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野田ドジョウ外交の始まり 其の弐

2011-09-21 15:14:15 | 外交・情勢(アメリカ)

米国を訪問中の玄葉光一郎外相は19日(日本時間20日)、クリントン米国務長官と会談し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設を推進する方針を確認した。クリントン氏は「(移設の)早急な進展」を求めた。発足間もない野田政権だが、問題を先送りしないよう強く牽制したものだ。玄葉氏は具体的な道筋を示せなかった。……民主党政権の外相は玄葉氏で4人目で、特にこの半年では3人目。日本の外相は会談のたびに就任あいさつを繰り返してきた。今回も玄葉氏は「日米合意を着実に進めたい」と語ったが、辺野古移設の日米合意の順守は、もはや「時候のあいさつ」と化している。米側の要求の背景には、いつまでも沖縄を説得できない日本側へのいらだちに加え、財政支出削減を訴える米議会の圧力もある。議会には「実現性が分からない普天間移設と海兵隊のグアム移転にカネを出す状況ではない」との雰囲気が広まりつつある。…… 

■少なくとも野田ドジョウ首相は「学べば学ぶほど」やっと抑止力の必要性を理解するような地球外頭脳を持っていないと思われるので、宇宙人の向こうを張って愚かな大見得を切って悦に入る心配はなさそうですが、菅アルイミ前首相のように無関心・丸投げ・先送りを単純にひっくり返して対米追従で突っ走る可能性は大いにありそうです。所信表明演説でも普天間飛行場の移設問題については「日米合意を踏まえつつ、普天間飛行場の固定化を回避し沖縄の負担軽減を図るべく、沖縄の皆様に誠実に説明し理解を求めながら、全力で取り組みます。また、沖縄の振興についても、積極的に取り組みます」と、たったこれだけしか言及していませんでしたから、要するに鳩山サセテイタダク政権が引っ掻き回した揚句に大混乱のオマケ付きで元の木阿弥に戻したところから、菅アルイミ前政権の空白を飛び越えて再び話を始めるという事のようです。本当にこの2年余の貴重な時間は何だったのでしょうなあ?


外務省幹部は「日本の決断を待つ余裕が米政府になくなりつつある」と指摘する。加えて頻繁な首相や外相の交代に、米側は「だれと話せばいいのか」と不信感を募らせている。辺野古移設で正式合意した6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、沖縄駐留米海兵隊の平成26年までのグアム移転完了を断念し、「できるだけ早い時期」とすることでも合意した。ゲーツ国防長官(当時)は直後の記者会見で「1年以内の進展」を日本側に要求。7月に就任したパネッタ国防長官は下院議員として長く予算や財政に携わり「コストカッター」と呼ばれた。決断を求める米側の圧力が今後一層強まることは必至だ。…… 

■「誰と話せばいいのか?」と米国側が当惑するのは当然で、安全保障政策を持たない政党が与党となった日本は実質的に無政府状態が続いているようなものですから、首相・外相・防衛相が三者三様バラバラで特に首相は何も考えず、何も知らない体たらくでしたから交渉ごとなど進むはずは無かったのでした。何とも恐ろしい話であります。


「圧力」は米側からだけではない。沖縄県の仲井真弘多知事は19日、ワシントンで講演し「移設先は日本の別の地域を探した方が断然早い」と強調した。
「移設ができなければ普天間を継続するしかない」「ゆすり発言」をしたとして3月に更迭されたケビン・メア元国務省日本部長は18日、更迭後初めて沖縄を訪れてこう語った。「日米合意順守」の掛け声だけで済む時期は過ぎており、残された時間は少ない。
2011年9月20日(火) 産経新聞 

■「できれば国外・最低でも県外」と何の準備も計画も無いままパンドラの箱を開けてしまった鳩山サセテイタダク前首相は今頃、一体、何処で何をしているのでしょう?三代目を決める代表選挙の時には気味が悪いほど生き生きと明るく?暗躍している姿が報道されていましたが、もう沖縄基地問題など頭の片隅にさえ残っていないように見受けましたぞ。多くの国民が求めたのは政権交代ではありましたが、決して鳩山サセテイタダク政権などではなかった!と臍を咬んでも後の祭なのですが……。民主党政権には外交は無理で、沖縄基地問題は荷が重過ぎると分かってしまっても震災からの復興と原発事故収束の大義名分があるかぎり日本国民は歯を食いしばって我慢しなければならないようです。それが間違った政権選択をしてしまった罰なのかも知れませんが、犠牲が多過ぎるような気もしますなあ。特に外交での失点は後になって大きな影響が出るものですから……。


訪米中の仲井真弘多沖縄県知事は20日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の空軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)への統合案を提示している上院軍事委員会のレビン委員長(民主)やウェッブ委員(同)ら3議員と面談し、普天間飛行場の県外移設を改めて求めるとともに、嘉手納基地をめぐる騒音問題などを説明した。仲井真知事は「嘉手納基地周辺の人々は戦後長期間にわたり基地と付き合い、非常に厳しい環境(騒音)問題を抱えている」と、被害訴訟を含めた実態を説明した。これに対し、レビン委員長らは騒音被害を認識しており、普天間基地の嘉手納基地統合案では、騒音が軽減されることを前提にしているとの考えを示したという。同委員会のマケイン議員(共和)は「議会でも普天間問題を放置してはならないとの意見がある。現実的な解決策を目指すべきだ」と話した。 
2011年9月21日(水) 時事通信 

■軍用機の騒音が消えることはなさそうですし、嘉手納基地の問題は決して騒音だけではないでしょう。それを手繰って行けば沖縄全体の基地問題という戦後日本の大きな負の遺産を掘り出すことになりましょうが、世界最大最強の軍事力を持つ米国と建前上だけでも軍隊を持たない日本との同盟関係という世にも珍しい構造が冷戦が終わった後でも説得力があるのか?という戦後日本が先送りし続けた宿題にもつながって行きます。冷戦が終わったという歴史的事実に鈍感だった日本は、チェルノブイリ原発大事故に対しても愚かしく鈍感で安全基準を見直すこともなく今回の大事故を起こしてしまったのでした。国民的議論も必要でしょうし正確な情報と知識の共有を促す教育も必要でしょうが、最後は政治的決断がなければ何も動かないのですから政治家と政党の質を向上させない限り、反米か対米追従かの悲しい二者択一をその場しのぎで「苦渋の選択」が続けられることになるのでしょうなあ。


仲井真知事はワシントン市内で記者会見し、日米両政府が合意しているキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)への普天間移設に関し、「地域住民が反対しているのに、政府が手続きを進めて、どうやって実行できるのか」と述べ、移設の前提となる環境影響評価書を政府が県に提出する動きをけん制。さらに、移設を強行した場合、「銃剣とブルドーザーで基地を造るかというところまで行ってしまう」と指摘した。
2011年9月21日(水) 毎日新聞

■玄葉外相の気味悪い笑顔と対照的だった中井真知事の鬼気迫る表情とを並べて見れば、米国人にもどちらが必死なのかは直ぐに分かりましょう。そこに乗り込んだ野田ドジョウ新首相がぬめぬめと掴みどころの無い発言ばかりして帰国するようだと、いよいよ日本外交の孤立化は深刻なものになりますぞ。
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安請け合いと先送り

2010-07-16 10:41:14 | 外交・情勢(アメリカ)
 ■前の鳩山サセテイタダク首相は辺野古移設問題で、マニフェストに書かれていない「最低でも県外」という自分自身の発言で自滅して、最後は「次の総選挙には立候補しない」と自らの政治生命を絶つ宣言までするハメになりましたが、今度の菅新首相はこれまた新しいマニフェストで匂わせていた消費税引き上げを不用意に口にしたばかりに、藁をもつかむ思いで匂いさえも無かった「還付制度」などを持ち出して自分が掘った墓穴をどんどん深くして行きましたなあ。

■両者の違いは自分の勝手な思い込みで迷走したのが鳩山サセテイタダク首相で、官僚に洗脳されて踊らされたのが菅新首相ということになりそうですが、政権を継承した関係で両者を強く結び付けているのは沖縄の普天間基地移設問題でしょう。参議院選挙で、不思議なくらいにこの問題が取り上げられなかったのは、前政権が5月下旬に日米共同声明を発表していたからだと思われます。しかし……。


日米が沖縄県名護市辺野古への代替滑走路建設で合意した米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設で政府は14日、両国の専門家協議で8月末までに決める滑走路の具体的な場所や工法について、結論を一つに絞り込まず、複数案とする方向で米側と調整に入った。結論を限定すれば、沖縄側に「押し付け」と受け取られる懸念があるため、柔軟な対応で臨む。……日米は、5月の共同声明で8月末までに専門家レベルで結論を出し、秋に開催する両国の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で決定するとしている。……9月12日には名護市議選、11月28日には県知事選が予定される中、日米専門家協議での結論を押し付ければ、地元から「頭越し」との反発を招き、移設が一段と困難になると判断した。 
7月15日 時事通信

■国民新党との間で「郵政改革法案の成立を期す」と文書で約束しておいて1週間で裏切った菅新首相ですが、相手が米国政府・米軍となりますとニヤニヤしている場合ではありませんぞ!まあ、沖縄全土で反米運動が起きるのを極度に恐れている米国側から「現地の合意が最重要」とお墨付きを貰っているとは言え、参院選で自前の候補者を立てられなかった沖縄で近く行われる地方選挙の結果に怯える菅新政権は、立派に前政権の板挟み・袋小路外交を継承しているわけです。ご本人はしぶとく粘って、雨が降ろうと槍が降ろうと、何が何でも政権にしがみつく決意が固いそうですが、その間中ずっと移設問題が先送りされることにでもなれば、世界で最も危険な普天間基地は存続し続けることになりそうです。最悪の場合、菅ネバネバ内閣がもたもたしている間に再び嫌な墜落事故でも起こったらどうするのでしょう?

■米側に「複数案」を提示すれば共同声明に反することはなく、沖縄の人達にも一方的に押し付けることにはならない……そんな事を考えるのは官僚仕事の典型と申せましょう。菅新政権の草冠はとうの昔に取れて何処かに落として来たという悪い冗談が本当になっているのかも知れませんなあ。ちょっと古い話になりますが、新政権が発足してから20日ほど後、6月27日のことであります。


菅直人首相は27日夜、カナダ・トロント市内でオバマ米大統領と約30分間会談した。焦点の米軍普天間飛行場移設問題について、両首脳は、同県名護市辺野古周辺に移設するとした5月の日米共同声明を堅持し、具体化へ協力していくことで一致。大統領が訪米を招請したのに対し、首相は9月の国連総会に合わせた訪問を検討する考えを伝えた。……

■就任直後の6月6日にもオバマ大統領と電話会談をしている菅新首相ですが、『週刊現代』7月10日号によると「事前に外務省に想定問答を作らせ、その範囲内での会話しかしなかった」そうですから、たった半年間の財務相時代に財務官僚ばかりでなく外務官僚にも取り込まれていたのかも知れません。電話会談をした6月6日時点では法律上はまだ財務相だったのですが……。


……首相は日米同盟関係について「日米関係をさらに深めることとしたい。日本の中でも大いに議論したい」と表明。大統領も「日本の安全、米国の安全のみならず、地域の安全に不可欠の役割を果たしている。その時々の情勢に合ったものにしていくことが重要だ」と指摘。日米安全保障条約改定から50年を迎えた今年、両国の同盟関係を深化させることで合意した。……日米共同声明は、代替施設の詳細な位置や工法に関する専門家による検討作業を8月末までに完了させると明記している。これについて首相は「実現に向けて真剣に取り組んでいきたい」と伝えるとともに、「沖縄の負担軽減のため、米側の協力をお願いしたい」と要請。大統領も了承した。……
2010年6月28日 時事通信

■「日米同盟の深化」は鳩山サセテイタダク首相も繰り返して語っていたものですが、その中身が普天間基地を沖縄から蹴り出すことだったのですから、菅新首相は中身が違うことを明言しておく必要があったはずです。「代替施設の詳細な位置や工法」を決めるという約束の中身が「複数案」だったと分かったら、相手はどう思うでしょう?一つの計画を作るのも大変なのに、「詳細な複数案」を作るのに要する労力は想像を絶するものになりそうです。共同声明の文面を素直に読めば、今年の8月末には設計図が完成して工事予定と完成時期もはっきりするものと思ってしまいます。それは誤解だ!と菅新首相は米国側に言わねばなりますまいなあ。

 
仙谷由人官房長官は15日午前の記者会見で、米軍普天間飛行場移設問題で、代替施設の位置や工法に関し、11月のオバマ米大統領の来日時に最終合意する可能性について「交渉事について、今からお尻を切るとか切らないという話ではない」と述べ、否定的な考えを示した。仙谷氏は……「誰が決めたのか。11月に(大統領が)来るからという連想ゲームの世界ではないか」と述べた。……8月末までに代替施設の位置や工法に関する専門家による検討を完了することが明記されており、両政府は15日に米ワシントンで外務、防衛担当課長らによる実務者協議を再開する。
2010年7月15日 産経ニュース

■「連想ゲーム」とは思い切った言葉を選んだものですなあ。11月の大統領来日に至っても決着しないとすれば、8月末にまとまるはずの「詳細な位置や工法」は日米間で更にすったもんだの厳しい「交渉」をしなければならない代物になるという話になりますが、それもまた「連想ゲーム」なのでしょうか?元はと言えば先の総選挙で「政権交代」を望んで民主党に投票した多くの有権者は、愚かな「連想ゲーム」に酔って大間違いをしてしまったということなのかも?

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5月末日の後 其の弐

2010-05-27 22:40:35 | 外交・情勢(アメリカ)
中国は、北朝鮮との関係を再考し、今週28・29日の温家宝・中国首相の訪韓の際には、哨戒艦沈没事件に関して、韓国により理解を示す可能性がある。米高官が26日、明らかにした。中国は北朝鮮へ不満を募らせており、哨戒艦沈没を受けた国連の対応に関しても、早期に協議に加わる意向を示す可能性があるという。

■先の「朝中国境付近の国境警備隊に82ミリ迫撃砲を扱う火力支援小隊が編成され、実戦配備」との報道は、北朝鮮が北京政府の極秘情報をいち早く察知した上での反応だったとしたら……。先代様の流儀を踏襲すればチャイナがダメならロシアがあるさ!と両天秤の一方に重心を移して切り抜けるところでしょうが、既に米ロ関係は新しい段階に入っていて、両国政府にしてみればその手は桑名の焼き蛤でありましょう。


中国はこれまで中立の立場……哨戒艦沈没事件は、北朝鮮の魚雷攻撃によるものとの調査結果に関しても、断定を避けている。匿名のある米高官は、温首相の訪韓の際に「中国は急だが慎重に韓国寄りへと態度を変え、(沈没事件に対する)適切な国際社会の対応についても、韓国との協議を開始する可能性がある」と述べた。また別の高官は「中国は、自国の安全保障に関して、北朝鮮が中国の立場を複雑化しているとみており、北朝鮮に対し強い不満を持っている」と指摘。

■毛沢東が強行した朝鮮戦争への介入は正しかったのか?などという恐ろしい疑問が蒸し返されては大変だあ!と北京政府内の誰かさんは慌てているかも知れません。このままでは、本当に朝鮮戦争の休戦が敗れて第二ラウンドが始まってしまうと誰かさんは本気で心配しているのかも?日本の民主党と社民党は選挙協力という米櫃(こめびつ)を真ん中に置いて沖縄基地問題で「チキンレース」をしているとの報道もあるようですが、今の半島で展開しているのは生きるか死ぬかの本物のチキン・レースでありましょう。いよいよ「6者協議」が「5者協議」になって、北朝鮮崩壊後の綿密な打ち合わせが始まるなどという恐ろしいことのないように願いたいものであります。何せ今の日本にはそんな物騒で緊迫した重要な会議に出席する実力がありませんからなあ。まさか、福島代表を送って「憲法9条が最大の抑止力だ!」などと一席ぶって会場を爆笑の渦に巻き込むような不真面目なことは出来ませんし……。


米国と韓国が合同軍事訓練や軍の戦闘体制強化、情報機関の提携強化などを検討していることを受けて、中国は安全保障環境の悪化を憂慮し「北朝鮮の態度を改めさせるため、手を打つ必要があるとの考えに変わる」との見方を示した。
5月27日 ロイター

■北京から見たら海への出口を塞ぐ形で半島が南北に伸びているのですから、ここに米軍が再び本格的な軍事拠点を置くようなことになったら、壮大な外洋に向かう世界戦略が目詰まりを起こしてしまうでしょう。黄海で北朝鮮に対する警戒態勢を敷かれるのも傍迷惑なことで、半島と地続きで隣り合っているチャイナとしては目障りで仕方が無いでしょうからなあ。
 
……米韓軍当局は26日、北朝鮮軍に対する情報監視レベルを一段階引き上げた。哨戒艦沈没事件で韓国政府が対北制裁措置を発表したことを受け、挑発の可能性が高まっているためという。監視レベルは5段階で、「注意深い監視が必要」な「3」から今回、「国益に著しい脅威が及ぶ兆候がある」とする「2」となった。レベル2では、米国の情報衛星による監視が強化され、在韓米軍の偵察機の飛行回数が増える。状況によっては在沖縄米軍基地から空中警戒管制機(AWACS)なども投入される。

■「辺野古」の地名を書くか書かないかと大騒ぎしている日本を嘲笑うかのように、半島情勢を睨んで沖縄が対北朝鮮監視の要となって動き始めるようです。韓国の哨戒艦を魚雷一発で沈めて興奮状態の北朝鮮が、今度は米軍の偵察機を撃墜しようと対空ミサイルでも発射しようものなら、またまた米国は正気を失って熱狂的に戦争を希(こいねが)い始めるかも知れません。それを同盟国の日本は止められるでしょうか?鳩山サセテイタダク首相が憧れる対等な関係ならば、米国が振り上げた拳を下ろさせることも有りえるのですが……。


……韓国のYTNテレビは27日、江原道鉄原に近い非武装地帯内にある哨所に北朝鮮が14.5ミリ重機関銃を束ねた対空兵器を持ち込む動きが確認されたと報じた。非武装地帯への重火器の搬入は朝鮮戦争の休戦協定に違反する。
5月27日 時事通信

■北朝鮮の情報収集能力は非常に高く、米軍の動きを読み切って先手を打って待ち構えているかのようです。「休戦協定」を破ったのなら、それは実質的に戦争状態への回帰を意味しているはずです。鳩山サセテイタダク首相は国連での会議を楽しみにしているようですが、北朝鮮も米国も話し合いで決着をつけるのを好まない国ですから、「安保理制裁決議に先頭を切って走りたい!」という願いは適わないかも知れませんなあ。まあ、適ったところで誰も「独り言」は聞いてくれそうもありませんが……。


米中戦略・経済対話が閉幕した。記者会見に出席したヒラリー・クリントン米国務長官は、今後4年間で10万人の米国大学生を中国に派遣する計画を明らかにした。……対話では計26項目もの合意が交わされた。クリントン国務長官は一朝一夕にこうした合意が得られたわけではないと話し、過去数か月にわたる大量の作業、そして両国の長期的な信頼関係が基礎になったと強調した。

■クリントン長官の外遊日程は日本に4時間、北京に6日間だそうですなあ。鳩山サセテイタダク首相の「トラスト・ミー」発言の影響で、日本には「給油に立ち寄っただけ」と同行した高官が言ったとか言わなかったとか……。日本の新聞は米国務長官の訪日を大々的に報道していましたが、米国では非常に小さな扱いだったそうであります。それにしましても、東京の次に訪れた北京で「過去数か月にわたる大量の作業」だの、「両国の長期的な信頼関係」だの、まるで日本政府に対する当て擦りとしか思えないスピーチでありますなあ。日本の鳩山サセテイタダク首相は「一朝一夕」に日米関係を深化させて沖縄の基地問題も片付くと思っていたようですから、日本に対するメッセージにもなるように工夫したのかも?

■「今後4年間で10万人の米国大学生」とは、昔、日本の中曽根政権時代に似たような計画が立てられましたが、「修学生」だの「研修生」だのと正体不明の制度が作られて当初の目的とは随分と違った結果になってしまったようですが、米国が打ち出した派遣計画はかつてキッシンジャー外交で使った「ピンポン外交」路線を大規模に踏襲したもののような印象で、大成功の予感が濃厚であります。それにしましても「今後4年間」に朝鮮戦争は起きないのでしょうか?


……今回交わされた合意の一つに大学生の派遣がある。今後4年間で米国は10万人を超える大学生を中国に派遣することになる。派遣された大学生は中国語を学び、また中国社会のさまざまな階層の人々と交流することで、中国理解を深めることが期待される
5月27日 Record China

■戦前、戦後を通じて米国は日本に対して同じような学生の派遣計画を考えたことは無かったと思います。日米同盟を深化させる前に、米中同盟のようなものが出現したら、日本の命運は尽きてしまいそうな不安があります。それはともかく、北朝鮮包囲網が急速に生まれつつあるタイミングで北京に国務長官が腰を据えて「米中戦略・経済対話」を行うとは、とても日本には真似の出来ない芸当であります。何よりも北朝鮮の心胆を寒からしめるには最高の外交イベントであるとも言えそうです。鳩山サセテイタダク首相は「5月末」の後をどのように考えているやら……。
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5月末日の後 其の壱

2010-05-27 16:46:56 | 外交・情勢(アメリカ)
■運悪く今年の「5月末日」は月曜日だそうで、鳩山サセテイタダク首相は北沢防衛相をワシントンに貼り付けて、日米同時進行で懸案の普天間基地の問題を「決着」させようと、ご本人なりに精いっぱい頑張っているのだそうです。連立相手の社民党が駄々を捏ねて騒いで、大手新聞の紙面に党名や議員の名前が大きな活字で踊るという椿事が起こっております。参議院選挙前ですから、身銭を切らずに済むパブリシティ効果には大いに期待したいところでしょうが、閣内で外交の足を引っ張り日米関係を悪化させている姿が有権者の目にどのように映るっているのか?猫の額ほどの党内でもくっきりと色分けされて大議論が起こっていることにコアな支持者たちが何を思っているのか?
 
■「言うことを聞かないのなら放り出せ!」と言いそうな怖い幹事長が黙っているのは、直近の選挙で社民党に投じられた300万余の票を民主党の苦しい台所事情の穴埋めに使うための苦渋の選択だとか……。元々吹き溜まりの寄り合い所帯の民主党内部がちょっとした切っ掛けで動揺して軋(きし)むのは当たり前ですが、分裂後も縮小衰退の一途を辿りながらも打って一丸となって生き残っているはずのこちこちのイデオロギー政党だったはずの社民党が、政権与党の蜜の味を知って日和ったか?と思われたらコアな支持票も逃げて行くような気もしますなあ。

■日米共同声明には「辺野古」と書き込み、署名しないわよ!と「消費者及び食品安全・少子化対策・男女共同参画担当」の特命大臣が脅すので閣内で作る書類には地名を書かずに済ませる方策を考え中とか……。福島大臣は自分の担当分野の仕事をしているのでしょうか?官僚に留守を預けて丸投げか?ちょっと心配でありますなあ。

■「二枚舌」だの「ウソつき」だのと、今更騒いでも詮無いことながら、やっぱり「独り言」しか言えない人を総理大臣にしたらダメですなあ。いっそのこと、閣内で作る文書の「辺野古」を果汁液で書いておいて社民党には空白ですよと騙して署名して貰い、後で炙り出すとか、造幣局に頼んで「辺野古」を透かしに仕込んでおいて光りに翳さないと見えないとか、金属箔でスクラッチ籤状態にしておいて福島大臣が署名したら鳩山首相の有り余る財産の中から10円玉を出してキュッキュッと地名を削り出すとか……。
そんな馬鹿馬鹿しい冗談しか思い浮かばない「5月末決着」へと雪崩れ込んでいく茶番劇であります。


北朝鮮が韓国からの攻撃に備えるため、朝中国境を守る国境警備隊に砲撃砲を追加配備し、この一帯に放射砲旅団を展開させたことが分かった。韓国メディアが26日、対北朝鮮消息筋の話として伝えた。……2010年2月までに朝中国境付近の国境警備隊に82ミリ迫撃砲を扱う火力支援小隊が編成され、実戦配備が完了したと明かした。国境警備隊は人民武力部に属するが、主な任務は住民の脱北防止であるため、小銃などの軽装備が主だった。……休戦ライン一帯や海岸付近に配備されてきた北朝鮮型多連装ロケット砲が朝中国境にも配備され、北朝鮮と中国との間で微妙な緊張が生じていることも伝えられている。北朝鮮は武器強化の理由について、「中国側から韓国の特攻隊が攻撃する可能性があるため」と説明しているという。

■何かと北朝鮮問題に関して北京政府の影響力を期待する声が多いようですが、将軍様が最も本音で嫌っている国はチャイナだという噂もあるようですし、痩せても枯れても自力で生き延びている独立国ですから、相手だ何処であろうと飼い犬のように従順であるはずはないでしょう。北側の国境も油断無く見張っているでしょうし、その目的が「地上の楽園」からの逃亡者を射殺することなのか、チャイナが仕掛ける謀略を警戒するものなのかは時と場合に因るのでありましょう。目と鼻の先でキナ臭い空気が流れているというのに、日本の動きは特に鈍いような気がします。


……韓国メディアによると、北朝鮮住民の間では「6月1日-4日ごろに戦争が始まる」といったうわさが流れている。このうわさは一部の地域だけで広がっているものとみられているが、北朝鮮国内の緊迫する様子が表れている。
5月27日 サーチナ

■その「戦争」は鳩山サセテイタダク首相が発火させて傷つけた日米同盟が破綻して起こる日米間の武力衝突ではないでしょうが、「5月末」の翌日という日付が気になりますなあ。建国以来、ずっと宙ぶらりんの戦時体制下で暮らして来た北朝鮮の人たちは、いっそのこと勝っても負けても本当に戦争を仕掛けて決着をつけて欲しいと思っているという話もあるようですから、噂は願望の一種なのかも知れません。

■週末のニュース・ショーなどでは「どこの国も戦争は望んでいない」と気楽に口にする専門家やコメンテーター諸氏がいるようですが、その中に北朝鮮が間違いなく含まれているという確証はあるのでしょうか?そして、さらに緊張が高まって問題となっている沖縄駐留の海兵隊が米韓軍事同盟の尖兵となって大活躍するような事態になったら、福島「消費者及び食品安全・少子化対策・男女共同参画担当」大臣は何と言うのでしょうなあ?問題は55年体制の記念品みたいな社民党の存亡などという小さな事ではなく、東アジアの中で日本が占めるべき役割なのですが……。

今年もアフガン 其の弐

2010-01-12 10:18:55 | 外交・情勢(アメリカ)
■オバマ大統領が、米国の対テロ戦争の主戦場はアフガニスタンだ!と言い切った頃は、確かにアフガニスタンの治安を回復して復興モードに入れれば対テロ戦争も峠を越えるような気がしたものですが、領土も国境も恒常的な軍事拠点さえ持たないアルカーイダなどのテロ組織を相手にする「非対称性」戦闘に勝利するには、大規模な掃討作戦よりも住民の生活インフラを整備して、子供たちの教育と大人の雇用を生み出すことに協力して、テロ組織の存在理由と価値を減じて行く地道な努力の方が重要だと思われます。

■しかし、降り掛かる火の粉は払わねばならぬ!というのが米軍の最高司令官であるオバマ大統領の使命でありますから、米軍の威信を傷つけるような尻尾を巻いて逃げ出すような真似は出来ません。日本の鳩山サセテイタダク首相が基地の移転問題に関して訳の分からないことを言っている間にも、対テロ戦争の主戦場への兵力増強を断行しなければならないのでありました。


オバマ米大統領は(12月)1日夜(日本時間2日朝)、アフガニスタン戦略について、ニューヨーク州の陸軍士官学校で演説し、3万人のアフガン駐留米軍の追加増派を決定したことを発表した。2010年夏までに展開する。一方でアフガン治安部隊(軍・警察)の強化を急ぎ、「18カ月後に米軍は帰還を開始する」として、11年7月までに米軍撤退の道筋をつけることを明言した。……大統領は、アフガンが再び、国際テロ組織アルカイダの活動拠点になるのを防ぐため、タリバンの勢いをそぐ必要性を強調。増派の目的として「武装勢力の掃討と、主要な人口集中地区の治安安定」に加えて、「有能なアフガン治安部隊の強化」を挙げた。

■この決定が「遅過ぎ、少な過ぎ」でないことを願うばかりですが、この決定の後に現地のCIA要員が爆殺されるという大事件が起き、米国内でもデトロイト市上空であわやの大惨事が起こるところでありました。3万人の兵を増派する前にアフガニスタンから経験豊かなテロリストが逃げ出し、ビン・ラーディンの故郷でもあるイエメンに集結していたというのは皮肉な話でありました。


アフガン増派は、今春の2万1000人に続くもの。駐留米軍は現在の6万8000人から10万人規模となる。大統領はまた、同盟国からも「一層の貢献があると確信している」と述べた。……4日にブリュッセルで開かれる北大西洋条約機構(NATO)外相級会議で、クリントン国務長官が改めて各国に派兵を要請する。

■「一層の貢献」を期待される同盟国の中に鳩山政権の日本が含まれているのか否か?しっかり含まれているのなら、憲法改正まで視野に入れた自衛隊の扱いを徹底的に見直す作業が必要になるでしょうし、万が一、含まれていない!というのなら、いよいよ日米安保体制の終焉を覚悟して非武装中立・重武装中立の選択議論、あるいは誰かさんが密かに願っているかも知れない日中同盟などという突飛なアイデアまで、敢えて玉石混交の大議論を始めねばならなくなりますが……。

■クラッシャー小沢の「ISAF参加は合憲だ!」というユニークな説も改めて詳しく聞きたいところでありますなあ。


大統領は、ベトナム戦争の再現を懸念する声が米国内にあることや、今回の派兵は年間300億ドルの費用がかかり、財政的に苦しい判断であることを認めた。その上で、オバマ政権が「米にとって必要な戦争」と位置付けるアフガン戦争への理解を求めた。2万1000人の増派を含む包括的なアフガン戦略を3月に発表した大統領は、8月のアフガン大統領選後に戦略の再評価を行うとしていた。同月末、アフガン駐留米軍のマクリスタル司令官が「アフガンの状況は深刻」とする報告書をまとめ、4万人の追加増派を要請。政権内で見直し作業を進めてきた。……
毎日新聞 2009年12月2日

■とにかく米国は「選挙」だ大好きな国であります。一説には4年に一度の大統領選挙は、かつての南北戦争と同じ国内矛盾を緩和するためのガス抜きを目的とする代替戦争イベントだとも言われるくらい、自国の選挙に夢中になります。困ったことにまったく歴史も文化も異なる他国に対しても、何が何でも「選挙をやれ!」と大真面目に要求するのが悪い癖であります。先のアフガニスタンで実施された選挙は、とても公正とは呼べないばかりか、民族・部族間の対立を先鋭化させただけで新国家の統合になどまったく寄与しないものでした。

今年もアフガン 其の壱

2010-01-12 10:18:39 | 外交・情勢(アメリカ)
■政権交代が実現したとて浮かれ気分で必殺!仕分け人イベントにマスコミの目が集中し過ぎた感があった民主党新政権とマスコミの蜜月期間でありましたが、政権交代が起こる前から衆参両議院のネジレ現象を利用して民主党は重要な外交案件を変更させていたのでした。いまだに意味不明の「東アジア共同体」構想を原点として鳩山サセテイタダク首相の外交姿勢を延長・敷衍して行くと、インド洋での給油支援活動の終了も蜜月期間の後半に噴出した沖縄普天間基地の移転問題も同一線上に並ぶような気がしてなりません。、
 
海上自衛隊がインド洋で展開している外国艦艇への給油・給水活動が、新テロ対策特別措置法の期限切れに伴い15日に終了する。「テロとの戦い」を掲げ、2001年12月に始まった活動は約8年を経て終止符を打つ。01年9月の米同時多発テロを受け、テロリスト掃討のためアフガニスタン攻撃を続ける米軍などの支援のため翌月、旧テロ特措法が成立。戦闘機も飛び交う「戦時」の海への初めての自衛隊派遣として議論を呼んだ。
07年11月の同法期限切れで活動は一時停止。その後、海上で武器などを取り締まる外国艦艇に対象を限定した新テロ特措法が成立し、
08年2月に活動が再開されたが、昨年9月に発足した民主党政権は活動を延長せず、アフガン政権への民生支援に切り替える方針を決定した。現在活動中の補給艦「ましゅう」と護衛艦「いかづち」は撤収命令を受け、16日午前0時に任務を終了、帰国の途に就く。 
1月10日 時事通信

■普天間基地の移転問題では、鳩山サセテイタダク首相の「トラスト・ミー」発言が問題視されましたが、その前に決定しているアフガニスタンへの「民生支援」の国際的な約束の方がもっと重大な意味を持っているのではないでしょうか?選挙前には国連主導なら軍事協力も可能だ!と語っていたクラッシャー小沢が黙り込み、新政権が発足すると、米軍主導のアフガニスタンでの掃討作戦とは一線を画した復興策を打ち出しそうな話も出ていたのに、結局はカネだけ出すから後は宜しくね、という湾岸戦争の苦い経験から何も学んでいない最悪の決定をしてしまった鳩山内閣の「友愛」外交であります。

■関係諸国から高い評価を得て犠牲者も無く見事に任務を終了して帰国する隊員の皆さんを、民主党政権はどのように迎えるのか、非常に興味が湧きますなあ。日本の海上自衛隊が担当していた海域の目と鼻の先でソマリア海賊が跋扈していたのは有名な話で、一事は給油活動を終了した後に任務を変更して紅海の入り口にあたるソマリア沖での警戒任務に移行できないか?と政権末期の自民党ではちょっとだけ議論になったものでしたが、いよいよ日本がインド洋から手を引くという時になって、同海域がアルカーイダの新たな拠点となったイエメンに向けてソマリアが物騒な武器を補給しているルートになっていることが判明したのですから、日本の態度はまさに「あとは野となれ山となれ」の無責任極まりないものと思われても弁明の余地はなさそうです。


米上院外交委員会は、ラムズフェルド前国防長官などが2001年の米同時多発攻撃直後に、アフガニスタンの山岳地帯にアルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者が潜伏している事実をつかみながら、増派要請を拒否したために取り逃がしていたとする報告書をまとめた。……米軍はタリバン政権崩壊後、アフガンの民兵組織とともにトラボラの山岳地帯でビンラディン容疑者の捜索作戦を展開。迅速な作戦に向けて増派が要請されたが、作戦の主導権を民兵組織に委ねたため、同容疑者や側近を取り逃がしたという。報告書は、ラムズフェルド前長官とフランクス中央軍司令官(当時)が増派要請を拒否したとして非難。一方で、ビンラディン容疑者を殺害していたとしても、世界に広がるイスラム過激派の脅威が消えたわけではないとしている。オバマ米大統領は近く、アフガンに約3万人を増派する計画を発表する見通し。
11月30日 ロイター

■最初にアフガニスタンに向けて巡航ミサイルを撃ち込んだのはクリントン大統領だったはずですが、次のブッシュ政権は無茶苦茶な理由でイラクを主戦場にしてアフガニスタンでの戦いを実質的に格下げしたことが、本来の対テロ戦争の目的をあやふやなものにしてしまったのは確かでしょう。石油業界と軍需産業の失業対策だったという恐ろしくも滑稽な噂が飛び交ったくらいで、オバマ新政権の誕生はイラク戦争の失敗が原因とも言えそうです。ブッシュ前政権はイラク(の石油)欲しさにアフガニスタンの作戦を軽視してしまったのは、唯一の軍事超大国といえども二正面作戦には堪えられない事実を世界に晒してしまった上に、山岳地帯での作戦を嫌って砂漠の一本道を選んだことで、アフガニスタンのタリバーンやアルカーイダを勇気付けてしまったのではないでしょうか?

早くも限界、鳩山政権 其の壱拾

2009-12-08 17:29:25 | 外交・情勢(アメリカ)
■普天間基地移設問題に関する鳩山サセテイタダク首相の無責任で危険な「宇宙遊泳」の検証を続けます。話は今年9月にまた戻ります。

沖縄県の仲井真弘多知事は(9月)1日、県庁で民主党沖縄県連代表の喜納昌吉参院議員らと会談し……移設問題で意見交換した。……喜納代表が県外、国外への移設を目指す姿勢の民主党に同調するよう迫ったのに対し、仲井真知事は「民主党のマニフェスト(政権公約)は普天間問題が抜けており、どういう考えかゆっくり話をうかがう機会がほしい」と民主党の米軍再編計画への対応を見極めるまで態度を保留する考えを強調した。
2009年9月1日 産経新聞

■本当に仲井真知事は可哀想です。安全保障政策が空欄になっているマニフェストを振り翳(かざ)した民主党が政権交代を実現して、当初から心配された財源不足が現実のものとなって、あれこれ羅列したバラマキ政策を予算化したら財政が破綻しかねない50兆円以上もの国債を発行しなければならないと、一番びっくりしているのは鳩山サセテイタダク首相かも知れない状況で、マニフェストに書かれていない「公約」を地方自治体の長が押し付けられては堪りませんなあ。


北沢俊美防衛相は(9月)25日、沖縄県の仲井真弘多知事と県庁内で会談し……知事は「移設は県外、国外がベストだが、これまでの経緯を見るとそう簡単ではない」と述べ、日米両政府が合意したロードマップ(在日米軍再編行程表)が確実に履行されるよう求めた。北沢氏は沖縄県側の主張に理解を示す一方で、民主党が衆院選で県外や国外への移設を主張したことを踏まえ「米軍再編問題をマニフェスト(政権公約)に掲げ選挙を戦い、沖縄の全選挙区で勝ったという国民の民意が存在するのも間違いない」と指摘。日米地位協定やインド洋の給油活動といった日米間の懸案を含めパッケージで解決を目指す考えを示した。……
2009年9月25日 産経新聞

■手元に保存してある民主党のマニフェストを見直しますと、7=51項「緊密で対等な日米関係を築く」とありまして、内容としては「主体的な外交戦略を構築」「米国と役割を分担しながら日本の責任を積極的に果たす」と書かれています。素直に読めば集団的自衛権を認めて憲法改正にまで突き進みそうな印象を受けます。鳩山サセテイタダク首相は以前から憲法改正論者だと聞いたことがありますからなあ。少しばかり意地悪く「対等」と「役割分担」とを抜き取って結びつければ、日本の防衛政策は大変身していよいよ自衛隊が正式な軍隊へと脱皮しそうな予感が漂いますぞ。

■沖縄の基地問題を含んでいると思われるのは「日米地位協定の改定を提起」「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」という一文です。これを読んで既に両国政府が約束した普天間基地の移設先が「国外」になりそうだなあ、と考える人がどれほど居たのでしょう?沖縄県内の選挙区では、「県外・国外だ!」という威勢のよい演説も聞かれたそうですが、マニフェストに明記されている「日本外交の基盤」の日米関係をぶっ壊してでも普天間を奪回して米軍を追い出してしまえ!というのは乱暴過ぎるでしょうなあ。

早くも限界、鳩山政権 其の九

2009-12-08 16:46:05 | 外交・情勢(アメリカ)
■12月8日は1941年の真珠湾攻撃の日です。これを記念日にするにはいろいろと問題がありますが、決して忘れてはならない日であります。皆様のNHKでは、昨夜、なかなか力が入った検証番組を放送しておりましたなあ。大東亜戦争に対米戦争がくっ付いて、そちらの方が主戦場だったことになったのは米軍が勝ったからで、名称も太平洋戦争になってしまいました。戦争最末期、一億玉砕と叫ぶまで追い詰められた大日本帝国は本土決戦の準備に忙しく、米軍も九州南部を狙うオリンピック作戦と同作戦で接収した航空基地からの援護を前提に、湘南海岸と九十九里浜を強襲するコロネット作戦を練っていたそうです。

■珍しく陸軍と海軍とが合意した「絶対防衛圏」が破られてサイパン島を失い、フィリピンも奪還されてしまってから、次は台湾か?それとも沖縄か?と『坂の上の雲』でも描かれたバルチック艦隊が三つの海峡の何処を通過するのか?に脳味噌に大汗をかいた東郷平八郎率いる連合艦隊の参謀たちと同じくらい考え抜いたかどうかは怪しいのですが、きっと台湾だろうと誰かさんが予想したばかりに沖縄は大変な目に遭うことになったのでした。

■その沖縄に今でも駐留している米軍の基地が、政権交代を果たした日本を揺さぶっております。


来年の日米安全保障条約改定50周年に向け、「日米同盟の深化」を目指して日米両政府が始めることにしていた新たな協議について、米政府が「延期」の意向を日本政府に通告してきたことが8日、政府関係者の話でわかった。米軍普天間飛行場移設問題で、米側が強く求める日米合意の履行を鳩山政権が見直す姿勢を示していることが理由だ。……

■普天間基地の移設計画を「見直す」と鳩山サセテイタダク首相が言い出したので、玉突き衝突が起きて米軍再編全体を「見直す」ことになり、あれやこれやでとうとう日米同盟そのものも「見直す」ぞ!と米国が怒っていることを宇宙人にでも分かるように恫喝気味に伝えて来たのでありましょう。


「延期」は、4日に都内で行われた普天間移設問題に関する閣僚級作業部会の後、日本政府に通告された。米側は「普天間移設問題が解決されるまでは協議に応じない」と理由を伝えたという。日本政府は4日の作業部会で、普天間移設の結論を来年まで先送りする意向を米側に伝えた。これに、米側が強く反発したものとみられる。……作業部会とは別に、米側と外務・防衛担当閣僚級の同盟協議を年内に開始したい意向だったが、延期が不可避となった。

■「年内決着は無理でしょう」「検証や検討に時間がかかります」と妙にのんびり他人事みたいなことを言っていた鳩山サセテイタダク首相が、7日の夕方になって「今月17・18日」にオバマ大統領と話を詰めます、と唐突に言い出したので、そんなことなら最初から「早急に結論を出す」と言っておけば良かったものを?!と驚き呆れたのでしたが、4日の段階で米国側から「延期」のカウンターパンチを喰らっていたのですなあ。顔面直撃だったようです。


同盟深化のための協議は、先月13日の日米首脳会談で鳩山首相が提案し、オバマ大統領が同意。来年11月に予定される大統領の再来日まで、1年間かけて議論を進めることになっていた。首相は大統領との共同記者会見で、「日米同盟は安全保障のみに限らない」と述べ、防災、医療、教育など幅広い日米協力を重視する形での同盟の再構築を目指すとした。また、日米地位協定や在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の見直しも日本側が提起するとみられていた。

■「同盟深化」は決して悪いことではありません。しかし、協力分野を拡大すると言った後で普天間基地を国外に摘み出すような話を進めたら、米国でなくても怒るでしょうなあ。


協議は、1996年の日米安保共同宣言に続く、新たな共同宣言を出すことを目指していたが、鳩山政権が普天間移設問題をこのまま先送りした場合、新共同宣言の策定も困難になる……。首相が望んでいる、コペンハーゲンでの国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)首脳級会合(17、18両日)の際の日米首脳会談の実現も、調整の難航が予想される。
12月8日 読売新聞

■9日からはインドネシアに行く鳩山サセテイタダク首相ですが、問題の17・18日に「そのときまでの政府の考えを伝え、何らかの形で理解を得たい」と語ったのが7日の夕方でありました。重要な会談の「延期」が通告されたのが4日で、マスコミ発表が8日。その4日の夜、鳩山サセテイタダク首相は公邸でクラッシャー小沢幹事長と会談していたのでした。不思議なことに8日になって小沢さん側から「会ってない」、首相は「幻」と訳の分からない話になっているようであります。邪推すれば、日米関係が険悪になって困った鳩山サセテイタダク首相が豪腕小沢に泣き付いたものの、「俺は知らないよ」と冷たく突き放されたということでしょうか?

■民主党内にも、首相の周辺にも、友愛精神は見当たらないようであります。

早くも限界、鳩山政権 其の八

2009-12-07 16:02:17 | 外交・情勢(アメリカ)
■12月に入って早々、鳩山サセテイタダク首相の支持率は目だって落ちて来たようです。何も決めない、何も説明せず、何もしないのでは支持するのにも困ってしまうでしょうなあ。何事にしても「話し合うことが重要だ」と言いながら党首討論から逃げ回り、最も重要な国会も理由が分からないまま幕引きになって、かと思えば重要案件で閣議決定されたという話も聞きません。どうやら、鳩山サセテイタダク首相は自分を客観的に見る能力、つまりは福田ホイホイ首相の「あなたとは違う」才能がまったく無いのではないでしょうか?今頃になって米国が怒っている!と気が付いて慌てているようですし、その前にも自分の権力基盤が皆無に等しいことを悟ったかのような動きがありました。

鳩山由紀夫首相と民主党の小沢一郎幹事長、輿石東参院議員会長が4日夜、首相公邸で会談……。4日の閣議決定が見送られた平成21年度第2次補正予算案をめぐる国民新党との調整や、年内決着見送りを米側に伝え、袋小路に陥った米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題、首相の偽装献金疑惑や首相の実母の資金提供問題、22年度予算編成-など難題が……。小沢氏はこれまで、政府・与党一元化を理由に政策決定への発言を控えてきた。これに対し、政府・民主党内からは「首相と小沢氏の意思疎通をもっとはかる必要がある」(同党幹部)との意見が出ていた。……首相側が小沢氏の影響力行使を期待し、小沢氏および小沢氏と密接な関係にある実力者の輿石氏を招いたものとみられる。
12月5日 産経新聞

■国家戦略室の菅さんも無責任な「デフレ宣言」をした後は音無しの構えですし、政局に対する鋭い嗅覚を持っているクラッシャー小沢幹事長などは、最初から鳩山サセテイタダク首相の在位は短い!と見切っていた節まであります。郵政民営化に怨念を抱く亀井さんが、露骨に小沢幹事長の御機嫌を取ろうとミスター官僚を引っ張り出す役を務めた辺りから、鳩山サセテイタダク首相の影がぐっと薄まったような感じがします。

■亀井に負けずに小沢大明神の威を借りているらしいのが日教組を支持母体とする輿石さんで、こちらは来年の参議院選挙という小沢幹事長にとっては日本の経済状況や日米関係などよりも大切かも知れない大イベントが控えていますから、これ見よがしに二人三脚を演出している感じもします。内閣がバラバラになったら菅さんと交代する「密約」でもあるのではないか?その次はいよいよ小沢首相の誕生という段取りか?しかし、そんなに甘い皮算用をしている余裕は無くなっているような気がしますなあ。

■沖縄の基地移転問題が命取りになりそうなので、これまでの流れを概観してみましょう。話は総選挙より前に遡ります。


沖縄県の仲井真弘多知事は(4月)17日の記者会見で、民主党の小沢一郎代表が米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県名護市)移設計画をめぐり「ほかに場所はいくらでもある」と発言したことに関し、「どういうふうに現実の日本の政策にして(米側と)調整していくのか、予測不能だ」と指摘した。また、次期衆院選で政権交代が実現した場合について「違う政党が政権を取った時に(移設問題が)どう展開していくのか、予測しかねている」と述べた。
2009年4月17日 産経新聞

■政権交代が起こったら、きっと移設問題は予測もできない迷走を始めるだろうなあと、さすがに苦渋の選択をした御当人には先見の明があったようです。それに対して「いくらでもある」と張ったりをかました小沢さんの真意はさっぱり分かりません。移設候補地が多過ぎるから具体的な地名が出ないのでしょうか?それとも例の「第七艦隊だけで十分だ」発言と同様に前後の話を端折ってしまって誤解を受けるような発言になったと後に弁解するようなものなのでしょうか?不思議なことに、この小沢発言を取り上げるメディアが無いようであります。外相と防相の専権事項だから、と逃げてしまえるから取り上げても無駄だということなのでしょうか?でも、一つでも二つでも「いくらでもある」候補地の名前を聞いてみたいですなあ。

早くも限界、鳩山政権 其の七

2009-12-07 11:38:07 | 外交・情勢(アメリカ)
■『週刊朝日』の寺島さんのインタヴューの続きです。

……日本から米軍基地がなくなる日が来ると思っている日本人は少ないのではという問いに、
「私が懸念しているのはまさにその点で、日本人が思考停止に陥り、外国の軍隊の駐留をなくそうという意思を失いかけているのではないかということです。我々がそういう強い意思をもっていることをまず示さないと、日本は国際社会のなかで『まともな大人の国』とは見られません」と答えている。

■それなら尚のこと、東京裁判の正確な見直しや憲法改正論議を活発に起こさねばならないことになります。日米間の密約は、決して沖縄返還交渉の時だけに限ったことではないはずで、どうして米軍基地が存在するのか?という戦後最大の疑問を、寺島さんは解いているのなら是非ともお聞かせ願いたいものです。先に紹介した大森実さんの著書に書かれている米国の対ソ大包囲網戦略を構想したのは冷戦時代に米国国務長官を務めたジョン・フォスター・ダレスで、その弟でCIAの創設者のアレン・ダレスが終戦前にドイツと日本を将来の対ソ戦略の重要な駒にすべく暗躍した話も、特に日本側の動きが詳らかにはなっていないのが気になります。検証しなければならないのは沖縄の普天間基地移転だけではなさそうですなあ。

■寺島さんの言う「まともな大人の国」とクラッシャー小沢の「普通の国」とはどんな関係になるのかは分かりませんが、まともな独立国ならば一度や二度は占領時代に制定された憲法を改定しているのではないでしょうか?まだまだ「核なき世界」の実現はほど遠いようですから、「まともな国」なら核を撃ち込まれないように核兵器を自力で開発するか、絶対に裏切らない同盟国の核兵器に保険を懸けておくか、と考えるでしょうが、日本は現行憲法がある限りは核による脅威に日本は絶対に晒されない!と信じているかのようです。しかし、そんな脆い素朴な信仰は、何処かの国が「核使用も辞さず」と身構えた瞬間に消えて無くなるような気がしますなあ。

■どうやら鳩山サセテイタダク首相の「東アジア共同体」構想も寺島さんのアイデアを採用した結果のようなのですが……。
さらに、

「日米同盟の見直しと東アジア共同体構想とは、実は双生児のようなもので、車の両輪として議論されなければいけないんです」

■この双子が同時に話し始めたら、結局は「米国は東アジアから出て行け」という意味の話しか出来ないのではないでしょうか?鳩山サセテイタダク首相の持論である「常時駐留なき安保」で言い換えれば「米国は用事が無い時には東アジアの外に居ろ」という話になります。情報収集能力と機密保持能力の低いことで有名な日本が、「用事があるか、ないか」をどうやって判断するのか?こちらの方が興味を引かれますが、米国が「用事があるぞ!」と言い張るのを、日本側がきちんと証拠を示して「用事は無いだろ!」と言い返せる能力を、これから大急ぎで要請する必要がありそうですが、この点に関する鳩山構想はまったく出ていないようです。まさか、新聞やテレビで「戦争が始まりました」の一報を聞いてから米国に電話を掛けるつもりではないでしょうな?!阪神淡路大震災の時の村山総理みたいに……。

■寺島さんが憂えている「日本人の思考停止」は大問題で、憲法も軍事もまったく知らないまま何処かの団体に担がれて国会議員になってしまうような悲喜劇を続けていてはダメでしょうし、占領時代に書か(さ)れた文章を下敷きにして論文を書いている学者もダメ、GHQの検閲を恐れて過去を封印して生き残ったマスメディアの諸先輩の影響下に居続けるジャーナリストもみんな「思考停止」のままと言うべきでしょう。寺島さん御自身が、どれほど活発な思考を働かせているのか?それはまた別の問題がありそうですが、鳩山サセテイタダク首相は正真正銘の「思考停止」に陥っているのは確かかも?

早くも限界、鳩山政権 其の六

2009-12-07 11:37:55 | 外交・情勢(アメリカ)
■鳩山サセテイタダク首相の密命を帯びて渡米した寺島さんは、御自身のパイプを最大限に利用して数少ない知日派要人に「在日米軍を今の3分の2まで減らすべきだ」と言って歩いたとの報道があります。台湾有事と北朝鮮の動乱に際して、寺島さんがどんな戦略と戦術を胸に秘めているのか、さっぱり分かりませんが、中東・アフリカ・南米に加えて東アジア全域を睨んで陸・海・空・海兵の4軍を展開している米国の最高司令官に、「3分の2」という縮小率を納得させられるだけの材料を持っているのか?非常に疑問であります。

■寺島さんの考え方の一端が、11月に発売された『週刊朝日』に出ています。


……で寺島氏は、在日米軍の駐留コストを7割も負担している国は世界にないとし、沖縄の米軍前方展開兵力をハワイ、グアムまで退け、東アジア有事の際は緊急派遣軍として急派する仕組みに変え、しばらくは、そのコストを日本が負担するのはどうかという。基地返還の話し合いを、上下両院の外交委員会のメンバーと日本の国会議員が本音で議論しろ……。

■戦後の日米交渉では、繊維摩擦は当時の通産大臣だった田中角栄の鶴の一声で一方的に日本が輸出を自粛したのに始まって、阿吽の呼吸だの根回し・腹芸だのと政局と国内政治の枠内で強引に解決し続けた経緯があります。寺島さんはこうした自民党が作ってしまった悪弊をぶっ壊せ!と言っているようですが、自民党の歴代幹事長の中で最も米国との交渉で弱腰だったと批判されているのが今の民主党幹事長だという事実は隠しようもありません。クラッシャー小沢は自民党を飛び出してから、親も同然の田中角栄さんが作ったチャイナ・コネクションを丸ごと継承するようなことを続けていたので、もしかすると北京政府を身元引受人にして米国と対峙するつもりかも?でも、そんな話はマニフェストには書かれておりませんぞ。

■寺島さんが提案する「上下両院の外交委員会のメンバーと日本の国会議員が本音で議論」するアイデアにしても、必殺!仕分け人の騒動を見れば民主党議員の交渉力のレベルは恥ずかしいほど低いことが証明されています。たまたま初の「人民裁判」だったために官僚側がマスコミの雑音にも惑わされて不慣れな答弁で失点を重ねただけの話で、議論の訓練を積んでいる米国の議員と「本音で議論」などしたら、ここぞとばかりに一方的に押し捲られて大恥を掻くだけではないでしょうか?例の「密約問題」も米国側が公開した公文書が決め手になったのですから、下手に議論を吹っかけたりすると、あれの知らない、これも知らない、日本の議員は何も知らないじゃないか!とやり込められるだけのような気がしますなあ。

■大いなる夢を語る寺島さんは、助言している相手の能力を無視して日本の政治家たる者の使命を熱く語ります。


……「来年は日米安保条約改定から50周年を迎える。敗戦後の一時期に外国の軍隊が駐留することは歴史上珍しくないけど、独立後も外国の軍隊が駐留し続けることは不自然なのです。(中略)日本は臆することなく主張すればいい。明確な主張をせず、すぐに『日米関係を損なう』と言ってしまう卑屈な姿勢が日本をダメにしているのです」

■寺島さんは同じ敗戦国だったドイツの戦後を引き合いに出すことが多いようですが、あちらは1000年以上も欧州を舞台とする戦争を経験して多くを学び研究し尽くした国ですから、勝ち方も負け方もよく分かっているのに対して、日本は『坂の上の雲』の時代に必死に欧州の戦争を大急ぎで学び、それを整理する間も無く昭和の奇妙な戦争をして茫然自失の「終戦」を迎えた国です。ニュールンベルク裁判と東京裁判はまったく違うものですが、ドイツは欧州の伝統に従って再軍備はしたし独立を回復するまで「憲法」は作りませんでした。

■負け方を知らなかった日本の悲劇を繰り返さないためには、戦後の日本を決定付けた東京裁判から学び直さねばならないはずなのですが、無数の論文や書籍が出て映画やテレビ番組でも何度も取り上げられている極東裁判でさえ、実際に残された文書を調べられるようになったのは去年のことだそうです。これまで読まされた「東京裁判」関連の本は何だったんだ!?と怒る気にもならない情けない話であります。日本が独立を回復する経緯や講和条約締結の裏面史、さらには憲法制定や日米安保条約の詳細な研究も十分に行なわれているのかどうか……。
table>「東京裁判」を読む
保阪 正康,井上 亮,半藤 一利
日本経済新聞出版社

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日本国憲法失効論
菅原 裕
国際倫理調査会

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早くも限界、鳩山政権 其の伍

2009-12-06 17:50:43 | 外交・情勢(アメリカ)
■もう少しコラム『東奔西走』を読んでみましょう。

……最終的な落着点は別にして、これだけの歴史の節目に従来通りの議論しかできないというならば、それは政治の怠慢以外の何物でもない。その意味で「(普天間は)合意が前提ではない。(安保)全体を議論したい」とする鳩山首相には以下の条件付きで理解を示したい。安保改定50年目の来年に向けて幅広く根源的な議論を迅速に進めよ。あらゆる選択肢を排除するな。そして、何よりも外交を実現するための内政力をつけよ。

■「根源的な議論」には論者の元同僚かも知れない毎日新聞記者・西山太吉さん(78)の名誉回復に直結する日米間の密約問題も含まれるのでしょう。沖縄返還に関して、不思議なほど取り上げられない日本初の「ノーベル平和賞」を受けた佐藤栄作の存在があります。1974年(昭和49年)の秋、「非核三原則」や「アジアの平和への貢献」を理由に日本人で初めて受賞しておるのですぞ。核の密約に関しては明確に「核による報復」を米国に求めていた事が明らかになっております。

■偶然なのでしょうか?「西山事件」の一審無罪判決が出たのも1974年のことでした。時系列で見ると、
1974年1月30日に一審無罪判決。毎日新聞退職。
同年12月に佐藤栄作がノーベル平和賞を受賞。
1976年7月20日の二審で西山記者に懲役4月執行猶予1年の有罪判決。
1978年5月30日 最高裁判所が上告棄却。西山記者の有罪が確定。
という具合です。そして、今年の12月1日に沖縄密約情報公開訴訟に元外務省アメリカ局長の吉野文六さんが証人として出席して証言したのでした。

■自民党政権にトドメを刺すぞ!と張り切っているクラッシャー小沢幹事長にしても、今の外相・首相・財相などなど密約が隠されていた当時には立派な自民党議員だったのですから、本気で追及すると自分にも刃が向って来ることになるかも?コラムが求める「内政力」にはまったく期待は持てない事は誰にでも分かりそうなもので、故人献金がオカアチャン献金に発展したからには、30年前の人妻略奪婚も母親任せの甘ったれ結婚だったことまで連想が働いてしまいますから、一国の宰相などとても務まるはずもなく……。


その点、オバマ大統領は達者だ。……訪日時のアジア政策演説の基調は、アジア関与への強い意志表明だったが、言わんとしたのは、米国はこの未曽有の経済困難を打開するため、消費過剰国から輸出立国に転換する、その際にはアジア・太平洋の広い市場で米製品を受け入れてほしい--とのメッセージだ。ここでは外交と内政が見事に一体化している。バラク・ユキオ関係を誇るのもいいが、米国のこのしたたかさこそ鳩山首相は見習うべきだろう。
11月24日 毎日新聞

■何をどうやって「見習」えばよいのやら……。地元のシカゴを拠点とする草の根市民運動から始まって大統領選に打って出る時にはインターネット献金で小まめに選挙資金を集めて見せたオバマ大統領から、選挙の時にか帰らない北海道の選挙区は秘書任せで資金はオカアチャン献金のドンブリ勘定で賄って貰っていたお坊ちゃん総理が学ぶことは皆無ではないでしょうか?

■国会答弁で簡単に「前言撤回」してしまうような見識しか持ち合わせていない鳩山サセテイタダク首相が「最後は私が決める」と胸を張ってみたところで、現場で大汗をかいている担当大臣は骨折り損になるのではないかと疑心暗鬼に襲われているようですし、闇将軍に収まったクラッシャー小沢は次の参議院選挙しか眼中に無いのですから、大国と大喧嘩をしようにも裸の王様が単身で無謀な切込みを仕掛けて遭えなく討ち死に……。

早くも限界、鳩山政権 其の四

2009-12-06 14:58:29 | 外交・情勢(アメリカ)
■鳩山サセテイタダク首相と寺島さんとの関係について毎日新聞の論説副委員長・倉重篤郎の『東奔政走』というコラムに詳しく書かれていました。

……寺島実郎氏は多摩大学学長で三井物産戦略研究所会長。鳩山氏の外交・安保政策のブレーンと呼ばれる。在米経験の長い知米派論客だが、イラク戦争、リーマン・ショック以降の米国の軍事、経済両面における衰退と中国の台頭という日本をめぐる国際環境の根本的な変化に着目、米国に過剰に依存した戦後体制を見直し、政治、経済の軸足をアジア経済圏に移すべきだという、「離米入亜」論者(寺島氏は「親米入亜」と主張)。在日米軍基地についても「占領軍から引き継いだものを根底的に見直すべきだ」という明確な段階的縮小論者である。

■冷戦終了後の世界情勢が大きく変化したのに、万年野党の自民党は新しい時代に対応する努力を怠り、外交・安全保障を根本的に見直す政治家としての使命を果たさなかったツケだ!と寺島さんは力説しているようですが、そんな巨大なツケを一挙に支払う能力が鳩山サセテイタダク首相に有るのか?!という基本的な疑問には答えてはくれません。誰かがやらねばならない!というのは正しい意見だとしても、やらせては行けない人に無理強いするのは如何なものでしょうなあ?

■『東奔政走』には、鳩山外交のブレーンとして、もう一人の「T氏」が取り上げられています。


……もう1人の「T氏」は、田中均元外務審議官。小泉純一郎元首相の訪朝、拉致被害者帰国外交の仕掛け人で、日米関係については安保再定義、普天間基地返還合意の実務を取り仕切った。……「過去の日米合意」至上主義者と一線を画し、日米両国の政権交代、国際環境の激変を理由に日米安保の再レビューを1年がかりで行うことを提起。普天間問題についても鳩山新政権が過去の経緯を検証し、再決定する時間的猶予を与えるべきだ、と論じる。

■つまり、鳩山サセテイタダク首相の発言がブレているように見えるのは、基本路線は寺島さんの主張を取って、北京に行って「戦後、日本外交は米に依存しすぎた」と言い放ち、日米首脳会談からは田中路線を採用しているからだという見立てです。しかし、交代したとは言っても両政府間で交わした約束事をひっくり返すには大変なエネルギーが必要ですし、何よりも相手を納得させる重い言葉がたくさん必要であります。それを持ち合わせていないのが鳩山サセテイタダク首相だという事実はどうしようもありませんなあ。


……寺島氏が外交理論家であり、田中氏が外交実務家であるだけでない。日米同盟に対する思い入れだ。寺島氏はそれを相対化しようとし、田中氏はやはり最後はそれを絶対軸として戦略を組み立てているように見える。官邸周辺の外交・安保関係者の中では「2人のT氏」という隠語で、この構図が取りざたされている、と聞く。

■1989年12月2~3日に開催された「マルタ会談」から20年。日本は何をしていたのだろう?と改めて考えてみると背中に冷たいものを感じます。同年1月には昭和天皇が崩御して日本中が「時代の節目」を実感していたというのに、その年の6月には指三本の宇野総理、8月には海部内閣が成立して日本の総理大臣が回転すしの小皿みたいに軽いものになったのでした。チャイナでは胡耀邦の死去に端を発した天安門(虐殺)事件が勃発!

■1991年10月に実質的に自民党最後の首相となる宮澤内閣が成立して翌年に内閣不信任案が可決されて日本の政界は海外情勢が激変して行くのを無視するかのように、「俺は今、何党なのかと秘書に聞き」と川柳に読まれる馬鹿馬鹿しい離合集散の16年に雪崩れ込んで行ったのでしたなあ。イラクがクウェートに侵攻したからと急ごしらえの「PKO協力法」を成立させ、バブル経済が崩壊したとて莫大な借金を積み上げながら「失われた10年」を空費している内に、何が何だか分からないうちに日本は21世紀を迎えてしまいました。

■北朝鮮による拉致犯罪が露見しても、ミサイルが日本列島上空を通過しても、とうとう核実験を強行しても、日本の安全保障政策は大きく変わることなどありませんでした。手段を選ばず政権を奪回しようと自民党が社会党と連立を組むなどという恥ずかしくなるような茶番劇があって野党第一党でありつづけた社会党は終わり、それでもしぶとく生き残った旧社会党左派の残党が、数合わせだけのためにどさくさに紛れて今の政権与党になっているのも不思議な話ではあります。

■まだ自民党が自民党らしかった頃の話になります。


田中氏の位置は、外務省の先輩である元首相補佐官・岡本行夫氏と比較するともっと分かりやすくなる。岡本氏は、鳩山政権の一連の対米姿勢は日米同盟の信頼関係を基本から覆す危険な行為、普天間についてもあくまでも従来の合意を速やかに実現すべきだ、と再三強調する。……奇しくも2人は中曽根、竹下両内閣の日米摩擦を岡本外務省北米一課長(政治担当)、田中二課長(経済担当)のコンビで乗り切り、その後は日米関係の大枠を決するいくつかの重要決定の中枢に携わるキャリアの持ち主でもある。……2人は「同じキャンプ」であり、「キャンプ外の」寺島氏の立論には揃って批判的である。

■岡本行夫さんの体験を通じて鍛えられた考え方には学ぶべき点が多いと思います。少なくとも旧民主党を結党した1996年頃に鳩山サセテイタダク首相が語っていた「常時駐留なき安保」論などよりは、遥かに日本の立場を理解して将来を考えるには有用かと……。

生きのびよ、日本!
田原 総一朗,岡本 行夫
朝日新聞社

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岡本行夫 現場主義を貫いた外交官 90年代の証言
五百旗頭 真,伊藤 元重,薬師寺 克行
朝日新聞出版

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早くも限界、鳩山政権 其の参

2009-12-06 13:38:54 | 外交・情勢(アメリカ)
■4日に行なわれた米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を巡る閣僚級作業部会の第2回会合に関する話の続きです。 
 
……日本側は連立与党の社民党が米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(辺野古)に移設する現行案に強く反対している政治状況を理由に、結論を来年に持ち越すことに理解を求めた。米側は「現行案が唯一実現可能な案だ」と、早期決着を迫った。……米側メンバーは民主党関係者に非公式に接触し、鳩山政権が現行案以外の移設先を模索する場合は、普天間飛行場施設の老朽化に対応するため、予算措置を行いたいとの考えを伝えた。問題解決が長期化した場合、普天間飛行場の「固定化」につながりかねず、米側のいらだちを反映した動きとも受け止められている。

■何だか間も無くコペンハーゲンで開かれる地球温暖化防止の国際会議みたいな流れになって来ましたぞ。話がまとまらないなら既存の『京都議定書』をそのまま使えばよい!という日本にとっては最悪の流れが、沖縄基地問題でも始まっているのかも?御破算にされたら困るのは残念ながら日本だけ、「おもいやり予算」も仕分けし切れなかった民主党は最初から足元を見られているようです。そもそも、この場で「社民党がやかましいので」などと身内の泣き言を持ち出すのは如何なものでしょうなあ?


作業部会には、岡田外相と北沢防衛相、ルース駐日大使、ライス在日米軍司令官、シファー国防次官補代理、メア国務省日本部長らが出席した。外相は……「米側の協力を得て解決したい。沖縄の負担をできるだけ軽減していくことも必要だ」と述べた。事務レベルで米側に打診している訓練移転の前倒しなどに応じるよう求めたとみられる。防衛相も「年内に確定的な結論を下すのは容易でない」と伝え、新しい移設先の検討についても「首相は従来からあらゆる選択肢を検討すべきだと指示している」と理解を求めた。

■「あらゆる選択肢」の中に日米関係を破綻させるような乱暴なものも含まれているのか?一度は両国政府間で決定した話を「あらゆる選択肢」の中の一つだと言われたら、相手が怒るのも無理はありますまいなあ。一方は「決まっている」と思っている話を、新政権は「変えられる」と言外に匂わせているのですから、相手がテーブルを蹴って決裂する覚悟が必要になりそうです。


米側は「このままだと状況はさらに困難になる」と懸念を表明。在日米軍再編計画は在沖縄海兵隊のグアム移転なども一体だと強調し、「米議会の関心も極めて高く、普天間移設が進まなければ議会との関係でもグアム移転を含む計画全体に悪影響を及ぼしかねない」と警告した。……首相は同日夜……「米側は日米同盟を当然大事にしてくれると期待している」としながらも、「日程的なものをずらすことに対し、強い懸念が表明された」と説明した。

■何の根拠があって「当然大事にしてくれる」と期待できるのか?確実な情報や情勢分析が鳩山サセテイタダク首相の手元に集まっている上での話ならば心配はありませんが、夢見がちな首相の一人合点だったら怖いことになりそうです。


作業部会に先立ち、ルース大使は4日、都内で講演し、在日米軍再編計画について「おそらく、いろいろな調整があるだろう」と述べた。現行案通りに決着する場合には、日本側が求める負担軽減策に応じる用意があることを示唆したと受け止められている。
12月5日 読売新聞

■ここに唐突に出て来る「負担軽減策」というのは、沖縄県民が負う負担の軽減のことです。自民党が密約に上乗せする形で表の予算化した「おもいやり予算」との違いをきっちり示さないと、何のためにパンドラの箱を開けたのか分からなくなる心配がありそうなのですが……。しかも、「脱官僚支配」の政権公約を守るためなのか、民間人の寺島実郎さんが密使?として渡米して活動しているという話です。


政府は26日、沖縄県の米軍普天間基地の移設問題をめぐる沖縄の負担軽減策として、新たに3年に1度、日米地位協定を見直す案を米側に打診する方針を固めた。米側は日米合意に基づくキャンプ・シュワブ沿岸部への移設計画の沖合移動を容認する意向を示している。民主党は県外移設を主張してきたため、修正案を受け入れるには、新たな負担軽減策を策定する必要があると判断した。鳩山由紀夫首相は26日、首相官邸で寺島実郎・日本総合研究所会長と会談した。寺島氏は週明けに訪米し、負担軽減案を含めて米側と意見交換する見通しだ。
11月27日 日経ネット

■必殺!仕分け人も地位に関して法的な根拠が無いと指摘されていた民主党政権ですが、この寺島さんの立場も肩書きもよく分かりません。ただ政権交代後の寺島さんは、大変に忙しいことだけは確かなようで、鳩山サセテイタダク首相の意を受けての渡米から戻ると、座長を務める情報通信産業の成長戦略を討議する総務省のタスクフォースを混乱させる騒動を起こしたりしております。

早くも限界、鳩山政権 其の弐

2009-12-05 19:41:06 | 外交・情勢(アメリカ)
■政権交代で自民党の長期政権時代が終わり、何かが大きく変わるかも?と期待しつつも、一体、何がどう変わるのだろう?と不安な気持ちも持っていたい多くの国民は、変えて欲しいと思っていた問題は大して変わらず、期待も頼みもしていない大きな変化の方が先に起こりつつあるような、とても嫌な感じがし始めているのではないでしょうか?例の3K問題、献金は昔の権金時代から何も変わっていない印象で、経済も結局は国債頼りで公共事業中心でそこにマニフェストのバラマキ政策が上乗せされるだけ……そして、基地問題はパンドラの箱を見識もないまま無造作に開けてしまって右往左往しているだけのように見えますなあ。

……首相は、11月の日米首脳会談で、オバマ米大統領に早期決着への意欲を示し、「私を信じてほしい」と訴えていた。……鳩山首相も早期決着には意欲を示している。だが、民主党内には「解決が延びたからといって、すぐに政権が倒れる問題ではない」(民主党議員)という軽い認識がある。むしろ、社民党との連立維持の方が優先課題……。「きょうはまったりしていた。国会閉会後の最大イベントは10日からの長城計画(=民主党訪中団)だ」3日昼、国会近くで開かれた民主党の小沢一郎幹事長を支持する議員グループ「一新会」に出席した若手は、会合の雰囲気をこう語った。……民主党幹部は3日、「献金疑惑があるから、普天間までかかわっていられないんだろう。それにしてもお母さんの話はつらいよね。首相は痩せたんじゃないの」と語った
2009年12月3日 産経新聞

■16年間に亘った中途半端な政界再編の流れの中で今の民主党に漂着したような議員たちが、打って一丸となることは不可能だとは分かっていますが、党内に危機感が無いのは自民党も民主党も御同様のようであります。米国を怒らせておいて、本当に「長城計画」を実行するつもりなのでしょうか?政策には一切手を着けないと言い張っているクラッシャー小沢幹事長が政権の傷口を広げる結果にならなければ良いのですが……。


4日午後、日米合意に基づくキャンプ・シュワブ沿岸部移設を念頭にした、WGの検証作業が開かれた外務省4階大臣室隣の接見室。……小人数会合に移った後、米国のルース駐日大使が穏やかな語り口を一変させた。「いつも温厚」(防衛省筋)で知られるルース氏は、岡田克也外相と北沢俊美防衛相を前に顔を真っ赤にして大声を張り上げ、年内決着を先送りにする方針を伝えた日本側に怒りをあらわにした……。鳩山首相は4日、「グアムに全部移設することが、米国の抑止力ということを考えたときに妥当か検討する必要がある」と記者団に語り、年内決着どころか、グアム移設も含め検討する考えを示していた……。日米合意に基づく普天間移設計画は、普天間の米海兵隊ヘリコプター部隊を辺野古の代替施設に移し、司令部機能などはグアムに移設させることが柱だ。ヘリ部隊も一緒に移設した場合、有事の際にグアムからヘリ部隊が県内に展開する地上部隊をピックアップしに沖縄に立ち寄る手間がかかる。政府関係者は「ヘリ部隊と一体のグアム案は、非現実的で想像をはるかに超える」と語る。

■交渉内容を前進させるどころか、鳩山サセテイタダク首相の発言はどんどん時代を遡って行くようです。いっそのこと1945年当時にまで遡っていろいろと「検証」してみたら良さそうなものですが、憲法を改正するつもりがないようですから、沖縄の基地問題だけを切り取って外交交渉を進めて行くつもりなのかも知れません。でも、「米国の抑止力」などと大風呂敷を広げると、後々、引くに引けない袋小路に自分から入り込んでしまうことになるかも?


これまでの米軍再編協議で議論された案は、いずれも県内が対象。移設先に県外を持ち出せばWGの検証作業は困難になる。岡田外相が米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)への統合を主張する事情でもある。一方、海兵隊の戦闘機とヘリを分散移設させる案も政府・与党内にある。ヘリ基地を辺野古に隣接するシュワブ、ハンセンいずれかの陸地に建設し、海兵隊の戦闘機については嘉手納に統合する案だ。ただ、米側は部隊運用上の理由から日米合意が唯一の選択肢との立場。与党内からは「実現可能だったら、とっくにやっている」(政務三役)と嘆きの声も出ている。
12月5日 産経新聞

■米国が進める全地球規模の軍事力の配置転換に関して「対等」に議論できる政治家や官僚が日本に居るのか?という根本的な疑問があります。イラクでもアフガニスタンでも、日本は特殊な縛りの中で窮屈な動きしか取れませんでしたし、同じ縛りは日本の周辺で起こりうる軍事衝突についても効いていて、いざとなったら米国に守って貰う手筈になっているのですが、最近、読んだ大森実さんの本によると、日米安全保障条約の内容を詳細に読めば米国は米国の都合によって日本を防衛しても見捨ててもよいことになっているそうで、大森氏は早急に条約の改定を進めるべきだ!と焦燥感に刈られています。大森さんの回想録には戦後の米国が推し進めた目も眩むような巨大な世界戦略についての記述もありまして、米軍にとって沖縄がどれほど重要な戦略拠点なのかが改めて分かります。

激動の現代史五十年―国際事件記者が抉る世界の内幕
大森 実
小学館

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