旅限無(りょげむ)

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解散・解党・憲法改正 其の弐拾弐

2010-09-30 09:46:50 | 外交・情勢(アジア)
■最後にチャイナの脅威を日々感じている国の中から、インドの報道を見てみましょう。ベトナムなどからは、怒りのこもった落胆の声が上がっているようですが……。

日本が中国人船長を釈放したことについて、インドでも「日本は中国に屈した」との見方が広がっている。また、中国との間で国境問題を抱えるインドにとって、漁船衝突事件での中国の出方は、“中国脅威論”を改めて裏付ける材料の一つと受け止められている。25日付のヒンドゥスタン・タイムズ紙は社説で、日本が船長を逮捕したことに対する中国の反応を、「狂乱に近い」と表現。その上で、「将来の大国(中国)の成熟度は、急成長する力とは反比例しているとの感触をさらに強くさせた」とみる。そして、中国があまりにも多くの国と対立していることから、世界の安定に対する中国の姿勢の見極めが必要になると指摘する。 

■本当なら「狂乱」状態の人物を遭遇した場合は、さっと身を引いて災厄に巻き込まれないようにするものですが、既に貿易関係の比率が……とか、経済依存度が……、などの畑違いの御託宣が先行して、通り魔か薬物中毒のヤクザみたいな相手を前にして「立ち止まって我慢しろ!」と言っているのも同然の意見を述べる人を多く見かけるのはどうしてでしょう?

■最新の工業技術には欠かせない希土類の9割を一国に依存していた事実にも驚かされましたが、その輸入相手がチャイナだったと知って仰天した人もいたのではないでしょうか?そして、何となく竹島を譲ってしまっている日本の外交姿勢を知っている人は、尖閣だけは死守する覚悟など最初から日本政府に無いと思っていたでしょう。政権交代して誕生した新政権が日米関係を破壊しても構わないと考えている首相と、大訪中団を率いて写真撮影会に感激する幹事長が実権を握るような政府になるとは予想もしなかった人も多いことでしょう。

■政権交代を好機として国民も時代の節目を客観的に見詰める努力を始めるべきなのかも知れません。自民党よりはマシかと思った民主党政権がもっと悪かったのは国民として不幸なことではありますが、これから急いで経験を積んで「学べば、学ぶほど」少しずつマトモな綱領を持つ普通の政党になるかも知れませんし、政権与党を経験したことでアホらしくなって民主党を飛び出す有能な?政治家が増えるかも知れませんので、解散総選挙を待ちながら誰が何を言い、何をするかを注視していましょう。


中国が強硬な姿勢を強めていることについて、ジャワハルラル・ネール大のG・V・ナイドゥ教授は、「インドの国益も脅かされかねない」との認識が改めて明確になったと指摘。その上で、「日本やその周辺国と連携して、中国を除いて、個々の地域的な政策を全体の政策に発展させることが、インドにとっても長期的な利益につながる」と主張する。
2010年9月25日 産経ニュース

■カースト制度という問題を抱えているインドですが、ガンジーやチャンドラ・ボース、そしてパル判事など「先の大戦」を見直す絶好の教材になる人物を排出した国でもありますから、「中国を除いて」という新たな視点で日本も戦略を練り直してみるのも、よい訓練になるかも知れませんなあ。

■まだまだ、尖閣衝突事件の余波はあちこちに火種をばら撒き続けるでしょうが、このシリーズはこの辺で終了としましょう。

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解散・解党・憲法改正 其の弐拾壱

2010-09-30 09:46:33 | 外交・情勢(アジア)
■次に米国ヘリテージ財団研究員のディーン・チェン氏の解説を読みましょう。

中国漁船衝突事件は、中国海軍の艦船が今年4月に沖縄本島と宮古島の間を通過した活動を含め、昨年来の中国海軍の活発な動きとの関係でみる必要がある。従って、日本は中国人船長を釈放したが、これですべてが終わったわけではない。……中国政府がかつてない強硬姿勢を見せた背景には何があるのか。一つは、中国が経済成長と軍拡で自信を深め、大国になったと自覚し、それにふさわしい行動をとろうと考えていることだ。これらの行動は区別はつきにくいが、覇権主義と受け止めることもできる。 

■急速な経済成長を遂げれば税収も増えて社会インフラと足並み揃えて軍備も拡大増強されるものです。日本のように何の根拠もない「GNP1%枠」を設定して自らの手足を縛っているような国でさえも同じことなのですから、四方八方に向かって膨張政策を採っている国ならば軍事費が突出して増加するのは当然でありましょう。


中国は同時に、インドとは、(同国東部にあり中国と国境を接する)アルナチャルプラデシュ地方、東南アジア諸国とは南シナ海(の島々の領有権)、米国とは宇宙の衛星破壊実験をめぐり、覇権主義の姿勢を押し出してきている。 

■尖閣衝突事件が起こってから、新聞やテレビが「大発見」でもしたように地図を示してチャイナが抱える領土問題を盛んに報道しているのは、いかにも滑稽で国民を馬鹿にしておりますぞ。日中友好の美名の下に資金と技術を野放図に援助したり移転したりし始めた時期に、この種の情報を正確に発信して貰わないと困りますなあ。勿論、チベットとウイグルの占領問題も忘れては行けません。


中国は国内で社会不安が増大しているがゆえに、対外的に強硬な姿勢をとらざるを得ないとの見方がある。従って、対外的に融和姿勢をとるわけにはいかず、国内の愛国主義をかき立てているのだろう。ただ、日中関係には先の大戦が暗い影を落としており、その意味で現在の事態を過小評価すべきではない。中国の指導者が単に自国民の感情をあおっているだけでなく、中国国内からわき起こる純粋な愛国主義の発露とみるべきだ。 

■発露する愛国主義の基礎には共産党製の歪んで偏った宣伝教育があることを忘れるわけに行きますまい。宋代あたりに誕生したと言われる大中華思想の根は深く、共産革命理論も単なる接木でしかないのが実態のようで、周囲からの反作用や反発が無ければ資金とエネルギーと食料が続く限りは何処までも膨張して行くものと覚悟しておかねばなりますまい。秦の始皇帝以来、北方民族によって大中華の夢と妄想は何度も木っ端微塵にされた歴史がありますから、清朝滅亡からその圧力が消えたので、せっせと万里の長城を修理する必要もなくなり、一時の中ソ対立も表面上は解消していますから、相対的に障害が少ない東と南に向かって膨張するのは当然の現象とも言えましょう。特に日清・日露の戦争に勝った大日本帝国が跡形も無く消え去った東側には大きな吸引力が潜在していると考えねばならないかも?


次に、今回の事件が偶発的なものか、組織的なものかは分からない。中国が昨年3月、南シナ海で米調査船「インペッカブル」の活動を妨害したように、われわれは、中国漁船が主権にかかわる活動に使われたとみている。この一件は、今回の衝突事件で、中国政府が漁船を仕立て故意に起こしたのではないか、という根本的な疑問を惹起する。中国は今年7月、軍事作戦を支援する際、民生物資の動員を可能とする「中国国防動員法」を施行した。こうした軍と民生部門のあいまいな状態はとても危険だ。何かあった場合、民間の漁民が危険にさらされる可能性がある。 

■ここで指摘されている不気味な法律は、戦時中の標語になぞらえれば「進め、13億火の玉だ!」という国家総動員法のチャイナ版と申せましょう。元々、軍事費を小さく見せるために民生物資に偽装して収支を改竄するのが社会主義国の悪い癖ですから、今更、軍事物資と民生物資の境目を無くして総動員すると法律を作るまでもないのでしょうが……。


米政府は一貫して、領有権についての立場は示さない。しかし、日本の施政下にある領域への武力攻撃に対し、共通の危険に対処することを明記した日米安全保障条約が、尖閣諸島に適用されるのは明白だ。もし、尖閣諸島周辺で日本への武力攻撃があり、日本が日米安保条約の発動を求めた場合、米国はこれに応えるだろう。中国政府は、米国が日本の強力な同盟国であり、何かあれば日本のために動くということをはっきり認識すべきだ。中国がこの問題で強い態度に出れば出るほど、破滅的な事態が起きる可能性はそれだけ大きくなる。(談)
【プロフィル】ディーン・チェン
1966年生まれ。86年、米プリンストン大卒、米マサチューセッツ工科大(MIT)院博士課程。米議会技術評価局で中国の軍需産業に関する調査員を経て、米海軍分析センター中国研究所研究員。専門は中国政治、軍事。44歳。
2010年9月26日 産経ニュース 

■イラク戦争の後始末に加えてアフガニスタン戦線の泥沼化、そこにリーマン・ショックの大不況が襲い掛かっている米国にとって、対中戦争に踏み切るというのは容易な決断ではありません。特に自国の領土を守る気概も意志もない国に強力な助っ人として飛び込んで行く必要があると、米国民と米国議会に納得させることなど不可能でしょうから、尖閣諸島の海域を守るために米国が「破滅的な事態」を覚悟して動くかどうか、とても確信は持てませんなあ。

解散・解党・憲法改正 其の弐拾

2010-09-30 09:46:19 | 外交・情勢(アジア)
■今回の衝突事件が、日米安保条約について認識を新たにする好機となれば、国民にとっても民主党にとっても幸いなことなのですが……。

前原誠司外相は23日午前(日本時間同日夜)、ニューヨークでクリントン米国務長官と外相就任後初めて会談した。……前原氏は約50分間に及んだ会談で、衝突事件について「東シナ海に領土問題はない。日本の国内法にのっとって粛々と対応する」と述べ、日本政府の対応を説明した。その上で、尖閣諸島を日米安保条約の適用対象としている米側の従来の立場に謝意を示し、日中間で問題解決に取り組む決意を示した。これに対し、クリントン氏は尖閣諸島について「明らかに日米安保条約が適用される」と語った。日米安保条約第5条は「日本国の施政の下にある領域」で「いずれか一方に対する武力攻撃」があった場合に、「共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。ただ、クローリー米国務次官補(広報担当)は、尖閣諸島の領有権が日中両国のどちらにあるかについて、米国は立場を明確にしないとした上で、外相会談でクリントン長官が、日中両国の対話強化による衝突事件の早期解決を求めたことを明らかにした。……
2010年9月23日 産経ニュース 

■交渉が何度も暗礁に乗り上げているイスラエルとパレスチナの入植地問題などを見ても分かる通り、世界の警察官を自任する米国といえども他国の領土問題を頭ごなしに解決するようなことはしません。従って、米国が安全保障条約を尖閣諸島に適応すると言ってくれたからと大喜びするのは筋違いで、日本がもたもたしている間に「武力攻撃」を受けないままチャイナに奪い取られてしまっても、それは米国には何の関係もない話で万が一「日本国の施政下」から切り離されてしまえば、自動的に安保条約の適応外になるだけであります。それに日本の施政下にある場所が武力攻撃を受けたにしても、それだけで自動的に安保条約が発動されて米軍がおっ取り刀で飛んで来るなどと思うのも大間違いですからなあ。

■米国のジェームス・アワーという学者さんが御親切にも平和ボケの日本人に助言をして下さっております。


【私はこうみる 尖閣衝突】□ヴァンダービルト大学日米研究協力センター所長 ジェームス・アワー氏

今回の事件はまず東アジアの戦略的な構図から考える必要がある。東アジアでは中国、日本、ロシア、米国という主要諸国の力が安定しないまま、中国が覇権的なパワーを強め、優越な立場にあるような言動をとり始めた。この動きは日本にとって脅威である。そもそも地政学的には、一定地域で一方のパワーがすでに優位にあった側に追いつき、追い越そうとする際に不均衡が高まり、危険が大きくなる。だからこそ米軍がなお日本と韓国に駐留しているのだといえよう。 

■喧嘩の相手が自分よりも強いと思ったら、ちゃっかり相手側に取り入って味方面をして振舞うことを「恐怖の同化」と呼ぶそうですが、何事も経済優先で戦後60余年を過ごして来た日本には、屈折した対米感情を単純に解決するために稚拙で素朴な「アジア重視」を唱えたい衝動に駆られる人が多くて、その中に冷戦当時からチャイナに対する宗教的な思い入れを持って本を書いたり大学で講義をしていた人も多かったようです。

■それが冷戦終結を待たずにチャイナが小平が主導する改革開放政策が始まると、イデオロギーを度外視した算盤勘定で日中友好を旗印に盛んに動く財界人が出現し、米国発のグローバル化の波に洗われると「世界の工場」「世界の市場」と囃し立てられるままにチャイナに向かって雪崩を打って動き出したのですが、不思議なほどマスコミはちょっと不自然な成功例を取り上げても、散々な目に遭って撤退した失敗談については無視する傾向がありまして、それは今でも続いているようです。「地政学」とは言わないまでも、多少でも軍事的な目で現代の地図を眺める習慣と素養を失って久しい多くの日本人にとって、チャイナの軍事的膨張を正確に読み取るのは非常に難しいのでしょう。


中国が尖閣諸島の領有権を石油資源の可能性が浮かんできた1970年代まで主張しなかったことは周知の事実であり、当時、中国側には尖閣諸島をはっきりと日本領として描いた地図も存在したと聞いている。しかし米国政府は伝統的に他の諸国の領土紛争には中立を保つ。だから尖閣の主権がどの国にあると公式に断定することはできない。尖閣諸島の保有に関しては日本自身が覚悟をせねばならないだろう。尖閣の主権をあくまで主張するならば、それを守る決意があることを示さなければならない。そのために戦う覚悟を示してこそ、初めてその領土への主権に正当性が得られるとさえいえるだろう。その点で日本政府が竹島に対してとっている態度は悪い見本となる。 

■外務省などが問題のある地域に波風を立てたくないばかりに、相手に大きな誤解を与えるような態度で自国民を当該地域から排除するようなことをするので、武力衝突は永久に起こらないものの、領土は徐々に蚕食されて行くことになります。そもそも陸でも海でも国境地帯は2カ国以上のパワーが鬩ぎ合う場所と相場が決まっているのですから、一国が踏ん張る圧力を減らせば自動的に移動してしまうものですからなあ。「竹島」を見本として指摘されると、何とも恥ずかしくて悔しく、実に歯痒い思いに苛まれますなあ。


今回の中国漁船の行動は「無謀運転」といえるだろう。ただしそれが故意の無謀運転か、過失の無謀運転か、まだわからない。尖閣諸島は明らかに日本の統治下にあり、日本の施政の下にある領域は日米安全保障条約での日米共同防衛の対象となる。米国は戦後、尖閣諸島の施政権を保有し、沖縄返還の際にいっしょにその施政権を日本側に返した経緯があるから、なおさら強く意識している。ただし米国政府も、クリントン政権時代にモンデール駐日米大使が「尖閣諸島が第三国に攻撃を受けても、米軍は防衛には当たらない」という趣旨の発言をして、波紋を広げた。これは発言者が実態をよく知らなかったための失言だった。その後、私も含めて多数の識者たちが米国政府のミスを指摘し、クリントン政権の国防総省高官のカート・キャンベル氏らが後に「尖閣には日米安保条約が適用される」と明言するようになった。 

■このモンデール失言は石原東京都知事が今でも強く根に持って、対米不信の根拠としているくらいですから、記憶している人も多いと思います。日本に対して経済協議を強要しつつジャパン・パッシングで露骨なチャイナ重視政策を執ったのがクリントン政権でしたなあ。。


だから現在も、もし尖閣諸島が中国などの軍事攻撃を受ければ日米安保条約の発動となり、米国は同盟国の日本を守る軍事行動をとるだろう。安保条約上の責務なわけだ。日米両国は東アジアの安定を保つためにも、尖閣諸島をめぐる軍事衝突を起こさないためにも、同盟を堅固に維持していくべきだろう。(談)
【プロフィル】ジェームス・アワー
1941年、米ミネソタ州生まれ。米海軍将校として駆逐艦などを指揮。海上自衛隊幹部学校への留学経験もある。国防総省日本部長などを歴任し日米同盟関係の維持、強化に貢献した。89年から米テネシー州のヴァンダービルト大教授。
2010年9月24日 産経新聞 

■日本は先生の教えをしっかり聞いて覚えておく良い生徒にならねばなりませんぞ。ま、世間には「先生と呼ばれる馬鹿でなし」という言葉もありますし、先生・教授などと呼ばれる愚かな食わせ者も実在しているのも事実ではありますが……。

解散・解党・憲法改正 番外編 3 

2010-09-29 16:14:51 | 外交・情勢(アジア)
■長島一派の『建白書』には尖閣諸島の海域で日米軍事演習をしろ!と書かれており、松原一派の『声明』にあ尖閣諸島に自衛隊を常駐させろ!と書かれていました。しかし、政権交代が起こる直前にこんな報道があったのであります。以下は2009年7月の記事です。

日本最西端に位置する沖縄県の与那国島に陸上自衛隊の部隊が置かれることになりそうだ。浜田靖一防衛相は(7月)8日に現地を視察し、外間守吉(ほかま・しゅきち)・与那国町長に部隊配置を検討する考えを示した。与那国島を含む八重山列島や宮古列島などの先島諸島は、防衛力の空白地域である。……与那国島は周囲約28キロ、人口約1700人と規模は小さいが台湾まで約110キロだ。中国が昨年(2008年)12月、領海を侵犯した尖閣諸島まで約120キロと近い。……防衛省は、那覇市に司令部を置く陸自第1混成団を今年度中に旅団に格上げした上で、与那国島への部隊を出すことを考えている。数十人程度の沿岸監視隊とし、レーダーサイトも設置する。実現すれば、沖縄では本島以外で初めての陸上部隊の配置となる。浜田防衛相は現地視察に先立つ会見でも、「南西諸島の防衛のあり方は重要だ」と述べるとともに、防衛面と災害面の両方で意義があると指摘している。部隊配置については与那国町側から強く要請されていた。…… 

■政権交代がこの配置計画を頓挫させてしまったのでした。何せ鳩山サセテイダク前首相は「東シナ海を友愛の海に!」「普天間基地の移設先は最低でも県外だ!」と公約でもない妄想を口にして、1年間も日本の安全保障政策を停滞させたり逆行させたりしていましたからなあ。何と本日9月29日付けの新聞各紙に「与那国島への陸上自衛隊の配備を検討」と眼を疑うような事が掲載されていますぞ!政権が交代しても日本列島の位置は変わりませんし周辺の軍事バランスも同じなのですから国の安全保障は前政権が素直に引き継ぐ性質のものです。嗚呼、昨年8月の段階で「陸自第1混成団を旅団に格上げして与那国島に部隊を出」していたら、出来れば日本海の不審船対策で2001年に創設された海上特別警備隊(SBU)も参加するある程度の規模で訓練が実施されていたら……。


島嶼防衛の必要性は、防衛政策の基本方針を定める防衛大綱にも「実効的な対処能力を備えた体制」の保持が定められているが、中国の反発や沖縄戦を経験した沖縄県民感情への配慮から、十分な措置がとられてこなかった。(2009年)6月下旬、中国海軍の最新鋭ミサイル駆逐艦など大型艦艇5隻が、南西諸島を抜けて東シナ海から太平洋に出たあと、中国が対米防衛ラインに設定する「第2列島線」(小笠原諸島~グアム・サイパン~パプアニューギニア)近くで示威活動を行った。……それだけに、先島諸島の防衛、監視活動がますます重要性を増している。……
2009年7月9日 産経ニュース 

■この記事が発信された日時を見ますと忸怩たる思いが強くなりますなあ。クラッシャー小沢を中心とした民主党議員143名と支持者500名余が北京でツーショット写真の撮影会や大宴会をやって喜んでいたのは奇しくも同年末の12月10日~13日のことでありました。
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雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

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解散・解党・憲法改正 番外編 2 

2010-09-29 16:14:14 | 外交・情勢(アジア)
■代表選が終わったら「ノーサイド」で「挙党一致」のはずだったのですが、国民世論が逆風になったと見るや、我先に跳っ返りの若手議員が後先考えずに騒ぎ出しております。何を言われても言い返す術が無いのは今の内閣も検察も同じですから、水に落ちた犬には石を投げ放題!とばかり、好き放題に暴れまわっているような様子ですが、半世紀前の文化大革命の「造反有理」みたいな騒動になると党は簡単に空中分解してしまいますぞ。まあ、その方が良いと思っている有権者も多いのですが……。

……中国人船長の釈放問題をめぐる政府の姿勢に対し27日、与党の民主党内からも不満が噴出した。党所属国会議員の4分の1近くの約100人が政府側の対応を批判する声明などに署名した。「(明治28年に仏独露の3国によって遼東半島を返還させられた)三国干渉に匹敵する痛恨の極み」との強い表現もあった。直ちに倒閣運動に発展する気配はないものの、菅直人首相の求心力が低下することは否めない。 

■この衝突事件も含めて重要な政治課題を全部棚上げにして大騒ぎした代表選挙で、マスコミが言う「圧勝」したはずの菅アルイミ代表が、「これからが本格始動だ!」と言ったばかりなのに、もう倒閣騒ぎが起こったのでしょうか?そもそも、菅アルイミ首相に「求心力」など無いことは投票した議員達が一番よく知っていたでしょうに?!


……長島昭久前防衛政務官や吉良州司前外務政務官は署名した民主党所属議員43人を代表して27日、首相官邸に仙谷由人官房長官を訪れ、三国干渉を引き合いに出しながら、首相あての「建白書」を手渡した。このなかで船長の釈放を「検察が独断で判断したと信じている国民はほとんどいない」と指摘。尖閣諸島への灯台設置や警備強化、周辺海域での日米共同軍事演習の早期実施を求めた。 

■長島議員はなかなか立派な経歴を持つ人物で、「どうして民主党にいるのか分からない」と自民党議員から最大の賛辞を贈られたこともありますが、運悪く鳩山サセテイタダク前首相の下で防衛政務官をやらされたばかりに、基地移設問題に関して苦しい言い訳をさせられる貧乏籤を引いた人でもあります。その意趣返しというわけでもないのでしょうが、防衛問題の専門家で歴史にも詳しいはずなのに「三国干渉」を引っ張り出すのは如何なものでしょう?

■それに「建白書」に書かれた臥薪嘗胆の意味も不明です。日本の安全保障政策に邪魔になる奇怪な法律群を適正化して憲法改正にまで進むには長い時間と大変な苦労があるけれども頑張るぞ!という意思表明なのかどうか?尖閣諸島周辺での日米軍事演習というのも、米国側と何の相談もなく勢いで書いたとしたら仙谷官房長官とは逆の意味で無謀と言わねばなりますまい。もしも日本政府が本気になって米国側に打診して断られたらエライことになりますぞ。どうして日本独自の演習ではダメなのでしょうなあ?


……松原仁衆院議員らは同日、「外交問題を(船長釈放の)理由とする判断は検察の権限を大きく逸脱した極めて遺憾な判断」とした緊急抗議声明を発表。声明には73人が賛同した。閣僚や副大臣、政務官は入っていない。両方に署名した議員も18人いる。また、松原氏ら12人が連名で、尖閣諸島への自衛隊常駐の検討を政府に求める声明を発表した。 

■こちらの「声明」は事実関係がまだ分からないという立場で、政府見解に従って「悪いのは検察だ!」という趣旨の意見のようです。沖縄にさえも十分な自衛隊が配置されていないのに、唐突に尖閣諸島に自衛隊を常駐させるというのは如何なものでしょうなあ?長い自民党政権の時代に一度だけ中曽根政権がヘリポートを建設したそうですが、まったく使わないまま風化して使用不能の状態で放置されているという話があるくらいですから、ぽっかり空いた広大な空白を地道に埋める努力を早急に始める方が現実的なような気がしますし、現場で御苦労している海上保安庁の皆様に対する責任丸投げの姿勢を大急ぎで改めて、立法府らしく適切な法律をせっせと作って欲しいものです。


……原口一博前総務相も同日、「主権を守らなければ由々しき事態に陥る」として、「国家主権を守るために行動する議員連盟」(仮称)の設立を与野党を問わず呼びかける考えを記者団に明らかにした。 

■菅派だの小沢派だのと、マスコミが面白おかしく報道した御蔭で孤立無援になって寂寥を噛み締めていたに違いない原口さんですから、この騒動を利用して自分の派閥を作ろうとしていると勘ぐられても仕方がないでしょうなあ。それにしても日本の国会議員は全員が「国家主権を守るために行動する議員」なのではなかったのでしょうか?


しかし、仙谷氏は長島氏らに対し「中国は大事な隣人だ。自立した国家のあり方を国民全体で考えるときだ」と煮え切らない返答に終始。長島氏も会談後、「倒閣運動と受けとめられたくない」と語った。……民主党議員の多くが、地元で支持者や地方議員から「民主党には失望した」などと厳しい批判を浴びている。来月24日に予定されている衆院北海道5区補選や、来春の統一地方選にも影響が出る可能性もある。首相支持派の議員からすら「検察に責任を押しつけているだけでは乗り切れない」との悲鳴があがりはじめている。ある党幹部は「臨時国会を前に求心力を失いかねない」と頭を抱えている。
2010年9月27日 産経新聞 

■「政治主導」の大看板を掲げておきながら、苦しい時には「国民全体」に責任を押し付けるのは民主党の本当に悪い癖でありますなあ。「政策コンテスト」だの「サポーター制」だの、民主党自体がまったく自立しているような見えないことが多過ぎます。この衝突事件のどたばた劇を見るまで辛抱強く「失望し」ないで待っていた殊勝な支持者がいるというのも驚きですが、日教組が仕出かした大規模不正選挙に起因する補欠選挙で勝てると思っている民主党も変でしょうし、「来春の統一地方選」まで現政権が存続するのか?これまでの失点を取り返す策を考えているのか?自分だけ目立つような内輪揉めをしている場合ではないと思うのですが……。

解散・解党・憲法改正 番外編 1 

2010-09-29 16:13:37 | 外交・情勢(アジア)
■雪山に向かって勇ましく投げた石が核になり、あれよあれよと思う間に斜面の雪が貼り付いて巨大な雪球となって転がり落ちて来て、とても素手では止められないと、石を投げた愚か者は裾野で右往左往している姿は、昔のキートンのちょっとブラックな喜劇映画なら抱腹絶倒でありますが、我が国の政府の姿となれば背筋が寒くなりますなあ。

■連続シリーズは既に終了しており、残り数本分は舞台裏で待機しているのでございますが、どたばたの発端となった衝突船の船長逮捕と似たような「匹夫の勇」の競い合いが民主党内で始まっているそうなので、しばらく事態の推移を静観しているわけにも行かなくなりましたので番外編を書きます。


米国務省のキャンベル次官補(東アジア・太平洋担当)は28日、ワシントンで講演し、日本と韓国を来週歴訪することを明らかにした。北朝鮮の金正日総書記の三男ジョンウン氏が後継者に決まったことを受けた後継体制づくりの動きや、沖縄県・尖閣諸島周辺で起きた中国漁船衝突事件について協議するとみられる。キャンベル氏は、日本と韓国から「(北朝鮮核問題をめぐる)6カ国協議再開のため、何が必要かについての考えと立場を聞きたい」と述べた。
2010年9月29日 産経新聞 

■今の米国にとって極東地域において最も重要な問題は北朝鮮の核兵器で、中期的にはチャイナの軍拡と外洋進出でしょう。なかなか進展しない「6カ国協議」を辛抱強く何度も立て直して続行しようとする米国政府の態度にそれがよく表われております。今回の尖閣衝突事件は北朝鮮が犯した拉致犯罪とちょっと似ている点があるような気がしますなあ。日本の政治家や被害者家族が米国大統領などの要人と会見したことがありましたが、同情はして貰えても飽くまでも日本の問題ですから米国が軍事力を使って解決を図ってなどくれません。たとえ「米国も怒っているぞ!」と虎の威を借りて凄んで見ても、あちらは国の命運を賭けて原爆と弾道ミサイルを開発している状況ですから、日本が何を言おうと相手にされません。尖閣問題も米国から安保条約の御墨付きを貰った!と大喜びしている場合ではありますまい。

■誰も聞いてくれない下手な演説を菅アルイミ首相が国連総会でぼそぼそと披露している時に、北京政府の温家宝首相は米国側ときっちり話を付けていた節がありますから、衝突事件は「遺憾」ではあっても米軍が動いて尖閣諸島を奪回してくれるような事はありますまい。表向きは「6カ国協議」の再開準備であろうとも、裏側では互いの機密情報を駆使して新たな軍事バランスの調整を始めているのではないでしょうか?日本は鳩山サセテイタダク前首相がぶっ壊しかけた日米関係を修復しようとアタフタしている段階ですから、「6カ国協議」を利用して領土問題と拉致問題を一挙に解決する決意を示す余裕も気概もないのでしょうなあ。


仙谷由人官房長官は29日午前の記者会見で、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、中国側が船長の釈放を求めて態度をエスカレートさせてきたことについて、「20年前ならいざ知らず、(中国は)司法権の独立、政治・行政と司法の関係が近代化され、随分変わってきていると認識していたが、あまりお変わりになっていなかった」と述べ、自身の見通しの甘さを反省した。……

■「過(あやま)ちては改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」と『論語』にもありますが、国家を滅亡させるような大間違いを犯したら反省や訂正では済まないでしょう。仙谷官房長官は何を思って「20年前なら」と言ったのでしょう?ちょっと気になって確認してみましたら、ちょうど20年前の平成2年(1990年)2月18日の第39回衆議院議員総選挙で初当選しているのですなあ。因みに同年3月にソ連ではゴルバチョフが初代大統領になっております。勿論、日本社会党の公認で、旧徳島県全県区から立候補しての当選でした。学生運動の闘士から弁護士になって社会党を政権を担える党にしようと「ニューウェーブの会」を作って頑張ったのでしたが、今の仕事ぶりを拝見しますと、その願いが適わなかったことを天に感謝したい気持ちになりますなあ。

■英国を真似た社会党のシャドーキャビネットでは官房副長官を務めていたそうですが、当時の野党時代ならば自民党の悪口を言っていれば済みましたものの、本物の官房長官になってしまうと野党時代に威勢よく政権与党に突き付けた無理難題の罪深さをしみじみと反省しているのかも知れませんなあ。学生運動と同じで若気の至りだったでは済まない政治家の責任がありましょう。

■仙谷さんは第40回衆議院議員総選挙で落選してしまい、古巣の社会党が社民党に名前を変えると同時に離党して、四国市民ネットワーク代表を経て旧民主党に入ったという経歴の持ち主です。20年前なら、旧社会党内にはソ連やチャイナに深い思い入れを持ち、美しい幻想を本気で抱いていた諸先輩方が多かったのでしょうなあ。まさか冷戦終結して19年も経つのに、20年前の幻想に惑わされるような官房長官が首相・外相の留守に危険な決断をしていたとは、誰も予想しなかったでしょう。まあ、今の首相なら留守でも在宅でも変わりはないような気もしますが……。


仙谷氏は13日に船長以外の乗組員14人と漁船を中国に帰還させる際、「違った状況が開けてくるのではないか」と中国の姿勢の軟化に期待感を示していたが、実際には逆に中国は一層、態度を硬化させた。……29日の会見でこの発言について、「領事面接の便宜取り計らいや14人の世話を通じた報告で中国側も理解してくれるだろうと判断していた」と釈明。その上で「司法過程についての理解がまったく(日本と中国で)異なることを、もう少しわれわれが習熟すべきだった」と語った。
2010年9月29日 産経新聞 

■船長は逮捕したものの、残りの船員14人は「保護」の名目で拘束していたはずですが、悪質な公務執行妨害の容疑ならば船の舵を操作していた者を筆頭に船長の言動を知っている者たちをあっさり返してしまったのも驚きですが、帰還後のことを考えていろいろと気を使い便宜を図っていたような話になっておりますぞ!次に拿捕や逮捕される可能性がある者たちは大喜びするような話ですなあ。既に外国人犯罪者の中では日本の刑務所は待遇が良く住み心地は抜群だ!などという不埒な噂が流布しているそうですから、先が思いやられてしまいます。

解散・解党・憲法改正 其の壱拾九

2010-09-29 14:10:39 | 外交・情勢(アジア)
■釈放を決定する検察当局の生々しい舞台裏が明らかになっております。

船長の10日間の勾留延長が決定した19日の時点で、検察当局は「起訴」に向け意気軒高だった。「異論を唱える人は誰もいなかった」……検察当局は公判に備え、石垣海上保安部が衝突時の様子を撮影したビデオ映像の公開に「待った」をかけていた。「手の内を明かすわけにはいかない」(同)からだ。詰めの捜査のため、最高検は公安部の担当検事を那覇地検へ派遣する方向で調整していた。
潮目が変わったのは21日だった。中国の温家宝首相が「釈放しなければ、中国はさらなる対抗措置を取る用意がある」と揺さぶりをかけた。間もなく、邦人4人が中国で行方不明との情報がもたらされる。
「すぐに身柄拘束を想像した」とある検察幹部。このころから検察内では「船長にいい弁護士がつき、容疑を認めさせれば略式起訴で済ませられるのに」と弱気な声が漏れ出した。しかし、船長は否認を続け、連日、中国の在日大使館員と接見した。「何か吹き込まれたのは間違いない」と海保関係者。否認のままでは略式起訴にできない。流れは釈放に傾いた。 

■いまだに公開されていないビデオ映像に何が写っているのか?これが大問題になりつつありますが、検察は「国内法に基づいて粛々と」と言っていた政府を信じて国内での公判の準備をしていたわけで、本来なら外交交渉で国内の司法権を守らねばならない政府が嫌がらせの連発に腰砕けになり、検察側でも異国で拘束された同胞の安否を気遣って弱気になって行くわけです。しかし、連日の大使館員による接見を許してしまったのは制度上の問題とはいえ残念なことでしたなあ。態度を一変させた時点で、既に「英雄としての帰国」やら今後の生活の優遇などがエライ人の名前で伝えられていたのでしょうなあ。人治主義の独裁国家は何でもやれるという現実を日本人は学ぶべきでありましょう。


23日には那覇地検が外務省の担当課長から参考人聴取として状況を聞いた。起訴したら日中関係はどうなるか、影響を中心に説明を受けたとみられる。首相官邸からも法務省側に早期解決を望む意向が非公式に伝えられたという。
24日には柳田稔法相が2回も官邸に入り、2回目は慰労会を中座して仙谷由人官房長官と1時間面会。帰り際、報道陣からの「尖閣は?」との質問を無視した。……1時間後の午後2時半すぎ、那覇地検の鈴木亨次席検事は釈放を発表。理由に「日中関係への考慮」を挙げた。検察当局が政治決断を負わされたこともにおわせる、異例の発言だった。一方、菅直人首相も仙谷長官も釈放は「検察の判断」と繰り返すのみだ。
船長釈放から半日後の25日午後、拘束中の邦人4人は北京の日本大使館員と面会できた。検察が憂慮した人命の危機は脱した。しかし、検察当局に対し、「中国の圧力に屈した」との国民の失望感は広がっている。折しも大阪地検特捜部の押収資料改竄という前代未聞の事件も発覚。逆風にさらされる中で検察当局が下した今回の判断は、当面の危機を脱する役割は果たしても、さらなる国民の不信という禍根を残す結果となった。
2010年9月25日 産経新聞 

■どうせ証拠捏造の大罪を犯して国民の怒りを買っている検察なのだから、この際、ぜんぶ泥を被せても汚れ方に大差は生じないなどと政府の誰かさんが考えたとしたら、検察の関係者は情けなくて涙も出ないでしょうなあ。

解散・解党・憲法改正 其の壱拾八

2010-09-29 09:48:04 | 外交・情勢(アジア)
24日昼、自民党本部での党外交部会。海上保安庁の檜垣幸策刑事課長は中国漁船と海保の巡視船が衝突した瞬間を収めたビデオテープをなぜ公開しないのか、苦しい釈明に追われた。……政府内でも公開すべきだとの意見はあったが仙谷氏は「刑事事件捜査は密行性をもって旨とするというのは、刑事訴訟法のいろはの『い』だ」(21日の記者会見)と後ろ向きだった。刑事訴訟法47条は「公益上の必要が認められる場合」は証拠書類の公開を認めている。政府は、自国に有利なはずのビデオ公開を「公益」にかなわないと判断したことになる。…… 

■いろはの「い」から始めたら、順を追って「ろ」「は」「に」と最後の「て」まで進んで行かねばなりますまい。仙谷官房長官は次の「ろ」をどう考えていたのでしょうなあ?国内法の刑事訴訟法を専門家として得意になって講釈していたのなら、官房長官としてもそのまま突っ走るしかなかったはずなのですが……。


政府筋は、今回の釈放決定について「電光石火の早業」と評するが、いかに仙谷氏とごく少数の人間にしか知らされていなかったかが分かる。「那覇地検(の鈴木亨次席検事)は『今後の日中関係を考慮して』と言ったがこんなことを検事が言っていいのか。あらゆる泥をかぶるというなら、首相臨時代理である仙谷氏が(自分の責任で)言えばいい」自民党の石破茂政調会長は24日夕、記者団にこう指摘し、10月1日召集の臨時国会で追及する考えを示した。…… 

■一人で泥を被ろうなどとは毛頭考えていない仙谷官房長官は、三権分立の原理を盾にして検察にすべてを押し付けて済ますつもりのようであります。岡田タリバン幹事長も同調して、政府は当初の方針を貫いて国内法に則って対応し、釈放は検察が決めたことだ!と鸚鵡のように繰り返して苦境を乗り切るつもりのようですし、逮捕を強力に主張したとされる前畑前国交相などは八ッ場ダムの建設中止騒動の時とまったく変わらず涼しい顔をして官房長官の言う通りだと木で鼻を括ったような態度を貫いているようです。そして、何も知らない何も出来ない菅アルイミ首相は茫然自失の表情で力なくにやにやしているしかないようですが、元々、国会優先で欠席と決まっていたアジア欧州会議に、おそらく袖にされる公算が高い日中首脳会談の機会を求めて、急遽、出席することになったそうですが、国際会議の檜舞台で恥の上塗りを演じることになりそうです。


「証拠も十分で事案も悪質。起訴すべきです!」24日午前10時すぎ。東京・霞が関の法務・検察合同庁舎19階の最高検会議室。……起訴を主張する幹部の声が響いた。那覇地検が中国人船長の釈放決定を発表する、わずか4時間前の出来事だった。……大林宏検事総長、最高検の伊藤鉄男次長検事、勝丸充啓・公安部長と担当検事に加え、那覇地検の上野友慈検事正と福岡高検の岩橋義明次席検事。国会議員の逮捕など重要案件を最終決定する際に開かれた「検察首脳会議」ともいえる顔ぶれだ。この時点では、方針が釈放で一致していたわけではない。1時間に及んだ会議。出席者の一人の発言を契機に全員一致での釈放決定への流れが強まった。
「4人の人命はどうなるんですか。(起訴したら)危ないんじゃないですか」準大手ゼネコン「フジタ」の邦人社員4人が軍事管理区域で撮影した疑いで中国当局に拘束されたことが前夜に発覚していた。ある幹部は「人命をてんびんにかければ、起訴という判断はできなかった」と悔しさをにじませた。…… 
■こうしてイザとなったら「偶発的な事件」で邦人を拘束すれば、じわじわと日本の領土を蚕食できることを知ったチャイナの誰かさんは、これに味をしめて次々と無遠慮な行動に出て来ると予想される前例が生まれたのでした。「人命は地球より重い」と言ってハイジャック犯の要求を丸呑みして巨額な現金と刑務所にいた仲間を釈放して世界中から呆れられたことを思い出しますが、北京政府の誰かさんも福田パパ総理の「業績」を研究していたのかも知れません。もしも、フジタの社員4人が無事に解放された時に尖閣諸島周辺がチャイナの軍艦と漁船で埋まり、ガス田から目出度く天然ガスが噴出していたりしたら、行き場のない国民の怒りが災難に遭った4人が謂れのない責めを受けるような事態にならないとも限りません。そうなったら愚かな共食いをチャイナばりでなく世界が嘲笑するでしょうから、誰が悪いのかを冷静に判断しておくべきでしょうなあ。

解散・解党・憲法改正 其の壱拾七

2010-09-29 09:47:47 | 外交・情勢(アジア)
■拘留期間を5日も残して断行された突然の釈放の「真相」が徐々に明らかになりつつあるようです。民主党内の元気がいい連中が「要望書」や「建白書」を出したりグループを作り始めたり、苦しい国会の幕開け前に急に党内が騒がしくなっているのは外交能力の無いことを露呈して寄せ集め政党の馬脚を現して泥舟化した民主党から一定の距離を取るポーズを見せているだけのような気もするのですが、あまり意地悪く見ないで少しでもマトモな政党にしようと努力中ということにしておきましょうか?。 

……政府筋は29日の勾留期限を待たず24日に処分保留の決定が下った背景として、23日午前ニューヨークで行われた日米外相会談で……クリントン国務長官は尖閣諸島について「日米安保条約が明らかに適用される」と述べる一方で、尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件の早期解決を望む意向を伝えた。……事態打開を探っていた仙谷氏は、前原氏から連絡を受けた「米側の要請」(政府筋)をもっけの幸いとばかりに利用し、船長釈放の口実にした可能性がある……。弁護士出身の仙谷氏は「司法、捜査と政治との関係について中国に理解を求めたい」と、司法権の独立に言及してきた。首相や外相が不在のなかで進んだ「仙谷氏主導」(政府筋)の釈放劇は、歪んだ政治主導といってもいい。…… 

■米国の圧力を言い訳に使おうなどと、幕末の黒船でもあるまいし独立国家の日本をどう考えているのやら。米国政府は釈放を嘉したコメントを発表した後で慌てて「米国の圧力」は無かった!と釈明しているところを見ると、日本の外務省が腰砕けになるに十分なメッセージは届いていた可能性はありそうですが……。


「日本は法治国家だ。そのことを簡単にゆるがせにできない。(日本が)超法規的措置をとれるのではないか、ということが前提にあるから(中国側は)よりエスカレートしていく」玄葉光一郎国家戦略担当相も24日午前の記者会見で胸を張った。だが、那覇地検の釈放方針発表後に官邸を出る際、玄葉氏は記者団に無言を通した。…… 

■財務官僚達とがっちり連携を組んで増税路線の研究に熱心な玄葉大臣が、ぎりぎりの外交交渉など出来るはずもないのですから、先行き真っ暗の「エスカレート」話などしない方がよかったのでしょうなあ。民主党が言う「国家戦略」には外交政策が含まれていないからこそ初代トップが菅さんでも務まったのではないでしょうか?


……「那覇地検の決定は、3、4時間後には(米ニューヨーク滞在中の)菅直人首相の耳に入るだろう」仙谷由人官房長官は24日午後の記者会見で、いったんはこう述べ、……その後、秘書官が差し入れたメモを見て「首相にはすぐに連絡が届いているということだ」と訂正した。まるで、首相の意思・判断には重きを置いていないかのようだった。船長釈放の一報が伝わる約5時間前。23日午後9時ごろ、首相は同行記者団との懇談で笑みを浮かべてみせた。「今いろんな人がいろんな努力をしているんだから」日中関係の改善策を問われた際の答えがこれだ。 

■仙谷さんにとっては「菅の野郎」でしかない首相は、何も知らない役立たずでしょうから、こんな重大事を相談するはずもなく、誰も聞いてくれない国連演説をして日本の国際的地位の低下を身を以って証明する姿を見れば猶更、余計な事を口走って間近に迫った国会で野党から追及される材料を作らないように海の向こうで「粛々と」スケジュールをこなしていれば良かったのでしょう。


民主党政権には中国の圧力に屈してルールを曲げた“前科”がある。昨年12月の習近平国家副主席の来日時に「1カ月ルール」を破って天皇陛下との「特例会見」を実現させたことだ。「あのときは官邸がぐらついたが今回は仙谷氏をはじめ、きっちりやった。中国も驚いて交渉レベルを楊潔チ外相から戴秉国国務委員に上げて圧力をかけたが政府は踏みとどまっている」8日の船長逮捕の数日後、外務省関係者はこう語っていた。だが、その評価は裏切られた。…… 

■陛下との特例会見が間違ったメッセージを北京政府に送ってしまったのは間違いなく、あの時に取引の人質みたいな立場に置かれたのが小沢訪中団の「ツーショット撮影会」でしたが、団長だった輿石参院会長もクラッシャー小沢自身も今回は我関せずの態度だったのは意外でもあり、代表選が残した民主党内の亀裂の深さを見たような感じもしましたなあ。

解散・解党・憲法改正 其の壱拾六

2010-09-29 09:47:24 | 外交・情勢(アジア)
■化学兵器の処理事業は、尖閣衝突事件が起こる前に動きがありました。

日本政府は(9月)1日、旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器を処理するため江蘇省南京市に移動式処理設備を設置した。2000年以降発掘・回収した約4万8000発のうち、南京に保管されている約3万6000発の廃棄処理に近く着手する。……吉林省には推定30万~40万発が未発掘のまま残されており、化学兵器禁止条約で定められた廃棄期限(2012年4月)の再延長は避けられない情勢だ。…… 

■南京市で作業をするというのも象徴的な宣伝効果を狙っているような気がしないでもありませんが、北京政府は何を根拠にしているか分からない「200万発」という途方も無い数値を出して日本の作業させようとしているので、廃棄期限は際限も無く延長されて何処まで続くヌカリミぞ!ということになる可能性がありそうです。


南京市内では同日、日中両国と化学兵器禁止機関(OPCW)の関係者が出席して廃棄作業開始行事が行われた。平岡秀夫内閣府副大臣は「発掘・回収から廃棄という新たな段階を迎えた」と意義を強調した上で、処理事業を加速する方針を示した。これに対し、中国の張志軍外務次官は「廃棄期限が迫る中でやるべきことは非常に多い。日本が遺棄した化学兵器を一日も早く全面的、徹底的に廃棄することを希望する」と要請した。
2010年9月1日 時事通信 

■平岡秀夫内閣府副大臣が言う「新たな段階」の発端は、平成7年(1995年)に日本憲政史上に輝く村山富市総理大臣と河野洋平外務大臣の黄金コンビ!が、残留化学兵器がすべて日本が遺棄した物なのか?という重要な疑問を封印したまま日本の資金で処理する方針を固めたことでした。自社連立時代でありますが、根拠とされる1997年に発効となった『化学兵器禁止条約』の条文を仔細に読めば、本当に日本が押し付けられる仕事なのかどうかも怪しいと指摘されていたのに、平成11年(1999年)に『日本国政府および中華人民共和国政府による中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書』が締結されました。

■2004年の現地調査で掘り出された542発の化学兵器のうち日本製は10発だったそうですし、調査に協力した現地スタッフに日本側が100ドルの日当を払ったのに「実際に本人たちに支払われるのは十元(約130円)程度」などというピンハネ話もあったりしましたなあ。肝腎の処理すべき残存数は日本側の70万発なのか中国側の言う200万発かもウヤムヤのまま、1979年からの30年間に3.3兆円に達した対中ODAが2005年3月に打ち切られたというのに、別口として1兆円に及ぶとも心配される巨大プロジェクトが動いているのであります。嗚呼。

解散・解党・憲法改正 其の壱拾伍

2010-09-29 09:47:10 | 外交・情勢(アジア)
準大手ゼネコン「フジタ」の日本人社員4人が中国・河北省で「軍事管理区に無許可で立ち入り、軍事対象を動画撮影した」との理由で身柄を拘束された件で、中国大陸のメディアは「旧日本軍の遺棄化学兵器の処理事業の下見のため」との、現地訪問の目的を伝えていない。身柄拘束そのものについては、各社が一斉に伝えた。……香港系・台湾系のメディアは「日本の報道によると」と前書きした上で、拘束された4人の所属や現地訪問の目的を伝えた。中国にとって旧日本軍の遺棄化学兵器は大きな関心事で、これまで日本側の取り組みも大きく紹介された。日本人拘束に絡んで報道しないことは不自然で、当局の意向が反映されている可能性が高い。……処理への取り組みそのものに対しても「中国は日本の謀略に踊らされている」などの批判の声が出ることを中国当局が懸念したことなどが、考えられる。
2010年9月24日 サーチナ 

■検察当局が悔し涙を飲んで「処分保留」釈放を決めた主要な原因が、このフジタの4人の人命問題だったようですが、日本の大学で教授になっているような人が「偶発的な事件」で衝突事件とは無関係だ!などと言っているようですが、そんなにタイミングよく前代未聞の逮捕拘束事件が起こるものでしょうか?改めて素朴に日中友好を考えていた人達は、何でも起こり得る相手のお国柄を理解しておくべきでしょうなあ。


海江田万里経済財政相は24日の閣議後記者会見で、中堅ゼネコンの「フジタ」(本社・東京)の社員4人が中国河北省石家荘市で国家安全機関に拘束されたとみられる問題で「本社と現地4人との連絡が取れなくなっている」と述べた。社員が政府の「遺棄化学兵器処理事業」に携わっていたのか、との指摘には「過去に契約はしていたが、現在は内閣の仕事という形で契約関係にはない」とした。〔
2010年9月24日 日本経済新聞 

■冷静な記者会見を開いたフジタの土屋達朗常務執行役員の話によりますと、「4人は旧日本軍が遺棄した化学兵器処理関連工事の現地調査のため、20日から2、3日の予定で河北省入りし、受注可能かどうかを調べていた。「救命」のメールが届いたのは現地時間の21日午前7時16分だった」そうですから、現地に着いて1泊した翌朝に身柄を拘束されたわけですなあ。何が何だか分からなかったでしょうし、多少でもお国柄を知っていれば恐ろしかったに違いありません。「受注可能かどうか」の調査ならば海江田経財相の説明に嘘はないようです。


……日本人4人が国家安全局に拘束された事件で、拘束現場とみられる市郊外の軍施設周辺では、24日、軍関係者らしい若者ら十数人が私服姿で警戒に当たり、道路も封鎖して、厳戒態勢を敷いていた。……地元住民の間では、「処理施設建設が間もなく始まるらしい」という情報が広まっていた。だが、民兵の倉庫などがあるという軍施設に通じる道路の入り口には、部外者の立ち入りを制限する軍事管理区域を示す標識は見当たらない。そこから200~300メートル進むと軍施設の門が見え、同区域を示す標識が出てくるという。……地元住民以外で軍施設の存在を知る人は少なく、これまでも勝手に入って簡単な注意を受けるケースがあったという。今回のように拘束に至った事例は、「聞いたことがない」と住民も驚く。付近の集落では日中、通行人も少なく、外国人がビデオカメラなどで撮影すると目立つため、住民が警察に通報した可能性もある。……
2010年9月25日 読売新聞 

■記事の末尾に出ている「住民が通報」というのがお国柄をよく表わしておりますなあ。旧ソ連に始まり旧東欧諸国、そして現役の北朝鮮と中華人民共和国は密告・盗聴・検閲がとっても盛んですから、信頼の置ける現地のガイドさんや友人の助けを借りずに行動する場合は本当に御用心、御用心。拘束された4人にガイドや通訳が同行していたかどうかは不明ですが、最悪の場合はガイドが裏アルバイトで罠にはめることもありますからなあ。

解散・解党・憲法改正 其の壱拾四

2010-09-28 23:11:49 | 外交・情勢(アジア)
鳩山由紀夫前首相は25日……衝突事件に対する政府対応について「私だったら事件直後に、この問題をどうすべきか中国の温家宝首相と腹を割って話し合えた」と述べ……自身が首相だったときに温首相との間にホットライン(直通電話)を構築していたことを明かし、「ホットラインは菅(直人)首相にも引き継がれている」と述べて、事件後、菅首相が温首相と直接対話を怠ったのではないかとの見方を示唆した。 

■御自身が米国側とどんな「直接対話」を仕出かしたのか!を忘れてしまったようです。前言撤回を繰り返すのは記憶力にも若干の問題があるからなのでしょうか?「事件直後」に日本の首相が北京政府に「あの~、公務執行妨害で逮捕してもいいですかあ?」などと間抜けなことを「腹を割って」お伺いを立てるべきだったというのでしょうか?御本人だったら何と仰るのか、ちょっと興味がありますが、どうせ「腹案がありますが、今は差し控えサセテイタダキます」としか言わないのでしょうなあ。


中国側の賠償要求には「日本側の主張が正しければ賠償要求などどいう話は論外」と批判。ただ「事実関係で見えていないところがある。国民や中国側にしっかりと伝える責務が(日本政府に)ある」と、政府の説明不足を指摘した。那覇地検保釈決定についても「国民の中に釈然としないものが残っている。(政府から)何らかの働きかけがあったのかも含めて、事実は事実として真相を国民に知らせる責務がある」と述べた。
2010年9月25日 産経新聞 

■すっかり野党気分に戻って政界引退後の評論家活動を既に始めておられるようですが、鳩山サセテイタダク首相に「説明不足」と言われては菅アルイミ首相の立つ瀬がありませんなあ。「あなたにだけは言われたくない!」と反撃したかったでしょうし、国民としては使途不明のお母ちゃん基金について早く「事実を事実として真相を」語って欲しいところであります。ついでに息子さんがロシアで受けている特別待遇やら親しいロシアの友人などの事についても……。


鳩山由紀夫前首相は25日……衝突した事件で、那覇地検が中国人船長を釈放したことについて、「証拠として映像があるはずなのに、国民にも、中国側にも見せていない。中国側に見せれば、これが公務執行妨害だいうことはわかっていただけたはずだ」と述べ、政府の対応を批判した。視察先の京都市内で記者団に語った。
2010年9月25日 産経新聞 

■「一目瞭然」と断言したのが横滑り直前の前原国交相だったので、あの「偽メール事件」を思い出しますなあ、と前に拙ブログに書いた記憶がありますが、マスコミの中にも同趣の危惧が広がっているようです。鳩山サセテイタダク前首相は現物を見てないのに、こんな事を言って現内閣を追い詰めて潰そうとするおつもりか?!まさか古巣の自民党に戻ろうなどと考えているのではありますまいな?!

■鳩山サセテイタダク前首相が御執心の仮称・東アジア共同体に含まれることになりそうな国々が、固唾を呑んで事件の経緯を見守っていたことが分かる報道が入っていました。


……韓国メディアは、「両国関係を考慮しての判断」、「日本が中国に白旗?」、「中国の報復に日本がしょんぼり」、「日本が中国の圧力にひざまずいた」などと、同話題を続々と伝えている。そして、領有権紛争で対立が激化していると続報を続けていたメディアも「東シナ海で中国名・釣魚島、日本名・尖閣諸島をめぐる領有権紛争が多少静まる可能性が高まった」と、船長釈放を報じた。……今まで事件の推移について、日中の報道を続々と伝えていた多数の韓国メディアは、中国との摩擦が深まることを避けるため、日本が結局譲歩したとの趣旨で同話題を報道。また、ゼネコンの日本人社員4人が軍事施設への無断侵入の疑いで中国河北省・国家安全局の取り調べを受けていることも、船長の釈放を促したとの見解を示すメディアも複数見られた。
2010年9月24日 サーチナ 

■仙谷官房長官と菅アルイミ首相が下手な田舎芝居を打っても、既に真相は透けて見えており、岡田タリバン幹事長がテレビで「政府による司法当局への関与があったと言うこと自体が国益に反する!」などと開き直ると、ますます真相がくっきりと見えて来てしまいますなあ。

解散・解党・憲法改正 其の壱拾参

2010-09-28 23:11:31 | 外交・情勢(アジア)
■ロシアによる「戦勝記念日」制定に関しては、韓国の動きも要注意です。

……ロシアによる不法占拠が戦後65年間続く北方領土・国後島を17日から20日まで、元島民の後継者らが訪れ、ロシア人島民と交流を深めた「査証(ビザ)なし訪問団」に同行取材した。島のロシア化は年々進み、インフラ整備には韓国など海外企業の影響も目立ち始めている。……国後島のほぼ中部に位置する町、古釜布(ふるかまっぷ)にある郷土史博物館。先の大戦で、日本のポツダム宣言受諾後に島を占領した旧ソ連軍の将官らの功績が顔写真入りで紹介されていた。……「本来、ロシア領だった国後島を解放し、取り戻すための戦争を紹介している」スコワチーツィナ館長はこう説明したが、ロシアによる不法占拠以前に国後がロシア領だったことはなく、事実に反する。元島民を祖父に持つ会社員、大塚勉さん(43)は「歪曲された歴史認識で到底受け入れられないし、釈然としない」と感想を語った。…… 

■大塚さんを応援するために、基本的な条約を時系列に沿って並べておきましょう。
1855年「日露通好条約」で国境は択捉島とウルップ島の間。樺太は両国民の混在地。
1875年「樺太・千島交換条約」で最北の占守島まで千島列島は日本領。
1905年「ポーツマス条約」で千島列島と南樺太は日本領。
1951年「サンフランシスコ平和条約」ウルップ島以北の千島列島を放棄。


……国後では5年ほど前から島を管轄するロシア・サハリン州が音頭を取り、空港や港などのインフラ整備工事を着実に進めている。地元住民によると、工事を担うのはウズベキスタンなど中央アジアからの出稼ぎ労働者が少なくないという。……空港につながる道路の舗装では、サハリン(樺太)にある朝鮮系企業が韓国の現代グループ製の重機3台を入れて作業していた。……港湾の岸壁工事では、水の浸入を防ぐくい(矢板)を韓国から調達。日本政府は「他国がかかわるべき事業ではない」と抗議しているが、黙殺されているようだ。 

■随分前から北方領土周辺を含む北洋で韓国漁船がせっせと漁をしている話は伝わっていますが、土木工事にも精を出しているのですなあ。


……今年6月、菅直人首相はロシアのメドベージェフ大統領とカナダで会談した際、「解決できない問題ではない」との言葉を引き出した。だが、その後は民主党代表選などに追われ、棚上げされたままだ。……宿泊施設「友好の家」いわゆる「ムネオハウス」……鈴木元議員の名前を出すとロシア人の多くが口を閉ざす。ある施設従業員は「あんなにビザなし交流を軌道に乗せるのに一緒に頑張ってきた人が、どうして」とうつむいた。来年はビザなし交流が始まって20年目の節目の年だ。同行した泉健太前内閣府政務官は「もっと日本のプレゼンスを主張してもいい。首脳間外交のほかに、民間交流もさらに深めていきたい」と語るが、前途は視界不良だ。
2010年9月24日 産経新聞 

■佐藤勝さんと一緒に「国策捜査」の餌食なったとも言われる鈴木宗男さんは、膨大な質問趣意書を連発して「昨日の友は今日の敵」で外務省を責め苛んでいたのですが、権威失墜の検察と裁判所の力で5年先まで立候補できなくなったそうですから、さぞや外務省の役人は喜んだことでしょうなあ。心配なのは何も知らない菅アルイミ首相に「ロシアのことなら任せなさい!」と鳩山サセテイタダク前首相が横槍やら変な入れ知恵をすることであります。菅アルイミ首相は無知なだけですが、鳩山サセテイタダク前首相の頭の中は無責任な誇大妄想でいっぱいですからなあ。

解散・解党・憲法改正 其の壱拾弐

2010-09-28 23:11:10 | 外交・情勢(アジア)
ロシア極東サハリン州のニュースサイト「サハリン・インフォ」は27日、同国のメドベージェフ大統領が今月29日、北方領土の択捉島と国後島を訪れることを計画していると報じた。事実であれば、ロシア大統領が北方領土を訪問するのは初めて。メドベージェフ大統領は現在、28日までの日程で公式訪中しており、上海訪問終了後に北方領土を訪れることになるとみられる。
2010年9月27日 時事通信 

■この「上海訪問」が重要なのですが、ロシア大統領が択捉・国後を初訪問するとなれば、「絶対に返さないぞ!」の意思表明となりましょうから、鳩山一郎時代の「二島返還論」が再浮上して来るかも知れませんなあ。

■ロシア大統領の上海訪問に関しては、尖閣衝突事件が起こった2日後に報道されていました。


ロシアのメドベージェフ大統領が今月末にも中国を訪問し、第二次大戦での中ソ共闘の歴史認識を再確認する方向で調整されていることが9日、中露関係に詳しい専門家の話で分かった。ロシアは今年、日本が第二次大戦の降伏文書に署名した9月2日を事実上の対日戦勝記念日に制定。「ソ連の対日参戦が第二次大戦終結を早めた」とする歴史観で中国などと連携し、日ソ中立条約を破っての対日参戦や北方領土の占拠を正当化する動きを強めている。…… 

■当時、菅アルイミ政権は衝突事件の方は「国内法に基づいて粛々と」放置して代表選に熱中しておりましたし、その前の「戦勝記念日」を制定するという動きに対しても見猿・聞か猿・言わ猿の状態でした。


元外交専門誌編集長のタブロフスキー氏によると、メドベージェフ大統領は、北京、上海のほか、日露戦争(1904~05年)の激戦地だった大連・旅順口を訪問。第二次大戦での中ソ犠牲者に加え、日露戦争でのロシア人戦没者を追悼する行事に出席する見通しだ。……大連では訪問に向けた共同墓地の修復などが進められているという。 

■満洲侵攻に加えて千島列島を南下して北方四島を奪取、あわよくば北海道ももぎ取るつもりだったスターリンは、「日露戦争の復讐」に燃えていたと言われていますから、領土交渉をしたいのなら日本側から「訪問は上海だけにして欲しい」くらいのことは言うべきだったのではないでしょうか?戦争末期の火事場泥棒行為を「日露戦争の復讐」が成就した話に書き換えられると、話が非常にややこしくなります。


ロシアは終戦65年にあたる今年、9月2日を「第二次大戦終結の日」に制定。記念日の正式名称から「対日戦勝」の文字は外されたものの、根底には「ソ連が中国東北部と朝鮮、サハリン(樺太)、クリール諸島(千島列島と日本の北方四島)を解放した」(有力議員)との歴史観がある。在露中国大使館は2日、ロシアの新記念日に同調して「占領者日本に対する中国人民の勝利65周年」と冠する数百人規模の祝賀パーティーを開催し、ロシアの政官界や在モスクワ外交団の関係者が集まった。…… 

■日本は対米戦争には負けたけれど……との思いがありますから、火事場泥棒と中華民国の油揚げを掠め取ったトンビとが祝賀パーティを催すのには強い違和感がありますなあ。でも、菅アルイミ内閣は特段のコメントは出していなかったようです。何も感じなかったのでしょうなあ。


中国の胡錦濤国家主席は今年5月、ロシアの対ドイツ戦勝65周年に合わせて訪露した際に「(対独、対日の)歴史の真実を守り抜くために連携を強める」ことで露首脳部と一致しており、この流れがいっそう強まっている形だ。……サハリンでは今月2~3日、対日戦勝行事の一環で州主催の国際学術会議が行われ、「反日」色の濃い内容となった。この会議には中国や韓国、モンゴルなど7カ国から外交官や研究者が参加、在露英国大使館も第二次大戦の極東戦線でソ連が果たした役割を評価するメッセージを寄せた。AP通信も8月、米国の一部研究者に「米国の原爆投下よりもソ連の対日参戦が日本の降伏を決断させた」とする見方が出ているとの記事を配信した。
2010年9月10日 産経新聞 

■日本では「大東亜戦争」の正式な呼称が自粛?されたままで、米国が強要した太平洋戦争の名では西側半分の戦域が宙に浮いてしまうのが悩ましいところです。いまだに「真珠湾に手を出さずに南方作戦だけを……」と歴史のifが語られるのも、GHQの占領政策がずっと呪縛となっている証拠なのかも知れませんが、天皇から降伏の御聖断が下った経緯や背景を考えますと、「原爆が効いた!」だの「ソ連の侵攻が効いた!」だの、うっかりすると「抗日テロが効いた!」などと我田引水の話に付き合う必要は無さそうです。

■但し、大日本帝国の上層部には確かに1943年11月の「テヘラン会談」、1944年8月からの「ダンバートン・オークス会議」、1945年2月の「ヤルタ会談」という流れを読めずに、ソ連に講和の仲介役を期待していた人達が存在していたのは事実ですから、仲介役が火事場泥棒になったらさぞやガッカリしたことでしょう。

解散・解党・憲法改正 其の壱拾壱

2010-09-28 17:57:10 | 外交・情勢(アジア)
■紀一郎さんが上梓した疑惑の著書には、対露外交の参考になる話も含まれているようなので、報道から引用しておきましょう。

……出版に先立ち、鳩山さんの“実地研究”に同行取材した。鳩山さんが運転する車で市中心部を走ると、ロシア首相府に面する交差点に向かって車が次々と突っ込み、身動きが取れなくなった。「典型的な押し寄せです」と鳩山さん。日本のドライバーにとって、先が詰まっている交差点に入らないのは「常識」だが、モスクワでは日常茶飯事だ。さらに割り込みや急な車線変更、無謀な駐車が横行し、渋滞を深刻化させている。交通規則を学んでいない運転者も多い。鳩山さんは「ロシア人の多くは、自分の運転がどのような影響を与えるのかを考えるのが苦手」と指摘する。モスクワでは政府要人の車両通行を優先し、幹線の通行が頻繁に遮断される。このため、ドライバーは「いつ止められるか分からない」という強迫観念から、交差点へ押し寄せているのではないかと分析している。…… 

■読みようによっては何とも含蓄のある話であります。60余年前、スターリンの戦車群が同様のやり口で「押し寄せ」て来たのでしたなあ。


……経済成長を背景に、モスクワでは車の保有台数が過去15年間で4倍に増えたが、道路整備が追いついていない。市当局の交通行政も、過去の交通量を基準にするなど旧態依然のままだ。経済損失は年間180億~260億ドル(約1兆5000億~2兆2000億円)に達するとの試算もある。……鳩山さんは著書で……モスクワのドライバーに対しては、交差点への押し寄せ禁止や、車線の厳守という「交通規則の初歩」を順守するよう呼びかけている。……モスクワでの研究は来年まで続ける予定。
2010年9月23日 毎日新聞 

■専門書なのですから、著作にはもっと詳細な数値や分析が豊富に含まれているのでしょうから、この程度の事を確認するために特別待遇のヘリコプター視察までする必要があったのか?などと失礼な事は言わない方がよいのでしょうが、問題なのは父親の方で、いつか「息子が大変にお世話になったから、ロシア側の主張を受け入れるのは『大義』だ!」などと言い出さないことを願うばかりであります。

■代表選直前に首相特使として参加した9月10日の「世界政策フォーラム」での発言が、菅アルイミ内閣の外交政策に準じたものなのか、或いは民主党の公式な政策なのか、そこが大問題なのですが、尾羽打ち枯らしたボロボロの前首相が何を言おうと日本のマスコミは真面目に取り上げようとはせず、もっぱら「小沢支持」の大義話ばかり報道されていた時期でした。


鳩山由紀夫前首相は10日、ロシア北西部ヤロスラブリで開催中の「世界政策フォーラム」で講演し、鳩山氏が提唱する東アジア共同体構想に「ロシアも視野に入れる発想が求められている」と述べ……鳩山氏は「(ロシアの)メドべージェフ大統領は、ロシアをアジア・太平洋地域に統合させていくとの方針を示している」との見方を指摘したうえで、今後の日露関係については「日本とロシアが手を組んで、ベトナムなど東南アジアの国々の開発に協力するような新しい発想でウィン・ウィン・ウィンの関係を築く」と強調した。
2010年9月11日 産経新聞 

■何だか戦前の松岡洋介を思い出させるような大風呂敷でありますが、これまで3度出されている民主党のマニフェストの何処にもロシアを「東アジア共同体」に引き入れるとは書かれていないはずです。開催地のロシアに対する友愛精神に満ちた気遣いにしても、日本がロシアを協力してベトナムを援助する構えを見せればチャイナが黙っている筈はなく、日本では小さな扱いだったこのホラ話が今回の尖閣衝突事件の遠因になっていなければよいのですが……。