筒井康隆 (新潮文庫)
《あらすじ》
精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者/サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する!
《この一文》
”「おかしな夢をいっぱい見るよ」
「夢はいっぱい見た方がいいのよ。その方があきらかに頭がよくなるの。面白いひとは面白い夢をいっぱい見るわ。つまらないひとはつまんない夢しか見ないの。」 ”
冬にアニメ版の映画『
パプリカ』を観にいってからずっと、「原作も読まねば」と思っていたのに放置。その後半年以上経過、一緒に映画を観にいってくださったお友達のKさん(筒井ファン)とお会いするたびに「ところで、あれ読んだ?」と聞かれつづけても、まだ放置。…そうだ、読まなきゃ、そろそろ……と微妙に焦っていたら、とうとうKさんが文庫の『パプリカ』をくださいました。
いやもう、ほんとスミマセン; たいへん面白かったです。ありがとうございました!
読み始めると、いつものことながら物語は読みやすくしかも大変に盛り上がるので、一息に読んでしまえます。興奮しました。
別に比較するつもりもなかったのですが、読んでみると、アニメ版は時間やその他もろもろの制約があるだろう上で、かなり原作を忠実に再現していたことがわかります。とは言え、やはり一般公開の劇場版とするからには、原作ではわりと重要な部分である性的な部分はごっそり除かれていて、そこは少し残念。あの人間関係を説明するためには、けっこう重要な部分だと思うのですがねえ。
筒井先生の作品ではときどき見受けられる同性愛とか超絶美女との交わりというのは、露骨な性描写が苦手な私でも抵抗なく受け入れられます。肉欲そのものというよりは、それによって訴えているある種の美意識のほうが強いように思えるからかもしれません。
とにかく、今回も主人公が美しいんです。『七瀬ふたたび』などもそうでしたが、常軌を逸した美しさに加えて知性も備えているという「あってはならない存在」の千葉敦子。あまりに完璧、「美人なのを利用していて、ちょっとずるいかも」と自覚しているところも含めて、完璧。なんてこった、手も足も出ません。圧倒的に魅力的。どきどき。パプリカに変身する場面では、ちょっと笑えましたが。意外と地道なリアル過ぎる変身方法、ぷぷっ。
物語にも娯楽性が満載で、かなり引き込まれます。夢と現実がごちゃまぜになるあたりの場面は非常に迫力がありました。面白い。
しかし、結末については、実を言うと……よく分からなかった。あれってどういうことですか?! なんか意味がありそうなのは感じたのですが、分かるような分からないような…。《ラジオ・クラブ》の玖珂さんが重要な役割であるのは分かりました。(そう言えば、アニメ版では筒井先生ご本人がこの玖珂さんの声をなさっていた気がする)
えーと、つまり、夢と現実は複雑に繋がりあっているんですよ。
面白かったです。