旅限無(りょげむ)

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ムンバイのテロ事件 其の壱

2008-11-30 15:19:52 | 外交・情勢(アジア)
■とうとう起こってしまったインドでの大規模同時多発テロ事件。米国に誕生したオバマ新大統領の政治思想を辿って行くとガンジーの言行に行き着くのだそうですが、それが本当かどうかは就任式での演説と実際の政治手法を見るまでは真偽のほどは分かりません。しかし、米国民が大いなる疑問と嫌悪感にさいなまれている「ブッシュの戦争」を終わらせるために、期限を切ってイラクからの撤退を公約する一方で、アフガニスタンこそが「主戦場だ!」と新たな戦争を公言したのもオバマ新大統領で、それが今回起こったテロの原因だという説もあるようです。
 
■間も無く荷物をまとめてホワイトハウスを去るブッシュ現大統領も、自分で撒いた種だからと何やら急いで刈り取り作業をしている様子。一説にはイラクで効果があったからと、せっかく武装解除したアフガニスタンの元軍閥に武器を渡して治安維持に役立てようと考えているとか……。米国が手を出して去った後には武器の山が残るそうですから、それが巡り巡って何処かで起こるテロ事件に使われたりするのでしょうなあ。大規模な景気対策を打ち出さねばならない米国政府ではありますが、間違っても軍需産業に梃入れして「通常兵器の拡散」などを起こさないように祈るばかりであります。

■さてさて、オバマ新大統領に対する宣戦布告とも言えそうな、インドのムンバイで起こったテロ事件の話です。


インド軍特殊部隊は29日、武装グループが立てこもり最後まで抵抗を続けたタージマハル・ホテルを制圧。地元メディアが「インドの9・11(米国同時多発テロ)」と呼ぶイスラム武装グループによるとみられるムンバイの同時多発テロ事件は、ひとまず幕を閉じた。だがタージホテル内には人質とみられる多数の遺体が散乱。地元住民は「テロリストがまた襲ってくるのではないか」と不安を募らせる。綿密に準備を重ねたうえで、重武装で突入し人質を取るという、インドのテロでは過去に例のない凶行は、同国最大の商都ムンバイに深い傷跡を残した。

■自爆を含む爆弾テロも恐ろしいものですが、人が人に銃口を向けて機関銃を乱射したり手榴弾を投げつける地獄絵図の方が市民社会を破壊する効果は抜群であります。日常生活の場が戦場になるのですから、自分の生活圏を見回してみれば便利で快適な場所は何処も襲われたら危険な場所ばかりです。


……特殊部隊は突入した部屋で30人の遺体を発見した。武装グループは、遺体の口の中に手投げ弾を押し込み、動かすと爆発するなどの罠を仕掛けており、遺体搬出に手間取っている。グループはホテル内に計230発の手投げ弾を持ち込み、うち80発程度が不発のまま残った。部隊はこの処理にも追われている。

■朝鮮戦争でもヴェトナム戦争でも遺体を利用したトラップ爆弾が多用されたそうですが、21世紀の世界でも同じ事が起こるとは!相当な訓練を受けた若者たちが送り込まれて来たのでしょうなあ。


29日未明から始まった最後の掃討作戦で、部隊は一部屋ずつ安全を確認しながら武装グループに接近。だが自動小銃AK47と手投げ弾、拳銃で武装したグループの抵抗は予想以上に激しかった。午前7時過ぎ、部隊が最後の突入を図った。ホテルは下層階が猛烈な炎に包まれ、爆発音や銃声が鳴り響く。だが30分ほどでそれも収まり、武装グループ全員の殺害、ホテルの完全制圧が宣言された。

■アフガニスタンとパキスタンの国境地帯ではロシア製突撃銃AK47を自在に扱える優秀な武器職人がたくさん居るとも言われていますし、丈夫で故障が少なく長持ちの上に手入れが簡単な構造を持つ銃ですから、多くの国がコピー製品を造っているようです。日本でもオウム真理教が山梨県内の加工業者の工場を買い取って、この銃を大量生産しようとしましたから、他人事ではありません。


……事件の解決を知り、ホテル前の広場には多くの市民が集まり始めた。中には、待機する特殊部隊の隊員に、バラの花束を渡したり、「ヒーローだ」と握手を求める市民の姿も見られた。近くに住むアッバスさん(50)は「住民はテロリストがまた、襲撃するのではないか恐れている。街ではそういううわさが広がっている」と話した。
11月29日 毎日新聞

■人質事件と言っても、相手がテロ集団ならば強襲して殲滅する以外に解決策はないとインド政府は決めていたようですなあ。あまりにも具体的な仮想敵国を持っている国ですから、テロリストの要求を聞いて交渉するなどという悠長な事は最初から選択肢の中に無いようです。インドでこの種の事件に巻き込まれたら自力で逃げ出すしか方法がないようです。まあ、似たような事をする国は他にも有るのですが……。

同時多発テロの直前 

2008-11-29 11:07:21 | 外交・情勢(アジア)
■インドのムンバイを襲った大規模なテロ攻撃に関して、全容解明には時間がかかるのは当然とはいえ、驚くほど多くの情報分析が展開されているようです。それなりの軍隊と情報機関を持っている国々は、しっかり「対テロ戦争」に対処している事を再認識させられます。その点、日本のマスコミが長し続けている国際ニュースの素朴さと幼稚さが際立ってしまうのは残念でありますなあ。何も知らずに平和に暮らしていられるのならそれでも良いのでしょうが……。

■ムンバイのテロに関しては改めて情報を整理してみることにして、大事件が発生した日に、チャイナの新聞が現場となっているムンバイ市内で数日前に開催された小さなイベントについて、何事かを狙ったかのように報道しています。これから世界中の協力を取り付けねばならないインドには、「敵」を名指しして事態をややこしくしない工夫と自制心を持って欲しいところですし、特にカシミール問題が軍事衝突に発展しないように「当事国」と予防的な折衝もしてほしい時なのですが……。


2008年11月、インド・ムンバイ市でのチャリティーイベントに出席した有名女優アイシュワリヤー・ラーイさんは「中国は感謝を知らない国」と発言した。26日、環球時報が伝えた。

■「感謝を知らない国」であることは、日本人の多くが知っている事ですが、1人の映画女優のコメントを取り上げるマメマメしい努力と執念には恐れ入りますなあ。まるでムンバイが大規模テロに襲われたのは、チャイナを侮辱したから天罰を受けたのだ!とでも言いたいのかも知れません。


ラーイさんは今後10~20年以内にインドが米国に次ぐ世界第2の経済大国になると預言した。その後、中国の急速な経済発展がインドに与える脅威について質問されたところ、「中国のことについてはよく知らないが」と前置きしたうえで、短期的に中国がインドに追いつくことはないだろうとの見方を示した。そして「わたしは中国に行きたいとは思いません。感謝を知らない国だからです」とコメントしている。

■経済の一大拠点となっているムンバイが襲われ、世界中の企業が恐怖におののいて資本を引き上げるパニックが始まるとの憶測も出ているようですが、出張を見合わせる企業やビジネスの拠点を撤去する会社も現われているという話もありまうから、「世界第2位」はチャイナでなくインドだ!という皮算用を嘲笑するには絶好のタイミングだと誰かさんが考えて、ちょっと古いネタを引っ張り出したとしか思えませんなあ。他人の不幸をこのように利用するのは如何なものでしょう?


インドでは、中国が台湾にかわって国連に加盟できたこと、安保理常任理事国になれたことはインドの支持があったためと信じる人々が多いだけに、領土問題をはじめ両国関係がさまざまな問題を抱える現状に不満を抱く人が多いという。

■周恩来の『平和五原則』などが一時は日本の教科書にも麗々しく取り上げられていたものですが、相互の「内政不干渉」を謳い上げておいてチベット全土を占領してそれを正当化するための道具だったと分かった時には遅かったのでした。チベットを併合したチャイナはカシミール地方と国境を接する広大な領土を持つ国になったのであります。一応は新しい国境に圧力を加えて牽制したインドでしたが、相手は本気で戦争しても構わないぞ!という迫力がありましたから、インドはチベットを見棄ててチャイナに譲歩する苦渋の選択をせざるを得なかったとか……。やっぱり強大な軍事力と核兵器が有ると、外交面での有効利用が出来るものであります。そしてインドも核武装し、それに対抗するパキスタンをチャイナが助けて核武装……。


ラーイさんは1973年生まれの35歳。1994年にミスワールド選出後、インド映画界のトップ女優に上り詰め、「Dhoom2」などのヒット映画に出演している。最新作はハリウッド映画で、メリル・ストリープと共演すると伝えられている。ラーイさんの発言は中国のメディアに大きく取り上げられただけに、中国市民の反発を呼ぶことは必至と見られる。
11月27日 Record China

■本当に「反発」を呼ぶのなら、それはそれで見物であります。「感謝を知らない国」と言われて反論するなら、感謝をした「実績」を並べて見せねば話になりませんからなあ。日本政府は逸早くインド政府への支援を約束しましたが、テロに負けずにインドが穏やかに踏ん張ってくれることを願わずにはいられません。「世界第2位」の座を争っているうちに軍事衝突など起きては困りますからなあ。
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ソマリア沖海戦 其の七

2008-11-27 16:49:14 | 外交・世界情勢全般
■案の定、連休明けに件の「提言」を受けて政界が波だって来たようなのですが、所詮は大小の波が立つだけでその内「解散総選挙」に関する駆け引きの材料にされてもたもたしている間にソマリア沖海戦はまったく別の段階に進んでしまうかも知れません。

……国際海事局によるとソマリア周辺海域の08年の海賊被害は19日現在94件で、被害は拡大する一方。海上交通の要衝で日本船も標的になったことから、自衛隊派遣論が語られるようになった。政府内で積極的なのは外務省。米英など十数カ国が警戒活動を展開していることを踏まえ、外務省幹部は「日本人の生命、財産が脅かされている。他国に頼っていていいのか」と強調する。

■「他国に頼っていて」良いはずはありません。出来れば困っている船を助けてあげるくらいの地位を得なければならない日本が列島の東西南北から「出て来るな!」と押さえ込まれ続けて幾星霜……。東と南からタガをはめていた米国でしたが、家庭の事情で自分の手下としてなら「少し出て来てよい」と言い出したようですが、それでも大日本帝国の連合艦隊や機動部隊の雄姿などは絶対に見たくないでしょう。

■北と西には自分の事は棚に上げて「軍事大国になるな!」と箸の上げ下ろしにも文句をつける大きな国と小さ目の国が並んでおりまして、頭を下げてカネを払うことが外交だと勘違いした政治家が大活躍してくれたお蔭で、拉致問題も領土問題も有って無きが如き外交政策が積み重ねられて参りました。航空自衛隊の次に外務省が政府見解を乗り越えようとするのか?「外交の麻生」を自認するコロコロ首相を上手に煽てれば総辞職する前に瓢箪から駒が転がり出るかも?


根拠法でまず検討されたのが、防衛出動、治安出動と並ぶ実力行使である海上警備行動(自衛隊法82条)。しかし、過去に発動されたのは日本の領海侵犯に対する2回しかないため、防衛省には「遠洋での長期活動の根拠としては無理がある」との見方が強い。

■「前例遵守」という鉄壁の守りと法制局の解釈という金科玉条の縛りがありますから、現行の法律を拡大解釈して海賊退治に出掛けるのは無理でしょう。奇跡的に針の穴を通す法解釈に成功しても、「警備行動」でハイテク重武装パイレーツに対抗するのは苦しいでしょうなあ。日本の領海を出てしまったら、不審船であろうと攻撃型原子力潜水艦であろうと、ぴたりと追尾を止めて回れ右して帰還しなければならなかった前例を考えれば、インド洋を横断してソマリア沖に徹するのは月面に着陸するようりも難しいでしょうなあ。


……自民党の中谷元・元防衛庁長官や民主党の長島昭久衆院議員ら超党派議員連盟は、ソマリア周辺海域の活動に絞った特別措置法の策定の検討に着手した。しかし、特措法で対応するにしても、憲法が禁じる海外での武力行使との兼ね合いは微妙。海賊はロケット砲などで武装しており、正当防衛や緊急避難の範囲を超える武器使用の是非が論議を呼ぶのは必至だ。また、無政府状態のソマリア沖で海賊とテロリストとを即座に判別するのは難しく、武器使用がすぐに違憲状態に陥る可能性がある。

■「専守防衛」とは滅多打ちに遭っても絶対に手を出さないという意味ですから、僅かに残されている自衛のための最低限度の反撃をする権利を使う前に致命的な打撃を受けているのが今の戦争であります。まさか空手や剣術みたいに当たる直前の寸止めみたいな攻撃をしてくれる御奇特な敵が現われれば、ミサイルが着弾する直前に反撃するチャンスもあるのでしょうが、それは冗談のレベルさえ超えている馬鹿馬鹿しい話でしかありません。それなのに似たような議論を繰り返すのが日本の国会という場所なのですなあ。


政治情勢でもハードルは高い。国会が対決ムードの中、自民、民主両党が折り合えるかは未知数で、公明党内には慎重な声が根強いからだ。
11月25日 毎日新聞

■国連の御旗を立てられるなら、アフガニスタンでの武力行使も許される!と民主党の小沢代表は考えているそうですから、シーレーン防衛を国連が議決すれば何の問題も残らないことになるでしょう。公明党は「平和と福祉の党」だそうですから、こういう個別具体的な事態に対する党としての「平和」をじっくり語って欲しいものであります。まあ、社民党の神憑り的抽象論も話のツマとして添えてもらっても結構ですが……。

麻生総理の健康と社会常識 其の弐

2008-11-27 16:37:27 | 政治
首相は19日に行われた全国知事会議で「医師には社会的な常識がかなり欠落している人が多い」と発言し、謝罪に追い込まれたばかり。
11月26日 読売新聞

■『週刊新潮』の最新号には「『常識欠けた医者が多い』は患者の常識」という刺激的な記事が掲載されております。医師免許を持っている人が揃って仁術を体現した名医になるとは限りませんし、誰でも知っている「藪医者」という言葉が存在するのですから、いろいろと問題がある医師は間違いなく存在します。それが麻生コロコロ首相がざっくりと「多い」という言い方をして良いかどうかは分かりませんが……。それに、この発言の前には自分が「病院を経営しているから言うのではないが」という、もしかしたら政治家としては不穏当な意味になるかも知れない一言が置かれていたはずです。麻生グループの系列病院にだけ「多い」のかも?あるいは九州福岡の選挙区に特に「多い」という意味かも知れません。

■麻生コロコロ首相は自分が急病にでもなったら何処の病院に駆け込むのでしょう?きっとそこには「社会的常識」がまったく欠けていない医者が群を成しているのでしょうから、マスコミの方には是非とも詳細な取材を願いたいものであります。


山梨県富士河口湖町の健康科学大などを運営する学校法人第一藍野学院(小山英夫理事長)で、2005年度に貸付金として計上された2億円が使途不明になっている……。文部科学省や大学関係者によると、法人は05年度の会計で2億円を関係先へ貸し付けたことになっていたが、06年度以降の会計に計上されず、使途不明状態になっている。9月に文科省から調査の指導を受け、法人は今月、弁護士や公認会計士ら9人による調査委員会を設置。貸付金の実態や資金の流れについて関係者から事情を聞く方針という。
11月27日 読売新聞

■「健康科学大学」という学校は、理学療法学科・福祉心理学科・作業療法学科という三つの学科を設けていて、卒業すると理学療法士・作業療法士・社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験の受験資格が得られるのだそうです。広い意味で医療に従事する人材を育成している学校ということになりますが、英語名が「HEALTH SCIENCE UNIVERSITY」というのは、なかなか思い切ったものを感じます。カリキュラムは4年で卒業するように組まれているようですから、4年制大学の分類に入るということなのでしょう。平成20年5月1日現在で1,081名の学生が学んでいるそうです。

■この学校を卒業して国家試験に合格した人達は各地の病院や福祉施設などで活躍しているのでしょうから、生徒の素質に問題があるという話ではありません。しかし、大学沿革を見ると明治時代に岩手県で裁縫塾を開いて以来、徐々に南下して関東に「事業」を展開してコンピュータ技術を経て医療分野にも進出!というユニークな歴史を重ねている様子から、経営者は相当のやり手のような印象を受けますなあ。消えてしまった2億円を追って行くと「創業者一族」だの「組織内企業」だの、定番のお手盛り融資の実態が出て来るような予感がします。

■某仏教系の私立大学は文科省から莫大な助成金を受け取りながらデリバティブの博打にカネを注ぎ込んで100億円を越える焦げ付きを出しているのに比べれば、2億円は微々たるものだと言えそうですが、医療関係者を育てる教育機関が「社会常識に欠ける」ような犯罪行為に手を染めては行けないでしょう。勿論、医学部を持っていない某私立大学の銭ゲバぶりも大学としての使命を忘れた恥ずかしい所業であるのは間違いありません。医者の次にはお坊さんの「社会常識」が問われるかも知れませんなあ。三遊亭円歌さんが、法華の修行で真冬に水垢離を取って倒れたネタを披露する時には「寺から病院に行ったのはオレだけだ。普通は病院から寺に行くもんだ」という名文句が飛び出します。どちらも「社会常識」がないと安心して病気にもなれないし往生も出来ませんなあ。

■麻生コロコロ首相の政治家としての見識が少しでも高くなるのを祈らねばなりませんし、解散絡みでストレスが溜まり倒れてしまわないかも心配です。病院からも教育機関からもカネが消えて行くのですから、「貧すれば鈍する」の諺通りに日本中から常識も人情も正義感も失われてしまわない内に、しっかりとした政策を打って欲しいものであります。
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麻生総理の健康と社会常識 其の壱

2008-11-27 16:37:02 | 政治
■漫画好きだからきっと庶民的感覚の持ち主だと、大きな誤解をしてしまった人たちは、「漫画ばかり読んでいるとバカになるぞ」という昔懐かしい小言を聞かねばならない立場になってしまったようです。マンガと言っても日本ほどの漫画大国になりますと、新聞紙面に負けないほど多くの活字を吹き出しの中に押し込む作品やら、解説だけのコマを広く取ったりする作品もあります。勿論、叫び声や悲鳴や肉体の一部が壊れる音やら爆発音ばかり続くような物騒な作品も多いようですが……。
 
■下手な専門書を読むよりも、情報が豊かでしかも実によくまとまっている教養漫画も数多く、政治や経済だって劇画作品やギャグ漫画を読んだ方が新聞や専門雑誌より分かり易い場合もありますなあ。麻生コロコロ首相が漢字を誤読するのは、規定の政治スケジュールを知らないのと同じ理由なのではないでしょうか?漫画を読むのは時代の風潮を知るためだと御本人が発言しているのですから、漫画を材料にして政権を揶揄するのは、それこそ漫画にもならない悪趣味な話になり兼ねません。

■勉強不足の政治家が増えてしまったのは、候補者段階で演説をじっくり聴かず、公約も著書の類も読まずに投票してしまう人が多いからでしょうし、別の候補を当選させるための貴重な一票を捨ててしまう怠惰な人が多過ぎるのも大きな原因なのでしょうなあ。特定の団体が中核となる後援会と、税金の無駄遣いの温床とされる各種利権の臭いがぷんぷんする諸団体の力で当選するのなら、一般の聴衆を感動させる演説は不要でしょうし、研究者や学者が唸ってしまうような見識を本にして発表する必要も無いわけです。

■麻生セメントを基盤とする地方財閥の麻生グループというカバンと社員や取り引き相手が作り上げた地盤、そして、吉田茂の孫という看板が揃っていれば、落選する心配は皆無なのでしょうなあ。前任の福田ホイホイ首相から「解散して選挙してね」と言われて政権を渡されたのに、何やかやと手間取っている内に次々にボロが出て来て収拾が付かなくなっているようですが、あまり小粒の政治家が総理大臣を「たらい回し」にしていると、世情の不安を利用して非常に危険な威勢の良いだけのリーダーが登場するかも知れませんから、その点だけは御用心、御用心。


麻生首相が20日に開かれた政府の経済財政諮問会議で、社会保障費の抑制を巡って「たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」と発言していたことが、26日に公開された議事要旨で分かった。

■「たらたら飲んで」というのは、ホテルのバーで(似合わなくても)葉巻をくゆらせながら高級ブランデーをちびちび舐めるのではなく、安酒場で質素な物を肴にして焼酎やホッピーなどと痛飲するような事を指しているのでしょうなあ。「食べて」の中には産地も分からぬ安物ばかりを食べているから、毒ゴメや腐りかけの肉などを食うハメになるんだ、という意味もありそうです。「何もしない人」というのは、残業続きで朝から晩まで働いて偶の休日ぐらいはくたくたになった身体を少しでも休めようと睡眠を優先にせざるを得ない人が含まれている節があります。

■でも、「たらたら飲んで」くれる人や「たらたら食べ」る人が居なくなると、商売が成り立たなくなってとても困る人がたくさん出て来そうです。そもそも保険制度は助け合いのシステムですから、一度も病気にならずに寿命を終える人が、生まれつき体が弱かったり難病と戦わねばならない人の医療費をまったく負担しないという話にはなりません。麻生コロコロ首相の言う通りにするのなら、最初から保険制度は廃止するべきでしょう。完全自由診療という非常に厳しくも残酷な時代に逆戻りする覚悟が全国民の間で固まったら法律を改正すれば良いだけの話ですが、きっと夢見が悪くなるでしょうなあ。


与謝野経済財政相が社会保障費の抑制や効率化の重要性を指摘したのを受けて、首相は出席した同窓会の話を紹介しながら「67歳、68歳で同窓会にゆくとよぼよぼしている。医者にやたらかかっている者がいる」、「彼らは学生時代はとても元気だったが、今になるとこちら(首相)の方がはるかに医療費がかかってない。それは毎朝歩いたり何かしているから」と発言した。病気を予防することが社会保障費抑制につながることを強調する物言いとみられるが、病気になり医療サービスを受ける人が悪いとも受け取れる発言で波紋を呼びそうだ。

■「学生時代は元気だった」人が年齢を重ねて病気をするのは決して珍しい話ではありません。散歩をしていればすべての病気が予防できるというわけでもありません。政治家ですから自分が人一倍丈夫だ!というパフォーマンスが染み付いているのでしょうが、「医者にやたらとかかっている」人の多くは、多額な医療費がかからないようにと検査に言ったら病気が「発見」されて手厚く、時には過剰な治療を受けることになった人も多いはずです。

■御自身が丈夫で健康に暮らしているのは実に結構なことですが、それと並べて病気に苦しむ人を責めるような話をしては行けません。他人の痛みは絶対に分からないもので、自分の痛みも傷や虫歯が治ってしまえば忘れてしまうものですから、今、苦しんでいる人が悪いことをしているような発言は問題でしょうなあ。医療費を含めた社会保障費の抑制という大目標は政治家として実現せねばならない大切な政策なのでしょうが、医療や介護の現場に関して「無駄」を指摘するのは非常に難しいものです。先に国の予算をカットしてしまえば、下々が努力して無駄が無くなるなどと考えるのは、「生活給付金」のバラマキ方を決め兼ねて地方自治体に丸投げするのと同じくらいに乱暴な政治手法だと申せましょうなあ。

金賢姫の猿轡 其の弐

2008-11-26 22:37:31 | 外交・情勢(アジア)
これまで彼女の住所は北朝鮮による報復テロなどの危険性から秘密になっていたが、テレビは情報機関の協力で自宅に押しかけ撮影までしたため移転を余儀なくされた。また情報機関は”海外移民”まで勧めたという。書簡は、謀略説の最大の狙いは「テロ作戦は金正日総書記の指示」とした彼女の供述をひっくり返すことだったとし、テレビ制作陣は彼女を出演させ彼女が「良心宣言」をすることを画策したという。

■やり方は違っても、北も南も安らかには暮らせない国という点では同じだと思ったでしょうなあ。一服盛られて意識が朦朧となった状態で巧みな誘導尋問でもされたら、大変な事になっていたでしょうなあ。韓国のテレビも恐ろしいことをするものです。日本の昼メロを真似しているくらいなら可愛いものですが、生々しい政治的な謀略に堂々と使われるというのは改善の余地が大いにありますなあ。


国家情報院に対する不満、批判としては、盧武鉉政権時代の政治的な過去否定作業の中で、1987年のKAL機事件捜査を担当した前身の国家安全企画部に対する否定的見方が強く、親北風潮に便乗し謀略説にき然と対応していないとしている。彼女は田口八重子さんに関連し「彼女が残してきた幼い2人の子供に会いたいと涙ながらに語っていた姿を思いだします。成人になった息子の様子を日本のテレビで見ましたが大きな目がお母さんに似ています。会ってお母さんの話をしてあげられない私の現実が残念です」と記している。
2008年11月25日 産経ニュース

■盧武鉉政権時代の裏側については、間も無く金大中時代とセットになった裏話が暴露され始めると思われますが、もともと貧困家庭で育ったと言われながら大学生時代から金回りが良かったとか、弁護士になるまでの生活費を負担したのが誰なのか分からないとか、いろいろと噂があった人ですから、熱狂的な支持を受けて大統領に就任した割には、急速に支持者の熱が醒めて政界全体が混乱する迷走が続きましたなあ。

■大統領が引退すると必ず一族郎党が逮捕され、御本人は死刑判決を受けた後に新大統領からの恩赦で露命をつなぐという儀式が恒例となっていた韓国でしたが、金大中大統領の代からはこの伝統が途切れているようです。自分を絶対に逮捕しない子分を後継者にしたんだ!という話もありましたが、金賢姫が自分の言葉で語り出したのが本当なら、前政権の暗部がまとめて告発される時が近いという事かも知れませんなあ。
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金賢姫の猿轡 其の壱

2008-11-26 22:37:00 | 外交・情勢(アジア)
■世に謀略説は数多く、たまにその種の本を手に取ると案外と楽しめるものであります。しかし、合間には必ず解毒作用のある良質なノンフィクションを読むのを欠かしては行けません。謀略説には必ず論理の飛躍と都合の悪い事実を無視するか強引に曲解する手法が常用されるので、削除された事実や一方的な事実解釈を別の角度から検討する作業が必要になるわけです。中には個人や団体を悪役だと決め付けて、何もかも悪い事が起こったらその「裏」にはこの種の力が働いているに違いない!と竹を割ったようにすっきりストーリーが組み立てられている話も多いようです。こうした単純な謀略説は悪役とされる対象と熱心に主張している側との関係を見れば、単純な敵対関係が見えて来るものです。

■それでも巨大資本を独占的に動かして世界を混乱させている企業やら、それと結託しているのか操られているのか分からないような国家も存在しているのは事実で、そこに特殊なイデオロギーや宗教が絡んでいる場合もあるでしょう。『ダヴィンチ・コード』などという安直な陰謀ネタの寄せ集め本が大いに売れるのも、複雑過ぎる社会構造を簡単に説明して欲しいという気分が世に溢れていることの証拠なのでしょうなあ。


北朝鮮の女性元工作員で大韓航空機爆破テロ事件の犯人・金賢姫・元死刑囚が、親北・左翼的だった盧武鉉前政権時代、情報機関の協力の下でテレビ各局などが繰り広げた”KAL機事件謀略説”に対し抗議と怒りの書簡を発表し話題になっている。書簡は人権団体のイ・ドンボク北韓民主化フォーラム代表に送られてきたもので、金賢姫の対外的な訴えは初めてだ。

■世間には「人権団体」を自称する組織が掃いて捨てるほどあるのですが、誰の人権を何のために守るのかによって団体の性格は大きく変わります。韓国には「金大中拉致事件」を起こしたKCIAという筋金入りの諜報工作機関が存在していたのは事実で、北朝鮮も爆破工作が大成功!した後に韓国諜報機関による「自作自演」を言い立てていたのでした。


書簡は彼女が北朝鮮で受けた工作員教育の際、日本語を教えてもらったという田口八重子さん(北朝鮮では李恩恵)について「彼女の存在と彼女が拉致日本人だったことは北朝鮮も認めているではないか」とし、謀略説とそれに便乗した政府機関、親北・左派勢力のでたらめさをあらためて非難している。

■最近亡くなった筑紫哲也さんは、韓国か米国かは存じませんが北朝鮮以外の国が仕掛けた謀略だと長い間信じていた節がありますし、拉致犯罪に関しては将軍様の自白を聞くまでは信じていなかったことを示す映像が残っているはずで。生放送番組の怖さと申せましょう。勿論、追悼番組などではそんな映像は使われません。そもそも、「地上の楽園」という悪質な宣伝こそ最大の謀略だったのですが、日本は政府も大きかった野党も、知ってか知らずかウマウマとその宣伝に乗ったのでした。

■金正日将軍様が小泉訪朝の際に「拉致はやった」と自白するまで、多くの日本人ジャーナリストが程度の差こそあれ謀略説を信じていたのは確かです。新聞やテレビが拉致被害者の安否情報をそっちのけで「拉致を認めた!」ことを大きく取り上げていたのが印象に強く残っております。


謀略説というのは「事件は韓国当局がデッチ上げた自作自演で北朝鮮は関係ない。金賢姫はニセ者」というもので事件当時、北朝鮮当局や在日朝鮮総連、日本の親北・左翼系などによって流布された。国際的には「北朝鮮のいつものでたらめ宣伝」としてほとんど相手にされなかったが、社会的に親北・左派勢力が幅を利かした前政権時代になって「過去史真相究明委員会」など政府機関やマスコミなどで大まじめに取り上げられ、執拗に”金賢姫追及”が行われた。

■日本でもこの種の謀略説は広まっていたのですから、現地では凄まじいことになっていたのは想像できます。たまたま、当時はインターネットが発達する前だったのが幸いしたのでしょう。元テロリストで元死刑囚となれば、ちょっと有名になった芸能人の比ではなく、世界で最も誹謗中傷用語が豊富だとされる韓国語でネットはお祭騒ぎが続いたことでしょうなあ。それが新聞・雑誌の活字にまで流れ出して緊急出版!の嵐を呼び、それらを扇情的にまとめて増幅するテレビが拍車を掛ければ、誰でも追い詰められてしまうでしょう。


金賢姫がとくに問題にしているのは、確実な捜査結果や彼女の自供内容は紹介せず「金賢姫とは何者か」「16年間の疑惑と真実」「金賢姫の疑問の足跡」など題して一方的に謀略論をあおったテレビ各社。しかも彼女を管理していた情報機関の国家情報院は、偏向報道に利用されることを知りながら彼女に対しテレビ出演やインタビューをしきりに勧めたという。

■日本語に訳された数点の懺悔録や回想録は誰かに強要されたものではなく、生活費を稼ぐための手段だったのかも知れません。当時は日本のテレビにも多少の品性と遠慮深さがあったのか、彼女を日本に引っ張ってバラエティ番組、グルメ番組、温泉紹介番組などに出演させるような事はしませんでしたが、それも韓国側の偏向が影響していただけだったのかも知れませんなあ。拉致問題を解決する為に世論が一挙に盛り上がらなかったのも、日本側にも共鳴する人達がたくさん居たからなのでしょうか?

ソマリア沖海戦 其の六

2008-11-26 09:35:03 | 外交・世界情勢全般
■金融危機への対応を話し合うのが主要課題だったAPECの議題にさえも含まれた海賊問題でしたが、バブル崩壊の(失敗)体験を恥も忘れて得々と語ろうと勇んで出かけた麻生コロコロ首相でしたが、殊、軍事関連ともなると単なるお飾り、参加することに意義がある、枯れ木も山の賑わい状態になってしまったようです。それは素晴らしいことだ!と喜ぶ人も日本には多いのか、マスコミの取り上げ方もこの問題に関しては他人事みたいな感じで実にあっさりしたものでした。平和と水ほど命懸けで守らなければならない物だという現実がすぐ近くまで迫っているというのに……。勿論、石油と食糧も大切ですが、売買の対象にならないほど安全と水は格別に重要な物なのであります。

ソマリア近海で多発する海賊行為に、日本としての対応策を練ろうと、都内で「ソマリア沖海賊対策緊急会議」(主催・日本財団、海洋政策研究財団)が開催され、中東・欧州方面と日本を結ぶシーレーンと日本船舶の安全確保を図るため、海上自衛隊艦艇の早急な派遣などを求める提言をまとめた。……政情不安などから収入を絶たれた漁民らが武装、海賊になっており、今年9月までに、昨年1年間の約1・5倍に達する63件が発生している。……すでに、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)が船舶の護衛を実施。ロシア、マレーシアなども海軍の艦艇を派遣している。

■アフガニスタンでの対テロ戦争支援を目的とするインド洋上での給油活動も海上テロの危険に晒される危険な任務ですが、戦闘自体はアフガニスタンという内陸国で行われているので、文字通りの後方支援というイメージが保たれているようです。しかし、既にインド海軍が海賊の母船を血祭りに上げたソマリア沖となりますと、万が一、給油活動の範囲を広げて海賊退治に協力しようと法改正などを済ませたとしますと、給油艦の目の前で砲撃銃撃戦が展開される事も想定せねばなりません。その時に給油艦を護衛するために派遣されているイージス艦が身動き取れずに傍観しているようなら国際信義の上からも大問題になる可能性もあるでしょう。

■無料で給油して上げるから日本の海上自衛隊を守って下さいなどと、訳の分からない事をお願いするくらくらいなら、足手まといにならないように早々と不参加を表明しておいた方が良いかも知れませんなあ。こういう具体的な大問題が起こった時に限って、憲法9条が大好きな人達は沈黙してしまうのが気になりますなあ。海賊退治での集団的自衛権がどうしたこうしたと伝統的な?議論の堂々巡りを強いられるのは残念なことであります。


最近の状況について日本海難防止協会ロンドン事務所の若林邦芳所長は緊急会議で「海賊は身代金を奪うため人質に危害を与えなかったが、最近のケースでは、海賊側が船舶を護衛していた英軍艦艇に発砲してきた。海賊行為の質が変わりつつあり、人質の命も危うい」と指摘した。緊急会議では、ソマリア近海を通航する日本国籍船や日本人搭乗船を守るために、
(1)海上自衛隊艦艇の派遣を速やかに実施する
(2)海難救助や海賊船への立ち入り検査などのため、自衛隊法の「海上における警備行動」を発令し適切に対処する
(3)海賊船への威嚇射撃を可能にする特別法を制定する-ことを求める提言がまとめられた。
11月17日 産経ニュース

■現在の法制度で認められそうな、ぎりぎりのラインを踏まえての提案ですから、あっと言う間にまとまりますなあ。誰が書いても似たような項目しか並べられないでしょう。(1)の「速やかに」の文言には「すでに遅過ぎるけれど」という忸怩たる思いが込められているのでしょうが、マスコミから吹き出す無理を承知の理想論やら日和見先送り意見やら野党から仕掛けられる無責任な水掛け論に邪魔されて、「速やかに」派遣するのはほぼ不可能でしょう。

■(2)の「適切に対処」という玉虫色の作文技法が混入しているために、派遣された人達の手足を縛ることになるでしょう。携行する武器と自衛権発動の限界など、またまた神学論争が始まるのは必定で、下手をすると護衛艦を派遣しても良いが弾薬とミサイルは降ろして空船で行け!などと言い出す者が出て来るかも?(3)などは間接的な殺人犯罪に当たるかも知れませんぞ。「特別法」まで作っても許されるのが「威嚇射撃だけ」ならば、この決定事項は軍事機密でも何でもないのですから世界中に報道されて海賊達を大喜びさせるでしょうし、派遣される日本の艦艇は残酷な標的になってしまうことでしょう。

北朝鮮の気になる鳴動 其の弐

2008-11-26 09:34:47 | 外交・情勢(アジア)
■「将軍様御不快」の情報が広まり始めてから、米国がテロ支援国家指定を解除したにもかかわらず、北朝鮮は変に内向きになっていく傾向が見えました。それは妥協の姿勢を見せてしまった米国に対して、核兵器やミサイルを使ってもっと有利に交渉を進めたいからだと解釈されていたのですが、どうもそんな悠長な事態ではないような気配が漂い始めております。

北朝鮮は24日、韓国の開城工業団地管理委員長、同工業団地入居企業、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)あてに各1通の通知文を送り、開城観光と南北間鉄道運行の中断、開城工業団地の韓国側常駐人員の半減など、強力な通行遮断措置を来月1日から取ることを通告した。これらの措置が取られれば、南北間の交流協力事業は開城工業団地事業を除き事実上全面中断となる。

■開城観光には年間10万人が参加しているという報道もありますから、年間50万人規模の金剛山観光が中止になっているのに加えて大きな収入源を失うことを意味するでしょう。あの国が「カネなど要らん!」と言い出した時が最も危険だという話もあるようですから、心配なことです。この中で最も重大なのは「鉄道運行の中断」だと思われます。実質的に鎖国体制を布くようなものですから、閉ざした扉の向こう側で何をやっているのか非常に気になります。まあ、そうやって周囲の気を引くための芝居かも知れないのですが……。


……北朝鮮はKOTRAのキム・ジュチョル代表にあて、「各種の協力交流と経済取引などを目的に陸路で北側に出入りするあらゆる南側民間団体と企業家らの陸路通過を遮断し、経済協力と交流協力事業者の軍事境界線通過を厳格に制限・遮断する」と通告した……。また、京義線列車の運行を中止する一方、開城の南北経済協力協議事務所を閉鎖して韓国側関係者を全員撤収させ、現代峨山による開城観光も中止する立場を示した。……ただ、工業団地の入居企業に送った通知書では「中小企業の難しい状況を考慮し、開城工業団地での企業活動を特例的に保障することにした」とし、今回の措置が開城工業団地の活動を中断するものではないことを明らかにした。……北朝鮮は各企業の常駐人員と車両の現況を同日午後3時まで知らせるよう要請した。
11月24日 YONHAP NEWS

■こうして見ると、妙に「自動車」の動きに敏感になっている様子が覗えますなあ。大量に撒かれた迷惑な「将軍様御危篤!」と書いて風船に詰めて飛ばすビラに神経を尖らせているとの報道がありましたが、国内を走る自動車にもビラか、それよりも危険な物を積んで走り回っている可能性があるのかも?想像を逞しくすれば、軍隊で運転技術を習得した誰かが平和ボケの出張中の韓国人から自動車を奪って反抗的な行動をとったのかも知れませんぞ。


北東アジア最大の鉄鉱石埋蔵量を誇る北朝鮮の「茂山鉱山」(咸鏡北道茂山郡)から中国への輸出や、中国から北朝鮮へのコメの輸出が9月から中断していることが20日、分かった。複数の関係筋によると、両国間の貨物列車の往来が今月に入って途絶えていることも判明した。……茂山鉱山の推定埋蔵量は30億トンで、中国が北朝鮮から輸入する鉄鉱石の最大産地。……昨年一年間の同税関を通じた鉄鉱石輸入量は70万トン。今年は8月までに67万トンに上り、大半は茂山鉱山産だ。……年末までの輸入総量は100万トンを超すとみられていたが、関係筋によると、陸上輸送による輸入は9月以降、ピタリと止まった。……

■北朝鮮における鉄鉱石の採掘利権をチャイナが独占してしまう!と一時は大騒ぎにもなった地下資源の大規模な切り売りでしたが、それが突然止まるとなれば、売り手と買い手のどちらが止めたのかが問題になります。世界的な景気の冷え込みで業界では「鉄冷え」が広がっているそうですが、その発端は北京五輪の開催準備と関係があるのかも知れません。鉄のスクラップ価格でも今年の7月第二週にピークになってから急落、何故か五輪が終わった後の9月初旬に一度は底を打って少しばかり反発はあったものの10月に入るとまたまた急降下しているのであります。

■円キャリートレードで大儲けしていた連中が、大急ぎで手仕舞いして迷惑な円高を引き起こしておりますが、投資ファンドに大金を注ぎ込めた富裕層や欲深者が先を争って解約して株式市場の底が抜けてしまったのも根っこは同じでしょうから、北朝鮮の地下資源で一山当てようと思って投資した連中がもともとリスキーな商売相手でもありますから、利益を失わないように鉄鉱商売から逃げ出しただけの話かも知れません。まあ、鉄材価格が急落したおかげで、日本のあちこちで金属盗難事件が激減したのは喜ばしい限りでありますが……。

ソマリア沖海戦 其の伍

2008-11-25 17:24:58 | 外交・世界情勢全般
■そもそも自国の輸送船を守るために世界の国々は海軍を作り増強して来た歴史があります。日本だけは敵国の戦艦を撃沈するために軍艦を作って訓練を重ねたというユニークな歴史を持っております。その結果、先の大戦では通商破壊も自国の輸送船護衛も考えずに太平洋を渡って来るはず?の米国艦隊を撃滅するために大日本帝国海軍は実に不思議な行動をし続けたのでしたなあ。

■戦後は「通商破壊」など絶対に出来ない平和国家となった日本ではありますが、自国の輸送船を護衛する事も禁じるような法律の拡大解釈が罷り通っているとか……。北朝鮮による拉致犯罪に対しても何の手も打てないのと同様に、ソマリア沖で拉致された日本人を救出する手段が無い!何処かの国の海軍に「救出」を依頼するのか?「対話と圧力」で気長に交渉するのか?手っ取り早く言い値の身代金を支払うのか?今後のことをよく考えて決断しなければなりませんぞ。


アフリカ東部ソマリア沖で……14、15の両日には連続して、日本人船長の中国マグロ漁船や日本企業が管理する貨物船が乗っ取られる事件も発生。哨戒活動に入っている北大西洋条約機構(NATO)や米国、ロシアに加え、欧州連合(EU)も艦船の派遣を決めるなど対策に本腰を入れ始めたが、海賊の勢いは衰えていない。……英王立国際研究所は、今年だけで総額3000万ドル(約29億円)以上の身代金が海賊にわたったとみている。

■振り込め詐欺で荒稼ぎされた被害金額が100億円単位になっているのを知っている日本人にとっては海賊の被害が小さく感じられるかも?でも、それは平和で相互信頼が根付いている日本だけの特殊な状況で、原油価格・人件費・保険料などの高騰に苦しんでいる海運業者にとっては莫大な損失だと再認識しなければなりません。国の内外から騙されて大金を巻き上げられる日本は確かに良い国柄ではあるのですが……。やはり、相手によっては断固たる手段で対抗しなけらばなりますまい。


海賊らは自らの違法行為を「外国漁船の違法操業」に対する自衛行為と主張。自分たちを「沿岸警備隊」と呼んでいる。しかし、実際には無政府状態のソマリア情勢を逆手に取った「ローリスク、ハイリターンの有力ビジネス」と化しているのが実情だ。

■すべてを相手の責任にして大金を巻き上げるというのは、何処かで聞いた話です。そして、勝手に領海を設定して一方的に他国の船を拿捕する乱暴な国が、日本の近所にもありますなあ。海賊が「沿岸警備隊」を自称するというジョークのセンスはなかなかの物だとは思いますが……。


……タイ船を乗っ取った海賊の分け前は、実行部隊1人3万ドル(約290万円)、陸の警備部隊1人2万ドル(約190万円)……海賊の多くは20~30代。高級車を乗り回し、複数の妻をめとる海賊に貧しい若者たちがあこがれ、志願者が後を絶たないという。海賊行為はもともと、元漁師らの「零細経営」だった。だが、ここ数年で分業化され、周辺海域を熟知する元漁師らを「頭脳」役に、武器を操る武装勢力が幅を利かすようになった。衛星携帯電話やGPSを駆使する「ハイテク部隊」に成長し、母船から小型スピードボート数隻で出撃し、摘発に遭うと複雑な環礁地帯へ逃げ込む手口で追跡をかわしている。……

■日本国内の誰かさんから巨額の仕送りを受け、そのカネで日本製の高性能機器を購入し、高速工作船を作って密輸や拉致犯罪に使っている国を思い出す話です。シリアあたりに原爆の作り方を教えるような国ですから、母船と高速船の作り方や扱い方を指導しているかも?そもそも海賊が使っている船や武器は何処から流れて来たのでしょう?


海賊の拠点は、ソマリア内の自治州プントランドの沿岸一帯に散在する。地元からの情報によると、一大拠点のエイルでは海賊が得た身代金で潤う会計士や、人質解放の交渉役がスーツ姿で闊歩しており、人質に食事を提供するためのレストランもある。身代金を得るため、人質の扱いは概して「丁重」という。

■拉致しておいて、本当かウソかは不明ながら不自然な事故死に至らしめたと自白する国もありますから、ソマリアの海賊は商売としては洗練されているとも言えるかも?日朝間にもカネで拉致問題を解決しようと動き回っている人達がいるやにも聞きますが、気位だけは何処にも負けずに高い北朝鮮のことですから、自分達が海賊・山賊と一緒にされたら怒るのでしょうなあ。


海賊被害が激増するソマリア沖のアデン湾は、年間2万隻の船舶が通過する重要航路。イラクで米国要人などの警護に当たり、地元住民の巻き添え被害で問題になった「ブラックウォーター」社など、民間軍事会社も新たなビジネスチャンスと見て市場調査に乗り出している。
毎日新聞 2008年11月17日

■海賊行為がビッグ・ビジネスに成長し、被害者側には傭兵商売が売り込み?悪い冗談のようですが、これが現実の世界なのでしょうなあ。イラクでもアフガニスタンでも、傭兵会社は大繁盛だそうですから、「田母神論文」で激震が走った日本の自衛隊からも純粋にカネ目的で転職する優秀な人材が出て来ても不思議ではありません。既に海賊側に日本人が入っていたりしたらどうしましょう?

ソマリア沖海戦 其の四

2008-11-25 13:37:35 | 外交・世界情勢全般
■日本は海洋国家でないらしく、飛行機の「ハイジャック」や海外での交通事故などは大きく報じられるのに、不思議に「海賊」と聞いてもピンと来ないのか妙に扱いが小さいようです。だからと言って国の首相まで寝惚けていては行けませんぞ!

麻生太郎首相は(11月)18日、尾形武寿日本財団理事長や中谷元・元防衛庁長官らと首相官邸で会談し、アフリカ東部ソマリア沖で頻発する海賊対策について「日本の船舶が海賊に襲われたり、人質になってからでは遅い。早急に対応を検討しなければならない」と述べ、海上自衛隊艦艇の活用などを念頭に、法整備を検討する考えを示した。
11月19日 産経ニュース

■飽くまでも「日本の船舶」の心配をした発言のようです。既に日本人が「人質」になっているのです。「早急に」という言葉も切迫した状況に比して妙に呑気な響きがありますなあ。これから「法整備を検討」するのなら、海自艦艇を動かすにはどれほどの時間が必要なのでしょう?インド洋での給油活動は「シーレーン防衛」の意味が有る!と政府は言い張っていたはずなのに、漁船であろうとタンカーであろうと、船種を選ばずに襲って来る海賊が跋扈して実情を知ってか知らずか、前の総理大臣は何をしていたのか?これから「対応を検討」している場合ではないでしょう。


アフリカ・ケニア沖で海賊に乗っ取られた中国天津市のマグロ漁船「天裕8号」の船長、久貝(くがい)豊和さん(53)=沖縄県八重瀬(やえせ)町=の留守宅には16日までに、久貝さんら乗組員の無事を知らせる連絡が船を所有する「天津市遠洋漁業」からあった。ただ、詳細な状況は不明。……久貝さんは4、5年前から中国の漁船に乗船。「天裕8号」には昨年から乗っていた。……
毎日新聞 2008年11月17日

■原油価格が高騰した時にだけ、マスコミは日本の漁業が瀕死の状態だと騒いで見せましたが、沿岸漁業が壊滅し200海里問題や排他的経済水域の設定などもあり、日本の漁師は驚くほど遠くに出掛けて魚を追うようになったのは随分と前の話。チャイナの漁船に雇われる日本の漁師がどれほど居るのか?大食い番組やグルメ番組を辟易するほど放送している日本のテレビ局はまったく報道しませんなあ。

■江戸前寿司のマグロの多くが地中海産なら、紅海は日本の魚市場と直結していることを意味しているわけで、原油価格が落ち着いても日本の漁業と食糧の問題は一向に解決には向かわないでしょうし、船乗りという職業が絶滅の危機にあることも変わらないのでしょう。もう少し海に視線を向けて日本の将来を考えるべきなのでしょうなあ。就任したばかりの麻生コロコロ首相が何もかも完璧に対応しなければならぬ!とは言えませんが、「早急に対応を検討」を指示した3週間も前に国際機関は警鐘を鳴らしていたのです。


国際海事局(IMB)海賊情報センター(クアラルンプール)は(10月)23日、今年1~9月にソマリア沖と同国北部アデン湾の海域で海賊事件(未遂も含む)が計63件発生し、前年同期比で27件増加、世界全体(199件)の約3分の1に上ったと発表した。この海域には、アジアやペルシャ湾岸とスエズ運河を結ぶ重要航路が通っている。IMB幹部は「すべての国に海賊とその母船の活動阻止を自国海軍に指示するよう要請する」と述べた。
10月23日 産経ニュース

■こんなに大変な状況になっているのに、嗚呼、残念ながら日本国には「海軍」が有りません!

欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の参拾

2008-11-25 13:37:13 | チベットもの
中国共産党中央統一戦線工作部の朱維群副部長は(11月)10日記者会見し、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世に対し、「中国政府の要求に歩み寄り、生きているうちに国家や国民に有益な行動をとってほしい」……「歴史に汚名を残してはならない」と強く批判した。中国側は10月31日から今月5日まで訪中したダライ・ラマのロディ・ギャリ特使らと協議したが、朱副部長は「依然大きな相違がある」と語り、実質的進展がなかったと指摘した。 
11月10日 時事通信

■「生きているうちに」だの「汚名を残すな」だの、もう少し物の言い様というものがあるでしょうに?!まるで自分の国の建国者が晩年に何をしたのか知らないかのようですなあ。大成功だと自画自賛している北京五輪大会にしても、相当の「汚名」が世界中に広まったはずですが、そういう事は都合よく忘れるのが北京流なのでしょうなあ。その五輪大会が終わったのを幸いに、堰を切ったように好き放題な発言が目立っております。

■聞く耳持たない言いたい放題の交渉相手に対し、さすがに嫌気が差しているチベット側からも、だんだん堪忍袋の緒が切れ掛かった発言が目立つようになりました。来日中の2008年11月2日午前に行われたダライ・ラマ14世のインタビューにも、随分と率直な表現が散見されたのでした。前にも取り上げた内容も含まれていますが、そうした箇所も削除せずに引用します。


--3月のチベット騒乱以来、中国政府との話し合いが2回行われたが、その結果はどうだったか。

「話し合いは今年5月と7月に行われたが、中国側はチベットの現実をまったく無視しており、チベットの問題を直視しようとしていない。3月の大規模デモ以来、チベット内部の状況はまったく変わっていない。中国の温家宝首相も最近、米誌『ニューズウィーク』とのインタビューで、『ダライ・ラマはチベットを中国から分離させようとしている』などと私を激しく批判したが、私は温家宝首相に直接、その根拠をただしたい。私は分離させようとは思っていない。

温首相が本当にそう思っているのならば、中国政府はインドのチベット亡命政府に人員を派遣して、私が本当にそういうことを言ったのか、調査をしてほしい。私は講演のテープや文書など必要な資料はすべて提供しようと常々言ってきたのに、中国側はそれすらもしていないのだ。私がチベットを中国から分離させようとしていないのは、米国も、国際社会も、中国政府を除いてすべての人が知っている」

■「分裂主義者」というのはチャイナでは極悪非道のテロリストと同義ですから、こんなレッテルを貼ったままで五輪大会を招致したいがために問題解決の努力をしますとIOCに約束したのですから、本来ならダライ・ラマ法王は五輪大会に反対しても良い立場でした。しかし、全面的に開催を支持して成功を祈っていたのでした。分離主義者としては最悪の態度と申せましょうなあ。「中国政府を除くすべての人」が知っているという構図は、日本が抱える北朝鮮による拉致問題とも似ています。実行した張本人だけが知らなかったり、解決済みだと言ったりしていますからなあ。

北朝鮮の気になる鳴動 其の壱

2008-11-25 13:36:44 | 外交・情勢(アジア)
■米国の新大統領が就任するまで様子見に入ると思われていた北朝鮮が、何やらもぞもぞ動き始めているようです。有り難いことにブッシュ大統領は拉致問題についてオバマ新大統領に「申し送り」すると約束してくれたそうです。しかし、それを受ける側の麻生コロコロ首相は特に新しい事は言っていないようです。早くも麻生降ろしの風が吹き始めて自分の首筋がひんやりしているようですから、国会対策と経済対策との板ばさみで頭がいっぱいなのでしょう。APECでは大はしゃぎしていたようですが、チャイナに振り回される姿を世界に晒したのは大失敗でした。

■建国以来、一度も好景気というものが無かった国ならば、世界規模の金融危機が起こっても大した影響は受けないのでしょうか?そう言えば北朝鮮がせっせと刷っていた偽ドル札もハイリターンの証券化商品に投資されていたのかどうか、それに関する報道が無いというのも気懸かりで、マカオや香港では間違いなく資産運用をしていたはずですし、スイスあたりに隠してある亡命資金と目される秘密預金などは外為相場の暴落だけでも大損害を受けているはずなのですが、そんな話題も出て来ませんなあ。まさか日本円の偽札を大量に刷って不正な外貨商売をしているのではありますまいなあ?


韓国紙、東亜日報は24日、金正日総書記(66)の健康悪化説が伝えられる北朝鮮で、幹部職員らが所有する日本製自動車を11月20日から没収し始めたほか、2009年から各地の「市場」を閉鎖すると布告するなど、住民統制を大幅に強化していると報じた。……総書記に代わって権力をふるう義弟、張成沢・労働党行政部長が、自己の権威を高める目的から、統制を強化しているとの見方が浮上している。……没収の対象は乗用車や小型バス。……自動車の80%は日本製だが、幹部職員からも容赦なく取り上げているという。理由は不明で、日朝関係の悪化や、北朝鮮に進出した世界基督教統一神霊協会(統一教会)系の「平和自動車」の工場を救済する目的などが考えられるという。
11月24日 読売新聞

■将軍様の側近には高級ベンツが配給されていると聞きますから、日本製の車を所有しているのは中堅幹部たちだと思われます。建て前としては私有財産が認められていない人民共和国ですから、没収されても文句は言えないのでしょうなあ。日本の政府や国内の協力者たちに対する何らかのメッセージなのかも知れませんが、「市場の閉鎖」というのが非常に気になります。ますます闇の地下経済が盛んになって人々は餓えと貧困に苦しまねばならなくなるでしょう。

■北朝鮮では自動車が人身事故を起こした場合、責任は100%歩行者側に押し付けられるという話がありましたなあ。理由は簡単で上層幹部しか自動車は持てないし燃料も手に入らないから……。世界一厳しいカースト制度とも呼ばれているらしいですなあ。外人ブローカーの手を経て入手した中古車なども多そうですが、中には誰かが献上した新車も含まれているのでしょう。ロシアやチャイナに見かける業務用の塗装をくっきり残したまま使われている日本製中古車が平壌からの映像では見当たらないのは塗装を丁寧に消しているからか?それとも撮影禁止とされているのか?

■軍用にも多数の民生用日本製トラックが使われているのは有名な話ですが、まさか軍用車両を没収することはないのでしょうな。すると政府内で何らかの権力闘争が激化しつつある兆候の可能性が高まるわけで、没収した後に再び次の権力者から御下賜になるのかも知れませんなあ。少なくとも地球温暖化防止が目的ではないのは確かです。それにしても、こんなニュースの中に統一協会の名前が出て来るのはちょっと意外でした。あちらも?世襲による世代交代が間近に迫っているそうですから、祝賀行事に使う資金を掻き集め始めたのかも?

ソマリア沖海戦 其の参

2008-11-24 16:01:15 | 外交・世界情勢全般
韓国国防省はこのほど、アフリカ・ソマリア沖での海賊対策のため海軍の駆逐艦を派遣する方針を明らかにした。年内に国会の同意を得た後、来年初めにも派遣される。ソマリア沖では一昨年、韓国貨物船が海賊に乗っ取られ、最近も韓国人船員の乗り込んだ外国船が襲われ、船員が拉致されるなど韓国の被害も増えている。韓国内では現地で多国籍の予防・護衛作戦に参加すべきだとの声が高まっていた。派遣が予定されているのは4500トン級の駆逐艦でミサイルや艦砲のほかヘリコプター2機を搭載し、乗員は約280人。日本の海上自衛隊艦艇に先駆けての派遣となる。
11月19日 産経新聞

■産経新聞だから「先駆けての派遣」という書き方になるのでしょうが、同日の朝日新聞になりますと、ロイター社の記事を転載してあっさりとした報道になっています。


……韓国海軍は自国の商船を海賊被害から守るため、ソマリア沖への艦船派遣の承認を国会に求める方針であることが明らかになった。匿名の当局者は19日、「国防省は12月に(艦船)派遣の法案提出を計画している」と述べた。韓国メディアによると、国防省はソマリア周辺海域に少なくとも軍艦一隻の派遣を求めており、法案が可決すれば来年初めに派遣されるとみられる。
2008年11月19日 朝日新聞

■韓国の軍艦一隻は、日本に「先駆けて派遣」される様子はまったく窺えません。朝日新聞は11月22日(土)付けの社説で、政府に対して対応を急ぐように提案はしているのですが……。


……日本はマラッカ海峡の海賊対策で、国際協力の実績がある。マラッカ海峡の周辺国に対し、海上保安庁の巡視船の提供や共同訓練で支援した。ソマリアのケースでも、近隣のイエメンやケニアへの支援でこうした経験を生かせるはずだ。早く具体的な支援策を打ち出してもらいたい。海賊対策に限定して海上自衛隊を派遣できないか、特別措置法で対応する案も超党派の議員の間で浮かんでいる。この案は、外国船籍の船が襲われたときの対応や武器使用基準など、検討すべき課題も多い。……

■どうやら朝日新聞としては、ソマリア沖まで海上保安庁の船に出張って行って欲しいようです。おそらくプルトニウムの海上輸送をテロリストから守るために建造され、1992年に立派に護衛任務を果たした『しきしま』(JCG PHL SHIKISHIMA)を想定しているのかも知れません。海上保安庁が保有する世界最大の巡視船で、尖閣諸島周辺海域での警備や朝日新聞が前例として引いている「マラッカ海峡の海賊対策」でシンガポールやインドネシアなどと合同で訓練に励んでいる軍艦並みの構造を持つ船ではあります。しかし、「並み」という所が問題で、マラッカ海峡を荒らしまわった海賊と今のソマリア沖で大暴れしている連中とは使用している武器や装備がまったく違うようなのが心配であります。

■プロトニウム輸送の時にも海上自衛隊が出るか、海上保安庁に任せるかで議論が沸騰したのですが、ミサイルや重機関銃まで装備している海賊がうようよしているところに出向いて貰うのは、ちょっと気が引けませんかな?訓練に協力している段階はとうに過ぎているのですぞ。朝日新聞の社説は、そんな事よりも重要な課題が有る!と言いたいようです。


……これらの海賊対策は、あくまで対症療法でしかない。根本的な解決策は、ソマリアの内戦を終わらせ、統治力のある政府を作り出すことだ。95年にソマリアでの国連平和維持活動が失敗に終わって以来、国際社会の関心は薄れていたが、再建に向けた支援を強化する必要がある。海賊という「海」の問題は、無政府状態という「陸」の問題の解決なしには終わらない。

■一足飛びに理想的な根本的解決を結論に持って来られれば、読者としては納得するしかありません。本当に「陸」の問題が解決されたら万々歳です。しかし、列強による植民地支配の時代から米ソ冷戦時代の陣取り合戦まで、「アフリカの角」に刻まれた傷跡はあまりにも深いので簡単に「支援」など出来ないのが現状でしょう。その支援を受けるべき正当な政府を設立するだけでも、どれほどの血が流されることでしょう?何せ映画『ボラック・ホーク・ダウン』の現場ですからなあ。

欲しいけど要らないノーベル平和賞 其の弐拾九

2008-11-24 14:24:53 | チベットもの
■現時点でAPEC会議も終わって各国首脳はそれぞれ帰国の途についていますが、日中首脳会談を巡っては北京側に振り回された麻生コロコロ首相の苦労話?などが紹介されています。笑い話ではなく、予定になかった会談を出発間際に仕掛けられ、外務省スタッフは必死にスケジュールの調整に走り回らされたそうですが、最初から位負けの外交ならば当初の予定通り事務的に対処しても良かったのではないでしょうか?外交では何より面子を大事にしなければならないそうですからなあ。たとえ一本のお祝い電話でも……。

2008年11月9日、香港のニュースサイト「鳳凰網」は、米大統領選に勝利したバラック・オバマ氏が祝電のお礼に自ら電話を掛けた9か国の中に、中国が入っていなかったことを問題視する記事を掲載した。オバマ氏が自ら電話を掛けたのは、日本、フランス、英国などの9か国。……「世界の大国の中で、中国とロシアだけが外された」と不満を表した。昔から緊張関係が続いていたロシアは「外されても仕方がない」としたものの、「中国首脳は米国との良好な関係維持に並々ならぬ努力を続けてきた」と納得がいかない様子。お礼の電話をして来ないオバマ氏に再び自ら電話連絡を取った胡錦濤国家主席をも批判し、経済危機にある米国は中国の助けが必要なはずなのに「中国の怒りを買っても怖くないのか?」と息巻いた。

■当選を祝う電話をするのは当然の礼儀ですから、その段階では余程横柄な態度でも取らない限り儀礼的に対等関係が守られますが、香港メディアが目くじらを立てた返礼電話となると、時差の関係で失礼にならない配慮はするにしても、基本的には順番が特別な意味を持つでしょう。最初からリストに載っていなかったとしたら、オバマ新大統領もなかなかヤルものだと感心します。その一方で、「お礼の電話が来ませんが……」と電話を掛け直している胡錦濤主席は何を焦っていたのでしょう?記事が「中国の助けが必要なはず」と言うわりには、APECの会場ではそのような発言も提案も無かったようですなあ。麻生コロコロ首相がすったもんだの末に会場の隅っこで立ち話同然の首脳会談を20分ほどした時も、大金を拠出する日本に同調するように誘ったのに色よい返事は聞けなかったとか……。

■「怒りを買っても怖くないのか?」ぐらいの事を、たまには日本政府の誰かからも聞いてみたいものですなあ。勿論、見当ハズレの夜郎自大発言にならない場合に限りますが……。


記事はこの原因について、ブッシュ政権下で亀裂の入った同盟国との関係改善が優先された、と指摘。中国を冷遇することで日韓などの「恐中国家」に安心感を与え、米国の都合の良いように動かすつもりだ、と皮肉った。さらに、「新人」オバマ氏に対し、「何を重視すべきなのか、まだわかっていないようだ」と指摘。就任後、中国にお礼の電話をしなかったことを後悔することになろう、と締め括った。
11月10日 Record China

■読者は溜飲を下げて大喜びしたのでしょうが、米国民が読んだらさぞや腹を立てて根に持つことでしょうなあ。それに引き換え「恐中国家」と名指しされた日本では、この記事を取り上げて論評したメディアは無かったようです。大国の自信や寛容が理由ならよいのですが……。再び話はチベット問題に戻ります。