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『あのこにもらった音楽』/『かわたれの街』

2009年01月25日 | 読書日記ー漫画

勝田 文(白泉社)


お名前だけは知っていたけれども、読んだことはなかった勝田文(ぶん)さんの漫画を読んでみました。珍しくジャケ買い。でも、大当たりでした。面白い。

読んだのは、『あのこにもらった音楽』と『かわたれの街』の2冊。『あのこに~』の方は第2巻もあるそうですが、見当たらなかったので第1巻のみを購入してあります。でも、『あのこに~』は連作短編なので、1巻だけ読んでも大丈夫でした。続きが死ぬほど気になるということはない。もちろん面白かったので、2巻も買いますけどね。

第一印象としては、繊細かつ素朴、大きな事件などに頼らずともしっかり成立する落ち着いた日常生活を淡々と魅力的に描いている感じです。とくに「淡々と」しているところが目立つでしょうか。この感じはいかにも白泉社の漫画らしいと言えばそうですが、小林じんこさんの『風呂上がりの夜空に』の雰囲気もふと思い浮かびました。大筋のストーリー以外のところでも着実に別の脇役である人々の物語が進行しているあたりなどが、この人のセンスと力量を感じさせます。

『あのこにもらった音楽』は、幼い頃に母を亡くし、梅木旅館で育てられた主人公の少女 梅子と、旅館の一人息子でかつては将来有望のピアニストとうたわれたこともある蔵之介との、いちおうラブロマンス。でも、あまり恋愛要素はなく、どちらかというと音楽にまつわるエピソードが次々とほのぼのとくり出されるところが見どころです。

『かわたれの街』は、豆腐屋の娘 木菜(きな)は、地元の公民館で料理教室をひらいているノブオに想いを寄せるのだが、というお話。やはり恋愛要素は薄く、料理や食材などにまつわるエピソードがこれまたほのぼの淡々とくり出されます。

いずれの作品も、主人公である少女たちの揺るぎない健全さに清々しさを覚えます。私が白泉社らしいと感じるのも、こういうところです。
梅子も木菜も、大人しいんだけれど逞しい。刻々と移り変わっていく周囲の環境に、すっと入っていってキリっとしています。一方、彼女たちが好きになるのはなぜかちょっとダメな男なのですが、この世界ではちょっとダメでもいいみたいです。ダメなやつにも優しい空気があります。私はこの人の漫画のそういうところに惹かれました。


どちらかというと大袈裟なほどに激しく、愛か死か、君は光で僕は影、逆境とは! みたいな内容の漫画を好む私ですが、たまにはこういうのもいいなあと思いました。世の中は十分穏やかで幸福に溢れている、ように思えてくるのです。
こういう漫画もあるんだから、漫画ってほんとうに奥深いよなあとあらためてしみじみ感じました。

それにしても、また部屋に漫画が増える! ああ!