぞれ三役・２ケタ勝利をめざし、今場所も元気。モンゴルの蒼狼は暑さが薄らいできたことがなによりの好条件。一方の月乃猫も、場所前仙台に出稽古、実戦を積んでおり期待できる。さらには新入幕の飛埒王。型を持っている力士は強いが、飛埒王はその典型。パンツをはかなければ勝てるというノーパン大王、9月の新潟でも得意の型に持ちこめるか。さらに今場所は新十両も注目。「人気の池男・実力の家満」と並び称されるライバル2名が同時昇進。ファン層も二分しており、池男王子のサービス精神・華やかな土俵は女性ファンをとりこにしている。初の15連戦、ここのところ実戦から遠ざかっているなど、不安要因はないとはいえないが、人気力士がついに関取となり、どのような相撲を見せてくれるのか。一方の家満はむしろ男性のオールドファンに注目される実力派。摩羅の川にならぶ、理論上の最速ペースで十両昇進を決めた新鋭で、十両昇進時の通算成績でも当時の摩羅の川を1勝上回る。現在24連勝中、11日目まで連勝を続ければ、連勝記録「３５」を更新することになる。2場所連続で幕下優勝した時にはインタビュー拒否、記者泣かせで知られるが、これも大力士の証か、大相撲の横綱・貴乃花が上がってきたときのインタビューを思い出させる。まだ底を見せていない末恐ろしい大器、今場所から関取としてより注目を浴びるようになるだけに、魅せるすもうを期待したい。
番付上位の攻防に加え、若手の躍進も著しいまらずもう秋場所はあすいよいよ初日。
どうぞご期待ください。
