旅限無(りょげむ)

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日本の幸福度、ブータン国王演説 其の四

2011-11-18 15:48:58 | 日記・雑学
■先の藤村官房長官の会見で言及された「携帯電話を使用した閣僚」は蓮舫大臣だったことが判明したそうです。

蓮舫行政刷新担当相が、国賓として来日中のブータンのジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会前に行なわれた立食形式のカクテルパーティーの際、携帯電話を使用していたことが分かった。複数の出席者が証言した。国王夫妻にも皇室にも礼を失する行為だといえ、自民党など野党は徹底的に追及する構えを見せている。
藤村修官房長官は17日の記者会見で、晩餐会で閣僚が携帯電話を使用したことを認めたが、誰が使用したかは明らかにしなかった。蓮舫氏は記者団の質問に一切答えなかった。……
2011年11月18日(金) 産経新聞  

■蓮舫行政刷新担当相は脱税などで逮捕歴がある男性との関係がある!と一部週刊誌が指摘しており、国会でも西田昌司議員に詰め寄られて「逮捕歴を知らなかった」と弁解しております。看板倒れの「2位では行けないのか?」仕分けで人気急落してからは、菅アルイミ内閣では「節電啓蒙」などという訳の分からないポストを与えられて震災後の混乱期に何処で何をしていたのやら、さっぱり分からなかったものでしたが、野田ドジョウ内閣では二匹目の泥鰌を狙って行政刷新担当大臣として返り咲いたものの、あまりぱっとしないようです。今回の「携帯電話の使用」疑惑でも、後で使用したことは認めたものの、失礼のないように使ったんだ!と言い張っているそうです。

■さてさて欠席四人衆の最後は細野豪志環境相であります。欠席理由について記者会見で「(地方の)首長が上京し、ゴミの広域処理問題で東日本大震災の被災地を助けてもらえないかとお願いする機会があったので、そちらを優先した」とのことです。菅アルイミ内閣がもたもたしていて震災後8箇月も経っているのに瓦礫処理が進まず現地では困り果てている実情であります。震災復興の巨大プロジェクトの絵が描けず、官僚組織も動かせないから法律も作れない。地方議会とのパイプが無いから責任の押し付け合いばかり目立って実効が上がらない。細野環境相に特別の権限と財源があるのならば上京した首長と直談判するのも結構ですが、どうせ「聞き置く」だけで民主党得意の「全力を尽くします」「万全を期します」と言って見送るだけのことならば、国賓歓迎の宮中晩餐会を欠席するのは如何なものでしょうなあ。震災復興に熱心に取り組んでいると言いたいところでしょうが、取り組み方が間違っているような気がします。まともな政府であれば行政システムがフル稼働できる仕組みと法律を作って官僚と地方に任せればよいのですから、大臣は宮中晩餐会であろうと国際会議であろうと悠々と出席できる体勢になっているでしょうに?!

■菅アルイミ前首相を手本にしているわけでもないでしょうが、あれもこれも自分で背負い込んで身動きが取れなくなるかも知れないパフォーマンス型の行動が目立つ細野環境相の足元で呆れ果てたミスが露見してしまいました。


福島市内で採取されたとみられる放射性物質を含む土壌が環境省に送られ、職員が埼玉県内の空き地に投棄した問題で、細野豪志環境相は18日、自身について今後の在任期間中の大臣給与を全額、国庫に返納するなどの処分内容を発表した。職員の上司だった前官房総務課長(17日付で異動)は国家公務員法に基づく戒告、職員は同省の規定に基づく訓告、南川秀樹事務次官と谷津龍太郎官房長を同厳重注意の各処分とした。……横光克彦副環境相と高山智司環境政務官が2カ月間2割▽南川事務次官と谷津官房長が1カ月間1割--を自主返納することを決めた。…… 

■原発事故の被災地から対応の遅い政府に対する怒りを込めて放射能汚染土壌が環境省に送り付けられ、それを役人が放射線を計測して勝手に捨ててしまったという漫画みたいな話なのですが、元々、詳細な汚染情報も出せず、迅速な除染活動も実施せず、最終処分地も決められない政府の対応が問題なのですが、法律に従って仕事をするはずの行政府の省内で「違法投棄」が行なわれてしまうというのは緊張感も危機感も欠落している証拠でしょうなあ。何とも恐ろしい話であります。こんな役所が不法投棄を取り締まれるのでしょうか?


前総務課長は東日本大震災の現地災害対策本部(仙台市)の本部長を兼任していた。細野氏は「危機管理の要の官房総務課長を現地対策本部長と兼任させた責任は私にある。また、(送付された汚染土壌には)除染について国が責任を果たしていないという福島県民の気持ちが込められている」などと処分理由を説明した。
2011年11月18日(金) 毎日新聞

■ブータンを世界的に有名にした「国民総幸福度」を今回の国王夫妻は直接日本に持ち来たったような数日間でありますが、迎えた日本の幸福度は恥ずかしくも悲しいほど低いレベルのままで、民主党政権が続く限りはますます低下して行くようで心配であります。さっさと違法状態の選挙制度を変更して日本が潰れてしまう前に総選挙をして欲しいものです。ウソやペテンではなく、幸福度を上げる真の政策を提言する政治家をしっかり選びたいものでありますなあ。
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日本の幸福度、ブータン国王演説 其の参

2011-11-18 15:48:31 | 日記・雑学
■「適材適所」で組閣したはずの野田ドジョウ内閣には不可解な疑惑が次々に浮上して国会の議論でも追及されることが多いのでありますが、残念ながら余りにもレベルが低い話ばかりで寄り合い所帯の経験不足と人材不足の恥を晒すだけで、国家百年の計とは何の関係も無い馬鹿馬鹿しい子供の口喧嘩ばかりのようです。任命責任者の野田ドジョウ首相が「適材適所なのか?」と追求される閣僚の代表が素人=シビリアン・コントロールの防衛相でありますが……。

一川保夫防衛相が16日夜、国賓として来日中のブータンのジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会を欠席し、同僚議員のパーティーで「ブータン国王が来て宮中で催し物があるが、私はこちらの方が大事だ」とあいさつしていたことが17日分かった。国王夫妻にも皇室にも礼を失する行為だといえ、自民党など野党は参院での問責決議案提出を視野に徹底追及する構え。発言は参院予算委員会でも取り上げられ、一川氏は「軽率だった。申し訳なく思い、反省している」と陳謝した。藤村修官房長官は首相官邸に一川氏を呼び「宮中行事を軽視するかの発言は軽率だ。厳に慎むように」と厳重注意した。この後、一川氏は記者団に「自分の任務はしっかりと責任を持ってやっているつもりだ」と述べ、引責辞任を否定した。…… 

■国賓のブータン国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会よりも大事なパーティというのは、三重県選出の高橋千秋参院議員が開いた政治資金集めの催し物だった由。政治家ではなく選挙屋たる面目躍如と申せましょうが、驚くべきことに主催者の橋議員は「日本・ブータン友好議員連盟副会長」という役職に就いているのだそうですぞ。自分が宮中晩餐会に招待されない小者だからと言っても、正式に招待を受けている防衛相を呼びつけて政治資金集めを手伝わせるとは言語道断!まずは「日本・ブータン友好議員連盟副会長」を謹んで辞任することから始めるべきでありましょう。実に失礼千万な話でありますからなあ。これが民主党流の外交か?!

■高橋千秋参議院議員は自身の公式ホームページでも「農業」を強調していますし、三重県農業協同組合中央会との関係が深いこともあり、農林水産省の元官僚出身の一川防衛相とも「農業」繋がりで仲がよいのかも知れません。農協やトヨタの労働組合との関係が深いと言われる橋議員が、どうして「日本・ブータン友好議員連盟副会長」になっているのでしょう?仔細は不明ながら農業技術支援の関係か、はたまた、菅第2次改造内閣で外務副大臣に就任したのが切っ掛けだったのか?もし外務副大臣時代の就任ならば東日本大震災発生の2日後3月13日夜、外務省で宿直勤務に就く直前まで外務省関連団体の20代の女性職員と酒を飲み、女性の体をあちこち触りまくったと週刊誌に書き立てられた頃の話かも?どちらにしてもブータン国民から「そんな副会長は要らない」と言われてしまいそうですなあ。


……宮中晩餐会には全閣僚が招待されたが、一川氏のほか山岡賢次国家公安委員長、川端達夫総務相、細野豪志環境相が欠席した。また、藤村氏は17日の記者会見で、晩餐会の席上で携帯電話を使用した閣僚がいたことを認めた上で「行事進行上支障を生じることのないように」と全閣僚に注意したことを明らかにした。携帯電話を使用した閣僚は特定できていないという。自民党は、他の欠席閣僚についても理由が適切だったかどうかを追及する構え。携帯電話問題についても閣僚の特定に向け、調査を始めた。
2011年11月17日(木) 産経新聞 

■改めて一川保夫防衛相の経歴を見てみますと、三重大学農学部農業土木学科卒業後、農林省入省。農林水産省災害対策室長を最後に退官して石川県議会議員(2期)、96年10月より衆議院議員(3期)、この間、農林水産委員会、国土交通委員会、議院運営委員会、国家基本政策委員会などの各理事を歴任。落選後、07年、参議院通常選挙において当選。ということです。鳩山サセテイタダク元首相が点火して爆発させてしまった沖縄基地移設問題を菅アルイミ前首相は拱手傍観の構えで先送りし、いよいよ野田ドジョウ内閣が本気で後始末しなければ日米関係が危うくなったという緊迫した状況で、どうして農業専門家が防衛相に任命されたのか?誰にも理由は分かりません。これまでも一川防衛相には数々の舌禍事件がありまして、さぞや自衛隊隊員の皆さんは腹立たしい思いを我慢していることであろうとお察し申し上げます。

■因みに雁首揃えて宮中晩餐会を欠席した山岡賢次国家公安委員長は、国会予算委員会などで集中砲火を浴びて吊るし上げられている身で「マルチを取り締まる立場の大臣の秘書官の母がマルチの会員、叔母がマルチのトップリーダーだ!」と暴露されて火達磨状態。自民党は18日午前に山岡消費者相に対する問責決議案を2011年度第3次補正予算案の関連法案成立後に参院へ提出する方針を固めた由。そして、川端達夫総務相は欠席理由を国会で追及されて「ずいぶん昔からの約束があり、調整を試みたが、どうしても昨日しかできないということで、結果として欠席することになってしまった」と意味不明の言い訳をしていたそうです。一体、何を約束していたのかこれから暴露されるでしょうが、余り格好の悪い「約束」でなければよいのですが……。細野豪志環境相については後述。


一川氏は9月2日就任に際して記者団に「私は安全保障に関して素人だが、これが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」と発言して批判されたが、反省の色はない。
10月15日には地元・石川県の民主党県連パーティーで「防衛省、自衛隊の仕事は私より前原誠司政調会長のほうが詳しい」と発言するなど素人ぶりはむしろエスカレートしている。
米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、10月17日に沖縄県の仲井真弘多知事と会談した際は「私も航空自衛隊小松基地を抱える石川県に生まれ育った。地元の悩みや苦労は分かっている」と米軍基地と自衛隊基地を混同した。このとき仲井真氏は黙っていたが、2日後に会談した玄葉光一郎外相に「首相の指揮命令系統にある自衛隊と米軍基地が全く違うことが分かっているのか」と詰め寄った。…… 

■まだ就任してから3箇月にも満たないのに、これだけ危ない素人発言を連発しているのですから野田ドジョウ首相の任命責任は厳しく追及されるべきでありましょう。既に沖縄県民・県知事からの信頼を失い、おそらく防衛省内部でも邪魔者扱いされていそうですし、何よりも米軍関係者から相手にされていない可能性が濃厚で、これでは日本の安全保障はボロボロになってしまいますぞ。小沢グループからの数合わせ人事との噂があった一川防衛相就任ですから、下手に馘首したら党内分裂騒ぎが再発すると野田ドジョウ首相が考えているのなら、それは国益に照らして本末転倒と申せましょうなあ。


10月25日には衆院安全保障委員会で平成23年版防衛白書について「正直言ってまだ全部目を通していない」と発言。11月12日には、年内に提出予定の普天間飛行場移設に関わる環境影響評価書について「無理に提出するものではない」と言い放った。防衛省内での求心力は皆無に等しい。10月7日に起きた航空自衛隊小松基地所属のF15戦闘機の燃料タンク落下事故について同月11日の「防衛省は国民目線の観点が十分浸透していない」と身内を批判し、自衛官の総スカンを食った。南スーダンへの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊派遣は外務省主導で決まり、当事者の防衛省はほぼ“蚊帳の外”。年内に控える航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の選定では、一川氏に政府・与党の調整役を期待する声はなく、北沢俊美前防衛相が「影の防衛相」として影響力を強めている。
2011年11月17日 産経ニュース 

■これでは税金泥棒!との誹りは免れないでしょう。こんな人物に大臣給与を誰が払いたいと思うでしょう?役立たず、石潰し、そして、今回の欠席事件で国賊の呼称も授与されそうですなあ。本来なら農政で守旧派として大暴れすべき経歴と素質の持ち主のようですから、きっと御本人も「どうして防衛相なんだ?」と思いつつ、でも初入閣は嬉しいなあ!と就任したのでしょうが、辞退すべきだったでしょう。

日本の幸福度、ブータン国王演説 其の弐

2011-11-18 14:10:34 | 日記・雑学
■演説の続きです。

私は若き父とその世代の者が何十年も前から、日本がアジアを近代化に導くのを誇らしく見ていたのを知っています。すなわち日本は当時開発途上地域であったアジアに自信と進むべき道の自覚をもたらし、以降日本のあとについて世界経済の最先端に躍り出た数々の国々に希望を与えてきました。日本は過去にも、そして現代もリーダーであり続けます。このグローバル化した世界において、日本は技術と確信の力、勤勉さと責任、強固な伝統的価値における模範であり、これまで以上にリーダーにふさわしいのです。…… 

■「確信の力、勤勉さと責任、強固な伝統的価値」なんだか随分と懐かしい言葉が並んでいるような気がします。「勤勉さ」が発揮できない非正規雇用制度の暴走が起こり、最近では超一流企業の経営者の中には「責任」の欠片も無い犯罪行為に走って会社を潰し兼ねない大事件を起こしてしまう愚か者が目に付きます。「強固な伝統的価値」は衰退著しい地方とグロテスクに巨大化する都市のどちらにも見当たらなくなって久しいような気がします。ブータン国王陛下は古きよき時代の日本のことをお話になっているような感じがしますなあ。


世界は常に日本のことを大変な名誉と誇り、そして規律を重んじる国民、歴史に裏打ちされた誇り高き伝統を持つ国民、不屈の精神、断固たる決意、そして秀でることへ願望を持って何事にも取り組む国民。知行合一、兄弟愛や友人との揺るぎない強さと気丈さを併せ持つ国民であると認識してまいりました。これは神話ではなく現実であると謹んで申しあげたいと思います。それは近年の不幸な経済不況や、3月の自然災害への皆様の対応にも示されています。…… 

■我々一人ひとりがもう一度「規律を重んじる国民」になれるように努力したいものですし、大急ぎで「誇り高き伝統」を再発見して学び直す必要もありそうです。そして、「不屈の精神」と「断固たる決意」ができるマトモな政治家を是非とも選び直して自民党政権が産み育て民主党政権が増徴させてしまった役人天国国家を改革することが急務でありましょう。


……皆様、日本および日本国民は素晴らしい資質を示されました。他の国であれば国家を打ち砕き、無秩序、大混乱、そして悲嘆をもたらしたであろう事態に、日本国民の皆様は最悪の状況下でさえ静かな尊厳、自信、規律、心の強さを持って対処されました。文化、伝統および価値にしっかりと根付いたこのような卓越した資質の組み合わせは、我々の現代の世界で見出すことはほぼ不可能です。すべての国がそうありたいと切望しますが、これは日本人特有の特性であり、不可分の要素です。このような価値観や資質が、昨日生まれたものではなく、何世紀もの歴史から生まれてきたものなのです。それは数年数十年で失われることはありません。そうした力を備えた日本には、非常に素晴らしい未来が待っていることでしょう。この力を通じて日本はあらゆる逆境から繰り返し立ち直り、世界で最も成功した国のひとつとして地位を築いてきました。さらに注目に値すべきは、日本がためらうことなく世界中の人々と自国の成功を常に分かち合ってきたということです。…… 

■これほど真正面から「素晴らしい未来が待っている」と断言して頂けるのは大変に有り難いことであります。確かにパニックや暴動も起こさず、多少の空き巣こそ泥は出没したものの、苦難にじっと耐えている日本は海外から高く評価されているようです。しかし、それは被災された多くの人々が賞賛されてるだけのことで、日本政府の対応が褒められているとは寡聞にしして知りません。今回の大震災と原発事故を本当に乗り越えられるのか?と自信がなくなりそうな時もありますが、もう一度だけ「あらゆる逆境から繰り返し立ち直り、世界で最も成功した国」になる努力をしてみようと元気が湧く演説であります。


ご列席の皆様。私はすべてのブータン人に代わり、心からいまお話をしています。私は専門家でも学者でもなく日本に深い親愛の情を抱くごく普通の人間に過ぎません。その私が申しあげたいのは、世界は日本から大きな恩恵を受けるであろうということです。卓越性や技術革新がなんたるかを体現する日本。偉大な決断と業績を成し遂げつつも、静かな尊厳と謙虚さとを兼ね備えた日本国民。他の国々の模範となるこの国から、世界は大きな恩恵を受けるでしょう。日本がアジアと世界を導き、また世界情勢における日本の存在が、日本国民の偉大な業績と歴史を反映するにつけ、ブータンは皆様を応援し支持してまいります。ブータンは国連安全保障理事会の議席拡大の必要性だけでなく、日本がそのなかで主導的な役割を果たさなければならないと確認しております。日本はブータンの全面的な約束と支持を得ております。…… 

■「他の国々の模範」となるべく国民一人ひとりが頑張らねばなりませんが、残念ながら戦後60有余年「アジアと世界を導」くことなどまったく考えずに経済成長に邁進した日本には「国連安全保障理事会の議席拡大」に本気で取り組む外交能力は無く、小選挙区から出て来た地元密着型の政治家の中からは必要な人材が得られないのが実情であります。ブータンが熱心に応援して下さっても日本にその意思と能力が欠如していてばどうしようもありません。


ご列席の皆様、ブータンは人口約70万人の小さなヒマラヤの国です。国の魅力的な外形的特徴と、豊かで人の心をとらえて離さない歴史が、ブータン人の人格や性質を形作っています。ブータンは美しい国であり、面積が小さいながらも国土全体に拡がるさまざまな異なる地形に数々の寺院、僧院、城砦が点在し何世代ものブータン人の精神性を反映しています。手付かずの自然が残されており、我々の文化と伝統は今も強靭に活気を保っています。ブータン人は何世紀も続けてきたように人々のあいだに深い調和の精神を持ち、質素で謙虚な生活を続けています。今日のめまぐるしく変化する世界において、国民が何よりも調和を重んじる社会、若者が優れた才能、勇気や品位を持ち先祖の価値観によって導かれる社会。そうした思いやりのある社会で生きている我々のあり方を、私は最も誇りに思います。我が国は有能な若きブータン人の手のなかに委ねられています。我々は歴史ある価値観を持つ若々しい現代的な国民です。小さな美しい国ではありますが、強い国でもあります。…… 

■多くの場合、自画自賛は聞くに堪えない不快なものですが、ブータン国王陛下の演説は素直に感動できる誠実さがあるように感じます。はたして日本人が同じ調子で自国を語れるのだろうか?「手付かずの自然」などはほとんど残されていませんし、僅かに残った自然もマスコミが玩具にして人々を呼び寄せて荒らしてしまいますし、相変わらず自然災害には弱い面が目立ちます。精神や文化の面でも「我々の文化と伝統は今も強靭に活気を保っています」と胸を張って言える状況ではなさそうです。自民党政権末期、安倍元首相が「美しい国」と言ったことがありましたが具体的な政治ビジョンにならないまま忘れ去られてしまいましたなあ。


それゆえブータンの成長と開発における日本の役割は大変特別なものです。我々が独自の願望を満たすべく努力するなかで、日本からは貴重な援助や支援だけでなく力強い励ましをいただいてきました。ブータン国民の寛大さ、両国民のあいだを結ぶより次元の高い大きな自然の絆。言葉には言い表せない非常に深い精神的な絆によってブータンは常に日本の友人であり続けます。日本はかねてよりブータンの最も重大な開発パートナーのひとつです。それゆえに日本政府、およびブータンで暮らし、我々とともに働いてきてくれた日本人の方々の、ブータン国民のゆるぎない支援と善意に対し、感謝の意を伝えることができて大変嬉しく思います。私はここに、両国民のあいだの絆をより強め深めるために不断の努力を行うことを誓います。改めてここで、ブータン国民からの祈りと祝福をお伝えします。ご列席の皆様。簡単ではありますが、(英語ではなく)ゾンカ語、国の言葉でお話したいと思います。
「(ゾンカ語での祈りが捧げられる)」
ご列席の皆様。いま私は祈りを捧げました。小さな祈りですけれど、日本そして日本国民が常に平和と安定、調和を経験しそしてこれからも繁栄を享受されますようにという祈りです。ありがとうございました。 

■実に忝(かたじけな)い気持になる名演説でありました。見事な親善外交と申せましょう。政治家の外交演説とは次元が違う格調の高さ、深い精神性が満ちております。やはり伝統的な精神文化を継承する人格は貴重な存在なのだと再認識させられます。せっかくの清清しい気分が台無しになってしまうのが残念ですが、ブータン国王両陛下をお迎えして我が日本国の民主党政権は実に恥ずかしい騒ぎを起こしてしまった話に移らねばなりません。

日本の幸福度、ブータン国王演説 其の壱

2011-11-18 14:02:02 | 日記・雑学
■東日本大震災と原発事故が起こって以来、日本の政治家は勿論のこと作家やジャーナリストなどの文筆家からさえも永久保存版の言葉が聞けないことは非常に残念なことであります。それだからこそ今年3月16日にビデオ・レターとして公表された天皇陛下のお言葉が折に触れて思い出されるのであります。深い悲しみを同情と労りの言葉に包み込み、慰めと励ましを分かり易く語り掛けて下さる歴史に残る名文は、日本経済新聞以外の新聞は1面に掲載しなかったという事実と共に長く記憶に留めておくべきでしょう。それにしましても御高齢の陛下が日帰りも含めて被災地を訪れては苦境にある人々に直接語り掛け続けねばならなかったのは、民主党政権の菅アルイミ内閣が政局の内輪揉めばかりしていて復興や事故対応に「全力」を注いでいなかったからだったと思われます。皇族内の諸問題も報じられているとは言え、天皇陛下の御不例は震災・原発事故に真摯に立ち向かい続けたお疲れが原因であるとすれば、菅アルイミ前首相の罪は実に深いものがありましょうなあ。

■ましてロクでもない組閣人事を弄び、年に数日だけの御静養を中断させて認証式に引っ張り出したのは菅アルイミ前首相でしたし、その前の鳩山サセテイタダク元首相の時代には素人内閣の閣議がまとまらず、だらだらと無駄話を続けて結論が出るのが夜になることもあったそうで、内容を熟読の上で署名捺印せねばならない天皇陛下はずっと閣議決定書が届くのを待って御就寝時刻がどんどん遅くなることもあったやに聞きます。御臨席の皇族方に対して「早く座れよ!」と文句を言った某委員長もいましたし、民主党はどこか子供染みた迂闊さが目立つ寄り合い所帯なのであります。

■さてさて、自国内でも東南アジア地域でも絶大な人気を得ているブータン国王が来日中で、会見を楽しみになさっていたのに入院治療中とて晩餐会などの歓迎式典に参加できなかった天皇陛下はさぞや無念であられましょうが、そんな陛下の御心中も察せず野田ドジョウ内閣の閣僚数名はトンデモない無礼を働いてしまったのは恥ずかしい限りであります。公式歓迎晩餐会を選挙屋稼業に忙しいとの理由で平然と欠席した閣僚連中も以下の国会演説は何事も無かったような顔をして拝聴していたのでしょうか?耳の鼓膜と脳みそが正常に接続されているなら恥ずかしくてその場から逃げ出したくなったはずなのですが……。


天皇皇后両陛下、日本国民と皆さまに深い敬意を表しますとともにこのたび日本国国会で演説する機会を賜りましたことを謹んでお受けします。衆議院議長閣下、参議院議長閣下、内閣総理大臣閣下、国会議員の皆様、ご列席の皆様。世界史においてかくも傑出し、重要性を持つ機関である日本国国会のなかで、私は偉大なる叡智、経験および功績を持つ皆様の前に、ひとりの若者として立っております。皆様のお役に立てるようなことを私の口から多くを申しあげられるとは思いません。それどころか、この歴史的瞬間から多くを得ようとしているのは私のほうです。このことに対し、感謝いたします。…… 

■このように呼び掛けられた「国会議員の皆様」の中に、世が世ならば陛下の宸襟を乱す不忠の者!と誅される不心得者が混入しておりますぞ。それにしましても、いかに外交辞令とは申せ「世界史においてかくも傑出し、重要性を持つ機関である日本国国会」とまで言われてしまいますと、一有権者として穴があったら入りたくなりますなあ。なるほど国会は野党の野次と怒号が渦巻く中で与党は役人の作文を棒読みするだけなのですから、野田ドジョウ総理大臣閣下は謹んで間違いを訂正して差し上げたら如何でしょう?今の国会議事堂の中に「偉大なる叡智、経験および功績を持つ皆様」など存在していたのか?と国王の御言葉を拝聴しながらドギマギしてしまいました。


妻ヅェチェンと私は、結婚のわずか1ヶ月後に日本にお招きいただき、ご厚情を賜りましたことに心から感謝申しあげます。ありがとうございます。これは両国間の長年の友情を支える皆さまの、寛大な精神の表れであり、特別のおもてなしであると認識しております。
ご列席の皆様、演説を進める前に先代の国王ジグミ・シンゲ・ワンチュク陛下およびブータン政府およびブータン国民からの皆様への祈りと祝福の言葉をお伝えしなければなりません。ブータン国民は常に日本に強い愛着の心を持ち、何十年ものあいだ偉大な日本の成功を心情的に分かちあってまいりました。3月の壊滅的な地震と津波のあと、ブータンの至るところで大勢のブータン人が寺院や僧院を訪れ、日本国民になぐさめと支えを与えようと、供養のための灯明を捧げつつ、ささやかながらも心のこもった勤めを行うのを目にし、私は深く心を動かされました。…… 

■王族の名前にもチベット文化の影響が見られるようにブータンはチベット仏教文化圏ですから慈悲の心に満ち溢れる信仰心の厚い国なのであります。変なブータン・ブームが起こって怪しげな宗教商売の材料にするような不心得者が出て来ないことを祈るばかりですが、旧オウム真理教の集団が急速に信者数を増やしているなどというニュースを耳にしますと、韓流ブームの次にブータン・ブームを起こしてやろうと考える輩が出て来ないとも限りませんから御用心、御用心。


私自身は押し寄せる津波のニュースをなすすべもなく見つめていたことをおぼえております。そのときからずっと、私は愛する人々を失くした家族の痛みと苦しみ、生活基盤を失った人々、人生が完全に変わってしまった若者たち、そして大災害から復興しなければならない日本国民に対する私の深い同情を、直接お伝えできる日を待ち望んでまいりました。いかなる国の国民も決してこのような苦難を経験すべきではありません。しかし仮にこのような不幸からより強く、より大きく立ち上がれる国があるとすれば、それは日本と日本国民であります。私はそう確信しています。…… 

■ブータン国王陛下がお感じになった「深い同情」こそ、日本の天皇陛下が決してお忘れにならない御心痛と同じもので、新婚旅行でもある来日の貴重な1日を福島県訪問に割くというのも同じ精神をお持ちになっているからでありましょう。今も地道なボランティア活動に精を出している多くの人々がいることを改めて思い出し、しっかり愚かな政府を監視して次の総選挙では決して間違いを繰り返さないよう準備しておきたいものです。


皆様が生活を再建し復興に向け歩まれるなかで、我々ブータン人は皆様とともにあります。我々の物質的支援はつましいものですが、我々の友情、連帯、思いやりは心からの真実味のあるものです。ご列席の皆様、我々ブータンに暮らす者は常に日本国民を親愛なる兄弟・姉妹であると考えてまいりました。両国民を結びつけるものは家族、誠実さ。そして名誉を守り個人の希望よりも地域社会や国家の望みを優先し、また自己よりも公益を高く位置づける強い気持ちなどであります。2011年は両国の国交樹立25周年にあたる特別な年であります。しかしブータン国民は常に、公式な関係を超えた特別な愛着を日本に対し抱いてまいりました。…… 

■「名誉を守り個人の希望よりも地域社会や国家の望みを優先し、また自己よりも公益を高く位置づける強い気持ち」を何処かに置き忘れて来てしまった我々の来し方行く末を考えさせられますなあ。そんな強い気持が日本中に満ちているのなら、毎年3万人以上もの人が自殺し続けることもないでしょうし、1000兆円もの国の借金が積み上がったり年金制度が食い荒らされてしまうこともなかったはずなのですが……。

TPP 毎度お馴染み民主党流外交 其の弐

2011-11-16 16:12:00 | 外交・情勢(アジア)
■ハワイから帰って来たらすぐに衆参両議院の予算委員会で連日吊るし上げられている野田ドジョウ首相は早くも満身創痍の様相を呈しているようです。切り込み隊長役を買って出たのは自民党政策審議会長の山本太一議員のようで、例の米国が仕掛けた「誤報」事件の後始末が外交手続きとして杜撰極まりない!と激しく攻め立てておりましたなあ。自民党も野党暮らしの辛さと惨めさのウサ晴らしでしかない野次と怒号で恥を晒している場合ではなく、与党民主党は弱点だらけなのですから正々堂々と議論で勝負して欲しいものであります。両手の指では足りない民主党の弱点の中でも「独り善がり」で「思いつき」ばかりの外交上の失政は文字通り「国益」に関わる大問題でありまして、無手勝流で夢見がちな書生論を振り回して日米関係をボロボロにした鳩山サセテイタダク元首相、そして、羹に懲りて膾を吹くように何もせずに1年以上も外交空白を作ってしまった菅アルイミ前首相が仕出かした大失敗を、本来ならば大急ぎで整理して国民に詫びて具体的な対応策を次々に打ち出さねばならないのに、野田ドジョウ首相は余りにも長く深く財務官僚と付き合い過ぎた悪影響で、「増税!」以外の話は曖昧模糊とした役人作文を棒読みしているだけのような印象が強いのであります。

■余りにもTPP参加問題が注目されて首脳会議で話し合われる他の議題に関する報道がまったくないまま野田ドジョウ首相が渡米してしまったのが気になっておりましたが、案の定、先代首相と同様に原発事故の収束に手間取り、電気エネルギー政策の見直しも出来ない現状から考えて実現不可能な大計画に満身創痍の日本がうかうかと同調することになったようであります。どうせ、自分の政権にせよ民主党という政党にせよ、あと僅かな命だろうと絶望的に自棄を起こして将来に決定的な禍根を残してやろうなどと恐ろしい逆恨みをしているわけではないでしょうな?!


……アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は13日夕(日本時間14日午前)、経済成長と環境保護を両立する「グリーン成長」の数値目標などを盛り込んだ首脳宣言「ホノルル宣言」を採択し、閉幕した。野田佳彦首相は首脳会議の場で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を改めて表明した。……ホノルル宣言では、域内全体で2035年までに、05年比で45%以上の省エネを実行することを盛り込んだ。太陽光パネルや電気自動車など「環境物品」の普及のため、各国が15年末までに関税を5%以下に引き下げる日米提案にも合意した。…… 

■かつて鳩山サセテイタダク元首相が国連で「省エネ」の大風呂敷を広げて得意顔だった頃は、間違いなく自民党政権よりも大規模な原発増設計画が前提となっていたのですが、菅アルイミ首相変わると直ぐに福島のポンコツ老朽原発が水蒸気爆発を起こしてしまいました。設計段階で想定された稼動期間をコスト削減の名目で大幅に延長したばかりだったポンコツ原発が地震と津波で壊れてしまったからには、もう新設・増設は悪い冗談か夢のまた夢となりまして、下手をしたら来年中にもすべての原発が止まる可能性さえ出て来るのは当然であります。さてさて、反対しにくい「環境」を名目に関税引き下げを組み込んだ「05年比で45%以上の省エネ」を約束してしまって大丈夫なのでしょうか?昔は世界一だった日本の太陽光パネルの技術は残念ながら「原発神話」の猛威の下でどんどん後れを取ってコスト面では競争力が無いとも言われているのですから、うっかりすると原発エネルギーを失った日本が安価な太陽光パネルを大量に輸入することになりはしまいか?こんな所にも「原発安全神話」を広めてしまった罪の深さが浮き出して来ます。


……中小企業やベンチャー企業の国際展開支援のため、今後、税関手続きの円滑化や知的財産権の保護強化を検討。スマートグリッド(次世代電力網)では、規格の国際標準化を目指し、国境を越えた広がりを後押しする。……一方、野田首相は首脳会議で、TPP交渉参加を改めて表明。APEC域内を経済的に統合するアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現に向け、「主導的な役割を果たしたい」と述べた。日本の交渉参加については、複数の首脳から「歓迎の意が示された」(外務省)という。野田首相は13日夜(日本時間14日午後)、政府専用機で帰国の途につく
産経新聞 11月14日(月) 産経新聞 

■原発事故の後で急に注目を集めて話題になった「スマートグリッド」ですが、どんなにバラ色の未来が示されても現在の電力会社の縄張り独占体制が存続している限り、スマートグリッド技術は本来の能力を発揮できないのですから、本当に「国際標準化」が議題になる会議に日本は参加資格が無いことになるかも知れませんぞ。世界が固唾を呑んで見守っている史上最悪の原発事故の対応に手間取り、夏の電力不足騒ぎに続いて冬もエネルギー不足が心配されている日本の実情を考えれば、とても新しいエネルギー・システムを世界に提案して「主導的な役割を果たし」すことなど不可能でしょうなあ。

■日曜日の午前中に放送されたフビテレビ『新報道2001』でも取り上げられていたのですが、
文藝春秋2011年11月特別号に「赤坂太郎」が「野田内閣に跋扈する“十七年前の亡霊”」という気になる文章を書いております。要するに初の非自民党政権となった細川内閣と野田ドジョウ内閣の内外事情が不気味に酷似しているという話なのですが……。副題は『増税、日米関係、小沢一郎……野田内閣は細川内閣と同じ途を辿るのか』という文章です。


■不気味な“暗合”

国会運営は予算日程と密接に絡み合っている。「国対カレンダー」は予算と関連法案をいつ成立させるかを終点に、いつ召集したらよいのかを考えて起点とする。このため財務省、中でも予算を担当する主計局が果たす役割は大きい。鳩山、菅両内閣での財務省出身の首相秘書官が主計畑でなかったことが象徴するように、これまでの民主党政権は主計局とは距離を置いてきた。野田はこれを180度変え、主計局と手を携えて国会、政権運営に乗り出している。財務省で国対の司令塔となる官房長・香川俊介も主計畑で勝の信任が厚く、元代表の小沢が官房副長官を務めた時の秘書官でもある。財務省の「国対ライン」をフル活用する野田の心づもりが、今回の延長劇で明らかになった。過剰なまでの財務省への傾斜に、民主党内では危惧と懸念が芽生える。代表選の最中には財務相だった野田をプレーアップする思惑で円高対策を発表させた。増税論議では財務相・安住淳が持ってきた政府税制調査会の案から消費税を除外させ、財源となる復興債の償還期間は十年とすることを「首相指示」として実行した。だが、これが本当に野田本人の考えだと思う議員は、民主党内には一人たりとも存在しない。…… 

■野田ドジョウ内閣は党内融和と安全運転でのろのろ走り出したものの、素朴で地味で低姿勢という御自身のキャラクターで国民の目をどこまで欺けるかは不明ながら、野田ドジョウ内閣は一皮剥けば財務省主導の増税最優先が生命線で、それ以外の震災復興・原発事故収束・農業改革等々はまったく具体的な政策も予算規模も分からないオマケみたいなものなのかも知れません。


……野田が喜んだ「彼とは仕事ができる」とのオバマの言葉も、史上ワースト一、二を争う元首相・鳩山由紀夫、前首相・菅直人と比較してのことであり、会談本番では沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題など、あらゆる二国間問題を列挙され、進展を迫られた。それを米側は国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長のダニエル・ラッセル、国務次官補のカート・キャンベルらが米国人記者へのブリーフィング(状況説明)であからさまに語っている。「自己紹介もそこそこで、ウィットの利いた冗談の一つもなかった」と会談の同席者さえ認めるほど、米側の姿勢も厳しかったのだ。当の野田本人は高揚したまま帰国した翌日の(10月)25日、東京・墨田区の両国国技館に足を運んで大相撲秋場所の優勝力士に内閣総理大臣杯を授与するパフォーマンスをみせた。夜にはキャピトルホテル東急に移動して政府・民主三役会議に臨み、秋以降の日程を確認。政権運営のヤル気をみなぎらせた。だが翌26日、小沢の元秘書三人に有罪判決が出て、野田の「党内融和」は危機を迎える。公明党の姿勢も読みにくさを増した。 

■この文章はハワイのAPEC会議に行く前の話ですが、米国側が野田ドジョウ首相を随分と安く値踏みしていたことが分かります。リーマン・ショックで苦境に立ったオバマ大統領が飛びついたのが太平洋沿岸の小国が作ったTPPで、そこに太平洋を挟んで日本も引っ張り込めれば一挙に好き放題に荒稼ぎができそうだとの皮算用は見え見えなのですから、財務省の言いなりになったのと同じ調子で米国追従になるのも時間の問題なのではないか?と多くの国民は不安になっているのでしょうなあ。


……振り返ってみれば野田が師事する細川も政治改革法を成立させたまではよかったが当時の米大統領、ビル・クリントンとの会談で「日米は成熟した大人の関係」と打ち上げたあたりから雲行きが怪しくなり、大蔵省と組んだ「七%の国民福祉税」で完全に失速。八カ月で政権を投げ出した。衆参両院ともに過半数を確保していた細川に比べ、野田が置かれている「ねじれ国会」の状況は一段と厳しい。野田に「政治とカネ」の問題があることも、細川と同じだ。多すぎる不気味な“暗合”は何を意味するのか。細川と同じ課題への取り扱いを誤れば、野田の退き際も、細川と同じになりかねない。(文中敬称略)

■もう政権を投げ出す姿を細川元首相の終わり方と重なって見え始めているとしたら、中途半端に大きな約束などして国益を損なうことになる前に、さっさと解散総選挙をして『マニフェスト』の落とし前をつけて欲しいものであります。
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TPP 毎度お馴染み民主党流外交 其の壱

2011-11-14 16:06:03 | 外交・情勢(アジア)
■賛成派も反対派も「ああ、よかった」と胸を撫で下ろしてくれる暗号・なぞなぞ・判じ物みたいな「関係諸国との協議を始める」との公式発表を行なって、怒号も投石も受けずに米国ハワイに飛んだ野田ドジョウ首相でしありましたが、短い日程は瞬く間に終わり既に御本人は帰国の途に就いている由。どんな「TPPお化け」が出るかと思っていたら、相も変らぬ上から日本を見下ろす図体の大きな米国が待っていたようです。日露戦争の幕引きを仲介して日本に恩を着せたかつてのセオドア・ルーズベルト大統領は「左手に棍棒を持って笑顔で握手する男」と呼ばれていたそうですが、再選が難しいともっぱらの噂のオバマ大統領は笑顔と貫禄を見せながら議長役を務めつつ、日本の首相に対しては手の込んだ罠を仕掛けておいた模様です。相手がドジョウならば足で泥を掻き乱して笊(ざる)に追い込むだけの話なのですが……。

12日昼(日本時間13日朝)にホノルル市内で行われた日米首脳会談の米側の報道発表をめぐり、とんだハプニングが起きた。米側の報道発表資料には環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について「野田佳彦首相が『すべての物品およびサービスを自由化交渉のテーブルに載せる』と述べた」と書かれていた。これに対し、外務省は「そのような発言を首相が行った事実はない」として、米側の報道発表を否定する報道発表をして火消しに躍起となった。外務省によると、首相は「昨年11月に策定した『包括的経済連携に関する基本方針』に基づいて高いレベルでの経済連携を進める」と述べただけだという。外務省が米側に説明を求めたところ、米側は同基本方針に「センシティブ品目(自由化に慎重な品目)について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とし…」と書かれていたことを踏まえ、報道発表したと説明。誤解を認めたという。…… 

■民主党を割るような大騒ぎをしている最中でも、TPP参加に「反対」と明言する議員は一人もなく、賛成派に盾突いた人たちは自称「慎重派」だったことを考えれば、米国側から見れば遅かれ早かれTPPに参加するのだろうと気を利かせて?先回りしてやってつもりだったのかも知れませんが、一晩「慎重に」熟慮したことで離党分裂の危険を何とか乗り切った野田ドジョウ首相としては、「慎重に」の一言を省略されては立つ瀬がありますまいなあ。米国が発表した資料にある問題の『すべての物品およびサービスを自由化交渉のテーブルに載せる』という一文では、何処にも「慎重に」の一言を挟み込む隙間がありませぬ。皮肉なことに「センシティブ(慎重)品目に対する配慮」という肝腎な前提条件をばっさり切り捨ててシラッと発表しているのですから、相手は正確に「慎重」の意味を承知の上で、この可否も是非も誤魔化す玉虫色の表現は受け付けないぞ!と軽いジャブを打ったつもりなのかも知れませんが、この先制パンチは厳しいボディブローになって後々ずきずきと痛むことになるかも知れませんぞ。これを「誤解」と報道してよいのでしょうか?


……この基本方針は菅直人政権が閣議決定したもので、民主党政権のあいまいな姿勢が今回のような誤解を招いたともいえそうだ。
2011年11月13日 産経ニュース 

■そもそも、とかく情報不足が責められるTPP参加ですから一般国民としては軽々に賛成だの反対だのとは言えない難問ではあります。しかし、アノ菅アルイミ首相が唐突に言い出して反発を受けてすぐに引っ込めた不快な記憶がある限り、決して手放しで賛成など出来ないという不快感情的な問題があるのは確かでしょうし、政権交代マニフェストで約束した国家戦略局も看板倒れになっている現政権に「国の形」など描いて貰いたくはない!という強い拒否反応も起こっているのではないでしょうか?

■民主党内の「慎重派」が大喜びして送り出したのに、ハワイの会議が始まってしまえば日本の新聞は挙って「TPP交渉入りを表明」と見出しを打ってしまいましたし、外国メディアも「慎重に」も「関係諸国との」も省略して会議の進捗状況を続々と報じていたようであります。


野田佳彦首相は13日午前(日本時間14日早朝)、米ハワイ州で開催されているアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に向け、関係国と協議に入る」と表明した。その上で、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築に向け、「主導的な役割を果たしたい」と述べた。一方、日本の現状については「少子高齢化が進展し、東日本大震災を契機に厳しいエネルギー制約に直面する『課題先進国』だ」と指摘。昨年6月に閣議決定した新成長戦略を拡充する「日本再生戦略」を年内に取りまとめる方針を改めて強調した。
「(成長のために)復興財源・社会保障の安定財源の確保に取り組む」としたが、消費税増税については具体的に言及しなかった。
2011年11月14日 産経ニュース 

■TPPよりも大規模なFTAAPの実現に「主導的な役割を果たす」と、TPPの交渉会議が開催されるハワイ現地に乗り込んで発表するということは「関係国との協議」は実質的に参加することでなければ辻褄が合わないでしょう。「経済成長のために増税」だの「自由貿易と農業再生の両立」だの、最初から無理な組み合わせを平然と語れる野田ドジョウ首相の神経が分かりませんが、縦割り行政の官僚組織から出て来る紙切れを切り張りしている間に日本はボロボロになって行くような気がしますなあ。日本の企業や国自体が、民主党みたいな内向きで志の無い寄り合い所帯みたいなことになったらどうしましょう?

西岡武夫 享年75歳 其の弐

2011-11-08 13:03:17 | 政治
■「三権の長」問題は江田五月参議院議長が2011年1月に、菅再改造内閣で法務大臣に就任して世間を驚かせたことがありました。第2次田中角榮改造内閣で中村梅吉元衆議院議長が法務大臣に就任したことはありましたが、参議院議長の入閣は前例が無かったようです。そもそも党の綱領も原理原則も持たない民主党なのですから、健康と年齢の問題が無ければ「どじょう演説」以上の立派な政治家としての矜持を示す名演説が聞けたかも知れませんし、格の違いを見せ付けて代表に当選していたかも知れません。どうやら打診を受けた御本人も本気で立候補を考えたことがあったようですから、野田ドジョウ首相としては出馬を見送って貰って有り難かったに違いありません。西岡参院議長の死去に際して野田ドジョウ首相が談話を発表しました。

西岡武夫参院議長のご逝去の報に接し、心から哀悼の意を表します。西岡武夫氏は、昭和38年以来、衆院議員として11回、参院議員として2回当選され、この間、文部大臣、参院議院運営委員長、参院議長などを歴任され、教育分野をはじめ国政全般に多大な貢献をなさいました。特に、参院議長として、難しい議院運営や、参院改革の議論などにおいて優れたリーダーシップを発揮され、わが国の東日本大震災からの復旧・復興に向けて今後もさらなるご活躍が期待されていた中で、突然の訃報に接し、誠に残念であり、深い悲しみの念を禁じ得ません。ここに心よりご冥福意をお祈り致します。
2011年11月5日(土) 産経新聞 

■あの「ドジョウ演説」をした同一人物が書いたとは思えない型通りの面白くも何ともない事務的な文章であります。さり気無く原発事故対応を巡って菅アルイミ前首相に何度も辞職を迫った話は省かれているのが印象的ではありますが……。個人的に西岡議長の言動が気になって、今年の3月から報道記事をストックし続けておりました。自分の死期を悟った上での発言や行動だったとしたら、軽薄な「クールビズ」騒ぎを一顧にせず国会内でネクタイを決して外さなかった西岡参院議長は本当の侍だったのかも知れませんぞ。経歴を見ても菅アルイミ前首相とは対照的な地道で一途な生き方が浮かび上がりますからなあ。

■衆院11期、参院2期。早稲田大を卒業後、長崎新聞の論説委員などを経て63年の衆院選旧長崎1区で初当選。76年にロッキード事件を批判して自民党を離党して新自由クラブの結成に参加し幹事長に就任。80年に自民党に復党して竹下、宇野内閣で文相、党税調会長や総務会長などを歴任。政治改革をめぐり93年に再び自民党を離党し、94年の新進党結成に参加。98年の自由党結党には副党首として参加。98年の長崎県知事選に出馬して落選。01年参院選の比例代表で当選。03年の民主、自由両党の合併で民主党入り。

■西岡議長の追悼でもあり、もしかすると民主党(政権)への追悼になるかも知れませんが、今年3月から10月27日までの西岡言行録を振り返ってみようと思います。話は桃の節句3月3日から始まります。


政府・与党が平成23年度予算案を予算関連法案と切り離して無理に衆院を通過させたことで国会運営が滞り……
「憲法に違反する。議長の判断を認めるわけにはいかない!」民主党の羽田雄一郎参院国対委員長は2日の記者会見で、同党出身で本来は身内の西岡武夫参院議長を痛烈に批判した。西岡氏が同日、1日に衆院を通過した予算案を衆院通過から1日遅れで受領したためだ。
西岡氏が異例の対応をとったのは、民主党が予算関連法案を予算案と同時に通過させなかったからだ。赤字国債を発行するための特例公債法案など歳入に関わる予算関連法案は予算案と同時に参院に送るのが慣例だが、関連法案の衆院再可決に必要な3分の2の議席確保にめどが立たないため、野党説得の時間稼ぎという意味もあって関連法案の送付を遅らせたのだ。
結局、西岡氏は予算案を宙に浮いたままにしておくことは避け、2日に受領することで妥協を図ったが、同党の参院幹部は敵か味方か分からなくなった西岡氏に不満をぶちまけた。
「菅さんよりも、西岡さんの方が、先に辞めなければいけなくなるんじゃないか」…… 

■大震災・原発事故の前、この頃は外国人からの政治献金疑惑で「菅辞めろ!」の声が党の内外で高まっていたことを思い出します。本当にあの未曾有の大災害と大事故を天佑神助と大喜びした日本人は菅アルイミ前首相ただ一人みたいなものでしたなあ。

西岡武夫 享年75歳 其の壱

2011-11-08 13:02:42 | 政治
■「内弁慶」という慣用句はありますが、これまで日本語には「外弁慶」という表現はありませんでした。政権交代が起こると日本語もいろいろと変化するらしく、民主党政権になってたったの3年で既に3人目となった歴代総理大臣はうち揃って外国に行くと嬉しさの余りなのか、すっかり舞い上がって子供染みた万能感覚が爆発したかのように大風呂敷を広げて大見得を切って悦に入るという実に困った悪い癖を継承しているようです。初代の鳩山サセテイタダク元首相は政権交代直後の興奮状態だったこともあり、特殊な思考回路をフル稼動させて一足飛びに外交政策を大転換できると勘違いし続けて自滅。次の菅アルイミ前首相は自らの舌禍で参議院選挙に大敗してネジレ国会という重荷を背負い込んでしまったので、国内では野党と世論調査の結果に怯えて猫を被っている苦しさの反動でもありましょうが、国際会議に出席すると生涯の夢だった総理大臣になった事を実感したいばかりに、先代に負けず劣らず次々に大風呂敷を広げて見せては飽きると放り出し、また次の風呂敷を取り出して子供のように遊んでいるようでした。

■そして三代目の野田ドジョウ首相も、海外に出向くと同じ病を発してわざとらしい低姿勢をかなぐり捨てて主要議題とはまったく関係の無い「消費税引き上げ」を宣言してしまったのでした。民主党政権はその名前に似ず、非民主的で独断専行を好む気味の悪い正当なのだと、多くの国民が知ってしまったからには、いよいよ解散総選挙などして議席を失って路頭に迷うのはイヤだ!という内向き下向きの虚仮の一念だけを求心力として生き延びるための協同組合になっているのかも知れません。そんな政党に政治が出来るのかいなあ? ■

野田佳彦首相は7日の衆院本会議で、フランス・カンヌでの20カ国・地域(G20)首脳会議で消費税率の10%への引き上げを表明したことについて「国内で方針として示したことを国際社会で説明し、アクションプラン(カンヌ行動計画)に入れた。できなかったら責任を取るという話はしていない」と述べ、「国際公約」ではないと強調した。首相は国際公約を「説明」に格下げしようと必死だが、野党側は首相の“逃げ口上”だと反発している。…… 

■政権交代マニフェストを紙くずにして平気な政党の代表ですから空手形を濫発しても政治家として良心が痛むなどということもないのでしょうが、さすがに「国際公約」と報道されるとちょっと気になるようです。カンヌの議場では誰も注目しない場違いな発言でしたが、遠く離れて唐突に「公約」を聞かされた日本国民にとっては大問題でありました。増税・TPP参加・年金制度改悪などなど矢継ぎ早にマニフェストには何も書かれていない大きな政策変更が発表され、党内では愚にも付かない「議論」で時間を浪費し、国会では総選挙の緊張感が無い噛み合わない質疑がだらだらと続くばかりで国民は何が何だかさっぱり分からず、ただ不安になって日に日に嫌な予感が膨らむばかりであります。


首相は、年末にかけて「社会保障と税の一体改革」に伴う消費税率引き上げ時期を具体化させ、来年3月までに関連法案を提出、次期通常国会で成立させたいとしている。会期内の法案成立を目指すには自民、公明両党の協力が欠かせない。しかし、両党は関連法案提出前の衆院解散・総選挙を求めている。その上、「2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げる」というスケジュールを既定路線と思っていた首相にとって、カンヌでの発言を両党が「国際公約をした」と責任追及に出てきたことは想定外だったようだ。こうなると、与野党合意の障害となるような要因を摘んでおく必要がある、と首相は判断した。カンヌでも同行記者団に対し「国際公約というと飛躍のある言葉だ。法的拘束力があるわけではない」と予防線を張っていた。…… 

■「法的拘束力」が無いのは解散総選挙を限界まで先送りしているからではないのか?国際信義の上からもこの発言は問題でありましょう。「法的拘束力」が無いからG20の場で何を言っても構わないと考えているのなら、一体、誰が日本の言葉に耳を貸すのでしょう?本来は「2010年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げる」の後に、「でも前の総理大臣が選挙で大負けして国会がネジレてしまった上に大震災と原発事故も起こってその対応にも失敗しているから、本当に消費税の引き上げが出来るかどうか分からないのが実情で……」と付け加えるべきだったのでしょうが、それでは単なる独り言になってしまって格好が付かないから断定口調で発表してしまっただけのことなのかも?


衆院本会議では、消費税率引き上げ時期の具体化にあたり「政府・与党の議論や、与野党協議を踏まえて決定したい」と低姿勢を見せながらも、衆院解散の時期に関しては「関連法案提出後は成立に全力を尽くし、(増税)実施前に総選挙で民意を問うのが筋だ」と突っぱねた。これに対し、自民党の西村康稔氏はアドリブで再質問に立ち、「首相は国際的に公約された。実現しなかった場合には当然、責任を取る。内閣総辞職か衆院解散と考えるが、いかがか」と追及した。首相は、唐突の質問に目を泳がせ、再び演壇に立つと「実現に全力を尽くすのが責任だ」と答弁した。語気を強めた割に、内容は曖昧だった。騒然となった本会議場で、続く公明党の竹内譲氏も「海外で表明するとは何ごとか」と批判した。野党が質問に立つ8日以降の衆院予算委員会で集中砲火を浴びることは必至だ。……
2011年11月8日(火) 産経新聞 

■政権交代マニフェストには「4年間は引き上げない」と書いておいて5年後に引き上げる準備をするという奇怪な「国際公約」をして帰国する野田ドジョウ首相が政府専用機でニース市のニース・コート・ダジュール空港から日本に向けて出発したのは日本時間5日の未明でしたが、民主党では貴重な本格的な政治家だった西岡武夫参議院議長が5日午前2時24分、肺炎のため都内の病院で死去したのでした。野田ドジョウ政権が発足した後の10月27日に「首相の指導力」を切望する所見を発表していた西岡議長は、翌28日からは口内にできた帯状疱疹の影響で参院本会議を欠席して入院していたようですから、野田ドジョウ首相の「国際公約」に関して何を思ったかは遂に聞くことはできなくなってしまいました。

■6日夜、出身地の長崎市の葬儀場「法倫会館」で営まれた通夜には与野党の関係者ら約1100人が参列したそうで、その中には帰国早々にとんぼ返りで参列した野田ドジョウ首相の姿もあったそうですが、政治的な悪口雑言の限りを尽くして「退陣しろ!」と言われ続けた菅アルイミ前首相の姿は無く花輪だけが飾られていた由。どこまでも度量の狭さと陰湿な執念深さは治らない人のようでありますなあ。そんな人物が452日間も総理大臣の席に座り続けていたと思うと、今更ながらゾッとします。

■野田ドジョウ首相が誕生した民主党代表選の直前、8月26日の午後のこと、クラッシャー小沢と鳩山サセテイタダク前首相は「第3の候補」を模索していたのでした。なかなか一本化できない海江田経産相と小沢鋭仁元環境相の両候補に不満足だったクラッシャー小沢は長年の盟友だった西岡武夫参院議長を考え、鳩山サセテイタダク元首相は原口一博前総務相を推して話がまとまらず、鳩山サセテイタダク元首相が「三権の長が(別の)長になるのはどうでしょうねえ」と文句を言えば、クラッシャー小沢も「原口は若い。雑巾がけもなあ…」と不満げで、まあショウガネエナアと決まったのが海江田候補だったとか……。

円高と日銀のお仕事 其の伍

2011-11-05 15:02:51 | 日記・雑学
■対談も大詰め、これから日本が採るべき経済政策のお話です。

――では、最後のまとめとして、これから日本はどのような経済政策を取るべきなのかについて、意見を聞かせてください。

若田部 第1にはやはり震災復興が大事です。まだ9万人弱の人が避難所生活を送っているというのは異常な状態だし、仮設住宅に入れても、働く場所がない、仕事がない、お金がない。場合によっては食事を切り詰めるなんていうのは、文明国ではありません。まずはそこに重点的に対応する。それからマクロ経済として次の課題はデフレからの脱却で、経済成長路線に復帰し、そういう条件が整ってきて財政再建、そしてさまざまな制度改革という順番だと思います。……

――野田首相の国会の答弁では、現役世代が痛みを分かち合うと言っていますよね。

若田部 痛みを分かち合う心は持っていても、痛みは痛みなんですよね。……「仕方ない」と思って税金を払ったあとは、みんな財布のヒモをしめる。そのことが一番大事な復興需要みたいなものが出てくるのを阻害します。そうするとデフレがさらにひどくなりかねない。悪いことばかりです。だから、政策の流れでいえば、復興から考えなくてはいけないので、マクロでいうと財政を出動させる。そうする円高が進んでしまうかもしれないので、円高対策、震災復興、そしてデフレ脱却を考えると、一層の金融緩和を行う。普通に考えれば、こういうことだと思います。……
 
■この①円高対策、②復興政策、③デフレ脱却という順番は非常に重要だと思います。これを無視して②のために「まずは増税だ!」と動き出したら③のデフレ対策が消えて無くなり①の円高対策は永久に不可能になってしまうでしょう。日本を滅ぼすような話を誰が野田ドジョウ前財務大臣に吹き込んだのでしょうなあ?


……気をつけないといけないのが、1997年に消費税増税や社会保険料の引き上げで、国民の負担を9兆円増やし、その後不況になった経験です。あのときには、アジア通貨危機が起きたので、不況に陥ったのはアジア通貨危機が主因だという話になっているが、負担の増加が悪影響をもたらしたことを否定できる人は少ない。今回も、例えば2013年度から増税をやるとなると、ちょうどギリシャがデフォルトするときと、一緒になりかねません。

高橋 その可能性はありますね。

若田部 昭和恐慌のときも、いまと似たような感じがあった。29年の10月に金本位制への復帰を決めて、30年の1月に実施した。大恐慌という大嵐がきているときに、窓を開けたようなもだという言い方があるが、歴史を生半可に知っている人の中には、金本位制への復帰は正しかったけれども、大恐慌がやってきて、日本経済がダメになったという言い方をする人もいます。今回も、「増税は正しかったけれども、ユーロ危機が……」と、これと似たような言い方をされる可能性もある。

高橋 97年の時も「消費税増税は正しかったが、アジア金融危機が……」と似たような言い訳があった。……ギリシャのCDSからみれば、多分、増税とギリシャのデフォルトは同じタイミングになる。そのときに震源地ではない日本の景気がどうして悪くなるのか。リーマンショックのときも、景気が急激に落ち込んだけれども、実はその前から悪くなっているんですね。2006年に量的緩和を解除し金融引き締めに転じた。その約半年後から景気が悪くなってくる。悪くなっているときに、リーマンショックで後ろから押されたために、大変な景気後退になったわけです。だから今回も、円高や増税で雰囲気が悪くなってきているときに、後ろから押されると大変ですよ、ということを、言っているわけです。

若田部 今の政府は大嵐が来ることがわかっていながら、自ら窓を開け放とうとしているということです。 

■以上で橋・若田部対談は終了であります。大嵐が来るのを窓を開いて待ち構える野田ドジョウ首相の心中や如何に?やはり、既に「窓を開けたのは正しかったのだが、嵐が来たのが不運だった」という言い訳を誰かさんが用意して手渡しているのかも知れませんなあ。

円高と日銀のお仕事 其の四

2011-11-05 15:02:35 | 日記・雑学

――「実質成長率信仰」については、どう考えますか。

高橋 実質成長率は高いほうがいいに決まっている。ただ、実質成長率を上げるのは結構、難しい。もし、実質成長率を上げる確実な方法がわかったら、ノーベル経済学賞ものです。実質経済成長率を上げるには基本的には、生産性を上げないといけないが、生産性は物的資本、人的資本、天然資源、技術の組み合わせで決まるので、こうすれば上がるという方程式はありません。ただ、実質成長率を上げるためには、企業が設備投資をどんどん行って、その中に技術が織り込まれているという設備投資経由によるものが、一番、生産性を上げる可能性が高い。

若田部 技術が設備に体化されるというような形ですね。

高橋 そうです。それで実質金利(=名目金利-期待インフレ率)をある程度下げないと、設備投資が出てこない。だから、期待インフレン率を高めて実質金利を下げると、設備投資が出てくるから、実質成長率を上げる方向に働くと、私は実は思っている。今の状況では、日本はデフレ、つまりインフレ率がマイナスで実質金利高いから、設備投資がでてこない。実質金利は為替にも関係する、実質金利の高いほうの通貨が高くなるから。実はお金の量が少なくなると、インフレ率が低くなって、実質金利が高まる。デフレ、円高、設備投資不足も実質金利を介して、みんな整合的につながっている話なんです。…… 

■実質金利と名目金利のややこしい話が、デフレや円高との関係から説明されると比較的分かり易くなります。今の日本が苦しむ経済的な停滞は、決して大地震や津波のような自然災害ではないというのが橋さんの主張であります。では、誰がどんな大間違いをしているのか?


……小泉政権のときに、要するにみんなが予想インフレ率がわからないと言うから、私が物価連動国債を新たに発行できるようにしたんです。一生懸命やって、実現まで2年かかった。この物価連動国債と通常の固定金利の国債を比べることで、市場がインフレ率をどう予想しているかわかる。今の日本はこれを計算すると、これからの5年間でマイナス0.5%です。アメリカを同様に見てみると、予想インフレ率は1.5%くらいある。名目金利の差は小さいけれども、実質金利は2%程度も差がある。

若田部 アメリカの方が予想インフレ率が高く、反対に実質金利は日本よりが低いということですね。それで、実質金利の高い日本円に需要が集まって円高になる。当然ですよね。…… 

■日銀にとって「インフレ」という言葉はすべての辞書から削除したいくらいに忌み嫌われる呪わしい響きがあるようなので、「インフレ・ターゲット」だの「予想インフレ率」だのは耳を塞いでしまいたくなる話でしょう。手が付けられないインフレよりはデフレの方がずっとマシだ、と信じて疑わない病気が蔓延している巨大な組織を消毒して治療するのはほぼ不可能かも知れませんなあ。ここから「日銀があと70兆円お札を刷れば円・ドルレートは100円になる」という橋説に入ります。


若田部 ただ、円高是正論者の中には、円高を是正するために金融緩和の必要性は分かるけれども、すでに日本は十分に金融緩和をしてきた、この失われた20年をみると、欧米の中央銀行に比べて、一番自分自身のバランスシート(貸借対照表)を拡大して、金融緩和を行ったのは日銀だという人もいますね。

高橋 これには完璧な誤解があると思います。金融緩和の度合いをGDPと中央銀行のバランスシートの大きさの対比でみるんだけれども、GDPに対する比率は、もともと現金通貨がどれだけ決済などに使われているかで、国によってそれぞれ違う。アメリカのようにクレジットカードやチェックなどが多く使われて、現金通貨をあまり使わない社会というのは、GDPに対する中央銀行のバランスシートの比率は低い。だから、金融緩和の度合いを見るときに大切なのは、その水準ではなく、どのくらい変化したかという変化のほうが重要です。例えば、アメリカは低いレベルから、ものすごくGDPに対する中央銀行のバランスシートの比率を上げた。日本は高いレベルから少し上げただけで、その意味では金融緩和をしていません。それで、結果的に日本は円高になっている。…… 

■金融緩和政策の度合い(効果)は「水準」ではなく「変化」の方が大事だという話は、橋氏は雑誌やテレビで何度も語っていますが、「日本は十分に金融緩和をしてきた」説は、日銀が垂れ流している責任逃れのヨタ話の類だと分かっているのに大手新聞もテレビのニュース解説番組でも知らん振りして日銀の伝令役に徹しているのは実に不思議であります。


高橋 為替の話をすると、1985年のプラザ合意の1年間ほどあとから、実は円・ドルレートは、日本のベースマネーをアメリカのベースマネーで割り算した数値にほとんど近くなる。……国際金融のマネタリーアプローチから自然に出てくる。今だと大体、日本のベースマネーは約130兆円で、アメリカのそれは2兆ドルくらいだから、割り算すると円・ドルレートは1ドル大体65円になる。本当にこれはね、ここ25年で7~8割くらいの確率で当たる。だから、1ドル100円くらいにするためには、あと70兆円ほどお札を刷ればいい。70兆円マネーの供給量を増やしても、少しインフレになるくらいだと思います。しかも日本はいま国内が大変だから、この金融緩和は国内の金融政策としてやるということす。だから、他の国は日本に対して何も言えない。…… 

■実際にリーマン・ショックを起こして世界中に多大なご迷惑をかけた米国は、一言も謝りもせずにドル紙幣を洪水のように国際市場に溢れさせて金融破綻を避けるのに必死でありますし、EUもギリシアばかりを責めていますが、ちゃっかり共通通貨のユーロをダンピング同然に安値に誘導しているという現実を踏まえて、議論はメディアが盛んに流している「近隣窮乏化」説の誤りを衝いて「通貨安競争は大恐慌の時に世界経済を混乱させたとして、悪者扱いされているけれども、最近の大恐慌研究ではそうではない。金融緩和によって通貨を安くした競争は、基本的に悪くなかったというのが結論だ」という新しい理論が紹介され、帝国主義的なブロック経済圏の少なくとも内側では「近隣富裕化」の効果があったとの分析まで出ているのだそうです。

■為替問題の結論としては「貧しくなりたくないのであれば、近隣窮乏化であろうがなかろうが、通貨安競争には参加するしかない」という覚悟の問題になるというお話です。

円高と日銀のお仕事 其の参

2011-11-04 14:00:28 | 日記・雑学
■日銀と大蔵省との対立と軋轢は戦後ずっと続いていたのは有名な話で、日銀総裁人事や公定歩合の引き上げ問題などでは政権与党だった自民党も混ざって三つ巴の大喧嘩をしていたものです。そして、その陰には新聞やテレビがまったく触れない米国という真の支配者がいて、プラザ合意の頃から日本の富を吸い取って米国の赤字を裏から支えようと悪知恵を働かせて陰に陽に圧力をかけていたという話も既に秘密ではなくなっているようです。

若田部 それは日銀の独立性にかかわる問題ですね。97年の日銀法の改正の時には、政府部内ではそういう議論はしなかったんですか?それともする余裕がなかったのですか?

――それまでの日銀法では、政府に日銀の役員の解任権や、大蔵(財務)大臣に業務の命令権があったが、新日銀法ではそれらが廃止されて、日銀の独立性が高まりましたね。

高橋 日銀法改正というのは、当時、大蔵省(現・財務省)が接待スキャンダルに追われていて、それから目をそらすために、仕掛けて出してきたやつだから(笑)。もう動機が不純なんですね。だから、日銀の独立性について議論ができるわけない。大蔵省が「独立性がちょっと……」などと言ったら、当時の雰囲気では「まだ大蔵省は懲りていない」と、言われてしまう。だから、中央銀行の独立性がどうあるべきかについて、実は真面目な議論ができなかった。同時期に、バンク・オブ・イングランド・アクト(イングランド銀行法)も改正が行われていて、当時から、すでに中央銀行の独立性というのは、金融政策という手段に関する独立性であって、目標の独立性ではないということは、私はだいたい知っていました。しかし、日銀法の改正に当たっては、大蔵省はそうした資料は提出しなかった。 

■難しい財政問題などはさっぱり分からない国民でも大蔵省の悪口が言える材料となったのがあの「ノーパンしゃぶしゃぶ」などの過剰接待の実態暴露事件でしたが、今から考えれば護送船団方式の鉄壁の守りを乱暴に破るために米国のCIAあたりが仕組んだ謀略だったとの指摘も出来るようですが、役所の中の役所と自他共に認めた大蔵省は悪口雑言の嵐の中で解体されたのでした。バブル経済のお祭り騒ぎとその後の「失われた10(20)年」も米国が仕掛けた急激な円安が発端だったのですから、解体された大蔵省としては納得できない非難も多かったでしょうし、棚から牡丹餅の新日銀法で「独立性」を手に入れた日本銀行は大喜びだったのでしょうが、どちらも成長政策を打ち出さないままリーマン・ショックとギリシア危機の時代に突入してしまったのは残念至極。


高橋 日銀にはできるだけ国債は買いたくないという、持って生まれた本能みたいなものがあります。まず金融を緩和する、金利を下げると負けという意識がある。国債を沢山買うのも金融緩和になってしまうから、要するに両方とも負けということになってしまう。だから、そういう意味でバイアスがかかっていて、日銀法改正以前は、実質的に大蔵省の子会社だったということが、心理的に影響していると思う。実際に、昔は「国債を買え」と、言ったこともあります。

若田部 その根拠は財政法第5条但し書きですね。予算総則の「第5条 国債整理基金特別会計において、「財政法」第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる金額は、同行の保有する公債の借換えのために必要な金額とする……」。つまり、日銀が保有する国債のうち、償還される分については、日銀が直接引き受けることができるということですね。

高橋 その条項は予算総則ですね。それが有名になったのはうれしい。私は1990年代前半に(大蔵省)理財局の担当課長補佐だったのですが、これを使って日銀に国債を引き受けてもらっていました。予算総則では、引受は日本銀行が保有している国債の今年度の償還の範囲内ということになっているので、実はそれを目一杯やったところで、ベースマネー(日銀が供給する通貨のこと。市中に出回っている流通通貨と日銀当座預金残高の合計)は増えないというレベル。だから、日銀の直接引き受けは「禁じ手だ、禁じ手だ」というのだけれども、その禁じ手をずっとやってきたわけです。…… 

■この「禁じ手だ!」の大キャンペーンが割と成功したことが不思議であります。新聞各紙がお先棒を担いで「禁じられている」報道に熱心だったのも、おそらくは記者クラブの癒着構造が原因なのでしょうが、財政再建の錦の御旗を押し立てて「増税だ!」と一心不乱の財務省も円安になって景気が回復したら税収が増えてしまい、悲願の増税が出来なくなるから日銀と結託して情報操作をしている節があるようです。


若田部 日銀が国債の引受を嫌がるときには、それが財政をファイナンスすることになるという理由を挙げますね。直接引受をやると、財政や通貨に対する信用が失われると……。

高橋 それは観念論でしょう。これまで財政法の但し書きを使って、日銀が直接引受をやってきて、国債の信認が失われて、長期金利が急上昇したことはありません。……今年度、日銀が保有している国債の償還額は30兆円。今年度は12兆円を日銀が引き受ける計画なので、償還額に対して18兆円の余裕がある。だから、日銀が国債を引き受ければ、増税しなくても、復興財源は捻出できます。…… 

■ここに出て来る「増税しなくても」の一節が重要ですなあ。国会では民主党のマニフェストを今こそ実行して公務員給与2割カット!を法制化すれば増税予定分は捻出できるじゃないか!?と至極当たり前の議論が吹っ掛けられているのですが、野田ドジョウ首相は役人作文を俯いて棒読みするばかりで議論が噛み合ったことがありません。次の総選挙で、もしも奇跡的に民主党が原型を留めていたとして、一体、どんなマニフェストをどの面さげて発表するのか、今からぞくぞくするほど楽しみでありますなあ。

安全運転で見切り発車 其の伍

2011-11-04 08:47:10 | 政治
■「税」の一文字が巨大な意味を持って野田ドジョウ内閣の首根っこを押さえつけているというわけであります。ドジョウのぬめりで官僚の魔手を逃れることは出来ないのかも知れません。

国家戦略会議のメンバーをみても、強引に官僚の壁を打破できるようなパワーを持った人物は見当たらない。経済財政諮問会議では11人のメンバーのうち、改革派の学者や財界人など民間が4人を占め、首相と官房長官がこれに加われば過半数を超えた。……
野田佳彦内閣総理大臣 藤村修内閣官房長官 古川元久国家戦略担当大臣 川端達夫総務大臣 玄葉光一郎外務大臣 安住淳財務大臣 枝野幸男経済産業大臣 白川方明日本銀行総裁 岩田一政日本経済研究センター理事長 緒方貞子国際協力機構理事長 古賀伸明日本労働組合総連合会会長 長谷川閑史武田薬品工業社長・経済同友会代表幹事 米倉弘昌住友化学会長・日本経団連会長 
改革派として旗を振りそうなのは、学者の岩田一政氏と、経済同友会代表幹事の長谷川閑史氏ぐらいだろう。労働組合も民間ではあるが、改革には反対する守旧派に回ることが多い。緒方氏は独立行政法人のトップで、霞ヶ関の代弁者という役回りを担うことになるのだろう。……第1回の会合も……民間議員2人が独自に配布資料を用意したが、その2人とは岩田氏と長谷川氏だったのだ。経済財政諮問会議では、メンバーは内閣官房に執務室を持ち、事務局の職員を使って「民間議員ペーパー」の作成ができた。ところが、今回のメンバーには執務室は与えられないらしい。……当面は、2010年6月に決めた「新成長戦略」の見直し作業を行い、産業空洞化対策など、震災を踏まえた「日本再生の基本戦略」を年内にまとめる、という。当初は具体策まで盛り込んだ「日本再生戦略」年末までに、という話だったが、いつの間にかこれは「来年半ばをめどに」ということになった。これでは従来の役所の審議会とあまり変わらない機能しか果たせないのではないか。ここまで書き進んでくると、国家戦略会議に関する限り、野田内閣は財務省に完敗したことが歴然としてくる。戦略会議の立て付けに失敗した今、首相が財務省や霞ヶ関を敵に回してリーダーシップを発揮するのは、ほぼ困難だろう。もし、野田首相が政権を長続きさせようと考えれば、財務省傀儡というレッテルを甘受し続けるほかなさそうだ。 

■こうした内閣事情を背負って野田ドジョウ首相は生き馬の目を抜く国際会議場での交渉と議論に向かって政府専用機で飛んで行ったのであります。前途多難の四文字しか頭に浮かびませんが、残念ながら今の日本の首相を交換することは出来ないのですから、天佑神助を祈って大間違いを犯さずにだらだらと任期満了まで党内もまとまらず、身動き出来ないままで政界再編が起きるまでお勤め願うしかないようであります。
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安全運転で見切り発車 其の四

2011-11-04 08:46:53 | 政治
■国家戦略会議の初会合について磯山友幸「経済ニュースの裏側」に興味深い分析が出ておりました。 

国家戦略会議が2ヵ月近くたった10月28日になってようやく初会合を開いた。この間の、会議設立に向けた動きをつぶさに見てみれば、野田内閣と財務省の力関係が鮮明に浮かび上がってくる。組閣に当たって野田首相が古川元久議員を国家戦略担当相に抜擢し、国家戦略会議の設置を指示した段階では、野田首相は財務省の軍門に下る気はなかったに違いない。…… 

■マニフェストに「政治主導で予算の骨格を策定する」とされているのですから、財務省が警戒して反発するのは当たり前のことであります。予算を作るのなら財源も作らねばなりません。それを今は昔の「政治主導」で推し進められたら財務省は存在意義を失ってしまいますからなあ。


増税を明言することで財務省の全面的な協力を得る一方で、国家戦略会議を設置して財務省の暴走を抑えることを考えていたのだろう。大蔵省(現財務省)出身とはいえ、財務省幹部には決して評判が良いとは言えない古川氏を斬込み隊長にしたのも、計算したうえでの判断だったのだろう。首相周辺によれば、野田首相は古川氏に、国家戦略会議の早期設置を促していた。自民党政権時代に官邸主導のツールとして機能した「経済財政諮問会議を事実上復活し、国家戦略会議という通称にすればいい」とまで言っていた、という。経済財政諮問会議では民間議員が作った改革案を首相の決断で通し、予算案作成に向けての「骨太の方針」としてまとめていた。予算編成権こそが権力の源泉である財務省からすれば、大枠をはめられる「骨太の方針」は鬱陶しく、それを作る経済財政諮問会議は何としても葬りたい存在だった。それだけに、経済財政諮問会議の復活だけは何としても阻止したかったはずだ。…… 

■ミイラ取りがミイラになったような話ですが、師匠を持たない素人集団の政党なら前の与党に教えを乞うのも仕方がないでしょう。野党時代は散々批判した「経済財政諮問会議」をそっくり復活させてしまったら、何のための政権交代だったんだ?!と鬼より怖い支持団体から突き上げられるのは間違いないのですから、姑息な手段で独自色を出しつつマニフェストの公約を形だけでも実現したい、何とも切羽詰った危ない手品を見ているような感じがしますなあ。


古川氏は大臣就任直後に、竹中平蔵・元総務相や塩崎恭久・元官房長官に会っている。そして、国家戦略会議の設置についてアドバイスを受けたという。竹中氏は小泉純一郎内閣時代に、塩崎氏は安倍晋三内閣時代に、経済財政諮問会議をフル活用し、霞ヶ関と対峙した経験を持つ。竹中氏は古川戦略相に「とにかく野田首相とバイ(二人きり)で会う機会を頻繁に持つことだ」とアドバイスした、という。ところが、一部報道によれば、首相と古川戦略相の面会はなかなか実現しなかった。財務省から派遣されている首相秘書官が日程を握り、阻止していたというのだ。これについて古川氏は「首相とは15分くらいの話はよくしていた」と否定するが、古川氏自身が配信しているメールマガジンでは9月30日になってこんなことを書いている。
〈 総理、官房長官と3人で昼食を取りました。本会議があったので40分程度ですが、これだけ時間をとって総理と話をしたのは、内閣発足以来初めてです 〉
9月2日の発足以降、一ヵ月近く首相と戦略相がじっくり懇談する機会は作られていなかったということを吐露しているのだ。…… 

■何とも生々しい官僚支配の陰湿さと強靭さが伝わって来る恐ろしい話であります。官僚同士が縦割り構造を超えて閣僚のスケジュールを調整して邪魔をしたら総理大臣でさえ動きを封じ込められてしまう。まあ、それだけ民主党政権は役人にとって御し易い相手だっただけのことなのでしょうが……。


国家戦略会議発足までに2ヵ月を要したのは、大きな意味を持つ。組閣後すぐに会議が発足していれば、年末までに大枠を決める来年度(24年度)予算案の編成に方針を反映させることも可能だったはずだ。ところが、発足が10月末では予算案編成までに国家戦略会議としての方向性を打ち出すことは難しい。いくら立派な国家戦略を作っても、それが予算に盛り込まれなければ何も実現しない。それが国家というものだ。国家戦略会議の提言が実行に移されるのは25年度以降ということになるが、その予算案を作る来年の秋まで野田内閣が続いている保証はない。つまり、発足まで2ヵ月もかかったのは、財務省にとっては緒戦で大勝利を収めたようなものなのである。国家戦略会議の開催は10月21日に閣議決定された。結局、法的な裏付けのない会議体となった。経済財政諮問会議は設置が法律で明記され、明確な権限を持っていたが、それとはまったく異なる位置づけになったのだ。…… 
■閣僚が続々と「言うだけ番長」になり下がり、民主党政権自体が初代からずっと「言うだけ」政治を繰り返していれば支持率は奈落の底に落ちて行って再び政権交代、或いは政界再編へと雪崩れ込んで行くのでしょうが、「官僚は永遠で政治家は選挙に落ちたらお仕舞いなのさ!」と霞ヶ関から高笑いが聞こえてきそうであります。政権政党が何処に転がろうと、誰が総理大臣になろうと、小粒になった日本の政治家を丸め込んで洗脳するのはいとも簡単なことなのでしょうなあ。残念なことであります。


……経済財政諮問会議自体を復活させる手もあったのだが、小泉竹中改革の司令塔というイメージが強く民主党内に反発が強いため、結局この手は封印したままとなった。閣議決定された文書に記載された国家戦略会議の位置づけも、経済財政諮問会議とは大きく異なる。 文書にはこう記載されている。
〈 税財政の骨格や経済運営の基本方針等の国家の内外にわたる重要な政策を統括する司令塔並びに政策推進の原動力として、総理のリーダーシップの下、産官学の英知を結集し、重要基本方針の取りまとめ等を行うとともに、国の未来への新たな展望を提示するため、新時代の中長期的な国家ビジョンの構想を行う 〉
一方の経済財政諮問会議の役割は内閣府設置法にこう書かれていた。「内閣総理大臣の諮問に応じて経済全般の運営の基本方針、財政運営の基本、予算編成の基本方針その他の経済財政政策に関する重要事項について調査審議すること」比較すれば一目瞭然だが、「財政」「経済」という言葉は残っているが、「予算編成」という言葉はきれいに消えている。その代わりに「税」という文字が加わっているのも注目点だ。つまり、国家戦略会議には予算に関わる基本方針を決めるという役割は与えられていない、と読むべきだろう。もちろん、首相のリーダーシップで、国家戦略会議で決まった事を予算に盛り込むことは可能だ、という反論はあり得る。だが、現実には、首相が議長を務める場で予算の大枠として決めなければ、省庁の縦割りの予算要求と財務省による査定という昔ながらの形式に楔を打ち込むことはできない。…… 

安全運転で見切り発車 其の参

2011-11-04 08:46:37 | 政治
■読売記者とフリー記者の上杉氏などとの間の口論ばかりが注目された小沢一郎・元民主党代表の会見があった10月20日、同日の午前中に更に重要な発言をしていたそうであります。

民主党の小沢一郎元代表は20日午前、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への日本の交渉参加について「交渉ごとだから、慎重にやらないとな。しっかりと米国と交渉できるやつがいないとな」と述べた。国会内で面会した側近の三井辨雄政調会長代理らに語った。
2011年10月20日(木) 産経新聞 

■本当に「交渉できるやつ」がいるのかいないのか?それは大問題であります。それ以前に交渉に参加するかどうかで血みどろの党内抗争を起こしているようでは民主党自体に外国交渉を上手に進められる資質は無いのだと分かっているようなものなのですが……。


民主党の長島昭久首相補佐官は1日、東京都内で講演し、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加の意義について、「アジアを米国と中国(の2国だけ)に仕切らせない。アジア太平洋の秩序は日本と米国で作っていく積極的な視点が必要だ」と述べた。TPPを軸とした日米の経済連携を強化することによって、台頭する中国をけん制する狙いを示唆したとみられる。
長島氏はまた、「アジア太平洋全域を私たちの庭として手に入れ、経済秩序と安全秩序を作っていく」と強調した。野田政権の外交方針に関連し、「中国とどう向き合っていくかが最大の戦略課題だ。中国から見て『なかなか手ごわい』と思わせる戦略的な環境を整えていく」と語った。 .
2011年11月1日(火) 読売新聞

■鼻息の荒い景気のよい話ではありますが、交渉前にあっけらかんと手の内を明かしてしまうのは如何なものでしょうなあ?長島補佐官はテレビに出ると何の根拠があるのか不安になるほど自信過剰な発言をすることがありまして、大学院博士課程在学中に自民党の石原伸晃衆議院議員の事務所に入って公設秘書になった経歴からして民主党の中では浮いた異分子的存在になっている印象が強く、ちょっと危なっかしい感じがしております。更に1993年に渡米してテネシー州ヴァンダービルト大学客員研究員になった後、ワシントンD.C.のジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院SAISで国際関係論修士号を取得し、米国外交問題評議会研究員(アジア政策担当)に就任して朝鮮半島和平構想プロジェクトに参画、リチャード・アーミテージやマイケル・グリーンとも仲良しで、ジョンズ・ホプキンス大学ライシャワー東アジア研究所の客員研究員、などという輝かしい親米の経歴を引っさげているのですから余り張り切ってしまうと民主党内で足元をすくわれて身動きが出来なくなる心配もありあそうです。

■長島補佐官は政策シンクタンクの「国家基本問題研究所」の理事にもなっているようなので、無理に褒めれば民主党の懐の深さ、多種多彩な豊かな人材を持つ民主党と言えなくもないのですが、政党として綱領もまとめられない気味の悪い烏合の衆である事実を考えますと、文字通り後ろから鉄砲で撃たれる危険がますます高まりそうであります。長島補佐官がクラッシャー小沢が言う「交渉できるやつ」なのかどうか、お手並み拝見と言いたいとこですが失敗したら亡国ですからなあ。やはり、政権交代は大失敗だったのかも?

■「国家基本問題研究所」からの連想で民主党の政権交代マニフェストにも謳われていた似たような名前の組織があったことを思い出します。「鳩山政権の政権構想」の第3策、官邸機能を強化し、総理直属の「国家戦略局」を設置し、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する!と高らかに公約されていたのに、国会の事情で法改正が出来ず「局」は無理だからと「室」になったのでした。その初代室長が古川元久さんで担当大臣は何もしなかった当時の副総理だった菅アルイミ前首相。因果は巡る糸車でもないのでしょうが、今の国家戦略担当大臣はぐるっと回って古川元久になっております。

■本来ならマニフェストに言う「新時代の国家ビジョンを創る」仕事にTPP交渉は含まれるのが当然なのに、野田ドジョウ首相は内閣発足後の10月21日に既存の18の会議を廃止して「国家戦略会議」を発足すると決めてしまい、国家戦略室は会議の事務局という下請け機関にされてしまった由。10月28日に初会合が開かれたのですが、その内容がひどい物だったのだそうです。そもそも国家戦略会議の仕事は「税財政の骨格や経済運営の基本方針等の国家の内外にわたる重要な政策を統括する司令塔並びに政策推進の原動力として、総理のリーダーシップの下、産官学の英知を結集し、重要基本方針の取りまとめ等を行うとともに、国の未来への新たな展望を提示するため、新時代の中長期的な国家ビジョンの構想を行う。」と麗々しく規定されているのですが……。

安全運転で見切り発車 其の弐

2011-11-03 12:32:42 | 政治
■「4億円問題」関連でしか名前が報道されなくなっているクラッシャー小沢一郎元代表は、本人の発言は報じられないまま何故かTPP賛成派にされているようなのですが、これも不思議な話であります。自社の記者が袋叩きの非難を受けた10月20日の公開会見に関して讀賣新聞は根に持って弁明をしたり逆恨み気味に小沢批判を強めているようでもありますが、テレビも「ルールは守らなくちゃだめだよ」発言ばかり繰り返し放送して「説明責任」を果たせと半で押したように話を締め括るばかりでした。でも、あの会見ではTPP問題に関して重要な発言が出ていたのだそうです。BLOGOS編集部の10月25日付けのレポートを読んでみましょう。

……小沢氏は野田政権が推進する太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加について、「原則的・理念的にはいいこと」としながらも、「何の国民を守る対応策が講じられないままにやってしまいますと、国民生活は大変になってしまう」として、セーフティーネットを講じることが最重要と慎重な姿勢を示した。…… 

■前段だけを切り取って短く報道すれば「小沢一郎はTPPに賛成」と短絡してしまえるのでしょうが、政治家たるもの白紙委任で賛否を口にすることなどあろう筈もなく、ましてや自民党時代に対米交渉の最前線で働いたクラッシャー小沢が陣笠議員のような発言をすることなど金輪際ないでしょう。

 
小泉政権下で進められた構造改革の結果、雇用の仕組みが全く変わってしまったことを例に挙げて、「対応策をきちんと作らないままにやったので、いろんな問題が生じていると思います」として、何の対応策もせずにTPP参加交渉を進めてしまうと、小泉改革の二の舞になりかねないとの懸念を示した格好だ。…… 

■「雇用の仕組みが全く変わってしまった」小泉構造改革の裏話が『アメリカに食い尽くされる日本』というちょっと古い本に出ております。この本にはもっと恐ろしい裏話がごろごろ出ているのですが……。「ハーバード大学のライシャワー・センター(前)所長を名乗るアンドリュー・ゴードンという日本研究学者がいます。彼はいろいろ日本分析の論文を書いていますが、日本の美風といわれる終身雇用制度の研究かとして日本に送り込まれ……動労の流動化ということを制度設計している。要するに正社員のクビをどんどん切って、非正規雇用の社員をたくさん増やすことを「労働の流動化」理論で規制緩和の名の下に日本政府に働きかけて、法律の改正をどんどんやらせる係です。……」と副島隆彦氏が語っております。

■日本国内では「働き方の多様化」とか何とか言われた乱暴な規制緩和の一つでしたが、教育機関は「ゆとり教育」で未来の日本人の基礎学力を奪い、企業側も社員教育のコスト削減を喜び「即戦力の人材」などという無い物ねだりを言うようになって、日本の生産力は米国の思惑通りに弱体化して国際競争力が失われて行ったとも考えられそうです。クラッシャー小沢はこうした米国の動きを承知の上で「対応策」が必要だと警鐘を鳴らしているものと思われます。


―TPP参加をめぐって、農家を抱き込む形でいいのか。農家ばかり手厚くしていいのか、ご意見を伺いたい。

小沢氏:TPPは農林水産業の分野だけの物ではありません。あらゆる分野での規制の撤廃、自由化といいますか、関税の撤廃といいますか、そういう内容の物であります。広く農林水産業は一次産業であるため、生産性が他産業に比べて低いわけですし、それと同時に基礎的な食料は国内で自給する。その食料の生産に従事する人達の生活を国民全員で支援していくということは、これは国民全員が生活していく上で、また俗に食糧安全保障と言い方をする場合もありますが、その意味でも大事なことだと思っております。
ただ、今回のTPPは農林水産業の話だけではありませんし、むしろメインは他の分野にあると私は思っています。いずれにしても、どの分野でも国民が安心して安定して生活できるという俗に言うセーフティーネットを構築した上でやりませんと、競争力に弱い分野は生活できなくなってしまうという恐れがあります。そのため、自由競争または自由貿易は、もっとも日本がメリットを受けるわけですので、原則的・理念的にはいいことではありますが、何の国民を守る対応策が講じられないままにやってしまいますと、国民生活は大変になってしまう。…… 

■TPP交渉の「メインは他の分野にある」との見識は立派なものと申せましょう。日本より先に米国とTTA交渉を進めている韓国では大騒ぎになっているのに日本のマスコミは暢気に韓流ブームの名残を楽しむような話ばかりを伝えているのは困ったものです。米国が日本の富を収奪する策略を練っているのならぼろ儲けが出来ない農業分野ではなく、金融や医療や建築などのたっぷり旨味がある分野にこそ凶暴な情熱を燃やすことでありましょう。そう言えばヒューザーという一企業の問題に矮小化された感のある「耐震強度偽装事件」も米国のごり押しが原因だと先に引用した本に出ておりますぞ。曰く「1995年に起きた阪神大震災の後、建築基準法を見直すことになりました。……ところが建設審議会が始まるとアメリカの要求が出て来て……アメリカの業者が日本市場に参集したいために、建築確認の審査を民営化せよ、と迫ったのです。……審査という公共的なものを民営化して競争に委ねたことで日本の確認審査体制は崩れました」云々と森田実さんが語っています。

■さて、クラッシャー小沢の報道されなかった発言の続きを読みましょう。


たとえば、小泉政権下で一番顕著だったのは雇用の、従来の日本的な仕組みを取っ払ってしまいました!その結果、正規雇用、非正規雇用、その他いろいろな形態の雇用の仕組みが出来上がってますけど、それについての十分な対応策が講じられないままに、一気にやってしまいましたので、雇用面における格差や不安定さ、将来的な国民の生活というのが、非常に心配な状況になってきている。従来の雇用の仕組みでいうと、終身雇用・年功序列という良くも悪くも日本的な仕組みが維持されてきたわけです。それが全面的にこのままでいいとは思ってませんけど、少なくとも基本的な制度の背景にある哲学や理念という物は、国民みんなが安心して安定して就業して生活できるということを守っていかなくちゃいけない。その対応策をきちんと作らないままにやったので、いろんな問題が生じていると思います。
今回のTPPの問題につきましても、同じようにしっかりとしたセイフティーネット、対応策を講じた上でやるべきだと思っています。 

■つまりクラッシャー小沢は「対応策」の必要性を強く訴えているのであります。従って、それが不十分なまま交渉が進むようなら「TPP反対派」になるということでしょう。
アメリカに食い尽くされる日本―小泉政治の粉飾決算を暴く
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