旅限無(りょげむ)

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事実は映画より奇きかも? 其の壱

2006-11-30 14:26:13 | 外交・情勢(アメリカ)
■英国諜報員を主人公にした映画007シリーズの最新作が、12月1日の「映画の日」に公開されるそうです。題名は『カジノ・ロワイヤル』で、これが21作目。ジェームズ・ボンド役の役者さんも、今回のダニエル・クレイグで6代目だそうです。このシリーズには世界征服を企てる闇の秘密結社やら、裏の顔を持つ国際的な大富豪や大企業が悪役として登場するのが定番ですが、原作が発表されたのは1953年という冷戦の真っ只中でしたから、シリーズの最初数本は国際共産主義を思わせる組織が登場したものです。シリーズの中で007は世界中を飛び回りまして、勿論、日本にもやって来て「現地人と区別がつかない」立派な英語訛りの変な日本語を使って諜報活動をしました。国宝の姫路城をロケに使って丹波哲郎さん演じるタイガーさん経営の「ニンジャ・スクール」を撮影したものです。国宝の白壁に鉄製の十字手裏剣をドスッドスッと突き刺して、あわや国際問題になりかけたとか……。
 
■アマゾンの奥地、東南アジアの謎の島、極地から北朝鮮にまでを舞台にしたシリーズの中には、あっと驚く宇宙編も有りました。そんなこんなでタネが尽きたのか、今回は007誕生秘話を描いているとか……。題名が『カジノ・ロワイヤル』ですから、1967年にジョン・ヒューストン監督がオールスター・キャストで撮影したパロディものの正式なリメイク?という、実にややこしい背景を持っているようですが、気になるのはこの題名のロワイヤルが、フランス初の女性大統領を目指している野党・社会党の公認候補であるセゴレーヌ・ロワイヤル元環境相(53)の登場と、妙に重なる点と、原作に戻って「敵はソ連だ!」という骨太の東西ガチンコ対決になっている点であります。

■東京でもプレミア上映が行われ、テレビやネット上でもスポット映像宣伝が花盛りのようです。まさか、とは思いますが、旧ソ連の諜報組織が関与しているんじゃないか?と黒い噂が飛び交う大事件が、007の国で発生したのも、映画の宣伝効果を誰かさんが狙ったのではありますまいな?!この奇怪な事件は、とうとう、新型の核兵器?の登場を予告するような、本家の映画製作者も驚くような展開になっております。下手をしたら、隣国の核開発に関して「核爆発は失敗だった」の「長距離ミサイルは未完成」だのと言っていられない事態になるかも知れませんなあ。別にミサイルの頭に原爆を載せなくても、開発施設から必然的に出て来る物騒な放射性物質を特殊な容器に入れて持ち込まれたら、恐るべき殺人兵器になるのですからなあ。


英国亡命中の元ロシア情報機関員、アレクサンドル・リトビネンコ氏(43)が怪死した事件で、英保健当局は24日、同氏の尿から大量の放射能が見つかったと発表した。「恐らく放射性物質のポロニウム210によるものだ」としており、同氏が毒性の強い放射性物質を盛られた疑いが濃厚になった。ロシア当局の事件関与を疑う見方が出ている中、ロンドン警視庁も本格的な捜査に着手、事件の真相解明に全力を挙げる。 
時事通信 - 11月25日

■英国ロンドンの「寿司屋」で起こった奇妙な殺人事件は、被害者がロシアから亡命した元諜報部員だったことから、あれこれと憶測が飛び交っていたのですが、最初はウクライナの二枚目大統領の顔をぼろぼろにしたダイオキシンか、日本の女子学生が母親を実験台に使ったタリウムか、何らかの薬物を使った毒殺事件と思われていたのですが、この一報は入ってからは、平和ボケの日本人には何が何やらさっぱり分からない007も形無しのスパイ戦が表面化して来たようです。続々とややこしい情報が入って来ているので、ちょっと整理しておこうと思います。

イジメの原因が分かって来た? 其の四

2006-11-30 11:44:23 | 教育

福岡市教委は27日、いじめ問題に迅速に対応するため、担当課長を28日付で新設すると発表した。市内の公立小中学校計212校からのいじめに関する報告が、10月は昨年度の年間件数(19件)の5倍近い91件と急増したことなどを受けての措置。文部科学省の担当者は「いじめ問題が専門の課長設置は全国でも初めてではないか」とみている。市教委によると、担当課長は、初等教育課1人、中学校教育課2人の生徒指導担当職員とともにプロジェクトチームを設立。学校などから得た情報を基に個々の事例に対応する担当職員などを決定。重大案件では直接現地入りし対応に当たる。年度内をめどに、いじめのない学校や学級運営のあり方を示すいじめ防止計画の素案を作成する。

■文科省が「イジメ自殺を無くせ!」と命令したからこそ、「はい、イジメ自殺は有りません」と各自治体は報告していたのです。「イジメ自殺を見逃すな!」と指示しておけば、「はい、こんなイジメを発見しました」という報告が上がったでしょうなあ。今回は全国的な騒ぎとなって「イジメは有る」という当たり前の前提が公に認められたからこそ、数値がぴょんと跳ね上がっただけです。役人の才能というのは違法とならない「書類の改竄(かいざん)」だとも言われますからなあ。官僚機構という化け物は、問題が起こる度にポストを増やして無制限に成長して行くもので、この化け物は「書類」という餌をどんどん求めてがつがつ食べ続けるそうですなあ。

■折角、福岡市教委が新たな試みを驚くべき速さで決定したのですが、「担当課長」が直々に「担当職員」を名指しして解決を命令するという方法は、学校側をますます萎縮させてしまうでしょうなあ。学校と保護者と地域社会が協力して本来のイジメ問題を解決するのが前提で、それでも手に負えない難しい事案は警察なり、福祉関連の部署なりが対応するしかないのですが、「教育行政」という縄張りを自分達だけで守ろうとすると、警察の真似や福祉事務所の真似事まで先生方に押し付ける事になって、そんな事は大学でも習っていないし先輩教師からも教わっていないのですから、先生方のご苦労がまた増えますぞ。


いじめの可能性があるとして各学校長から市教委に報告があった件数は、10月は小学校25件、中学校66件の計91件。4‐9月の計13件(小学校5件、中学校8件)の7倍に達した。過去5年では、2001年度の計54件が最多で、04年度は計40件、05年度は計19件と低減傾向だった。市教委は、福岡県筑前町の三輪中など、全国でいじめが原因とみられる児童・生徒の自殺が相次いでいることを挙げ「保護者が心配して学校に相談するケースが増えている」と分析している。
西日本新聞 - 11月28日

■福岡県が慌てるのも当然で、この三輪中事件では教師がイジメの中心だったと言われていますから、子供が自殺してから実態を知ったご両親の悲痛な叫びが全県に響き渡ったということなのでしょう。教師が生徒をイジメているのは、警察が泥棒して歩いているようなものですから、不安になった保護者は更に上の権力にすがり付くしか無くなります。でも、あの中学の校長先生は、「もうこの学校からイジメは無くなります」のような講話をしていたような記憶が有りますぞ。昔、社会党という政党が、「今、社会党は変わります」などという国民をバカにしたようなスローガンを発表して失笑を買ったことが有りましたが、そんな空手形を幾ら切っても問題は解決しません。

■やっと日本の学校には「イジメ問題が有る」という事実を、政府もマスコミも学校も、やっと認めたというだけの話のようです。「再生会議」からは新たな提案が出たようですが、案の定、腰砕けの様子見風の内容のようです。戦後の日本が「民主主義」を称揚しながらも、実は、それが言論を磨く教育が最も大切だと信じた古代ギリシアに発し、長いキリスト教の神学論争で鍛え上げられ、近代市民社会を生み出した気が遠くなるような欧州文化の歴史と伝統から出て来た特殊な文化だという事に、やっと気が付き始めたのかも知れません。「原稿棒読み」ではない発言をした小泉さんは大人気でしたが、最後まで彼は「演説」をしませんでした。国会で時々放言してみせたり、街頭で殺気立った台詞を叫んだりはしましたが、小泉さんが国連で聴衆を唸らせた事も有りませんでしたし、仲良しの米国を訪問した時にも、プレスリーの下手な物真似ぐらいしか報道されなかったのでした。結局、小泉さんも言葉を信じない、言葉を軽んずる日本の風潮を利用して政権を維持していたとしか思えません。

■そんな日本の教育を考えるのですから、幾ら制度を弄(いじ)ったり、数名のダメ教師を摘発したりしても、問題の解決は難しいでしょう。試みに、各自治体の教育長や校長先生の「演説」を公共電波に乗せてみたら如何でしょう?学校教育というものは、煎じ詰めれば「言葉を教える」場所なのですから、その達人クラスが管理指導しない限りは打開策など見つからないのではないでしょうか?

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イジメの原因が分かって来た? 其の参

2006-11-30 11:44:00 | 教育
■しかし、教員免許を得るために大学が用意しているカリキュラムが旧態依然とした内容だったり、教員採用試験が不透明のままでは、総理直属の会議があれこれと注文を出しても、現役の先生方が動揺するだけでしょう。マスコミの中にはダメ教師よりも問題なのは、常識外れのバカ親の存在へとテーマを移している向きも有るようですし、新聞やテレビでは報道出来ない学校で起こる事件の背景を探り出す週刊誌の記事に興味を示す人々も増えているような気がします。同級生をイジメ殺してしまう恐ろしい心を持った子供が育っている時代には、その世代まで生き延びられずに親や変質者に殺されたり、人生をめちゃくちゃにされる子供がたくさん居るわけですから、安倍総理が掲げる「教育の再生」を学校に対する提言だけで達成させようと言う考え方は危ういですなあ。【高山純二、平元英治、佐藤敬一】

教育再生会議は、運営委員会で議題などを確認した上、分科会で具体的な議論を進めるが、非公開が原則で、運営委は開催日時・場所さえ非公表だ。分科会、総会の内容は最低1週間以内に議事要旨、1カ月以内に議事録が公開される。運営委は中間報告(来年1月予定)に反映させる7項目の「基本的な考え方」を決定したが、公式発表はしていない。27日の第3分科会終了後の会見でも、川勝平太委員(国際日本文化研究センター教授)の試案が「完成稿でない」と公表されず、「議論の内容が分からない」など記者団から批判を浴びた。

■総理の肝煎りというので、勇んで参加したものの、事の重大さと問題の複雑さに委員の皆さんが困惑しているのではないでしょうか?ダメ教師を追放する方法を提案しようと思っても、「そもそもダメ教師とは何か?」が定まらないでしょう。反面教師という言葉が有るくらいで教育と言うのは不思議な人間関係の機微によって動いている面が有りますからなあ。それに、仮にダメ教師を見つけて追放するにしても、退職後の保障はどうするのか?更に難しいのは「ダメでない教師」をどうやって採用するのか?まさか、月毎に担任が替わるような事態は想定していないでしょうなあ。まあ、幕末以来、否、大和朝廷以来、困った時には外国にお手本を求めるのが日本の伝統ですから、「再生会議」も同じ事をしているようです。


同日の分科会では「主要国の教育改革の動向」として、米英の教育改革に関する資料が配布された。しかし、当の委員から「なぜ英国や米国流ばかり参考にするのか」「これから話し合う資料が全く提示されていない。どう考えているのか」と異論が続出した。安倍首相や山谷えり子首相補佐官がサッチャー元英首相の教育改革を模範としているのは知られている。一方、高水準の学力を維持している北欧諸国の例は示されず、議論の方向性に「結論ありき」の雰囲気がにじむ。委員は「高い教育水準を持つ日本が英国をまねる必要はない」と内部批判をした。

■明治時代には欧米列強の学校制度を良いとこ取りで尋常小学校から帝国大学までの「学制」を作ったようですが、その時の選択基準は単純で、富国強兵政策に利するものを模倣すれば良かったのでした。お手本からキリスト教を削り取って、そこに国家神道イデオロギーを徐々に注入して行けば、日本も列強と同じ国力と軍事力を持てるはずでした。また、戦後は日本が悩まなくてもマッカーサーがお手本を押し付けてくれましたから、米国型の新しい「学制」が始まりました。その時の目的は「民主化」と言う名の「戦争しない国民」の養成だったと指摘する人も居ますなあ。まあ、東海岸に上陸してあの広大な大陸を「征服」しながら作り上げた気風と制度から誕生した、非常に珍しい米国流の教育制度を手本にしたらエライことになると考える余裕は敗戦国の日本には無かったようです。

■教育委員会というのも、米国の地方自治体が持っている強力な独立性を前提にして置かれている機関をそのまま日本に移植したようなものですから、最初から何をしたら良いのかさっぱり分からなかったに違いありません。あっと言う間に地元の名士や役人や教員組合のボスなどの、転職先か名誉職だと勘違いされたのも当然で、それが何とか60年以上も維持されたという事実の方が驚きですなあ。


……NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子室長の話 会議後の記者会見は伝えたいことだけを伝え、聞かれたことに答えるだけのもので、それで足りるというのはおかしい。また、会議後の議事録ではリアルタイムで議論の過程が分からない。途中経過が伝えられると混乱するというのは国民の理解力に疑問を呈しているのと同じことだ。教育は私たちの生活にかかわる問題であり、きちんと公開すべきだ。
毎日新聞 - 11月28日

■三木室長の指摘は当たっているでしょう。明治以来、日本の教育制度は「国民はバカだ」という前提を出発点としていまして、その本音を隠すのに欧化政策が利用されました。官費で欧米に留学して官僚となったエライ人が、愚かな国民を指導・先導して近代国家を建設しなければならなかった明治時代、そして、「米国では…」の枕詞が実感を込めて言える学者や官僚が常に正しいとされた戦後の日本、単純に「ナショナリスト」「タカ派」と呼ばれる安倍総理ですが、お手本は英国か米国にしか求められないという伝統の限界は破れないでしょうなあ。だからと言って、「記紀万葉の時代」からの伝統などと言い出したら、すぐにカルトめいた話になってしまいますぞ。

イジメの原因が分かって来た? 其の弐

2006-11-30 11:43:28 | 教育

「いじめをなくすためには、どうしたらいいと思いますか」という質問には、「家庭での会話を増やす」(42%)
▽「地域で子どもを育てる環境を作る」(22%)ことを挙げ、「教師の指導力を強化する」(10%)▽「少人数学級を導入する」(9%)は少数だ。
「教育制度」に問題と回答した人も、解決方法には家庭・地域(計63%)を挙げる回答が最も多く、保護者のしつけを原因に挙げた人は、計8割弱が解決方法を家庭・地域の改善に求めた。

■家庭での躾(しつけ)、これを切り札にするというアイデアは誰も文句が言えない正論です。しかし、それに望みを懸けるのは相当に難しく、不可能になってしまったと言った方が良いことを誰もが感じているのではないでしょうか?皮肉な事にここに並べられている回答には、家庭が崩壊して子育ての機能が失われている実情が生々しく映し出されているようです。「家庭での会話」を増やすのがイジメを無くす最上の策なら、どうしてそれが無くなってしまったのだろう?と考えねばなりません。遠く60年代には「親子の断絶」「世代の断絶」という言葉が便利に使われたものです。すっかり大物歌手になった井上陽水さんも『断絶』というLPレコードを作って世に出た時代です。

■その「断絶の時代」に青春を悩んだ若者達が、今は小学生達の祖父母の大部分を構成している計算になります。その後、学生運動が自己崩壊して収束していく時には「シラケ世代」というのが出て来ます。この脱力感に満ちた名称で呼ばれた世代は、団結や協力が大嫌い!という陰湿な個人主義が特徴とされたようです。若者の心の状態を表現する便利な言葉がマスコミから消えたのは、バブル経済の兆(きざ)しが見え始めた頃ではなかったでしょうか?何とも名を付し難い得体の知れない世代を挟んでバブル時代にお祭り騒ぎを経験した世代が小中学生の親になっているはずです。さてさて、こうして徐々に「家庭の会話」が失われて行ったわけですが、その間には、茶の間に君臨していたテレビが安価になって各部屋に分散し、とうとうポケットに入ってしまいました。勿論、電話も各自のポケットに入って「情報」と「娯楽」は完全に個人的に消費するものとなりましたなあ。

■本気で「家庭の会話」を復活させるのなら、『サザエさん』の磯野家を見習うのが手っ取り早いかも知れませんぞ。偶に観るぐらいですが、あの一家はテレビを観ません!ラジオも聞きません!勿論、携帯電話やパソコンも所有していませんなあ。大人がお茶を啜(すす)りながら新聞を広げているのが、唯一の情報源らしい!毎日、一家揃って朝食を摂り、波平さんとマスオさんは定時に帰宅する事も多いようです。よく叱られるカツオ君の生活圏にはゲーム・センターやコンビニ店が存在しないようですし、本人も友人達も塾通いや習い事はしていないようです。親の方も休日に疲れ切って遅くまで寝ている事は無いようですし、一家揃って早寝・早起き・朝御飯の生活を淡々と送っていますなあ。こうして生まれる有り余った時間に、物語の中心となる「会話」がぎっしりと詰め込まれるというわけです。さて、そんな生活をしている日本人が何人居るのでしょう?

■アンケートに出て来る「地域社会」の重要性にしても、『サザエさん』では御近所との付き合いや親戚との交流も濃密に描かれているようです。従って、子供達の学校にはイジメ事件は起こらず、波平さんやマスオさんの会社内での人間関係も良好で、両者とも鬱病になる心配は皆無のようです。アンケート調査の結果から浮かび上がるのは、こうした理想的な生活をぼんやりとイメージした無い物強請(ねだ)りの集積で、耳を澄ませば深い溜息が聞こえてきそうですなあ。


また、「いじめた子に厳しい罰を与える」はわずか7%で、政府の教育再生会議が提言する見通しの生徒指導の厳格化の方向性に否定的な回答だった。参院特別委で審議されている教育基本法改正案には、新たに家庭教育の項目が盛り込まれているが、いじめをなくすには63%が「役立たない」と答えた。「役立つ」と答えたのは23%で、安倍内閣を支持する人も54%は「役立たない」だった。
毎日新聞 - 11月27日

■安倍総理が掲げる美しい国・日本を造る事と、「教育の再生」にはイジメ問題や学力低下の問題は含まれていないと思われます。「再生会議」も教師の質の向上に重心を置いて発足していた印象が有ります。安倍新政権が発足するのを待っていたかのように、高校の未履修問題とイジメ自殺問題が噴出したので、慌てて「再生会議」でも取り上げなければならなくなったのでした。


いじめ自殺や高校の履修単位不足など教育問題に国民の注目が集まる中、安倍晋三首相肝いりの「教育再生会議」の初会合から1カ月が過ぎた。これまでに総会2回と第1分科会(学校再生)、第2分科会(規範意識・家族・地域教育再生)が各1回開催され、27日は第3分科会(教育再生)も東京都内でようやく開かれた。議論にスピード感があるとはいえず、非公開のまま進められる会議のあり方に「不透明」との批判が高まっている。

■文部科学省と中央教育審議会という既存の機関が有るのを承知で発足した組織ですから、下手に議論の内容が漏れるとお役人が裏で暗躍して政治問題に発展する可能性が有りますから、情報が出て来ないのは不思議な事ではないでしょう。分科会の構成にしても、第1分科会は無能な教師を駆逐する方法ばかりが議論されていたようですから、教師の採用権を持っている各自治体の教育委員会は大きな責めを負わされる事を予想してびくびくしているでしょうなあ。勿論、加盟率3割に落ち込んで昔日の勢いを失った「日教組」に止めを刺す隠れた目的も有るような気もしますが、既存のシステムを破壊する事ばかりを先行させると、教育現場は大混乱して教師のなり手がどんどん減ってしまう恐れが有ります。先に確認したような世代構成になっている現代の日本社会から、安倍総理がぼんやりと描いている「理想の教師」などは簡単には得られないのですから、それを見つけて採用し、しっかり育てて鍛え上げる法的な制度が必要なのです。

イジメの原因が分かって来た? 其の壱

2006-11-30 11:42:55 | 教育
■結局、最初に文部科学大臣に「自殺予告状」を送り付けた正体不明の人物はどうなったのでしょう?深夜の記者会見から、一夜明けたら「豊」の文字が消印から読み取れるとか何とか、テレビは大騒ぎを演出して予想される悲劇を盛り上げて視聴率の荒稼ぎ、でも、夜通しの「警戒」に駆り出される先生方は堪ったものではなかったでしょうなあ。テレビ業界では、朝っぱらから「みなさん!みなさん!」とドンガバチョみたいな演説口調で騒いでいるミノ・モンタさんの独壇場だったようです。

■煽りに煽って全国から集めたファックスが数千枚とか……。間も無く始まる「双方向」地上デジタル放送の前宣伝に利用できるとでも思ったのでしょうか?送られて来たファックスや手紙などを、全部が全部、正真正銘のイジメ被害者からの物だと、どうやって証明するのでしょう?確かに、面倒を嫌う体質の学校には何を言っても無駄だとか、教師に相談したらイジメが更に悪質化する恐れが有るとか、思い余って教育委員会に訴えようと思っても、地元の目や口が気になって踏み切れない…そんな鬱屈した思いを毎日見慣れているテレビに向けて吐き出している人もいるでしょう。しかし、本物か偽物か悪戯か、まったく区別も出来ない「文書」を振り回して、積み上げられた数を誇るような番組を作っても、所詮は一過性の話題扱いでしょう。

■具体的な学校名や個人名を手掛かりに、しっかりと裏を取って「文書」を選別する手間を惜しんでおきながら、「真実」を知っているような高いところからあれこれ放言するのは如何なものか?「止まらない連鎖!」とおどろおどろしく報道することで、連鎖が止まるどころか全国的に連鎖を広げて助長する影響を心配しなければならないでしょうなあ。何でも、WHOが定めた自殺報道に関するマスコミ規制が有るとかで、「自殺方法を詳しく報道してはダメ」「悲劇を盛り上げてはダメ」などなど、人間が持っている付和雷同性を前提とした報道規制案らしいのですが、そんな事を気に掛けて大人しくなるテレビ局は日本には存在しないでしょうなあ。

■何しろ、新しい内閣が称揚している伝統文化の中に、近松門左衛門を持ち、数々の「心中物」を愛好して来たのが日本ですし、心中に失敗しておめおめと生き残った者を改めて殺害するのは罪に問われない善行とされたのが江戸時代でした。明治時代から近代が始まったと言っても、「諫死(かんし)」「切腹」「復讐」などを合理化し美化する武士道精神が根絶やしになったわけではありません。「死を以って…」と未履修問題で追い詰められた高校の校長先生が遺書に書き残しましたし、一種の報復攻撃の手段として目立つように自殺する者の存在を断罪する空気は有りません。死ぬほど苦しんだ被害者の言い分を全面的に信じ込んで、代わって遺恨を晴らしてやる!などと張り切ってしまうのも日本人の人情かも知れません。

■テレビの「必殺シリーズ」ならば、最後に私刑によって処刑される悪人の行為をみっちりと示されている観客だからこそ、お決まりの殺害シーンに胸がすく思いを味わえるわけで、もしも、遺書に書き残されていた内容が「濡れ衣」や誤解だったらどうなるのでしょう?マスコミは警察ではないので、調査能力には法的な限界が有りますし、数々の誤報事件も起こっているのですから、あまり単純にイジメ問題を取り扱うのは危ないなあ。


毎日新聞が実施した全国世論調査(電話、今月25~26日)で、いじめが行われる最大の原因を聞いたところ、教育制度や教師の指導よりもいじめる側の保護者のしつけに問題があると答えた人が5割を超えた。いじめをなくすために家庭・地域の役割を重視する回答も計6割を超え、学校の役割や教育改革に限界を感じているとみられる回答内容になった。

■こういうアンケート調査にどんな意味が有るのか、正直なところ腑に落ちない面が有ります。調査対象もランダム選択によって決められているようですから、通学している家族の有無、近所との付き合いの度合い、情報入手方法の違い、さまざまな立場の人々が突然の電話による質問に答えた内容を集積すると「世論」が編み出されるのか?仮に世代や環境などの偏(かた)りの無いサンプルが偶然に揃ったにしても、足して2で割るような方法で価値のある意見や提案が見つかるものでも無いでしょうなあ。そんな疑問を忘れないように気をつけながら、アンケート結果を見てみましょう。

金魚の糞の後始末? 其の七

2006-11-30 01:21:16 | 政治

ただ党幹部は「お家騒動の選挙で勝てるはずはない。首相の退陣は避けられない」と言い切る。造反組に新人候補をぶつけても漁夫の利を得るのは民主党で、惨敗―下野は必至というわけだ。選挙結果によっては、与野党とも過半数を得られずに、造反組による新党がキャスチングボートを握る。このケースでは国会での首相指名選挙に向けて、与野党間で猛烈な多数派工作が繰り広げられ、「政界再編」が一気に現実味を増す。自民党関係者は「小泉首相が退陣し、新総裁の下での自民党が公明党と造反組新党との連立政権をつくる。民主党の分裂も考えられる」と占う。

■こうした通好みの政局予想は面白いものですが、半分は当たって半分は外れたようなものです。政界再編などは起こらず、自民党の懐深く食い込んだ公明党が全ての選挙の趨勢を左右するようになって、見世物興業のような選挙は終わったのでしたなあ。


……与謝野馨政調会長も6日のテレビ番組で「今すぐに修正できなくても、例えば自民、公明両党の間で『この部分は将来修正しよう』ということを決めておいてもいい」との打開案を示した。しかし、首相サイドからみれば、反対派の動きは既に「倒閣運動」(小泉首相)。いまさら賛成に翻意させられる見通しはない。一方で、強気の姿勢を堅持する首相が再修正などを容認する気配があるわけでもなく、執行部の「最後の努力」が解散回避へ局面を打開できるか、残された時間はあと一日だ。
東奥日報 2005年8月6日

■与謝野さんは小泉さんよりも前から、政策通と評されて首相候補とも言われ続けた人でした。土壇場でこうした打開策・妥協案をさらりと提案できるのも、そういう下馬評に応える必要性を感じたからだったのでしょう。しかし、この時期には喧嘩好きな小泉さんが、既に舌なめずりするように「刺客選挙」のシミュレーションを楽しんでいた節が有ります。衆議院内の隠れ反対派は解散は無い!との予想が崩れて自分の選挙対策と準備に追いまくられて、風の向きに従って「小泉改革絶対支持」の旗を大急ぎで用意して走り出したものですから、造反組みが膨れ上がると予想していた先行組は、雪崩を食い止める方法も見つからず呆然自失の状態でしたなあ。


衆院は8日夜の本会議で解散された。小泉純一郎首相が最重要課題と位置付けた郵政民営化関連法案が同日午後の参院本会議で自民党議員の造反により否決され、首相は「国民の信を問う」と決断、直ちに臨時閣議を開き解散を決定した。署名を拒否した島村宜伸農相は罷免された。2003年11月以来となる衆院選日程は「30日公示、9月11日投票」と決まった。首相は衆院本会議で反対票を投じた37人を公認しない方針を表明。有権者に政権選択を問う激しい選挙戦がスタートする。……8日夜の記者会見で「郵政民営化に賛成するのか、反対するのか国民に問いたい」と強調した。
神戸新聞 2005年8月8日速報

■こうして「郵政民営化選挙」の幕が切って落とされたのでした。確かに、憲法9条問題のように絶対反対と絶対賛成にきれいに賛否が分かれるような議論が行われていなかった事が分かります。「郵政民営化」自体に断固として反対していた人は居なかったのです。「法案に不備が有る」と言う人達は間違いなく居ました。その多くは郵政族と呼ばれる人達で、そこに特定郵便局の選挙協力組織に大きく頼っている議員が加わり、それとは違う選挙スタイルを持っている議員も風向き次第で便乗しようとしていたようです。それを、小泉さんは「賛成か反対か」の二者択一の喧嘩選挙に変えてしまったのですから、どちらでも結構です、と傍観していた者から「改革賛成」の大合唱が湧き起こるのは当然で、最後まで踏み止まって「改革には賛成だが法案に問題が有る 」と説明し続ける自信が有る議員は驚くほど少なかったのでした。そこに、何だか面白そうだと感じた「浮動票」を持ちながらも毎回の選挙で腐らせていた人達までが、選挙見物を始めたものですから、何が何だか分からない前代未聞の騒動になったというわけですなあ。


小泉純一郎首相は9日午前、「自民党議員も国民は郵政民営化賛成なのかという雰囲気が分かってきたと思う」と述べた。……青木氏ら参院執行部は特別国会召集までに郵政反対組の意向聴取を行い、「反対」を主張する議員には離党を促す方針だ。離党に応ぜず反対票を投じれば除名処分の対象とすることも確認している。……
神戸新聞 2005年9月9日

■青木さんという人は、故竹下登元総理の引き立てて議員になり、参議院の自民党をまとめて竹下内閣を支え抜いた経歴を持っています。地元出身の有名演歌歌手を紹介された時に、青木さんはその歌手をまったく知らなかったので周囲が大変に驚いたという逸話が有ります。そのオチが凄い!知らない理由は、この有名歌手は成人して間も無く住民票を東京に移していたからだったのです。その代わり、彼女の生まれ故郷の地名を聞いた瞬間に、その小さな田舎町の人間関係を詳細に語り出し、とうとう有名歌手の血筋の全貌を本人よりも正確に描き出したものですから、今度は歌手の方が仰天したというのですなあ。つまり、地元は選挙区、人は票なのです。そんな選挙の鬼みたいな人ですから、政策は二の次になってしまうのでしょうか?

郵政民営化に向けて日本郵政公社がまとめた郵便局の再編リストが27日判明した。郵便の集配業務を行っている全国4696の郵便局のうち約22%に相当する1048局で集配業務を廃止。都道府県別では北海道や新潟県などで集配業務がなくなる郵便局が多く、東京都や大阪府など都市部では極端に少ないのが特徴だ。鹿児島県内の廃止は、串良、開聞、南種子など32局。……集配業務を廃止する郵便局が多いのは、北海道の160局、新潟県55局、広島県46局、長野県45局、山口県43局など。公社の支社別では中国支社管内が167局、東北109局、九州118局……一方、大阪府では3局、東京都5局、神奈川県6局など、大都市圏では無集配化される郵便局は少ない。……郵政公社は、集配局の再編で人員配置の効率化を進め、年間約100億円のコスト削減を目指す。……郵政公社は「代替措置でサービス低下はさせない」と地元に説明しているが、反対する市町村では「合理化で将来的には郵便局そのものがなくなるのでないか」との懸念も出ている。
南日本新聞 2006年6月28日

■「ユニバーサル・サービス」などという外来語が国会周辺を飛び交ったのはこの頃でしたなあ。

金魚の糞の後始末? 其の六

2006-11-30 01:20:48 | 政治

答弁での打開は、法案の再修正が日程的にめどが立たない中、片山虎之助参院自民党幹事長が窮余の策として考えた。参院郵政民営化特別委員会。「今日は大詰めでのテレビ中継。国民が注視している。分かりやすく、丁寧で誠実な答弁をお願いしたい」と呼び掛ける片山氏に、首相も応じ、民営化後のネットワーク維持や将来の見直し内容での柔軟姿勢を落ち着いた口調で訴えた。執行部サイドが「反対派の(少なくとも)5人が態度を変える」と期待したが、質問を終えた片山氏は記者会見で「首相のいろんな配慮が行き届いていた」と答弁を評価しながらも、「(状況が)パッと変わる感じでもない」と思わず本音も漏れた。

■最近の「復党問題」でも矢面(やおもて)に立って歯切れの悪い善後策を言い立てているのは片山さんで、もっぱら裏工作をしているのが青木さん、万一、参議院で郵政民営化法案がコケたら、衆議院に潜んでいる数知れない「隠れ反対派」が一挙に寝返るのは素人でも予想出来ました。小泉総理を誕生させた自民党は、決して彼の「公約」を絶賛している人ばかりではなく、不思議に人気が高かった田中真紀子さんとセットで選挙運動をすれば、もたもたしている野党を徹底的に駆逐してしまえる!と計算しただけでしょう。「郵政民営化」が総裁選に立候補した時の公約なのだから、総裁に当選した自分が法案成立に執念を燃やすのは当然の話で、それを邪魔する抵抗勢力は許されざる者達だ!という、一見、常識的で民主主義の原則に従った正論を小泉さんは主張したのですが、それなら「終戦記念日の靖国参拝」という大騒ぎになった大きな公約の方はどうなったの?と言う質問には答えませんでしたなあ。


一方、昼の亀井派の緊急総会で、亀井静香会長が小泉首相の前日の発言にかみついた。「けさ新聞を読んで驚いた。首相が、郵政法案への反対を倒閣運動と発言している。首相は『自民党をぶっ壊す』とかねがね言っているが、われわれはひと言も内閣を倒すと言ったことはない」「倒閣」と強い言葉で断じられ、亀井派などの反対派議員の足がすくみかねないと懸念した亀井氏。首相の意図は反対派分断だと感じ取った。

■旧福田派の跡目争いが今でも尾を引いているという解釈が有ります。安倍パパが急逝した後、旧福田は領袖の後継者問題で暗闘を始めたそうで、平沼さんと亀井さんが組んで派閥を割って出ることで暗闘は終わったのでした。そんな大きな火種を抱え込んだまま自民党総裁選挙が行われ、あれよあれよと言う間に、無名だったはずの小泉純一郎の存在が輝き出したのでしたなあ。


しかし、この亀井氏の言葉への感想を記者団に聞かれた小泉首相も応戦。強烈に反発した。

「郵政民営化に反対し、否決しようという人は、小泉退陣せよと(言っているようなもので)、倒閣運動と同じだ。政治家だったら、小泉降ろしだと認識してやっている」

「反対派は固い。そもそも民営化に反対だっていうんだから、何やってもねえ…」と首相。同時に「厳しい状況に変わりない。(法案の成否は)最後まで分かんないんじゃないですか」と口をついて出るのは、甘くはない言葉ばかり。状況は混迷の度合いをますます深めている。
東奥日報 2005年8月2日

■政策論争を口実にして派閥間の権力闘争をするのが自民党のお家芸でした。次の総理総裁を狙う派閥は、現政権の政策を激しく罵(ののし)り、諸悪の根元だと言い立てたものです。田中政権が出れば「金権だ!」と自分の事を棚に上げて騒ぐし、中曽根政権が生まれたら「田中曽根内閣だ!右傾化だ!」とどうでも良い非難が起こりましたなあ。その渦中で育った小泉さん達ですから、「郵政民営化法案」と小泉政権とは同じ物だったに違いありません。仮に郵政族を中核とする反対派の言い分を聞き入れたところで、その時に交わされる「支持の約束」などは紙くずだという事も双方が熟知している事なのですなあ。


郵政民営化をめぐる自民党内の攻防は、8日に雌雄を決する。小泉純一郎首相が反対派を揺さぶるカードは衆院の“自爆解散”(党幹部)。使い道を誤れば、野党転落の可能性もはらむ。それでも造反組は新党結成も視野に選挙準備を進めており、結党50年目の自民党はまさに「分裂前夜」の様相だ。

■自民党は遠い昔の「保守合同」以来、ずっと分裂を隠し続けて存続して来ました。そればかりか、本来なら社会党に入るべき主張を持つ人達までが自由民主党に飛び込んで行ったのですから、すべての選択肢を取り揃えた幕の内弁当政党だったのです。それだからこそ、極端なイデオロギーを掲げた万年野党は、絶対に政権を担当することにはならないという国民を馬鹿にした無責任な立場に安住できたというわけです。その証拠に、田中角栄直系の小沢一郎さんが自民党を飛び出すまで、日本の政界に「政権交代」という言葉は有りませんでした。


「5日の参院特別委員会で法案を採決した以上、(次期国会への)継続審議にする方法がない。解散を避ける道は本会議での可決しかない」4月の衆院補選で返り咲いたばかりの山崎拓前副総裁は6日のテレビ番組で、解散回避への「悲痛な叫び」を発した。反対派は参院亀井派の中曽根弘文会長の造反宣言を受けて「否決が確定した」(中堅)と勢いづく。党内では「どうせ否決なら、集票基盤の郵政関係団体にいい顔しようと、議員が雪崩を打って反対に回る」との見方も。……「首相は解散を断念せざるを得ず、内閣総辞職に追い込める」(幹部)との戦略だ。しかし首相は「(否決は)内閣への不信任」と解散・総選挙に踏み切る構えを崩していない。衆院採決での造反組51人を公認せず、郵政民営化を争点にすれば、「改革を支持する世論の追い風を受けて、自民は圧勝すると踏んでいる」(周辺議員)ためだ。圧勝なら首相の求心力は回復し、来年9月までとなっている党総裁任期の延長論が浮上する可能性もある。

■戦後の歴代総理の中には、解散を打ちたくても周囲からの巨大な圧力によって伝家の宝刀を抜けないままに、無残な討ち死にを遂げた人が何人も居ます。自民党の議員の中には、現役の首相と抱き合い心中する覚悟で選挙に賛成する人が居ないからで、解散総選挙となれば次の勝ち馬を探して右往左往するのが常でした。その習慣に変わりは無いと踏んでいた人達が、小泉政権を追い詰められると考え、そんな自民党をこそ「ぶっ壊す!」と言ったのが小泉さんなのでした。野党との対立が極限に到ってから「民意を問う」ために衆議院を解散するものとばかり思い込んでいた古い?議員は、まさか、党内の抵抗勢力を追い出すために総理大臣が解散を決意するとは想像も出来なかったでしょうなあ。

■でも、そのメチャクチャさが小泉人気を高めたのです。何だか、ジャイアント馬場さんのプロレスに飽きたファンがアントニオ猪木の喧嘩プロレスを支持した後、更に本当のぶん殴り合いの見世物に熱狂した時期と重なるのは偶然では無いような気がして来ます。小泉さんは、そんな国民の本能的なフラストレーションに気付いていたのかも知れません。

続・北の原爆50年史 其の四拾伍

2006-11-29 19:49:15 | 歴史

反米主義者として知られるベネズエラのチャベス大統領は8日、ラムズフェルド米国防長官の更迭について「ブッシュ米大統領も辞任すべきだ」と述べた。AP通信などが伝えた。外国人記者団との会見でチャベス大統領は、米中間選挙での共和党の敗北について「イラク戦争などに反発した米国民の懲罰的な投票の結果だ」と評価したうえで、ラムズフェルド国防長官の更迭で「ブッシュ政権の崩壊が始まった」と指摘。「ブッシュ大統領も道徳的見地から辞任し、大統領選を前倒しすることが、米国だけでなく世界のためにもいい解決策だ」と語った。さらに「パパ(父親)ブッシュが息子の置かれた状況を見て苦しまないためにも(大統領辞任は)価値ある解決策になろう」と述べた。
毎日新聞 - 11月9日

■北朝鮮には石油は有りませんし、ロシア生まれの金正日将軍様は朝鮮語が得意でないので、ブッシュ大統領や米国に対する悪意に満ちた雑言を吐いたりもしませんから、減らず口を叩き続ける産油国のチャベス大統領を先に攻撃したい!というのが米国大統領の本音なのではないでしょうか?やること為すことが、悉(ことごと)く裏目に出ているブッシュ大統領に、今でも支持者が残っている事の方がニュースになりそうな風向きです。本当に良い時期に日本の総理大臣は任期を全うして身を引いたものです。英国の首相も間も無く任期が切れるので、いよいよブッシュ大統領には友達が居なくなってしまいます。寂しさに耐え切れずにヤケを起こさないことを祈るばかりです。


ブッシュ米大統領は8日午後、ホワイトハウスで記者会見し、ラムズフェルド国防長官(74)の辞任を発表した。イラク政策が争点となった中間選挙での共和党が敗北し、民主党からの批判が強まることを踏まえた事実上の更迭だ。後任にはブッシュ元大統領の政権で中央情報局(CIA)長官を務めたロバート・ゲーツ氏(63)が指名された。ブッシュ大統領は、選挙戦の争点だったイラク政策について「素早く、うまくいってはいない」と認めた。イラクを含むテロとの戦いで、米軍最高指揮官としての職責を果たすため、国防総省の首脳人事を決断したと語った。

■米軍の最高指揮官が10歳若返ったというわけですが、それでもパパ・ブッシュ政権でCIA長官を務めたと言うのですから、息子はなかなか自立できないようですなあ。ちょっと調べてみましたら、ジョージ・H・W・ブッシュが長官を務めていたのは 1976年1月30日から翌年の1977年1月20日です。これはニクソン政権が電撃的な米中国交正常化を行った後の大切な外交的な土台作りをしていた時期に当たります。今でも中国利権にはブッシュ一族が深く食い込んでいるという話は有名ですからなあ。勿論、キッシンジャーさんなども……。それから、次に長官をやったのが退役海軍大将のスタンズフィールド・ターナーさんで1977年3月9日から1981年1月20日のカーター政権末期で、イラン革命が起こってテヘランの米国大使館で人質事件が起こりました。

■次がレーガン大統領時代、つまりパパ・ブッシュが副大統領になっていた時期で、ウィリアム・J・ケーシーさんが長官になって1981年1月28日から1987年1月29日まで務めました。その次のウィリアム・H・ウェブスター長官を挟んで、パパ・ブッシュ大統領が当選してロバート・M・ゲイツがCIA長官になったという順番です。任期は1991年11月6日から1993年1月20日で、彼は米国で最も早く北朝鮮の核開発に警鐘を鳴らした人物としても有名だそうですなあ。


イラク政策で批判の高まるラムズフェルド氏について、大統領は今月1日、ロイター通信などに対し、政権2期目が終わる2009年1月まで留任させると語っていた。この報道を受け、民主党からは同氏への更迭要求がさらに強まっていた。……大統領は選挙戦終盤の5日にテキサス州でゲーツ氏と会談。さらに7日にラムズフェルド氏と会い、今回の人事で合意していた。大統領執務室での指名会見で、ゲーツ氏はテロとの戦いで米国の安全を確保する使命を強調し、「公務復帰に関する大統領の要請受諾をためらわなかった」と語った。ラムズフェルド氏はフォード政権で国防長官を経験し、現政権の発足で再び同じポストに就いていた。ゲーツ氏はCIA要員として情報畑を歩み、現大統領の父の政権で1991年から93年までCIA長官を務めた。
産経新聞 - 11月9日

■クリントン政権は諜報活動に不熱心で、CIAの予算を大幅に削減したために組織はがたがたになってしまったと言われているので、ゲイツさんが再帰することで組織が復活するかも知れません。しかし、一度途切れてしまったら、なかなか復元させられないのが諜報組織の仕事ですから、ブッシュ政権の置き土産としてCIA予算の大幅な増額を続けてあげる心算なのかも知れませんが、それが北朝鮮に対する情報収集能力の向上に繋がるかどうか、時間切れになる可能性の方が高いような気がしますが……。


北朝鮮も米国の中間選挙の結果に注目しているというのが、大方の専門家らの見方だ。北朝鮮の核実験の時期も、中間選挙に合わせたという見方すら出ている。米国の野党民主党内で、米朝対話を求める声が少なくないことから、北朝鮮は民主党の勝利を内心喜んでいるのではないかといわれている。2008年の米国大統領選で民主党の大統領が誕生することが期待できるとみて、6カ国協議に形式的な参加をしながら2年間我慢する戦略に出てくる可能性もある。しかし、韓国の外交通商部関係者は「民主党も一部の人が北朝鮮との直接対話を強調しているにすぎず、民主党が北朝鮮に対して融和的な政策を展開するだろうと考えるのは錯覚だ」と指摘した。

■ブッシュ大統領にしてみれば、共和党候補から応援演説を拒否されていたくらいですから、自分の評判が地に落ちている事くらいは重々承知しているでしょう。もう次の大統領は民主党と決まっているようなマスコミの論調に辟易しながらも、「泣いて馬謖」を切る気分であるにもかかわらず、精一杯の強がりを見せて微笑みながら国防長官を交代させたのでしょうなあ。実に情けくも見苦しい悪あがきとも思えますが、北朝鮮問題に限って言えば、KEDOで大恥を掻いたクリントン前大統領を見返すチャンスはまだ残っていますぞ。従って、新聞記事に有る通り、仮に次期政権が民主党に移ったとしても、急に対北朝鮮政策が「太陽政策」に転換するはずは有りますまい。

金魚の糞の後始末? 其の伍

2006-11-29 10:24:12 | 政治
■後々の反省として、「小泉改革VS抵抗勢力」という図式を、余りにも安易に便利に使い過ぎたマスコミには大きな責任が有ることを確認しておくべきでしょう。こうした図式を、「反田中角栄型政治VS伝統的田中角栄型政治」と読み替えるのは政党助成金制度が完備してからは時代錯誤ですし、郵便局利権を巡る争いと考えるのも宅配便と電子メールしか使わない国民が急速に増加している時代に即応しているとも思えません。或る人の意見では、右肩上がりの経済成長期が終焉してからは、田中角栄型のばら撒き公共事業の大盤振る舞いは不可能なのだから、今更、田中角栄さんの名前を引っ張り出すのは無意味だ、とも言えるのだそうです。

■お城に殿様やお姫様が暮らしていた時代でもあるまいし、角栄さんの血筋だからと言って、将来の総理大臣の地位が画定しているなどという事も有りません。遠い昔のお公家さんの血を引いているという変な元県知事が総理大臣になって、どれほど日本は国際的にダメージを受けたことでしょう。ヤクザも歌舞伎役者も血筋を捨て始めている時代に、二代目・三代目の政治家ばかりが増えている日本で、バブルの後始末と財政再建が直近の課題となっている今、夢のような公共事業で大型プロジェクトを推進するのは無理であります。特に、コンクリートと人力を集中するだけで完成するような仕事は、これから減りこそすれ、決して増えないとも言われております。まあ、第二次関東大震災による被害の大きさにも依るでしょうが……。

■取り敢えずは世襲議員を担いで頑張ったものの、見返りを貰えるのは随分先の事となれば、地元の県知事を利用して談合をまとめて税金を食い物にして生き延びるしか、地方自治体の企業には生きる道が残されていません。これも小泉改革が始動した瞬間から充分に予想できた事だとも言われています。キック・バックや孫受け構造で余り大きな儲けにならない公共事業を受注しても、口を利いたと言い張る政治家や役人に「御挨拶」をしたら儲けなど出ないとも言われますなあ。名義をちょっと転がすだけで大儲けできる物件は、全部海外の凶暴な連中に食い荒らされてしまったなどと恐ろしい事を言う人も居るそうです。つまり、「日米同盟だけを死守すれば外交は上手く行く」とか「郵政民営化が出来なければ日本に未来は無い」などの台詞はウソだったのではないか?と、じっくりと考えねばならない時期だということなのでしょうなあ。」


「これまでの答弁の域を一歩も出ていない。(むしろ)後戻りしている」(長谷川憲正参院議員)反対派は首相答弁に反発。最終的な態度を決めかねている議員の一部から評価する声が執行部に寄せられたものの、大勢は「期待外れ。従来答弁を整理しただけ」(堀内派議員)と冷ややかだ。……首相答弁を受けて2日昼、国会内で、反対派説得のキーマンである青木幹雄参院議員会長と安倍晋三幹事長代理が情勢分析。「衆院でお手伝いできることはありませんか」と尋ねる安倍氏に、青木氏は「連携を取っていきましょう」。答弁だけで反対派を切り崩せる内容ではなく、「説得上、マイナスにはならない」(幹部)程度というのが実態だ。

■小泉さんの政治手法は「ワン・フレーズ政治」だと言われ続けました。でも、この表現は米国直輸入らしく、実態をぴたりと言い当てているとは言い難い、変な違和感が残っています。小泉さんは毎日、必ず数分間ずつ2回の「テレビ会見」を続けました。それはまったく新しい政治の手法でしたなあ。「ぶら下り」と呼ばれるほとんインタビューとしては価値の無い、実に見っともない質問の仕方が横行している中で、たとえ通り掛かりの立ち話同然ではあっても、何か悪い事でもしているとしか思えない取り巻きも無く、たった一人で複数のマイクの前に立って一問一答を続けたのです。大手新聞の第2面を埋め尽くす政治関連記事は、よほどの予備知識が無ければ読み流す事など不可能ですし、テレビやラジオも「一言で」など絶対に説明できないテーマを取り上げるのには、すっかり不向きなメディアになってしまいましたからなあ。小泉さんは田中真紀子さんのオマケとして登場して以来、テレビ業界の宝物になったのでした。

■それは小泉さん側でも事情は同じで、自民党内でも変人扱いされ、派閥の中でも異端児扱いされていたのですから、真紀子さん効果で生まれた人気を一人になっても持続させるためには、絶対にテレビ画面から消え去るわけには行きませんでした。もしも、毎日語り続けた小泉さんの「一言会見」を欠かさず録画していたとして、これを任期5年分を一気に見直したらどうでしょう?節目節目で注目されていた問題やテーマが懐かしく並ぶのは確かですが、小泉政権には原理原則など無かった印象ばかりが先行するのではないでしょうか?小泉さんは就任当初から、何冊かの本まで出して訴えていたのは「郵政民営化」だけでした。イラク派兵も北朝鮮問題も、たまたま降って湧いた話で、「国家百年の計」で対応したわけではなかったのです。イラクへは「戦闘が終わった」場所で「復興支援」する専門家という分かったような分からない解釈で自衛隊を送り、拉致問題は周辺国との「国交正常化」という長年の課題として取り組まれたのです。

■1国平和主義に基づく憲法を、地球規模のテロ時代にも保持し続けるのか?朝鮮半島は日本にとって分断状態が良いのか、統一を急ぐべきなのか?こうした問題に対する小泉さんの考え方を知っている日本人は居ないでしょう。米国大統領が大喜びした事と日本政府には国民の生命を守る抜く能力も意気も無い事だけは、良く分かったのですが……。そして、何よりも小泉さんが「郵政民営化」を急ぐ理由をしっかりと認識した有権者がどれ程居たのか?これは大問題でしたなあ。

金魚の糞の後始末? 其の四

2006-11-29 10:23:36 | 政治
■変人総理と呼ばれた小泉さんでしたが、日本中に犯罪性の濃い困った変人や変質者が激増中なのではないでしょうか?そもそも政界でも気味の悪い異端児だった小泉さんが、あれよあれよと言う間にマスコミの寵児になったのは、偏(ひとえ)に田中真紀子さんという血筋とキャラクターにおいて他の追随を許さない中年オバさんの代表のような「見世物」が出現したからではなかったか?その熱気は直ぐに小泉純チャンからヨン様ブームに乗り換えて過ぎ去ったような印象です。単なる偶然なのでしょうが、小泉さんが引退した時期にはヨン様ブームも退潮期に入ったのでした。会社やその他の組織動員で選挙をしていたオジさん連中に対抗して、元気なオバさん達が慣れない選挙戦に乗り込み、それを報道カメラが珍獣を発見したように集中的に追い回したからこそ、日本全土が小泉純チャンのブームに覆われたような錯覚を生んだのではなかったか?

■当時は、そんな日本の異様な光景を隣の国で国際ニュースとして眺めていた身としましては、あれは本当に異常な光景だった!と確信を持って言えます。


将来、私たちの暮らしにどう影響し、日本の財政再建や経済活性化に、どうつながっていくのか。まだまだ具体的に見えないことが多過ぎるのだ。参院の審議は、こうした疑問に十分こたえるものでなければならない。そのためには、小泉首相の答弁が重要になる。同じ問答をくり返し、どうせ溝は埋まらないというように素っ気ない答弁で済ます。こうした対応が、衆院で論議を十分に深められなかった要因の一つだった。審議の冒頭、首相は「法案に理解を得るよう、誠実に対応する」と述べたが、わざわざ基本姿勢に触れなければならなかったことへの反省から始めてもらいたい。与野党の勢力が接近する参院では、自民党から18人が反対すれば法案は否決される。首相にとって状況は一段と厳しい。

■これは当時の神戸新聞が掲載した社説の前半なのですが、参議院と衆議院が完全に一体化している自民党の選挙戦略を知っていながらこんな事を書いているのなら、その罪は相当に重いでしょうなあ。小泉「総裁候補」がマスコミの脚光を浴び始めた頃、喋っていたのは真紀子さんだけだったのではなかったのか?初めて見るような顔の小泉さんなど、どうせ半年も持たない木偶(でく)人形に違いない!その次は日本初の女性首相の誕生だあ!と熱に浮かされるように仕向けたのは誰だったのでしょう?大英帝国がたった一人の女性首相を誕生させるまでに、どれ程の苦労と失敗を重ねて来たのか、それこそ「世界史」の常識が無ければ到底、想像も出来ないのに、マスコミはその情報と知識のギャップを丁寧に埋める勤めを果たした上で、女性首相の幻影を演出したのでしょうか?


反対派は、造反をできるだけ増やそうとうかがい、民主党など野党も廃案で小泉政権を追い詰める構えをみせる。審議は衆院以上に緊迫せざるを得ない。このため、自民党内では早くも反対議員の「票読み」が語られる。しかし、あくまで国民に見える議論を通じた攻防でなければならない。水面下の工作など、政治への信頼を損なうだけである。念頭に置くべきは、郵政改革の原点だ。郵貯、簡保の資金の流れを「官」から「民」に移し、財政規律を高めていく。これを忘れ、結果的に一部の既得権を守るだけに終わるようなら、元も子もない。

■今となっては、「官から民へ」という日本語は、実は「日本から米国企業へ」の同義語だった事は明らかです。小泉改革の中で、ぼろぼろだった銀行は超法規的な大甘の救済策で復活し、ろくな利息も払えなかった事を顧客や納税者に感謝もしなければ謝罪など一切有りません。そして、犯罪的な担保物件として怪しげな取引と投機の繰り返しで高騰した「バブル地価」が、破裂したと思っていたらじわじわと元値に近い値上がりを始めている所が現れているのです。同時期には、過労死・サービス残業・派遣社員・パート労働者・フリーター・ニート・登校拒否・引き篭もり・鬱病患者が増え続け、電車に乗れば痴漢行為、買い物に行けば盗撮行為、近所を歩けば引ったくりに通り魔、家に居れば詐欺リフォームのお兄ちゃんがやって来るし、電話に出れば「オーレ、オーレ」とスペイン人のような事を言う泥棒が暇に任せて稼ごうとするし……。


参院は解散がなく、腰を据えた議論が可能である。広い視野からの慎重な検討が、課せられた役割でもある。法案がうたう郵政改革に問題が多いのなら、どんな方向をめざすべきなのか。そうした対案の提示を含めて、あらためて基本から審議を尽くしてほしい。「良識の府」としての存在感の見せ所ではないか。
神戸新聞 2005年7月14日

■「どんな問題が有るのか」をてきぱきと上手に指摘するのは新聞人の仕事なのではないでしょうかな?参議院が衆議院の「カーボン・コピー」になっているぞ!と鋭く情けない実情を告発したのは新聞だったのでしたなあ。そんな看板倒れの参議院に、未だに「良識の府」などと高松塚古墳の壁画の如くカビが生えた決まり文句を引っ張り出すのは止めにしたら如何?


郵政民営化をめぐって小泉純一郎首相が国会答弁で事態打開を図ったものの、不発に終わった。質問者との連係プレーで、郵便局ネットワークの民営化後の維持を明言し、自民党内の民営化反対・慎重派の軟化を狙ったが、効果はいまひとつ。参院の党執行部は関連法案の五日の本会議採決に持ち込みたい考えだが、成否の展望は描けない。

■「質問者との連携」というのは、今の流行に翻訳したら「ヤラセ」そのものでしょう?「自民党をぶっ壊す!」などと乱暴な事を言っておきながら、結局は難局を乗り切るためには自分達の党から「ヤラセ質問」をさせて、質問する方も答える方も、役人が書いた作文を暗証し合って済まそうとする。それを承知で「国会報道」として新聞記事にしたり、御立派な社説を書くのが新聞ならば、団塊の世代と共に日本から消えて無くなりますぞ!

金魚の糞の後始末? 其の参

2006-11-29 01:30:23 | 政治

自民党郵政族でつくる郵政事業懇話会の綿貫民輔会長(前衆院議長)は4日午後、党本部に武部勤幹事長を訪ね「法案は了承されておらず、処分は認められない」との申し入れ書を手渡した。

綿貫氏「執行部のどう喝的言動は許されない。今までも(過去の造反事例では)処分していないじゃないか」

武部氏「その時の執行部の考えによる。わたしはルールに従って粛々とやらせていただく」

■小泉さんが支持率を圧倒的に高めた「自民党をぶっ壊します!」発言の意味がまったく分かっていない綿貫さんは、ぶっ壊れる前の経験則に従って動いていた事が分かりますし、偉大なるイエスマンの武部さんにしても、自分自身が知らない「ルール」になど従いたくても従えないという道理が分かっていなかったのでした。それくらい良い加減な人でなければ、ホリエモン君と手を繋いで「我が弟です!息子です!」などとは叫べないでしょう?小泉さんは、綿貫さんと武部さんが共通認識としている「自民党」をぶっ壊したのです。


武部氏が、役職停止や支部長解任を念頭に造反議員への処分断行を明言したのは「説得の時期は終わった。造反を抑え込むには、強硬姿勢を前面に打ち出す必要がある」(別の幹部)との判断からだ。同日昼の政府、自民党幹部による協議では、中川秀直国対委員長が「太陽でなく北風を増やした方がいい」と強調。直後には武部幹事長名で造反議員への厳格処分を明記した文書が党所属の全衆院議員に送られた。ただ強硬路線については参院を中心に「反対派を逆に刺激し、結束させかねない」との慎重論もあり、執行部が振るう“もろ刃の剣”がどこまで奏功するかは不透明だ。

■本当に「不透明」だったのでしょうか?「反対派」と乱暴な括り方をしていますが、結束されて恐ろしいのは衆参両院に跨(またが)った反小泉包囲網が完成する事だけだったでしょうから、首相の一存で解散が認められている衆議院を恫喝すれば、まずは衆参両院の連携は不可能となり、衆議院の有力議員からの選挙協力によって議席を確保していられる参議院議員も身動きが取れなくなる、こう読み切っていたからこそ、小泉さんは自信満々だったのではないでしょうか?


「(メンバーの投票は)自由意思だ。賛成、反対、堂々とやればいい。それが議会制民主主義の原点だ」。綿貫氏は4日午前に都内のホテルで開かれた懇話会役員会後の記者会見で、懇話会としては最終的な投票行動は各議員の判断に委ねる方針を明らかにした。このため与党幹部は、法案否決には自民党から反対46票が必要になることを踏まえ「事実上の(反対運動)終結宣言だ。47士が集まらず、討ち入り断念ということか」とつぶやいた。……懇話会が造反を見込む議員の多くは「どうすればいいか教えてほしい。棄権と決めても、本会議場から出ようとすれば(同僚に)羽交い締めされるだろうし…」(若手)などと揺れ動いているのが実情だ。

■昔の自民党ならば、派閥ごとに異論反論やら怨念が渦巻いて、大変な緊張感が満ち満ちていたものです。弾圧が報復を呼び、恨みが逆恨みになって歴代総理の任期は加速度を増して短くなって行きました。首相に就任したら、もう疲れ切っていてお祝い気分が抜けたら足をすくわれないように神経をすり減らすような政権が続いたものです。小泉さんは、郵政民営化を公約した自分を総裁に選んだ以上は、民営化に反対するものは徹底的に攻撃しても良いのだ!と言うブッシュ大統領の先制攻撃正当化理論とまったく同じ理屈を押し通したのでした。小泉政権に自由や多様性は絶対に許されず、すべては敵か味方かの二項対立・二者択一の規則が貫かれてしまったのでした。

■ところが、昔ながらの「自民党村」に暮らしている気分が抜けない人達は、表向きは自民党総裁を共に支えると言いながらも、裏では引き摺り下ろして自分の親分と交代させるべく暗闘を繰り広げていたものです。それを小泉さんはぶっ壊したのです。


……反対派も「(執行部の)脅しとだましのテクニックが通用するはずはない」(亀井静香元政調会長)と強気を崩さない。たとえ衆院を通過しても、大量造反が出れば、与野党勢力が接近する参院の反対派が勢いづき「法案は悪くても継続審議扱いに持ち込める」との読みがあるためで、採決結果にかかわらず、党内に深刻な亀裂が走ることも避けられないようだ。
東奥日報 2005年7月4日

■与党の身分で「継続審議」を祈るようでは、その段階で喧嘩は負けでしょう。民営化に本気で反対した郵政族議員とそのお世話になっている似非郵政族との間には、微妙な違いが有ったのですから、打って一丸となって小泉政権を倒す!という話など、最初から盛り上がりもせず、まとまるはずも無かったのでしょう。


小泉内閣が最重要の課題とする郵政民営化関連法案が13日、参院に舞台を移して審議入りした。国会の会期末まで、ちょうど1カ月。わずか5票差という衆院通過の衝撃はなお尾を引き、自民党反対派の造反による「否決―衆院解散」の可能性も語られる。……最近の世論調査でも、郵政民営化への関心は依然として低い。法案の扱いは「今国会での成立にこだわらず、議論を尽くすべき」との回答が半数を占めた。郵政改革が広く浸透してきたとはいえない。

■1年以上経った今でも、郵政民営化が日本を活性化させるとも思えないし、全自民党議員を恫喝してまで断行しなければならない政策なら、他にも山ほど有る事を誰でも知っています。あの「郵政民営化選挙」にしたところで、一体、何が争点だったのか?本当にあの結果が当時の日本の世論を反映していたのか?と問われて、きちんと説明できる有権者やマスコミ関係者が居るのでしょうか?この1年、自殺者は成人ばかりでなく学校にまで広がり、とても正気では暮らせないとばかりに悪質な飲酒運転が増える一方なのは、確実にアルコール中毒患者が増加している証拠です。格差社会と言われていましたが、最近では其の後ろに「絶望」の2文字を添えた方が良いくらいの大混乱です。

金魚の糞の後始末? 其の弐

2006-11-29 01:29:46 | 政治

…自民党執行部は24日の衆院本会議を見送ったことは「筋書きの範囲内」(幹部)と強調。審議入りがずれ込んでも「改革にブレーキをかける野党」とのイメージを世論に浸透させることができれば「かえって与党に支持が集まる」(党三役の一人)と表向き余裕だ。……反対派の代表格、自民党「郵政事業懇話会」の綿貫民輔会長が、民主党の小沢一郎副代表と連絡を取り、両党の反対派議連レベルでも接触を図るなど、水面下の動きも見え始めた。同懇話会は25日、国会審議で政府案の問題点を徹底追及することを確認し、焦点となる本会議採決での「造反」に向けて、多数派工作の具体的な手順などについても話し合う方針だ。

■綿貫さんも今では吹けば飛ぶような小さな政党の看板をぶら下げての開店休業状態らしく、めっきりマスコミに取り上げられる事も無くなってしまいました。かと言って、野党に身を沈める?わけにも行かないのでしょうし、かつての「新自由クラブ」という手本も有りますから、少なくとも弱小政党の親分で居られれば自民党がいよいよ選挙が心配になれば、どんな理由を付けてでも呼び戻しに来てくれるのでしょう。元新自由クラブの親分は、その後は自民党に復党し、今では衆議院議長になっているのですからなあ。何ともいい加減な政党ではあります。


「審議拒否は国民から理解を得られませんよ」。小泉首相は24日夕、記者団に語った。特別委が設置された20日には「これで今年何回目ですか、もう。3回目か。また戻ってくるでしょう」と野党をいなした。政権発足から5年目を迎えようやく「本丸攻め」にたどり着いた小泉首相にとり、野党対策より、自民党内の反対派をどこまで押さえ込めるかが主眼。党内反対派と論戦する「本番」に、はやる気持ちは抑えきれず、与党執行部に審議促進を強く働き掛けている。首相サイドは、東京都議選が告示される6月24日までには衆院通過を図りたい考えで、衆院本会議での採決を最大の「勝負どころ」とにらむ。首相に批判的な古賀誠元自民党幹事長と肝胆相照らす仲の二階俊博総務局長を特別委委員長に迎えるなど、「反小泉」派の分断、孤立化を進める一方で、「解散風」「内閣改造カード」など手を替え品を替え、政局を主導したい考えだ。
東奥日報 2005年5月24日

■政治面の記事は、何処の新聞も驚くほど同じような内容になっているので引用元はどの新聞でも良いようなものです。ですから、綿貫、古賀、二階などの派閥のリーダーでもない小物の名前を大きく取り上げて、自民党内の騒動を大きく見せかけて面白く味付けしようとしても、後から読み返してみたら問題の焦点が大きくずれているのが分かりますなあ。今では古賀さんが何を言おうと、誰と会おうと記事にもならないのは、この後に取り返しの付かない「寝返り」技をやって見せたからでしたなあ。


小泉純一郎首相が掲げてきた郵政民営化に向け、衆院は4日、関連法案を特別委員会で可決、5日の本会議採決という最大のヤマ場を迎えた。否決、そして廃案を狙う自民党内の民営化反対派と、抑え込みを図る執行部の攻防は続行。首相は特別委質疑の答弁で「反対している人たちが骨を抜こうとしている。骨を作ろうとしているのがこの法案だ」と訴えた。

■当時、何処のメディアも造反組を「(郵政)民営化反対派」と書き立てていたのです!今になって、造反復党組は「民営化には反対などしたことは無い!」と言っているのですから、マスコミか復党組か、どちらかが大嘘を付いていた事になりますなあ。

「新聞報道で『不成立なら首相は衆院を解散する』という記事を読んだが、わたしが言った言葉ではない。わたしの話を聞いた人が、口ぶりで感じたんだろう。成立するから解散する必要はない」首相は答弁で郵政民営化にかける決意をあらためて表明した。ある党幹部は「首相は法案の衆院通過でも解散でも、どっちでもいいんだ。むしろ解散したいんだ」とささやく。首相は世論の支持を当て込んで双方をにらんでおり、解散を回避したい執行部と立場が微妙に異なるとの見方だ。

■この時の小泉さんの発言は謎です。自分の計算よりも早く情報が漏れてしまったのか、勘の良い記者に胸の内を読まれてしまったのか、はたまた、意図的に情報を流してトボケて見せる作戦だったのか?どれかが本当なのか、どれも部分的には本当なのか?時期的には「解散は無い」と思い込みたがっていた潜在的造反組を含めて、自分の決意の強さを理解していない連中を揺さぶり、骨がらみにして自在に操ろうと思っていたのでしょうなあ。それがまんまと成功することになるわけですが、一番小泉マジックに乗せられたのは、郵政解散選挙をお祭り騒ぎにしてはしゃいだアホな国民だったのかも知れませんなあ。

金魚の糞の後始末? 其の壱

2006-11-28 20:36:26 | 政治
■毎日、毎日、「復党問題」が新聞の政治面を埋め尽くし、テレビのニュースも面白可笑しく右往左往する政治家を追廻しておりましたが、始めから分かっていた茶番劇の幕引きとなったようであります。思い出せば、当時の小泉プレスリー首相は、盟友のブッシュ大統領が肝を潰したニューヨークの同時多発テロが起こった日付に特別な意味を感じていたかのように、9月11日に前代未聞の八つ当たり解散選挙を実施したのでしたなあ。名付けて「郵政改革選挙」と申しまして、衆議院を辛くも通過して回って来た法案を参議院が否決したからと言う訳の分からない理由で、その衆議院の方を解散したのでした。本来なら参議院を解散して国民の信を問わねばならない流れでしたが、残念ながら参議院には解散が無かったのでした。
 
■衆議院を通過したとは言いましても、実際には自民党と公明党の議席を合計した賛成票が入らず、危うい票差での通過だったのでした。こうした裏切りは絶対に許さない、一生忘れずに怨み続けるのが小泉流の喧嘩なのだそうですなあ。自分が出馬した二度目の総裁選挙でも、自分を担いでくれているはずの派閥から流出した裏切り票を絶対に忘れなかったとも言われておりまして、その反乱軍の大勝が平沼さんだったと言うのですから、出来過ぎた話ではごじませんか?裏も表も知っている政治記者には堪らない取材だったでしょうが、いつも「裏」を隠した思わせぶりの報道に付き合わされる方は堪ったものではありませんぞ!


自民党は28日午前、郵政民営化に反対し、同党を離党した造反組のうち、堀内光雄・元自民党総務会長ら無所属衆院議員11人の復党を審査する党紀委員会(笹川堯委員長)を12月4日に開くことを決めた。……誓約書を出さなかった平沼赳夫・元経済産業相については、復党願を受理せず、預かることになった。復党する11人のうち、堀内、古屋圭司、山口俊一、森山裕の4氏は28日午前、国会内で記者会見した。堀内氏は、「首相が温かい気持ちをもって、復党にゴーサインを出してもらい、感謝の気持ちで一杯だ。基本的に郵政民営化に反対ではなく、選挙期間中の会見、公報でも反対とはひと言も言っていない。賛成だ」と強調した。山口氏も「民営化自体は反対ではない。衆院選でも党内手続きがあまりに乱暴だったということを論争した」と語った。
読売新聞 - 11月28日

■衆議院の解散は土壇場まで無い!と有力議員を筆頭に、政治記者やら政治評論家まで大合唱していたのを忘れては行けません。一人、小泉さんだけは「断固解散だ」と腹を括って居た事が分かってからの自公民が見せた醜態は酷かったですなあ。涼しい顔で解散を発表した後、小泉さんが言いました。「これは単なる抵抗勢力による郵政民営化法案潰しではない。誰かが政局にしたんだ」と……。誰もが被害妄想ではないのかいなあ?と思ったものですが、今頃になって造反組みが「郵政民営化には賛成だった」としれっと言い放つのですから、小泉さんは正しく情勢を見透かしていた事になりますなあ。

■狐に抓まれたと言うべきか、狐と狸の化かし合いに愛想が尽きたと言うべきか、訳の分からないまま困惑している国民に向かって無神経にマイクを突きつけるマスコミもどうかしていますが、行政改革の本丸だったはずの大テーマが、「スジと情の問題」に変質してしまいましたなあ。高倉健さんの唐獅子牡丹じゃあるまいし、「義理と人情を秤に掛けりゃあ~♪」の調子で政治報道をされては迷惑千万ですぞ!腹が立つので、時間を1年巻き戻してしまいましょうぞ!


後半国会最大の焦点である郵政民営化関連法案は24日、民主、社民両党の審議拒否戦術で、審議入りが見送られた。……「小泉純一郎首相が『郵政解散』をやると考えるなら結構だ。自民党分裂選挙は歓迎したい」。民主党の岡田克也代表は24日の記者会見で、郵政民営化をめぐる自民党内の亀裂が深まる中、解散・総選挙も恐れないとの強気の発言を繰り返した。民主、社民両党は20日の郵政民営化特別委設置議決を受け、衆参両院のすべての審議に応じない方針を決定。「最低1週間は寝る(審議に応じない)」(国対幹部)構えで、民主党幹部は「とことんやる。与党との我慢比べ、知恵比べだ」と挑発する。

■これが昨年5月の報道です。岡田さんが民主党の代表だったのですなあ。昔の社会党以来、弱小野党は常に「寝る」しかやる事が無いというのも情けないのですが、何の根拠も無いのに国民の支持を得られると思い込む病気も、今と同じであります。自民党が選挙に強いのは、常に大敗する危機感だけは共有しているからなのでしょう。選挙が近いとなれば、恐ろしいほどの団結力と行動力を見せるのが自民党です。自民党が「分裂選挙」をしてくれれば漁夫の利が自分の方に転がり込んで来るという甘い計算をしてしまうところが野党の野党たる所以とも言えそうです。

続・北の原爆50年史 其の四拾四

2006-11-28 14:02:52 | 歴史

米保守系ワシントン・タイムズ紙は3日、米国防総省が北朝鮮の核施設に対する具体的な攻撃計画の立案を加速させていると報じた。ブッシュ米政権は北朝鮮核問題の「平和的、外交的解決」を強調しているが、同省は「大統領から攻撃命令が下った場合に対応するための準備」としている。複数の国防当局者の話として伝えた。……計画策定は数カ月前から始まり、10月の核実験実施を受けて加速された。計画は複数あり、攻撃対象の一つは寧辺(ニョンビョン)の使用済み核燃料再処理施設。海軍の特殊部隊による破壊計画や巡航ミサイル「トマホーク」6基による爆撃などが想定されている。攻撃による放射性粒子の拡散を最小限に抑える観点から多面的に検討されているという。
毎日新聞 - 11月4日

■こういう報道が繰り返されるのは感心しません。予防的な先制攻撃を本気で考えているのなら、てきぱきと準備態勢に入ってイラクで実行したように、自分勝手なスケジュールを相手に押し付けて実行しなければ事態はどんどん悪化してしまいます。それ以上に拙いのは日本の煮え切らない外交姿勢です。金正日体制を崩壊に追い込む気が有るのか無いのか、国民にもマスコミにもさっぱり伝わって来ません。秋に枯葉が落ちるように、一種の自然現象として北朝鮮が崩壊するとでも考えているのでしょうか?アフガニスタンとイラクは遠い国でしたから、遅ればせながら「復興支援」でぎりぎりの調整をして参加できましたが、庭先で始まったら無様な足手まといになるか、下手をしたら米国の「抵抗勢力」になってしまう可能性さえ有ります。攻撃が始まるまでは消極的に賛成している振りをしておいて、いざ始まったら止め役になるなどと言う馬鹿げた役回りは最悪です。


朝鮮中央放送によると、北朝鮮の外務省スポークスマンは4日、6カ国協議の再開について「日本に6カ国協議に参加してくれと要請したことはない」とし、日本の協議参加は必要ないとする立場を表明した。ラヂオプレス(RP)が伝えた。同外務省スポークスマンは、「『核保有国という前提の下では、北朝鮮を6カ国協議に受け入れる考えはない』との立場で日本が身分不相応に行動している」と非難した。

■この報道を初めて耳にした時には、随分と唐突に身勝手な事を言う物だと感じたものですが、米国がたとえ苦し紛れであろうとも専制攻撃を臭わせた瞬間に見事に反応しているのが分かりますなあ。下駄の雪になって米国に最後まで付き随うのか?と日本政府に迫る意味と、その決意が固められない自らの苦しい立場を自覚させて政府を萎縮させてしまう策略だったとしたら、日本は完全に北朝鮮の制御下に押さえ込まれたことになります。


さらに、スポークスマンは「これまで、日本が参加することは気に入らなかったが、他の参加国との関係を考慮して適当に扱ってきた」とし、「日本では(新)政府が構成されたばかりで国内的にも忙しいことが多いのに、6カ国協議で様子をうかがったりせず、自らの家のことにでも神経を使う方がよかろう」と述べた。また、「日本が6カ国協議に参加しないならこの上なくよいことであり、参加人員が少なくなるのは協議の効率性を高める上でも決して悪くない」と強調した。
産経新聞 - 11月4日

■今から振り返って考えてみれば、悔しいけれど言われている通りでしたなあ。小泉政権時代の内政と外交の両方に残された後始末に追いまくられ、安倍新政権の売り物だった「教育再生」も馬鹿馬鹿しいヤラセ・スキャンダルと自殺騒動、そして高校生の未履修問題で身動きが取れず、郵政民営化選挙の後始末も地方自治体の談合スキャンダルまで噴き出して、若い新総理はおろおろしているだけです。とても拉致問題の全面解決などに取り組んでいる余裕は無く、北朝鮮の核武装に対抗する「当然の対応」を臭わせることさえ出来ません。これでは米国は日本国内の基地を拠点とする攻撃モードには入れませんなあ。


米国の朝鮮半島専門家4人が、北朝鮮の核実験後初めて訪朝し、北朝鮮高官らと顔を合わせていたことが分かった。北朝鮮を訪れたのは、韓米経済研究所(KEI)のプリチャード所長、スタンフォード大学のケイライン教授、ルイス教授、米国立核研究所のヘッカー元所長の4人で、先月31日から今月4日まで訪問していた。一行は、北朝鮮外務省や寧辺の核施設、主要経済機関の関係者らと会い、懸案について協議した。今回の訪朝は、これまで北朝鮮を14回訪れているルイス教授のあっせんで実現したもので、核実験前から予定されていたという。訪朝結果は15日にワシントンで開かれる記者会見で発表される予定だ。
YONHAP NEWS - 11月8日

■専制攻撃を予告するような動きをリークさせつつ、ちゃんと裏のパイプは通じているのが米朝関係です。イラクと北朝鮮とを一度に相手にしたら、イラン問題も連動して最悪の展開を見せるのは誰にでも予想できる事ですから、北朝鮮問題は中国に丸投げして自分の面子さえ保てるのなら、時間稼ぎをして政権が受けるダメージを少しでも減らそうと思っているのは明らかです。


米国の上下両院議員や州知事らを選ぶ中間選挙の投開票が7日、全米各地で行われた。議会少数派の民主党がイラク戦争への国民の不満などを追い風に着実に議席を伸ばし、米主要メディアは民主党が下院で12年ぶりに過半数を獲得する見通しだと伝えた。……上院(定数100)の33議席、下院の全435議席が改選され、36州で知事選が実施された。CNNテレビによると、午後11時すぎ……獲得議席数は、上院(非改選も含む)が共和党46、民主党(民主党系無所属2を含む)48。下院が共和党137、民主党165。……知事選でも、民主党候補は共和党が維持していたマサチューセッツ州やニューヨーク州など4州での勝利が確実となった。カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事(共和)も再選を確実にした。選挙結果は、イラク問題をはじめブッシュ政権の今後2年間の外交や国内政策にも大きな影響を与えることになりそうだ。米メディアは、投票率は高いと予想している。
産経新聞 - 11月8日

■随分と昔の話のような印象が有りますが、今月の話なのですなあ。内戦と選挙は同じガス抜き効果が有るというお国柄ですから、選挙結果が分かると別の国にでもなったのか?と思えるような大きな変化が起こります。北朝鮮問題よりも、「イラク撤退」へとブッシュ政権は大きく傾いて行くことに世界中が驚きつつ注目しています。その視線を嫌と言うほど全身で感じているブッシュ大統領は、残りの2年間で北朝鮮などに関わってはいられない!と思っているのではないでしょうか?

笑える異論・暴論

2006-11-28 10:09:08 | 日本語
■子供の給食費を支払わないアホで恥知らずな親が地方自治体の悩みのタネになっているとの報道が有りましたが、トンデモない親の発言の中に「義務教育だから給食費を支払う必要はないはずだ!」というのが有ったのには大笑いしてしまいました。やはり、美しい国を作るには国民の「国語」力を鍛え直さねばなりませんなあ。「義務教育」という言葉は中学校の社会科で学ぶ事項なのですが、アホな親の屁理屈を真面目に考えると、これは国語能力の問題のようです。つまり、「義務」と「教育」という二つの概念については屁理屈を並べて開き直れるだけの理解を示しているのですからなあ。さてさて、憲法学の講義をちょっとだけ……。

第一二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、
     国民の不断の努力によつて、これを保持しなければなら
     ない。
     又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、
     常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第二六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、
     その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。
第二七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
第三〇条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

■第26条で、国民は「教育を受けさせる義務」を負っているんだぞ!と定められています。アホ親の屁理屈はこの条文の主語「国民は」を意図的にか、無知故にか「政府は」に入れ替えているのでしょう。それも「政府の金」が「国民の(税)金」だという常識がまったく欠けているのです。従って、第30条の「納税の義務」をまったく知らないのでしょうなあ。まさか政府の予算は日銀が刷る紙幣が賄われているなどと誤解しているのではないでしょうな?!その程度の幼稚な知識では、第12条の「公共の福祉」などと言われても、さっぱり意味が分からないでしょうし、「自由と権利の濫用は禁止」などという崇高な話には付いて来れないでしょうなあ。

■単に給食費が足りなくなるばかりでなく、問題が起こっている自治体の教育委員会は、地元の社会科教育を根本的に見直さないと、エライことになりますぞ!こんな親に育てられた子供がそのまま大人になっては、地域にとっても国家にとっても大変な迷惑ですからなあ。給食費の手当てや徴収は専門機関の協力を得るとしても、「お前の親は大きな勘違いをしているぞ」と教えてあげなければ子供が可哀想です。勿論、教育行政は国家の責任のおいて運営されねばなりませんから、義務教育が円滑に進められるようにする責任は政府が負っているのですが、それは形式的な問題で、実質は保護者の親が、税金を支払う事で政府に我が子の教育を付託しているのです。この理屈を早急に「社会人教育」で実施しないと、モラルの大崩壊が起こる怖れさえ有りますぞ。何と恐ろしい話でしょう?でも、こんな暴論を振り回して地元の赤提灯で天下国家を論じて悲憤慷慨している人がいるのなら、大いに笑えます。

■第27条の「勤労の権利と義務」についても、美しい国・日本を作るためには大急ぎで学び直さねばならないのですが、格差問題と国際問題とのややこしい関係も有りますから、別の機会に考える事にします。


三重県警津署は27日、同級生から洋菓子を脅し取ったとして、いずれも津市内の中学3年の男子生徒(15)2人を恐喝容疑で逮捕した。中学入学当初からいじめによる恐喝を繰り返していたとみて捜査している。……2人は10月16日、同級生の男子生徒(15)に「誕生プレゼントにケーキを用意しろ」などと要求、同19日午後6時ごろ、津市白塚町の路上で洋菓子12個(計1万3400円相当)を脅し取った疑い。いずれも「ケーキは食べたが恐喝はしていない」と容疑を否認しているという。……学校が2人を含む同級生数人に事情を聞いたが、いずれも事実を否定したという。仕返しを恐れた男子は今月11日、「学校は冷たい。死にたい」などと担任の教諭に電話をかけて家出。……男子は中学入学当初から1回200円から2000円ずつ、計20数回にわたって恐喝行為を受けていたとみられる。……
毎日新聞 - 11月28日

■「ケーキは食べたが恐喝はしていない」と言い放った15歳は、吉本興業などに就職すれば良いかも知れません。あそこは犯罪を笑いに包んでうっかりすると正当化しているようなゲイも売り物にしているそうですからなあ。「強めに撫でたけど殴ってない!」「冗談は言ったが詐欺ではない!」「頭を殴ったが親しみの表現だ!」「殴る蹴るもゲイの内だ!」「警察沙汰も笑いのネタだ!」こうした暴論は、人間が陥る錯覚や誤解を鋭く抉り出して笑いに変えて、客をはっとさせる道化の芸とは無縁のものです。「笑わせる」のと「笑われる」のとは全然違う、と或る名人が言っていましたなあ。笑われるのは恥さえ忘れれば誰にでも出来ますが、後味が悪いものです。その上、弱い第三者を材料にしたりする卑怯な笑いも流行っているようなので困った物です。

■イジメ殺し事件も、言葉の本当の恐ろしさや力を知らないまま「死ね!」「消えろ!」と暴論で標的とした個人を追い詰めておきながら、自殺事件にまで発展した時に、「死んじゃった」と表現するアホが居るようです。自分が「殺した」と表現できない内は、イジメなど無くならないのでしょうなあ。もう少し言葉を正確に使う努力をしたいものです。

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