旅限無(りょげむ)

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ザルカウィ死して後 其の参

2006-06-30 07:56:37 | 外交・情勢(アジア)
■「アラブの大義」も金次第で、パレスチナ自治政府は産油国からの経済支援も無くなって、更に悪いことには民主的な選挙で政権を担当することになったのが過激派ハマスなので、欧米とイスラエルからの援助も凍結されてしまって台所は火の車!外相のアッザハールさんは1箇月間もイラン、シリア、インドネシアを金策に回ってやっと23億円分の札束を鞄に詰め込んで帰国。これがエジプト国境のラファ検問所で見つかって騒動になったのが6月14日のことです。先月はハマス報道官が8000万円分のユーロ紙幣を体に巻き付けて運ぼうとして押収される事件も起こっているそうです。別の報道官は湾岸諸国を巡って6億円を掻き集めて持ち帰り、遅配が続く16万人余の公務員給与のうち、最低給与の4万人に1箇月分の給料が出たとか……。こんな状態でイスラエルと戦争しろ!と囃し立てる過激な声は、自治政府にとっては無責任な雑音でしかないでしょうなあ。ちょっと古いテレビ・ドラマ風に言うなら、「扇動するならカネをくれ!」というところでしょうか?

■6月15日の紙面には「アルカイダ機構」からの新しい声明文が小さなベタ記事になっていました。例の「アブハムザ・ムハージル」名義で「十字軍よ、自分たちがどれだけ弱いかを思い知る日が来る」「シーア派よ、我々はザルカウィ師の始めた道を続ける」とネット上には書かれているのだそうです。マスリの顔写真が公表された日は、偶然なのでしょうが、米国側の犠牲者が2500人を突破し、その内訳を見ますとまったく先が見えないイラクの現状が分かります。


……戦闘・敵対行為による死者は1972人、残る528人は事故や病死など。03年5月1日のブッシュ大統領による「大規模戦闘終結」宣言以降の戦死者が1857人と、全体の約4分の3を占める。文民職員の死者は7人だった。負傷者は総計で1万8490人は、72時間以内に任務に復帰できなかった重傷とされている。 6月17日 朝日新聞

「事故や病死」には、精神的に崩壊して自殺してしまった若者が含まれているのでしょうし、2万人近い負傷者というのは大変な数ですぞ。英国とオーストラリア軍が撤収するどさくさに紛れて引き上げる日本の自衛隊は、幸運にも1人の犠牲者も出さずに帰って来れる可能性がまだ残っています。残念ながら、日本人の命を守るために他国の正規軍が犠牲になったり、傭兵や民間軍事会社に雇われた人が命を失っていても、我々には知らされません。そんなややこしい立場の自衛隊が撤収する時に、「我が国の自衛隊は一発の銃弾も発射せずに任務を終える」というような事を首相が言って良いのでしょうか?「撃たなかった」のではなくて、「撃たせなかった」のでしょうし、そのためには「撃たねばならない場所には行かない」事を徹底させ、慎重の上にも慎重を期して臆病な亀のように要塞化した駐屯地に逃げ込んで息を潜めている事も多かったようです。

■隊員の皆さんが無事に帰るのは喜ぶべきことですが、首相を始めとして政府の関係者が能天気な自画自賛などは絶対にしては行けないでしょうなあ。


……アジア・中東など11カ国で支援活動をしているNGO「日本国際ボランティアセンター」は、91年の湾岸戦争に引き続き、03年4月、サダム・フセイン政権が事実上崩壊した直後から再びバグダッドに入り、病院への衣料品の提供や文化施設の再開に向けた支援などをしてkちあ。5回にわたってバグダッドなどに入った「日本国際ボランティアセンター」の原文次郎さん(42)によると、自衛隊の活動についてバグダッドの人はテレビなどからの情報で給水や道路、病院などを補修したことを知っているという。イラクの人は、これまでの日本のイメージから民間人が来ると思っていた。実際に自衛隊が来てみると軍服に銃を持っており、彼らから見たら占領軍と同じに見えたと思うという。 6月20日 朝日新聞

ザルカウィ死して後 其の弐

2006-06-30 07:56:21 | 外交・情勢(アジア)
■アフリカ沿岸からインド洋を経て東南アジアを通過して北京にまで広まっていた伝統的なイスラム商人のネット・ワークを思い出せば、イスラム教徒の多くが移民だっただろうと想像はつきます。考えて見れば、欧州からの移民によって建国されて膨張し続けたアメリカ合衆国と、アフガニスタンに集まったイスラム兵士達が対立するというのは、単に米国の邪悪なマッチ・ポンプ戦略だけでなく、もっと古い歴史的な皮肉を感じますなあ。

■「アブアイユーブ・マスリ」がアイユーブとエジプトに関連するのなら、これは「十字軍」を思い出さねばなりません。


98年2月23日、「ユダヤ人・十字軍聖戦のための世界イスラーム戦線」なる組織がファトワー(イスラム法的判断)を発表した。このファトワーにはウサーマとザワーヒリーをはじめ、ガマーア・イスラーミーヤのリファーイー・ターハやパキスタン、バングラデシュなどのイスラミスト組織の代表が名を連ねていた。このワトワーで、「アメリカ人とその同盟者を民間人・軍人を問わず殺すことは、それが可能なすべての国にいるムスリムの個人的義務である」ことを宣言したのである。

これも石野肇さんの本からの引用です。日本は、アジアの国なのに、何故か学校教育の現場で「十字軍」や「レコンキスタ」を目出度い話として教わっているような印象が有りますなあ。クリスマスだのセント・バレンタインだの、結婚式もキリスト教風が好まるのですから、「十字軍」やイエズス会の世界的な布教活動も、何処か勇気ある冒険物語のように受け取っているのかも知れませんなあ。自らを十字軍に擬(なぞら)えたブッシュ大統領を無条件で全面的に支持する総理大臣が出るのも必然的だったのかも知れません。

■更に歴史を詮索すれば、「アイユーブ」という名前はイスラムの英雄サラディン(サラーフ・アッディーン)が開いた王朝名に重なります。サラディンは今、話題のイラク北部で頑張っているクルド人です。クルド人とトルコ人を中核とする勇猛な軍団を率いて、エジプトを支配していたイスラム教のファーティマ朝を滅ぼし、1187年には第2回十字軍の残存勢力を追い出してエルサレムをイスラム教徒の手に奪回しました。1189年から始まる第3回十字軍とも互角に戦い抜き、英国のリチャード1世との和議を成立させています。今度現われたザルカウィの後継者は、自らをサラディンに擬えるのならば、エルサレム奪回と十字軍との和議を再び実現させる心算なのでしょうか?

■十字軍の歴史が今も生々しく中東地域に政治的な影響力を持ち続けているニュースも有りましたぞ。オスマン・トルコとロシアが英仏を巻き込んで戦ったクリミア戦争は1854年、そこで敵味方の区別無く献身的に治療をした英国人のナイチンゲールさんの活動が発展して組織されたのが「国際赤十字」でしたが、その活動理念の根本はキリスト教に由来する博愛主義なのだそうです。しかし、十字軍と戦った側の者には、キリスト教の博愛主義は認められないのですなあ。それに加えてユダヤ人絶滅を企てたナチス党員の多くが敬虔なクリスチャンだったものですから、ユダヤ人もキリスト教が嫌いです。そういう背景が有るので次のようなニュースが伝わるのです。


国際赤十字・赤新月社運動の最高決定機関、赤十字・赤新月国際会議は22日、イスラエルの「ダビデの赤盾社」(マゲン・ダビド・アドム)とパレスチナ赤新月社の加盟を承認した。ただ、イスラム諸国の反発で協議は紛糾し、承認は同会議としては異例の採決にもつれ込んだ。イスラエルとパレスチナの緊張が続く中、双方の人道活動での協力などが進む可能性は低い。……イスラエルの赤盾社は同国の建国前からの活動の歴史を持つが、キリスト教、イスラム教をそれぞれ象徴する赤十字・赤新月のシンボルの使用を拒んできたため、加盟できなかった。昨年12月のジュネーブ条約締結国会議で、第3のシンボルとして赤いひし形(レッドクリスタル)が承認され、加盟の道が開けた。同時に、イスラエルとの公平性を保つため、独立国の組織ではないパレスチナ赤新月社の加盟も特例的に認められる事になった。……6月24日 朝日新聞

■大人の判断で長い歴史の歪みを清濁併せ呑んで見せた快挙のように思えるのですが、記事にはシリアなどの強硬派が東エルサレムなどの帰属問題を蒸し返して、イスラエルとパレスチナの同時加盟に文句を言い出しているとの話も出ています。

ザルカウィ死して後 其の壱

2006-06-28 10:20:10 | 外交・情勢(アジア)
■莫大な懸賞金を懸けて追い回していたザルカウィ容疑者の遺体が確認されたのは6月8日でした。ブッシュ大統領は大喜びで、これでイラク攻撃の大義も立って中間選挙も有利に戦えると思いたいようですが、ザルカウィに勝るとも劣らない凶悪なテロリストはまだ40人以上も活動しているのがイラクの現状だとも言います。今回の空爆による殺害にしても、米軍の探索部隊が見つけたのではなくてザルカウィの身近に居た者が内通者となったという情報も有ります。6月15日の朝には「米軍兵士・国防省文民職員の死者」が2500人を突破したとの発表も出ましたから、米軍は苦しい立場に置かれているのは間違いないようです。

■同じ15日には、ザルカウィの後継者とされるアブアイユーブ・マスリというエジプト人の顔写真が公表されたのは皮肉な話のようでもあり、手回しが良過ぎて逆に米国の情報機関が暗躍しているのではないか?と疑いたくもなります。聖地を荒らす異教徒の米軍だけを標的にしている内は隠然たる人気を得ていたザルカウィも、米軍を攪乱して自己保身に走り出すと、シーア派とスンニ派の対立を煽ってイラク住民を更に苦しめているだけとなれば、支持者の数も減るし身近に内通者が出て来たりもするのでしょうなあ。


幹部のザルカウィ容疑者が米軍の空爆で殺害された「イラク・アルカイダ機構」を名乗る声明が12日、インターネット上に掲載された。「アルカイダ機構の評議会は、アブハムザ・ムハージルをザルカウィの後継指揮者とすることで合意した」としている。この人物の詳細は明らかになっていないが、「ムハージル」はアラビア語で「移民」を意味する。……2006年6月14日 朝日新聞

■この小さな記事が掲載された3日後、AFP時事から「アブアイユーブ・マスリ」というエジプト出身者の顔写真が公開されました。米軍とイラク政府の両方から、先に発表された「アブハムザ・ムハージル」はマスリと同一人物だとの発表が有ったのだそうです。「アブアイユーブ・マスリ」というのはアラビア語で「アイユーブの父のエジプト人」という意味だそうですが、これも本名ではなさそうです。先のザルカウィはヨルダン人で実家はヨルダン政府に四六時中監視されていたようですが、このエジプト人の故郷で何が起こっているのかは分かりません。


……米軍によると、アフガニスタンに渡ってザルカウィ容疑者らと知り合い、02年ごろイラク入りして爆弾製造やテロ計画にかかわったといい、「アブ・マスリ」とも呼ばれる。……

■この二つの小さな記事から歴史の断片を連想しました。


……ビン・ラーディン家は古くはアラブの大詩人イムル・アル=カイスを祖先に持つとも言われる家系であるが、現在のビン・ラーディン家のすべては、ウサーマの父ムハンマドが故郷のイエメン東部ハドラマウト地方から職を求めてサウジアラビア・ヒジャーズ地方のメッカに移住してきたことに始まる。「ハドラマウト」という地名は、古代ギリシアの地理書はもちろん、聖書の創世記にすら登場するという説があるほどの古い歴史を持ち、よく「死の存在する場所」を意味するアラビア語だと説明される。だが実際には、アラビア語よりも昔にこの地で話されていた古代南アラビア語で「灼熱」を意味しているというのが学問的な定説である。……イスラーム教の巡礼者が集まる紅海沿岸のヒジャーズ地方は、距離的な近さもあって、多くのハドラマウト移民が移り住んでいた土地であった。これらの移民「ハドラミー」は、ビン・マフフーズやビン・ラーディン、ビン・ダーイル、ビン・ザグル、ブグシャーンなど、今日のサウジで企業家一族として知られる数多くの成功者を輩出した。……

これは『ウサーマ・ビン・ラーディン その思想と半生』石野肇著(成甲書房刊)の一節です。

小泉劇場の幕の裏地 其の参

2006-06-28 10:19:56 | 政治
■バブル時代に「経済ヤクザ」という新語が業界用語から日常会話に入って来たのですが、日本経済は「ヤクザ経済」だ!という言い方もされましたなあ。資金がだぶついた日本の銀行は貸す相手に困って堅気も極道も区別無く莫大な融資を重ねたのは有名な話で、銀行は怖い所には返済を求めず、弱い所から理不尽な取り立てをし続けたのも周知の事実です。『金融腐食列島』という小説が映画化されましたが、あそこにも「ヤバイ融資先」が出て来ましたなあ。この記事に出て来る「飛鳥会」には、傘下の「飛鳥人権文化センター」の名義で大阪市の職員を抱きこんで不正に社会保険証を入手した犯罪が有って、大阪市人権室参事が逮捕されています。銀行救済のゼロ金利政策を採り続け、社会保障費が不足するから「痛みを我慢しろ!」と言っていた小泉政権は、こうした日本の経済の根を腐らせている事件を放置しているのですから、どうも正直者だけがバカを見る仕組みが「小泉改革」の本性だったようにも思えますなあ。

■『週刊現代』7月1日号には、「『弱者斬り捨て恐慌』はすでに始まっている」という町田徹さんの記事が掲載されています。最初の小見出しは「世界同時株安というウソ」で、「改革なくして成長なし」の御題目は真っ赤なウソだったと怒っています。その証拠となる数値として世界主要国株式市場の本年最高値からの下落率が列挙されていますので、抜き書きします。


……ニューヨーク証券取引所のダウ平均株価はマイナス5.9%
……ナスダック市場のナスダック株価指数は マイナス9.2%
……ロンドン証券取引所の株価指数は    マイナス7.0%
……東京証券取引所1部の日経平均株価は  マイナス16.7%
……東京証券取引所マザーズ株価指数は   マイナス54.4%
……インド証券市場            マイナス26.3%
……ロシア証券市場            マイナス18.9%

6月16日に閉幕した東京で開催された「世界経済フォーラム・東アジア会議」でも、中国とインドの経済成長に比して日本経済には危うさが有る!との指摘が出ていたそうですなあ。まともな経済統計を発表しない中国や、まだまだ巨大な貧困層を抱えて強固な身分差別制度に縛られているインドに比べて心配される日本経済には、何か決定的な欠陥が潜んでいる、と世界中の経済人が心配しているという事なのでしょう。


…不良債権問題は終っていない。地銀や第二地銀のなかには、これから経営破綻をしてもおかしくないところがいくつもある。日本経済は大きな爆弾を抱えている。株式市場はその不安を先取りしているのだ。……米国系の大手投資銀行の幹部は明かす。「日本株に投資してきた海外の投資家は、銀行株の動きを警戒しています。ずばり言えば銀行の不良債権処理が本当に終ったのか、という懸念があるのです」

■小泉改革の置き土産として、危なくて住めないマンション、命懸けで乗るエレベーター、目を瞑って飲み込まねばならない米国産牛肉、大金持ちと元官僚しか参加出来ない泥棒ファンド、せっせと個人蓄財に励んでいる日銀総裁などなど、貧乏で正直な庶民は命の危険にさらされる日本を象徴するような物ばかりが残りますが、先の竹中平蔵さんが自画自賛している「不良債権処理だけは終った」という大きな勲章を持って退陣する心算の小泉さんは、何か大きな勘違いをしているのか、悪意をもって国民を愚弄しているのかも知れませんぞ。


2006年3月期決算で、三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループなど大手行が合計3兆1000億円の連結最終利益を稼ぎ出したことは記憶に新しい。この稼ぎは、バブル期を上回る過去最高の記録だ。……この銀行の立ち直りこそ、5年に及んだ小泉純一郎政権の経済政策における「最大の功績」とされてきた。

竹中さんや木村剛さんなどが強引に進めた「金融再生プログラム」の副題は「主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生」というのだそうで、正直に大手銀行しか相手にしない!と断言しているのですなあ。


今年4月…大分県に本拠を置く第二義人の「豊和銀行」が、業績見通しを下方修正し、西日本シティ銀行との資本提携とあわせて、金融庁に対して公的資金注入を申請した、と発表……豊和銀行は預金量が5200億円。全国的には名前は知られていないが、大分県内では預金量第2位の大手金融機関……金融庁はこの5年間で3回も検査に入りながら、豊和銀行のお化粧を見破れなかった。こうした決算が、他の地銀・第二地銀ではびこっている可能性がある。

■この『週刊現代』の記事には、九州の地銀について特に危険を強調しているのですが、姉歯物件に関わった木村建設も九州熊本の業者でしたなあ。以下は九州のある地銀の支店長の言葉です。


豊和の融資先は、不動産、建設、流通が多い。これは他の地銀も同じです。しかし建設、不動産は公共事業の減少や公取委の談合摘発強化、下げ止まらない地価の三重苦に苦しんでいる。流通もIT革命で合理化を迫られる構造不況業種になっている。そこへきて、不良債権処理を終えたメガバンクが、安い金利を武器に、優良融資先を奪う例も出てきている。……

地方の「シャター商店街」は有名ですが、それは地方経済の「皮膚」みたになもので、経済の動脈である「金融」がずたずたになったら命は絶たれるでしょう。税金で息を吹き返した大手銀行だけが不良債権処理を済ましたからと言って、日本経済は大丈夫だ!などと能天気なことは言えないようですなあ。


1998年以降、金融機関経営の早期安定化や金融機能の安定化の名目で約12兆4000億円の公的資金を投入したが、これまでに回収できたのは、6兆4000億円弱に過ぎない。しかも、返済したのは三菱UFJ(1兆円)、みずほ(9600億円)などメガバンクに偏っている。多くの地域金融機関は返済のメドがたたないのが実情だ。

■美味しい融資先が少ない地方の金融機関は、せっせと国債を買い集めてしまったので、金利が上がったら含み益資産が激減するのは目に見えているとも言います。全国ニュースとして流される経済動向には、このように地方と都会とではまったく逆の意味が有るというわけです。大分県の経済人の証言も恐ろしいものです。


内閣府が3月に発表した大分の実質経済成長率は5.1%と都道府県別では全国1位でした。でもそんな指標は見せかけですよ。大分市にあるキャノンの工場などは好調ですが、大企業は正社員の採用が少なく、大半は派遣や契約社員です。派遣をのぞくと有効求人倍率は0.6倍くらいというのが実感ですよ。

■昨年の4月に、既にペイオフが解禁されているのですから、何処かで本当に取り付け騒ぎが起こったらエライことになりそうです。それこそ大規模な将棋倒しが起こって地域経済が壊滅する危険が有るようです。賢くてエライ人達はコネとインサイダー情報を駆使した「金融技術」で売り抜けたり、安く買い叩いて転売したりしてどちらに転んでも大儲けするのでしょうなあ。


メガバンクも安泰ではありません。りそな銀行のように2兆9000億円の公的資金のうち、2500億円あまりしか返済できていないところだってあるんです。

これも米国系投資銀行幹部の発言だそうです。気楽にバブル時代の風俗を懐かしんでるような人も居るようですが、あの狂気の時代に開いた大穴は、そう簡単に埋められるような代物ではりませんぞ!まだまだ歴史にも思い出にもなっていません。本来なら堅気の人に渡すべき利息分を経済ヤクザさん達が開けた穴埋めに回して生き長らえた大手銀行は、恥も外聞も無く本格的にサラ金商売を始めて笑いが止まらないほど儲かっているようです。庶民の知らない経済の裏側では、ドシロウトでも1500万円ぐらいの利益は簡単に上がって、その世界ではこれくらいのものを「ハシタ金」と呼ぶのだそうですなあ。

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小泉劇場の幕の裏地 其の弐

2006-06-28 10:19:25 | 政治
■竹中さんの(小泉首相直伝の?)自画自賛が朝日新聞に掲載された2日後の記事です。

……(東京タワーを経営する)日本電波塔の3代目社長だった前田福三郎(64)らは88年、千葉県君津市にゴルフ場を建設するために「東京タワーディベロップメント」を設立。91年以降は、日本電波塔の債務保証で借金を重ね、95年にゴルフ場をオープンさせた。しかし、思うように会員権が売れず、営業赤字も続いて借金を返せなくなった。銀行団は99年、日本電波塔に債務保証の履行を求めた。残った債務は123億円。日本電波塔は99年12月に福三郎氏を社長から解任。00年、東京タワーの敷地と建物を担保に銀行から100億円を借り入れ、自己資金の23億円を加えて全額肩代わりした。……ゴルフ場会社は昨年9月、会社更生法の適用を申し立てられて倒産。……123億円の大部分は回収不能となる見通しだ。……

■絵に描いたような「三代目」ですなあ。新聞では書けないのでしょうが、これは銀行の餌食にされた謀略話みたいなものでしょう。まだ詳細が明らかにはなっていませんが、東京中に大きな桃のマークを付けたビルを並べていた桃源社という不動産会社が有りました。そこの経営者だった佐佐木吉之助という人が『蒲田戦記』(文春文庫)という体験記を書いています。中曽根政権時代に断行された国鉄民営化の中、1987年に旧国鉄蒲田駅跡地を657億円で落札してから飛ぶ鳥落とす勢いだったビル経営が傾き破綻に追い込まれた内幕を暴露しています。政治家・銀行・ゼネコンが結託して佐佐木さんを追い込んで行く恐ろしい話ですが、東京タワーを抵当にゴルフ場経営に乗り出そうなどと、本当に三代目の前田福三郎さん1人が考えたのでしょうか?『民暴の帝王』だの『首領になった男』だの、バブル時代の狂態を描いた映画も有りますが、銀行は高金利政策と円高の中でムチャな融資を続けていた事が良く分かります。

■桃源社の佐佐木社長を追い込んだ連中は桃源社が所有していたビルや土地を差し押さえて転売したり再開発したりして大儲けしたのでしょうが、煮ても焼いても食えない東京タワーを担保にしたのは失敗だったのではないでしょうか?間も無く東京墨田区に610メートルの新・東京タワーの建設も始まる事が決定した直後に、こんな巨大な不良債権が表沙汰になるというのも、何かの裏事情を予想させます。バブル崩壊後、日本中に造成されたゴルフ場が巨大な不良債権となるぞ!と大騒ぎが起きましたが、紙屑になった会員権を掴まされて泣き寝入りした人、安値で買い叩いて再建した後に転売して大儲けした外資のハゲタカ・ファンド、と負け組み・勝ち組が生まれたはずですが、元々、ゴルフ会員権は贅沢品か投機商品と思われているので、大損した人には同情する声も上がりませんなあ。


「東京タワーディベロップメント」という会社が開発したゴルフ場の会員31人が、東京タワーを経営する日本電波塔を相手に約3億円の預託金返還を求める訴訟を起していることが分かった。原告らは「ゴルフ場会社と日本電波塔は一体だった」と主張している。これに対し、日本電波塔は「ゴルフ場会社は別個独立の法人だ」と争う姿勢だ。……預託金として1000万円か300万円を払い込んでおり、その返還を求めている。……ゴルフ場会社は赤字続きで昨秋、会社更生法の適用を受けて倒産。営業は続けており。管財人が10月までに更生計画案を示す予定だ。不動産投資ファンド会社「パシフィックマネジメント」の子会社が買収に名乗りを上げている。日本電波塔は、このゴルフ場開発の資金繰りの連帯保証をしていたため、銀行団から債務の肩代わりを迫られ、東京タワーを担保に100億円を借り入れるなどして120億円を超える損失を被っている。
朝日新聞6月19日

■その前の朝日には大阪の「飛鳥会」事件で旧三和銀行が100億円の焦げ付きを抱え込んでいると報じています。


財団法人「飛鳥会」をめぐる業務上横領事件で、逮捕、起訴さらた財団理事長の小西邦彦容疑者(72)側に旧三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)や同行が出資したノンバンクが行なった融資のうち、約100億円が回収不能に陥っていることが関係者の話でわかった。大半は小西容疑者を通じて指定暴力団山口組周辺へ流れた融資で、旧三和側は未回収のままにしてきた。……「三和ビジネスファイナンス」と「京セラファイナンス」が88~90年、山口組系坊両断の組長(96年に撃たれて死亡)が事実上経営していた不動産会社所有の大阪市中央区の土地に、それぞれ30億円の抵当権や23億円の融資枠を設定し、融資していたことがすでに明らかになっている。……残りの50億円は、旧三和から小西容疑者個人への融資40億円と同容疑者が理事長を務める「ともしび福祉会」など関連法人への融資10億円で、事実上焦げ付いている。……地上げ資金のほか、バブル崩壊で計画が中止された私鉄の延伸予定地の買収資金などにあてられたという。融資の多くは、小西容疑者個人や関連法人が名義を貸すだけの転貸融資だった。……朝日新聞2006年6月18日

小泉劇場の幕の裏地 其の壱

2006-06-27 13:52:41 | 政治
■目出度く小泉総理大臣は任期中にイラクに派遣した自衛隊を撤収させる命令を出せました。何故かそれと同時に米国参牛肉の輸入が解禁される事がほとんど決ってしまったのも小泉さんらしい幕引き最後っ屁でしょうな。あとは大好きなプレスリーのお墓参りをしてホワイトハウスの偉い人達とイラクを見捨てる「あとは野となれ山となれ」晩餐会を開くだけです。是非とも晩餐会のメイン・ディッシュには米国産のぶ厚いステーキをぱくぱく食べて見せて欲しいものです。それまでに撤収作戦中の自衛隊が爆弾テロの犠牲にならなかったら小泉さんは本当に強運だったと言えるでしょう。

■6月16日の朝日新聞に最近めっきりマスコミ露出が減ってしまった竹中平蔵さんのインタヴュー記事が掲載されました。親方の小泉さん自身が嬉しそうにポスト小泉競争を高みの見物しているのですから、実質的に竹中先生の仕事は疾(と)う昔に終っています。ですからインタヴュー記事の題名が「小泉改革の5年とは」になっていても全く違和感が有りません。記事の前半は「官僚問題」で埋め尽くされているのですが、新聞の通常の記事ではほとんど書かれない政治の裏側が体験談として語られています。素人目には自民党の派閥政治と官僚主導政治の両方を撃破しているように見えたのは政権の前半だけで、道路公団民営化にしても郵政民営化にしても官僚の天下り利権が消滅したとはとても思えません。郵政民営化については首相直轄の「5~10人の、いわばゲリラ部隊」が断行したんだ、と竹中さんは言っています。

■妥協の産物としか思えない「改革」ですが、現場の官僚達からは意外なほど怨まれている様子が分かる話が出て来ます。


星……最近の竹中さんへの国会質問を聞いていると、与野党の一部の質問は役人が作っている感じがします。

竹中 確かに、与野党広く、役人の力が行き渡っているという印象を受けます。行政・政策は高度な知的集約産業ですから、官僚の知識集約力を借りないと活動できないというのは事実です。官僚のもくろみを見破り、彼らに匹敵する知恵を出せる人材はごく限られているから、それに対抗して改革を立案・実行するのはたいへんなことなんです。

質問者は時々テレビ朝日に顔を出す編集委員の星浩さんです。竹中さんの答えに出て来る「知的集約産業」の産業はテープ起しの時に「作業」と聞き間違ったのでしょうなあ。何だか新聞記事までテレビと同じような「入力ミス」や「変換ミス」が増えているような気がします。そんな体質を放置して、日本語問題などを語っては行けませんぞ!

■官僚は個人ではなく組織体として生きているものですから、その「目論みを見破る」人材を集めて官僚に「対抗して立案・実行」するのは不可能なのではないでしょうか?竹中さんご自身は成功した!と言いたいのでしょうが……。


やりたかった事は今のところ、できているんです。一番やりたかった不良債権処理、そして郵政民営化。……不良債権を処理せずに放っておいたら、いま200数十万人の失業者が、たぶん400万~500万人になっていた。所得ゼロの人がそれだけいたら、格差はもっと拡大していたでしょう。

後半部分は「格差社会」の問題に関する発言ですが、竹中さんは不良債権処理が上手く行ったと言い続けています。この成功話には2つの意味が有って、1つは銀行の貸し剥がしによる企業の倒産が最小限に防げたこと、2つ目は赤字国債などの財政出動をまったくせずに「景気回復」に成功したという意味です。この2つが合わさって大量失業の発生を防いだという話になるのですが、どうもこの説明には裏が有るようなのですなあ。



日本飢餓列島 其の参

2006-06-26 11:31:12 | 健康
■動機がさっぱり分からない変な凶悪事件が連続する世の中の裏側に、食事の問題が隠れているのかも知れませんなあ。これからは事件が起こったら「何を食っていたんだ?」と調べる必要が有るでしょう。人間の心を失う前に、人間の食事を奪われているとしたら、何とも救いの無い話になってしまうのですが……

病態栄養学に詳しく『その食事ではキレる子になる』(河出書房新社)などの著書もある、福山平成大学客員教授・鈴木雅子氏は……「栄養失調という言葉は、ほとんど死語になっていると思われているかもしれませんが、じつは子供たちの間に『現代型栄養失調』が増えているのです。栄養失調といっても、終戦直後のようなカロリー不足からくるものではなく、ビタミンやミネラル、食物繊維などが不足し、その結果、脳の発達が妨げられている状態のことです。バランスの取れた食事をしていないと、ビタミン、ミネラル、食物繊維はすぐに不足してしまいます。……日常的に体のだるさを訴え、ボーッとしてやる気がない反面、イライラして落ち着きがなくなります」

■この後には岡山県三咲町の例を引いて朝の給食サービスの話になっています。米国のメリーランド州では1998年から無料朝食を提供し始めて生徒の成績と行動が改善されたのだそうですが、何でも他人任せにしてしまう親の問題の方が重大でしょうなあ。ペットか玩具のように子供を育てる親は人間を育てることに失敗します。しかし、「親の因果が子に報い」るのですから、「バカ親」と罵(ののし)る前に、親の親はどんな子育てをしたのか、これも検証しなければ悪しき循環は断ち切れないでしょう。こうした記事で扱っている母親の多くが30代とすると、1970年代生まれで成人する前後がバブルの真っ最中に当たりますなあ。外食だの「ファミレス」だのが大流行してすっかり日本に定着している訳ですが、あの時代の前と後には大きな文化的精神的な断絶が有ることを再確認した方が良いでしょう。


「温かい味噌汁さえありゃ充分よ。あとはお新香、海苔、たらこ一腹。ね、辛子のきいた納豆、これにはね、生葱細かく刻んでたっぷりいれてくれよ。あとは塩昆布に生卵でも添えてくれりゃ、もうおばちゃん何もいらねえな、うん」

■これは『サライ』2006年13号の「寅さん特集」に再録された『男はつらいよ 望郷篇』で車寅次郎さんが言う台詞です。最後の「何もいらねえな」を横で聞いていたオイチャンがお約束の激怒!という脚本です。「葛飾柴又寅さん記念館」には、この通りの品揃えでサンプル品が再現されているのだそうですが、車寅次郎さんの大好物は「里芋の煮っ転がし」なんだそうです。室町時代から江戸時代に掛けて朝食と昼食の「定番」が決ったという話を聞いたことも有ります。東西の味覚の差は有っても、日本全国の宿泊施設で出す朝食と街道筋の飯屋で出す定食の基本形が定まったのだそうです。それが音を立てて崩れ去ったのがあのバブル時代だったとしたら、それを跨いだ親子関係は歴史的な断絶の谷を渡らねばならないことになりそうです。「外食」「コンビニ弁当」だけでなく、「孤食」「テレビ食」などの問題も有ります。

■海面が真っ黒になるほど日本近海に群れていたマグロにしても、今では空を飛んで来る時代です。そう言えば、江戸時代には赤身しか食べなかったそうで、獣臭いトロの部分は廃棄されていたという話も有りますから、どんどん日本人の食事は獣臭くなっているのかも知れません。明治時代に列強に負けないように動物性蛋白質を大量に摂取して強い兵士を養成しようとした日本ですが、もう戦争をやらないと決めたそうなので、あっさりした食事で充分でしょう。その明治時代にドイツの医学博士が日本人の食生活が「貧弱だ」と思って実験をしたという話も有りましたなあ。沢庵と小魚をおかずにして丼飯を掻き込んでいる車屋さんを2人雇って、1人はいつも通りの食事を摂ってもう1人には牛乳や肉料理を食べさせてスタミナを付けたそうです。その2人が江戸から日光まで客を乗せた車を引いて疾走した結果はどうだったか?と言いますと、高蛋白のスタミナ食を摂った車屋さんが途中でリタイア!沢庵ぽりぽりの車屋さんは楽々と完走したのだそうです。

■明治から敗戦までの間、日本の兵は体が小さいとは言われたものの、決して体力的に劣っているとは言われなかったというのも事実でした。グルメと称して遠い異国の食い物を珍重するのも結構でしょうが、肉体の基礎を作る食事を勝手気ままに変更すると、その後に起こる心身の変化にも責任を負わねばならなくなるのでしょうなあ。「空腹感は最良の調味料」と言います。ガキンチョは何を食っても旨い旨いとがつがつ食べる生き物なのです。それなのに、飢餓線上に追い詰められた子供と、空腹を感じる暇も無くもぐもぐしゃりしゃり口を動かしている肥満児とに二極分化してしまったら、30年後の医療費は天文学的な額に達するでしょうなあ。子供と大人は、心も体も違う存在なのだと、義務教育でも教えないまま核家族時代が長く続いた後のバブル時代、その変化の荒波の後に起こっているのが今の飢餓児童ならば心配なことです。


その食事ではキレる子になる―心と脳はこんなに食べ物に影響される

河出書房新社

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男はつらいよ 望郷篇〈第5作〉(1970年公開)

松竹

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日本飢餓列島 其の弐

2006-06-26 11:30:57 | 健康
■哺乳類の赤ん坊は本能的に母親にしがみついて生き延びようとするものだそうですが、死亡した彩香ちゃんの9年間の人生は、しがみ付いては行けない母を持ってしまった事で大変な苦労の連続だったでしょうが、その中心に有るのが飢餓だったでしょう。人間らしい食事は学校給食のみ!という食生活に日本中の親が衝撃を受けたと報道されたのも当然です。しかし、携帯電話に収入の大半を費やして家事を放棄して遊び歩いているバカ親がそれほど珍しい事ではないらしい、という恐ろしい話も出て来ているようですぞ。『週刊文春』6月22日号に「子供の食卓を放棄するバカ親たち」という刺激的な題名の記事が掲載されました。新聞各紙にも畠山彩香ちゃんの予備軍となる栄養失調児童の問題が取り上げられています。

日本は飽食の時代と言われて久しいが、一部の子供の食生活は寒々しいものだ。鈴香容疑者のようにまともに食事を作らないという母親は確実に増えている。京都市内の中学校に勤めている事務員A氏は毎日のように、こうした家庭の実情に直面している。「家事を一切しない、子供の食事もつくらないという母親など珍しくもありません。弁当持参の日にコンビニの弁当を持って来る生徒や、親に菓子パンを持たされる生徒が3割もいます。……普段の食事すら作ってくれないと答える子が多いのです」

■ただの家事の手抜きではなく、食事も食事代も与えられないガキンチョが図書室や書店で「狩り」をして古本屋に売って食費を稼ぐ事件も頻発しているとか……。アホな社保庁や反省しないNHKに抗議する目的で年金保険料や受信料の支払いを拒否するのとは別に、自分が遊ぶ金欲しさに「給食費」を支払わないバカ親が急増しているというニュースも有りましたなあ。


「生活保護を受けている母子家庭の子供で、母親は大のパチンコ好き、食費もつぎ込んで毎日パチンコ三昧。負けたときは子供に食事を与えないのに、パチンコに勝ったときだけ、焼肉を食べに連れ居ていっていたようです」

隣国の将軍様が聞いたら涙を流して喜んでくれそうな話?かも知れませんなあ。疲れやすくて辛抱できない、頭を使うのが嫌いで凶暴な行動が多いのは、食生活が原因である場合が多い事は分かっています。


文部科学省の2002年の調査では、毎朝必ず食べるという子供は、小学生で85%、中学生で80%しかいない。2004年に行なった北海道PTA連合会の調査でも、小中学生の4人に1人、つまり2割以上の子供たちが朝ごはんをちゃんと食べていないのだ。東京都墨田区の小学校の教師Bさんが受け持つクラスでも、3割の生徒が朝食を摂らないという。……もともと食べる習慣がない、母親が起きてこないから食べられない……親の影響で子供も夜更かしをしています。そして親と一緒に夜食を摂ってしまい、朝、食欲がわかないという子供が増えています。

■更にJA全中とJA全農、そして農水省の2005年の共同調査というのも出ていますが、朝食を摂る子供の5人に1人は自炊!しているのだそうです。大したものだなあ、と思ったら、「朝飯」の内容はクッキーだのアイスクリームだのが並んでいるのだそうです。学校給食が「最後の砦」と言う声も有りますが、これも怪しいようです。


「『給食が唯一のごちそう』とばかりに、がつがつと食べる子供と、逆に、好き嫌いが激しくて何も食べられなくなる子供がいます。自宅で出来合いのものばかり食べて偏食になると、嫌いなものが増えて給食も食べられなくなるのです」……母親自身がダイエットを行なっている場合、子供にもカロリーの少ない食事を食べさせていることも多いという。そのため、不健康に痩せている子供が近年増えているというのだ。

子供を何だと思っているのか分からなくなる話ですが、人間にとって食事は文化ですから、単なる肉体の健康だけが問題なのではないようです。


「子供にとって、親の手作り料理ほど、愛情を実感できるものはないのです。親に食事を作ってもらったという経験や喜びが人とのコミュニケーションや、愛情を育むことにつながっていくのです」

日本飢餓列島 其の壱

2006-06-26 11:30:38 | 健康
■テレビCMも新聞広告も雑誌広告も、痩せ薬やら痩せマシーンが満載で、メタボリック症候群などという新語も登場しております。要するに日本中に喰い過ぎの人が沢山いらっしゃるという事で、世界中の海産物を買い集めて食い尽くしてしまいそうな勢いですし、またぞろ米国産の安い牛肉をたらふく食べられそうな雲行きですなあ。それに引き換え隣の「地上の楽園」を筆頭にアホな独裁者が愚かな政治をしている国や死の商人の上客になって内戦ばかりやっているような地域には、餓死の死線を行ったり来たりしている子供たちが沢山います。黒柳徹子さんが現地に出かけて行って悲惨な実情をテレビ映像にして寄付を呼びかけたりしていますなあ。

■飢餓が渦巻く世界の中に飽食国家の日本がぷかぷかと浮かんでいるのかと思ったら、新しいタイプの栄養失調児童が出現しているのだそうです。子どもは仏教用語の「餓鬼」と呼ばれるように、お母さんのオッパイに始まって思春期のスナックまで、のべつ幕無しに腹を減らしているものです。空腹をかかえて切なそうな顔をしている子供を見ると居ても立ってもいられなくのが親心というもので、ついつい食べさせ過ぎてしまう親バカになってしまうものです。しかし、既に米国で顕著になった高カロリーなのに貧弱な栄養価しかないジャンク・フードばかり食べている貧困層の問題が深刻です。金持ちはヘルシーな食事を摂ってほっそりした体形を保ち、貧乏人は脂肪ばかり貯め込んでしまう恐ろしい社会問題が起こっています。

■秋田県で9年の短い生涯を閉じてしまった畠山彩香という少女は、調理器具が一切無い家で育てられ、最期の食事がカップ焼きそばだったそうです。日夜カップ麺の開発に情熱を傾けている人達も暗澹たる気持ちになったことでしょうなあ。いくら世界一美味しいカップ麺でも「主食」にしようと思って開発販売している企業は無いのではないでしょうか?あれこれと新製品を工夫している人達も、一仕事終ってカップ麺で夕食を済ますわけではないでしょう。彩香ちゃんはお湯を入れて3分間のそのお湯も手に入らず、公園でカップの麺をばりばりと食べていたなどという目撃談も飛び出しているようですなあ。

■超能力が大好きなテレビ朝日の『テレビのチカラ』とか言う番組が畠山鈴香容疑者の殺意を膨らませたんじゃないか?などとも言われ始めているそうですが、もともと、人気が高かった『アフタヌーン・ショー』というワイド・ショーをヤラセ事件で潰した会社ですから、仕事が無い時代劇役者や売れなくなったタレントを並べて人の不幸を食い物にするくらい、何でもないでしょうから、犯人のホラ話に乗せられても不思議ではありません。この秋田の連続?児童殺害事件が長期間に亘って加熱報道が続いた原因は、「わが子を失った悲劇の母親」というステレオ・タイプをテレビや週刊誌が誤用した事にあります。生物学的には母子でしょうが、人間の母子だったかどうかは怪しいものです。哺乳類としての母子としても相当に怪しいですなあ。皮肉なもので、立派な親に大切に育てられた無神経で幼稚なガキンチョよりも、周囲に気を配る良い子になって生き延びようとした子は良く気が付く将来有望な娘になっていたらしいですなあ。

煙幕の陰で 其の参

2006-06-26 09:37:04 | 社会問題・事件
■NHKと同じように、世間の目が秋田県やドイツに向いている事を喜んでいるのが文化庁のようです。日銀総裁が村上ファンドに1000万円拠出して大儲けしていた実態が連日、国会の財政金融委員会で吊るし上げられている間に、第9回目の「委員会」が開かれたのだそうです。高松塚古墳がカビだらけになった経緯を調査する馬鹿馬鹿しい委員会なのですが、今更どんな手を打ったところで、失われた古代の彩色は回復などしません。骨董屋さんにでも「鑑定」してもらって被害総額を出して貰えば、国民の耳目を集めて大騒ぎになるのでしょうが、ろくな歴史教育も受けていない国民には、「昔の墓」が腐ろうと潰れようと、大した問題ではないのかも知れませんなあ。

高松塚古墳を管理する文化庁の担当部署は2課ある。古墳(特別史跡)は記念物課、壁画(国宝)は美術学芸課。……カビ大発生の一因となったと言われる、取り合い部(墳丘内にある石室前の開放空間)の崩落止め工事(01年2月)……10日間の工事では、業者が防護服を着ないで作業したことなどが問題となったがヒヤリングの結果、工事を発注・担当した記念物課の調査官は期間中、現場に一度も行っていないことが明らかに。代りに石室へ通じる施設の鍵を管理する美術学芸課の調査官が立ち会ったが、記念物課から「仕様書などの工事に関するデータが一切渡されなかった」ため、工事の進行のチェックもできなかったといわれる。…当時の担当官が「自分は鍵を開けに行っただけ」と言い切る……

■文化庁の仕事は「文化」とは何の関係も無いという単純な事実が明らかになっております。この「鍵を開けに行っただけ」の美術学芸課主任文化財調査官の誰かさんが、壁画の傷に「土を水で溶いて塗る補彩」を勝手に決定してぺたぺたとあちこちを「補修」して下さったのだそうです。


この調査官は、上司に具体的な報告をしないまま、絵の色が消えていたり、防カビ剤で白くなったりした部分に、同じように着色していた。しかし、この補彩については文化庁に詳しい記録が残されていなかった。どの場所かさえ分からず、職員が壁画の写真を見比べたり、調査官が私有パソコンに保存していた写真を調べて特定した。……文化財保護法では、国宝を修理する場合、着手30日前までに文化庁長官に届けるよう定めている。だが当の文化庁の調査官は補彩を「日常の管理業務」と言い、「修理」とは考えていなかったようだ。……

この役人言葉の蟻地獄に落ち込んでしまったら、有識者が呼び集められた委員会など何の役にも立ちません。委員長を押し付けられた上智大学学長の石澤良昭先生も、ため息しか出ないのだそうです。誠に御苦労様なことであります。

■秋田県で犠牲になった子ども達も掛け替えの無い存在ですが、別の意味で貴重な歴史的文化財も掛け替えのない物です。しかし、文化庁の職員にとっては、もっと大切なものが有るのですなあ。日銀の総裁が自分の老後の財産を増やす事に熱心なように……。嗚呼

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煙幕の陰で 其の弐

2006-06-26 09:36:47 | 社会問題・事件
■社保庁の記事も本来ならば1面にでかでかと出るはずだったのですが、6月14日の紙面は不祥事のオン・パレードになってしまったので、他にも本来なら1面だなあ、という記事が有りました。

KDDI(小野寺正社長兼会長)から流出した、同社運営のインターネット接続サービス「DION」の顧客情報約400万人分を入手し、現金を脅し取ろうとしたとして、警視庁は13日、いずれも職業不詳の箕村明夫(57)、鳥居朗彦(47)の両容疑者を恐喝未遂の疑いで逮捕した。KDDIも情報の流出を認め、「社内関係者が持ち出した」とみている。……両容疑者はDION加入者の情報約450万件を持っていた。KDDIで内容を確認し重複分を除いたところ、03年12月18日までにDIONに加盟した人の氏名、住所、電話番号や生年月日、メールアドレスなどの個人情報399万6789人分と判明……情報が不正に持ち出されたとみられる03年12月当時、顧客情報は同社の「テクニカルセンター」内にある「作業ルーム」に置かれた保守用コンピュータでしか操作できず、入室できるのは同社社員48人とシステム開発を担当した委託会社の177人に限られていたという。……

■情報が盗まれた日時はまだ分からないようですが、今月中に3回も犯人は会社に押しかけて来て、10回以上も電話していたそうで、5月30日の強迫電話で踏ん切りが付いたのか、翌31日には警視庁に被害届けを出したのだそうです。そして逮捕したのが13日と言う事は2週間も内偵捜査をしていたのでしょうか?飛んで火に入る夏の虫のようなドジな強迫事件なのに……。KDDIの方から表沙汰になるタイミングを見定める依頼が有ったような印象が強いですなあ。


顧客情報の大量流出事件では、04年1月、インターネット接続サービス「ヤフーBB」の契約者情報約660万件が流出し、そのうちの一部がサービスの運営会社に対する恐喝未遂に利用された例がある。

記録装置が長足の進歩を遂げているので、あっと言う間に100万件単位で情報が盗まれますなあ。ヤフーで懲りてDIONに鞍替えした人も多かったでしょうに!テレビの報道番組は秋田の畠山容疑者が連日吐き出すホラ話を大々的に取り上げていて、この大事件をほとんど報道しませんでしたなあ。

■次に目に留まったのが、既に不祥事続きで週刊誌も書き飽きたNHKの事件です。


NHK職員のカラ出張問題で、NHKは13日、大下哲史・元チーフップロデューサー(44)=4月11日付で懲戒免職=を詐欺と詐欺未遂の疑いで警視庁に告訴した。……東京のスポーツ報道センターに勤務していた01年1月からの約5年間に、242件、約1700万円分のカラ出張をしていた。……

暴露された時には少しばかり大きく扱われたNHKの不祥事でしたが、
選りに選って、この日に告訴するのには訳が有りそうです。このベタ記事の直ぐ上には、こんな記事が並んでいるのです。


NHKは13日、子会社21社、関連会社4社を含めた05年度の連結決算を発表した。経常事業収入(売上高)は7471億円で前年度に比べて146億円の減で前年度の増収から減収に転じた。当期事業収支差金(純利益)は70億円で、同76億円の減となり、2年連続の減益だった。減収の要因は、受信料の約96億円の減や、韓国ドラマ関連商品の売り上げの約55億円の減など。経常事業収支差金(営業利益)は165億円の減で、4億円の赤字になった。……

■韓国ドラマの関連商品というのは何を指しているのか判然としませんが、「ヨン様ブーム」が去ったということなのでしょうなあ。連結決算の発表日に、「ツカミ金」同然のカラ出張を告訴して体質改善を世間にアッピールしようというのでしょうが、どんぶり勘定で「山分け」されて浪費される「皆様からの受信料」がどれほどになるのか、誰にも分からないのですから、ザルに目張りしているようなものでしょうなあ。

煙幕の陰で 其の壱

2006-06-25 19:41:08 | 社会問題・事件
■世はワールド・カップの空騒ぎも息切れで、次の話題に事欠くかと思いきや、秋田県の子殺し事件に関連する「どうでも良い事」をあれこれとほじくり出して方向違いの悪趣味報道に入り込んでしまっています。そこにシンドラー社の殺人エレベーター騒ぎも加わってしまいましたなあ。これでは、平屋の集合住宅に住んでいても高層住宅に住んでいようと、まったく安心して暮らせません。秋田の事件は「町おこし」政策の陰の部分から発生していますし、シンドラー騒動は公共事業の経費削減政策から出て来た事件です。どちらも根本的な問題を解明しないまま、予算をいじくってお茶を濁すお役所の悪い癖が主要な原因と言えましょうなあ。

■そんな八方塞りの重苦しい空気が澱んでいる中で、矢継ぎ早に更なる大問題の「逃げ切り」が密かに進んでいるのは感心しませんなあ。6月14日の新聞紙面は日銀総裁の恥知らずな「濡れ手に粟」事件に大きくスペースを割きましたから、これも煙幕に利用されたようなものですぞ。


社会保険庁は13日、国民年金保険料の不正免除・猶予問題の新たな調査結果を発表した。本人の意思確認がないまま手続きをした違法な事例が新たに10道県で見つかり、前回調査まで10都府県約8万2千人分だった違法事例は、計20都道府県で延べ16万2159人と2倍近く膨らんだ。……新たに違法事例が見つかったのは、北海道、青森、宮城、千葉、新潟、兵庫、島根、愛媛、鹿児島、沖縄。

■北海道、宮城、島根の前回調査では「不適切な事例」は無い!と大見得を切っていたのに沖縄では9000件以上、愛媛では5000件弱、青森では3400件余が新たに発見されました。お役所の命である書類をぱらぱらと捲れば済むだけの話なのに、たった半月でゼロからこんなに増えるというのは、どんな仕事をしているのでしょう?


……同庁は05年度に申請があった免除・猶予の申請書類約274万人分をすべて点検し直す作業に着手しており、9日から全国の47事務局に実地調査に入った。今回の結果は、これに先立って全国の社会保険事務局長、事務所長に再度の確認書を提出させる中で判明した。さらに同庁は、再発防止策として職員による不正事業の告発を受け付ける「法令違反通報窓口」を14日に設けると発表。……朝日新聞

■始めから「告発制度」を作っておけば、274万人分の書類をひっくり返す必要など無かったでしょうなあ。「お役所の掟」に従って、切り捨てられるトカゲの尻尾当番を決めて、その人に全責任を押し付けてさっさと偽造書類の束を提出して責任者がハゲ頭を並べて、「誠に申し訳ありませんでした」セレモニーをやる陰で、トカゲの尻尾さんにはちょっとした天下り先を世話して黙らせれば、内輪の調整に時間が掛かっても3日も有れば処理できたでしょうなあ。最初に8万件などというトンデモない数値を出しておいて、その後に同じ8万件を積みましてもアホな国民は腹を立てないだろうなあ、と誰かさんが計算していますぞ!

■その後も、事務所に保管しているハンコをぺたぺた捺していただの、ハガキ1枚出して返事が来ない人は「行方不明者」扱いにするという書類上の「殺人事件」まで起しているのが判明しました。もともと、取りっぱぐれの無い厚生年金制度という巨大なドル箱を確保しているお役所は、最初から国民年金制度が破綻するのは時間の問題だと知っていたとも言われています。制度を作ってからも周知徹底に努力した形跡も無いし、発足後20年くらい経過した80年代には受給者が増え始めたためか、新規の加入者を増やさないように画策した事も有りましたなあ。盗人に追い銭と言われても仕方が無い盲腸のような旨みの少ない国民年金が予想以上に巨大化したのは、社保庁にとってはお気の毒様でしたなあ。

■ポスト小泉を狙う人達の中からも年金制度を完全に修理出きる妙案を持っている候補者は出て来ていませんし、社保庁自体が「大き過ぎて潰せない」組織になっているのですから、野党の民主党だってうっかりした事は言えないようですなあ。また「公的資金」で救済するしかないかも知れません。でも、営利事業をしていない社保庁に公的資金を注入しても、自力で「返済」など出来ませんし、無駄遣いしてしまった積立金の返還も無理です。税金の「裏金」になっている特別会計の伏魔殿を開ける勇気と実力の有る政治家が出て来ない限り、増税して穴埋めするか制度自体を消滅させるしか方法は無いのではないでしょうか?

不毛な喧嘩 其の参

2006-06-24 10:19:57 | マスメディア
■この4月24日に、広域暴力団の元最高幹部という人物に何かの取材で溝口さんは直接会って話を聞いたそうです。その別れ際に細木センセイの管理売春疑惑が渦巻く渋谷時代を知っている関係者を紹介して欲しいと頼んで別れたのだそうです。その後、溝口さんに電話が掛かって来て、その元大幹部は細木センセイに直接電話して事情を説明したところ、いろいろ頼まれて、連載中止か細木センセイ擁護の内容で書いてくれないか?とややこしい事を逆に頼まれてしまったそうです。更に別の広域暴力団の現役の最高幹部からも電話が来て至急会いたいと言うので会って見ると、ここでも連載中止を求められたというのですなあ。

……最高幹部は近くの喫茶店に私を誘い出し、その席で言い出した。「細木の記事をやめられないか。あんたがやめたといえば、それで終わりだろう」私は半ば彼の出方を予想していた。「いや、編集部の企画ですから、私がやめれば、編集部が別のライターを立てるまでです。やめるわけにはいきません」「そうか、やめることはできないか」と、最高幹部はしばし考えていた。そのとき背後に控えている若い人が「細木さんから電話です」と最高幹部に彼の携帯電話を差し出した。「ええ、やめられないみたいですよ。ええ、ええ」と、最高幹部は数分ほど細木とおぼしき人間と受け答えしていた。おそらく細木は最高幹部に連載の中止工作を依頼し、首尾がどうなったか気になって、直接電話してきたのだろう。……私がうなずいて立ち上がろうとしたとき、最高幹部はしっかり糊付けした封筒を無言で私の背広のポケットに押し込もうとした。かねて用意したものだろう。私は拒み……

■何だか出来の悪いお手軽サスペンス・ドラマに出て来そうな、都合の良い偶然が重なる出来すぎた筋立てみたいですが、連載開始直前に細木センセイが大いに慌てて手を打ったとすれば、こんな偶然が重なることも有るのでしょうなあ。


筆者は当方の立場を理解した上、「賄賂」を断念した彼に感謝し、敵意や害意はいっさい持っていないと明言する。だからこそ団体名も実名もここでは伏せたのだが、広域暴力団の現、元幹部に連載のストップを依頼した細木に対しては別の感想を持つ。仮にも電波メディアで発言する者が自分に不利益と勝手に予想する記事を暴力団に依頼して打ち止めにしようとしいうのだ。私は取材を通して、多少は暴力団の世界に通じている。彼らとの面談や電話に怯えたとは言わないが、彼らの名を聞いただけで恐れる者もいるのだ。筆者はこうした直接の体験から、細木数子の暴力団ルートがハンパなものでないことを痛感した。……細木数子にはメディアに登場する資格も、メディアを表現の手段とする資格もない。彼女の言説を検証なしに垂れ流すメディアも同罪といっておく。彼女は表現や言論の暴力的な圧殺者であり、メディアに抱き合い心中を迫る者である。……

■溝口さんは本気で怒ってしまったようですぞ!先の新聞記事によると、今年の1月に御長男が刺されているのですから、それから3ヵ月後に細木センセイが暴力団を動かして脅しを掛けて来たのを敢然と受けて立った溝口さんは大したものだと思いますなあ。勿論、溝口さん本人や御家族に刃(やいば)を向けたのは細木さんからの依頼とはまったく関係は無いのでしょうが、時期が悪かったですなあ。広域暴力団と仲良しだと分かってしまうと、テレビ商売がやり難くなるでしょうし、もしも襲撃事件と同じ根から連載中止の圧力が出ていたりしたら、細木先生は共犯になってしまうかも知れません。

■ゲイノー人やら時代遅れのアナウンサーなどが、「センセイ、センセイ」と細木数子さんの腰ぎんちゃくになってはしゃいでいるようですが、今の内に、どんな人がどんなテレビに出てはしゃいでいるのか、メモでもしておいた方が良いかも知れませんなあ。麻原彰晃さんととても仲が良かった人達が、一斉に過去を忘れ去って知らん振りしているのは醜態なのですが、その舞台となったテレビ局の体質は変わっていないのですから、いよいよ考えた方が良いでしょうなあ。

■オウム事件で「TBSは死んだ」のだそうですが、どこのテレビも五十歩百歩の商売をしていたのですから、TBSだけを責めても仕方が無いのでしょう。そう言えば、『週刊現代』6月24日号に、「本誌追求でついに放送中止『PRIDE』=暴力団を斬り捨てたフジが恐れる「問題社員」」と言う長い長いタイトルの特集記事も載っていましたぞ!「Aプロデューサー」という仮名で登場しているフジテレビの有名人を含めて、30頁にはTBSの「K-1 Dynamaite」、日本テレビ「イノキボンバイエ2003」、フジテレビ「PRIDE男祭り2003」を横に並べて、複数の暴力団を中心とする相関図が載っています。記事の中にも、榊原信行DSE社長・高田延彦PRIDE統括本部長・日枝久フジテレビ会長・川又誠矢ケイコンフェデンス社長・石井和義被告などの実名がぞろぞろと出て来ます。NHKの紅白歌合戦を潰そうと頑張っている民放テレビが見つけた「ぶん殴りあい番組」は大切なドル箱なのでしょうが、NHKの紅白歌合戦でも裏金やら脱税やらややこしい話が噴出して、今度は民放が暴力団と仲良しだった事がバレてしまいました。

■秋田の子殺し事件と村上ファンドの大騒ぎの中で、フジテレビがしれっと「PRIDE放送中止」を発表するというのは、やはり視聴者をバカにしているとしか思えませんなあ。細木センセイの番組も、同じように闇から闇に葬られて、番組が消え、町の本屋さんの平積みコーナーからも細木センセイの占い本が消える日が来るのでしょうか?

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不毛な喧嘩 其の弐

2006-06-23 12:25:47 | マスメディア
■渡辺芳則さんは山口組5代目を継ぐ前は、武闘派で有名だった山健一家の2代目組長でしたから、山健組系列の元気者が跳ね返ったのでしょう。竹中正久4代目は、前代未聞のNHK特集に出演したこともある全国的に顔も肉声も知れ渡った不思議な親分さんでしたが、それが白昼のマンション前の路上で4人のヒットマンに銃撃されて殺害されたのですから、全国的な大ニュースになりました。その後の「仇討ち」騒動は複雑な組織の構成の中で日本全国に飛び火しました。

……山口組の4代目組長に端を発する両組の全面対決は1987年2月山口組が抗争終結を指示するまでの2年余の間に2府19県で317件の抗争事件が発生し、死傷者は95人に達した。件数、死傷者数ともに戦後最大規模である。……同書149頁の朝日新聞記事引用箇所

■イラク戦争後のテロ騒動に慣れてしまった者には、死傷者95人と聞いても、「何だバグダッドの1日分かあ」とうっかり思ってしまいそうですが、それぞれの抗争事件の背景とその後の影響を詳細に解き明かす『五代目山口組』を読みますと、ヤクザ稼業も大変だなあ、と改めて考えさせられますぞ。2年間の大騒ぎの後、結局、竹中正久4代目組長の仇討ちは不発のまま抗争は終焉して、構成員の規模では山口組の3分の1にも満たない関東の稲川会が最終的な後始末をした上に、渡辺芳則5代目襲名まで取り仕切って話は終るのです。要所に挟み込まれた渡辺さん本人へのインタヴュー記事が、その人柄を上手に浮かび上がらせてくれるので、時代が変わって山口組の様変わりした事が良く分かるのです。昔通りのヤクザを通したい人が著者の溝口さんに八つ当たりしたくなる気持ちも分からぬでは無いのですが、物書きやその家族を標的にしたら、古くからも任侠道にも、現代ヤクザの経営学にも反するのは明らかです。

■その溝口敦さんが細木数子さんを取り上げたのですから、以前から噂が出ていたヤクザさんとの交友関係に触れない訳はないのです。『週刊現代』6月10日号には、連載を中断しての現状報告が掲載されてしまいまして、そこで標的にされた『週刊文春』の方が旗色が悪いらしく、『週刊現代』6月24日号の連載第6回で、細木センセイの商売道具である「六星占術」はインチキだ!とぶち上げれば、『週刊文春』6月22日号では、もう一つの売り物になっている安岡正篤大先生との関係を「告白」する読ませどころの筈が、何故か巻末の156頁の掲載になっています。溝口さんが暴露したのは、細木数子さんが知り合いのヤクザさんに記事の連載中止をお願いして、溝口さんに圧力を掛けて貰ったという話でした。


どうやら細木数子は本誌連載『魔女の履歴書』にいても立ってもいられなくなったようだ。弁護士4~5人の名を連ねて2度にわたって抗議書、警告書(連載中止要求書)を講談社と編集部に送ってきたばかりか、何を血迷ったか『週刊文春』6月1日号市場に「『魔女の履歴書』週刊現代への大反論ここまで語るか細木数子『わが生涯』」と題するインタヴュー記事を掲載し始めた。

■フジテレビの『トップキャスター』とか言うテレビドラマで、インチキ占い師が登場して「地獄に堕ちますよ!」とご本人のカリカチュアとしか思えない台詞を叫んでいたそうなのですが、そんな番組は未見なので作品の質は分からないにしても、そんな学芸会レベルの悪ふざけ番組に目くじら立てて怒らなくても良さそうなものなのに、「金持ち喧嘩せず」という世間の常識の外に居るのか、細木センセイはフジテレビを強迫したとかしないとか。ホリエモンに大金をちょろまかされる程度のテレビ局での内輪揉めですから、どうでも良い話なのですが、溝口敦さんに加えられた圧力は、少々度が外れている犯罪行為すれすれ?の悪質なものだったようですぞ。


……もちろん細木には、連載開始前の4月21日、編集部を通じて取材を申し込んでいる。だが、細木側は4月24日、まず細木事務所の職員が「取材拒否」を電話で回答し、同日、細木の顧問弁護士と名乗る阿部鋼弁護士から、やはり電話で「取材は受けない。ノーコメントと理解して欲しい」と編集部へ回答があった。……細木が取材に出て来ないなら、出て来ないでいい。細木リポートを書く上で、細木の直接取材が必須なわけではない。逆に会ったがため、しがらみに搦(から)め取られる危険さえ出る。細木が最初は取材を拒否していても、連載を重ねるうち、タヌキのように燻(いぶ)り出されて穴から出て来るだろうと、筆者は呑気に構えていた。と、別の穴から今回飛び出したわけだ。

不毛な喧嘩 其の壱

2006-06-23 12:25:23 | マスメディア
■1990年代前半、麻原彰晃という人がマスコミの寵児(ちょうじ)になっておりました。ほとんどの民放テレビに出演して朝から晩まで顔を見ない日が無かったのでした。雑誌にも頻繁に取り上げられて、インタヴュー記事が沢山掲載されました。「超能力」「予言」「救済」などのツギハギだらけのトンデモ話を書き散らした自著も大量に出回って、ちょっと大きな書店なら入り口近くの平積みコーナーに並んでいたものです。怪しげな事件が起こり始めても、マスコミは麻原さんに「弁明の場」を潤沢に用意して商売に利用していましたなあ。

■弁護士一家惨殺事件、松本サリン事件、地下鉄サリン事件と大事件が一直線に結ばれたら、マスコミは一斉にオウム叩きを始めました。それまで言いたい放題のインタヴューの聞き手だった人や対談相手になっていた人はさっと身を隠し、テレビ局は司会者を、雑誌は書き手を変えて見事に掌を返したのでしたなあ。単なる宗教を騙った詐欺事件であったなら、これほど大規模な変身に苦労する必要は無かったでしょうが、大量殺人兵器を用意して戦争を計画していたとなれば、それまで通りにバラエティ番組やら、似非報道番組に引っ張り出してオモチャにしている訳にも行かなくなったのでしょう。今でもテレビ欄には性懲りも無く、「超能力」「占い」「予言」を冠した番組が散見されますぞ。

■細木数子さんとみのもんたさんは、今の民放テレビでは神様・仏様の扱いを受けているのだそうです。これも一種のバブル状態ですから、崩壊後の始末をそろそろ考えた方良いのはないでしょうか?お二人とも、テレビの視聴者を愚弄するのがお上手で、この情報化時代にテレビをぼんやり観ている輩の程度はたかが知れている、と見切っている節があります。民主主義というよりも衆愚政治の原則に従っているだけなのですが、同じ人材を各局が奪い合っているのですから、日本のテレビ文化というのは余ほど底が浅くて厚みが無いもののようですなあ。不祥事続きの新聞界やマンネリの極地に達しているテレビを尻目に、この頃週刊誌が元気です。とは言っても「字を読むのが嫌い」な世代を大量に生み出した戦後教育の成果で、絵本(マンガ)に部数で完敗しているのは残念ですが……。

■『週刊現代』と『週刊文春』が、細木数子さんを取り上げて真正面から喧嘩しています。『週刊新潮』は「所詮は墓石売りの口利き屋」と高みの見物で、双方の徒労を笑っているのですが、発端となった『週刊現代』の連載特集記事を書いているのが溝口敦さんなので、問題は笑っていられない展開になっているようですぞ。暴力団でも食肉業界でもパチンコ業界でも、新聞やテレビが二の足を踏んでしまう世の中の闇に切り込んで、事細かに調べ上げて再構成してくれる溝口さんの仕事には感心しておりましたので、いよいよ細木数子さんを俎上(そじょう)に載せたか、と連載当初から興味津津でありました。


ノンフィクションライター溝口敦さん(63)の長男(33)が、指定暴力団山口組傘下の関係者に襲撃された事件で、溝口さんの言論活動に対し昨年秋ごろから再三、暴力団関係者が圧力をかけていたことが関係者の話で分かった。……警視庁は、トップの交代に伴い山口組内部に緊張状態が生まれていることが、背景にあるとみている。長男は今年1月、東京都三鷹市の路上で襲われ、足を刃物で刺された。警視庁が5月30日、山口組の有力2次団体山健組の下部組織の関係者の男2人を傷害容疑で逮捕した。……2006年6月18日 朝日新聞

■記事によりますと、1990年5月に『五代目山口組』という本を溝口さんが上梓した3ヵ月後に脇腹を刺されたのが最初なのだそうです。手元の三一書房刊『五代目山口組』の後付を見ますと、1990年6月30日第1版第1刷となっています。まあ、出版の日付は1ヵ月先送りして印刷するのが習慣化しているので、発売は5月だったのでしょう。この本は1985年1月26日に起こった山口組4代目竹中正久襲撃事件から、1989年7月20日の渡辺芳則山口組五代目襲名継承式までの出来事を時系列に沿って詳細にルポした内容です。それに絡ませるように1941年1月に栃木県下都賀郡壬生町の農家に生まれた渡辺芳則さんのヤクザ人生を描き出しているのですが、4代目までの山口組とはまったくタイプの違う組織として山口組が生まれ変わった事を強調する内容になっているので、取りように依っては、渡辺組長の「悪口」のようにも読めない事もない書き方になっています。