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もやもや日記

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『「ニッポン社会」入門』

2009年01月24日 | 読書日記ー実用

英国人記者の抱腹レポート
コリン・ジョイス 谷岡健彦訳(生活人新書 NHK出版)



《内容》
日本社会について手っ取り早く学びたければ、近くのプールに行ってみることだ。規則と清潔さを愛し、我慢強く、大きな集団の悪事に寛容な国民性が理解できるはずだから。過剰なまでに礼儀正しく親切な人々、思ったより簡単で奥深い日本語、ガイドブックには載っていない名所の数々……。14年間日本に暮らす英紙記者が無類のユーモアを交えて綴る、意外な発見に満ちた日本案内。

《この一文》
“ 電車の中でふたり連れが立っている。座席がひとつ空く。おたがい譲り合った後に、ようやくひとりが席につくと、必ずその人は立っている人の荷物を持ってやろうと手を差し出す。こんな心温まる小さな親切は、ぼくは日本以外のどの国でも見たことがない。
 ああ、これこそ日本。 
  ―――「日本以外では「決して」見られない光景」より ”


某所でしばしばおすすめの本として紹介されていたので、読んでみました。かなり面白かったです。2度ほど読み返しました。異常に読みやすくて、スラスラと小一時間ほどで読んでしまえます。おすすめです。

さて、私は以前から、日本語を話さない人の耳には日本語はどんなふうに響くのかというのが気になっていたのですが、コリンさんはそれについてちゃんと書いてくれていました。

「言葉が耳から「滑り落ちてゆく」ような感じがしたのを覚えている。頭の中にしっかり言葉をつなぎ止めておけないし、どこでひとつの単語が終わり、どこから次の単語が始まるのかもわからなかった」そうです。

なるほど。でもそう言えば、私には英語およびその他の言語もそんな感じに聞こえるな……。外国語を学ぶってそういうものなのかもしれないですね。
しかし日本語表記の難しさについては、やはり難しいらしいことがうかがえます。日本人の私ですら、時々読み書きが満足にできなくて硬直することがありますし。特に、咄嗟にごく簡単な漢字も書けないという局面がありすぎて、困っています。

コリン・ジョイスさんは『デイリー・テレグラフ』紙の東京特派員だそうで、1992年に日本語を学ぶために神戸へやってきたそうです。
この本の面白いところは、外国人から見た日本がどのくらい奇妙で、魅力的であるかという賞賛のみならず、理解しがたく抵抗感さえ感じる日本人の「和」という概念、巨悪に対する理不尽なほどの服従的態度などなど、批判的な意見もしっかりと述べられているところでしょう。
私が普段なにげなく日本で暮らしていると気が付かないような様々なことについて、率直にユーモラスに語られていて、興味深く読めました。


全体的にユーモアと日本への愛着が感じられて、楽しい気持ちになります。一方で厳しい意見も多々あって参考にもなりますが、日本人の私にはあまり理解できないイギリス人の考え方にも触れられて、逆にイギリス人というのがどういう人たちなのかに興味が湧いてきます。歩きながらものを食べることがなぜいけないのかなんてことは、私はついぞ考えたこともありませんでしたよ。
こういうのは面白い。

笑いどころはたくさんありましたが、私が特に爆笑したのはここ。

“(イギリスから友人がやってきたら)浅草に連れていって、黄金のオブジェを頂くアサヒビールの本部ビルを笑いながら指差し、「このビル、地元の子供たちに何と呼ばれていると思う?」と尋ねてみよう。その人が予想どおりの答えをしたら、表情を硬くして「みんな炎のビルと呼んでいるけどね」と言おう。
  ―――「イギリス人をからかおう」 より ”

このあたりは、私にはイギリス人らしいユーモアだなあと思いました(なんとなく)。アッハッハ、笑える!


社会生活にはどこであろうと、善いところと悪いところがあって当然だと私は考えます(悪いことが悪いままでいい、という意味ではありません)。しかしその内側に暮らしているとうっかり見逃してしまいそうな部分を、新しい目で少しばかり見つめ直せたような気がします。良書。