旅限無(りょげむ)

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麻生総理の健康と社会常識 其の壱

2008-11-27 16:37:02 | 政治
■漫画好きだからきっと庶民的感覚の持ち主だと、大きな誤解をしてしまった人たちは、「漫画ばかり読んでいるとバカになるぞ」という昔懐かしい小言を聞かねばならない立場になってしまったようです。マンガと言っても日本ほどの漫画大国になりますと、新聞紙面に負けないほど多くの活字を吹き出しの中に押し込む作品やら、解説だけのコマを広く取ったりする作品もあります。勿論、叫び声や悲鳴や肉体の一部が壊れる音やら爆発音ばかり続くような物騒な作品も多いようですが……。
 
■下手な専門書を読むよりも、情報が豊かでしかも実によくまとまっている教養漫画も数多く、政治や経済だって劇画作品やギャグ漫画を読んだ方が新聞や専門雑誌より分かり易い場合もありますなあ。麻生コロコロ首相が漢字を誤読するのは、規定の政治スケジュールを知らないのと同じ理由なのではないでしょうか?漫画を読むのは時代の風潮を知るためだと御本人が発言しているのですから、漫画を材料にして政権を揶揄するのは、それこそ漫画にもならない悪趣味な話になり兼ねません。

■勉強不足の政治家が増えてしまったのは、候補者段階で演説をじっくり聴かず、公約も著書の類も読まずに投票してしまう人が多いからでしょうし、別の候補を当選させるための貴重な一票を捨ててしまう怠惰な人が多過ぎるのも大きな原因なのでしょうなあ。特定の団体が中核となる後援会と、税金の無駄遣いの温床とされる各種利権の臭いがぷんぷんする諸団体の力で当選するのなら、一般の聴衆を感動させる演説は不要でしょうし、研究者や学者が唸ってしまうような見識を本にして発表する必要も無いわけです。

■麻生セメントを基盤とする地方財閥の麻生グループというカバンと社員や取り引き相手が作り上げた地盤、そして、吉田茂の孫という看板が揃っていれば、落選する心配は皆無なのでしょうなあ。前任の福田ホイホイ首相から「解散して選挙してね」と言われて政権を渡されたのに、何やかやと手間取っている内に次々にボロが出て来て収拾が付かなくなっているようですが、あまり小粒の政治家が総理大臣を「たらい回し」にしていると、世情の不安を利用して非常に危険な威勢の良いだけのリーダーが登場するかも知れませんから、その点だけは御用心、御用心。


麻生首相が20日に開かれた政府の経済財政諮問会議で、社会保障費の抑制を巡って「たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」と発言していたことが、26日に公開された議事要旨で分かった。

■「たらたら飲んで」というのは、ホテルのバーで(似合わなくても)葉巻をくゆらせながら高級ブランデーをちびちび舐めるのではなく、安酒場で質素な物を肴にして焼酎やホッピーなどと痛飲するような事を指しているのでしょうなあ。「食べて」の中には産地も分からぬ安物ばかりを食べているから、毒ゴメや腐りかけの肉などを食うハメになるんだ、という意味もありそうです。「何もしない人」というのは、残業続きで朝から晩まで働いて偶の休日ぐらいはくたくたになった身体を少しでも休めようと睡眠を優先にせざるを得ない人が含まれている節があります。

■でも、「たらたら飲んで」くれる人や「たらたら食べ」る人が居なくなると、商売が成り立たなくなってとても困る人がたくさん出て来そうです。そもそも保険制度は助け合いのシステムですから、一度も病気にならずに寿命を終える人が、生まれつき体が弱かったり難病と戦わねばならない人の医療費をまったく負担しないという話にはなりません。麻生コロコロ首相の言う通りにするのなら、最初から保険制度は廃止するべきでしょう。完全自由診療という非常に厳しくも残酷な時代に逆戻りする覚悟が全国民の間で固まったら法律を改正すれば良いだけの話ですが、きっと夢見が悪くなるでしょうなあ。


与謝野経済財政相が社会保障費の抑制や効率化の重要性を指摘したのを受けて、首相は出席した同窓会の話を紹介しながら「67歳、68歳で同窓会にゆくとよぼよぼしている。医者にやたらかかっている者がいる」、「彼らは学生時代はとても元気だったが、今になるとこちら(首相)の方がはるかに医療費がかかってない。それは毎朝歩いたり何かしているから」と発言した。病気を予防することが社会保障費抑制につながることを強調する物言いとみられるが、病気になり医療サービスを受ける人が悪いとも受け取れる発言で波紋を呼びそうだ。

■「学生時代は元気だった」人が年齢を重ねて病気をするのは決して珍しい話ではありません。散歩をしていればすべての病気が予防できるというわけでもありません。政治家ですから自分が人一倍丈夫だ!というパフォーマンスが染み付いているのでしょうが、「医者にやたらとかかっている」人の多くは、多額な医療費がかからないようにと検査に言ったら病気が「発見」されて手厚く、時には過剰な治療を受けることになった人も多いはずです。

■御自身が丈夫で健康に暮らしているのは実に結構なことですが、それと並べて病気に苦しむ人を責めるような話をしては行けません。他人の痛みは絶対に分からないもので、自分の痛みも傷や虫歯が治ってしまえば忘れてしまうものですから、今、苦しんでいる人が悪いことをしているような発言は問題でしょうなあ。医療費を含めた社会保障費の抑制という大目標は政治家として実現せねばならない大切な政策なのでしょうが、医療や介護の現場に関して「無駄」を指摘するのは非常に難しいものです。先に国の予算をカットしてしまえば、下々が努力して無駄が無くなるなどと考えるのは、「生活給付金」のバラマキ方を決め兼ねて地方自治体に丸投げするのと同じくらいに乱暴な政治手法だと申せましょうなあ。

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