旅限無(りょげむ)

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鳩山さん大丈夫? 其の参

2009-10-28 15:23:54 | 政治
……事故を受け、カリナ・スターの運航会社の日本総代理店「南星海運ジャパン」(東京都千代田区)では……社員の1人は「(カリナ・スターに)けが人はいないもようだが、責任者と連絡が取れない。情報収集を急いでいる」と話した。東京・市谷の防衛省でも……「まだ詳しい状況は分かっていない。相手船についても調査中」。庁舎8階にある海上幕僚監部広報室では問い合わせの電話が鳴りっぱなしの状態で、怒声も飛び交った。午後9時半すぎ、くらまの負傷者が3人だけとの情報が入ったものの、海自幹部は険しい表情を崩さなかった。

■商業用船舶が突発的な事故で一時的に連絡が取れなくなるのは仕方がないでしょうが、あらゆる事態に対応せねばならない軍事用通信装置を持っているはずの艦艇と国防の中核・頭脳である幕僚監部との間が音信不通とはどういうことなのでしょう?本当は相当に詳しい情報が入っているのに、後々の裁判沙汰を勘案して知らない振りをしているのでしょうか?それなら多少は防衛省の顔も立つのですが……。


平成20年2月にイージス艦のあたごが漁船「清徳丸」と衝突し、清徳丸に乗船していた2人が死亡した事故との共通性も指摘される。あたごの事故現場も南房総沖の混雑海域。また、あたごは米ハワイ沖でミサイルの装備試験を実施後、横須賀基地(神奈川県)に戻る途中に衝突し、今回のくらまも神奈川県の相模湾で行われた観艦式に参加した後、佐世保基地(長崎県)に戻る途中だった。「隊員の気の緩みが原因でなければいいのだが…」(防衛省幹部)との懸念もある。

■国際紛争を解決するための武力は持たない戦争放棄の憲法が、いつの間にやら自衛権まで放棄しているような話になっている日本の自衛隊は何が何でも実際の戦闘行為には参加しては行けないそうですから、主要な任務は地味な訓練をこつこつと続ける事と監視偵察などの受身の情報収集に限られ、「偶に撃つ弾が無いのが玉に瑕」と自虐川柳の傑作を作る自衛隊の皆さんが、米国との合同演習や観艦式などの晴れ舞台に偶に上ったりした時の緊張感は想像を超えるものなのでしょう。それゆえ、無事に任務を果たした後の安堵感も大変なものに違いありません。そこで不祥事が起こってしまうのでしょうなあ。


海自は、あたごの事故をはじめ不祥事が続発したため、根本的な体質改善を図るとして、隊員教育や艦長養成課程などを充実させる方針を打ち出したばかり。「なぜ、こんなことが続くのか」と頭を抱える海自幹部もいる。
2009年10月28日 産経新聞

■自衛隊の不祥事はリンチ殺人事件やら薬物汚染などが有名?ですが、隊員の国際結婚が不気味に増え続けているという話もあります。鳩山サセテイタダク首相が任命した新しい防衛大臣にとっても迷惑な話でしょうし、これから事故の詳細が明らかになると連立を組む社民党辺りから変な雑音が出て来ることもありましょうなあ。

鳩山さん大丈夫? 其の弐

2009-10-28 15:23:01 | 政治
■長い長い、とても長い所信表明演説を行なった鳩山サセテイタダク首相は、居眠りもせずに熱心に傾聴していた与党議員のスタンディングオベージョンに御満悦だったようです。お役所仕事の作文を単純に羅列して棒読みされることが多かった自民党時代を陳腐化させるには十分な50余分だったのは確かでしょうが、有権者としましては長さや熱さに騙されずに演説内容を熟読吟味する粘り強さが必要でありましょう。

■演説全文の読み直しという少々退屈で苦しい作業は得てして骨折り損の草臥れ儲けに終わることが多く、拙ブログでも福田ホイホイ首相の所信表明演説全文の分析を試みたことがありましたが、各文末に付けられる「実現します」「全力で取り組みます」などの決まり文句は、実は「予算を付けます」という事務手続きの予定を繰り返しているだけで、その予算が執行された時に何が起こり国益にどれほど適っているのか?という当然の疑問にはまったく答える気がないことが判明しただけで、馬鹿馬鹿しくて途中で投げ出してしまったことがありました。

■「友愛」の二文字で埋め尽くされるかと思われた鳩山サセテイタダク首相の演説は、「国民の皆様」がやたらに耳に付くものでした。最高責任者の総理大臣が官僚や族議員の頭越しに国民に対して語り掛けるスタイルは新鮮で、議場に並ぶ国民の代表たる与野党議員の背後に万余の有権者が存在していることに改めて気付かせる効果もあったような気もします。しかし、選挙前から危惧された「財源」と「安全保障」という二大弱点が補強されないまま露呈してしまったのは予想通りに残念でしたなあ。

■沖縄の在日米軍移転の問題に関して、鳩山サセテイタダク内閣が浮き足立って稚拙な不協和音が起こり、防衛省と外務省とが内輪揉め、首相周辺からも苦し紛れの浅知恵が転がり出る。オバマ大統領の来日を前に露払いとして飛んで来たゲーツ米国防長官が「アメリカの怒り」を実に分かり易く伝えたのですから日本政府が蒼褪めるのも無理はありません。特殊な憲法を護持している日本の政治家にとって在日米軍基地は、何処まで行っても国内問題でしかありませんが、世界の警察(保安)官を自認しているアメリカにとっては世界戦略の重要なピースなのですから、「緊密で対等な」交渉など土台無理だという冷厳な事実を鳩山流の友愛外交が再確認してくれました。

■ごちゃごちゃ言い出した日本を後に韓国入りしたゲーツ国防長官は、ミサイル防衛やら北朝鮮問題など実にてきぱきと重要案件に目途を付けて行ったそうです。鳩山サセテイタダク内閣が頭を抱えている時に、何と海上自衛隊の護衛(巡洋)艦と韓国のコンテナ船が衝突!何か意味深で因縁話みたいで気味が悪いことこの上ない気分になります。


……関門海峡で27日夜に起きた海上自衛隊の護衛艦「くらま」と韓国籍貨物船「カリナ・スター」の衝突事故。政府の調査などで海自側の責任を厳しく指摘されたイージス艦「あたご」による漁船衝突事故から、わずか1年8カ月で大規模な事故は再発した。……日本海難防止協会の大貫伸上席研究員は「関門海峡は日本で3本の指に入るぐらい船舶交通が難しい」と指摘。この難所を500トン以上の船舶が年間約5万隻も航行する。海上保安庁によると、関門航路内で起きた衝突事故の件数は平成16年19件、17年18件、18年14件、19年8件、20年26件にのぼっている。しかも、事故のあった関門橋付近の幅は約500メートルで海峡の中で最も狭くなっている。潮の流れが速いうえ、1日に何度も潮流が東西に変わる難所で、「ベテランでも舵を切るのには慎重さが必要」(大貫氏)という。……

■1185年3月に起こった史上名高い「壇ノ浦の戦い」をちょっと思い出すだけで、たとえ現地を見たことがなくても関門海峡の危険は容易に想像がつきましょう。潮目を知り抜いた瀬戸内海の海賊集団が源氏に寝返ったのが平家滅亡の決め手だったとも言われているとか……。それにしましても櫓(ろ)と櫂(かい)で木造船を操っていた時代には望めなかった高性能レーダー・システムを搭載している現代の艦船が、夜の海峡で正面衝突するとは!同盟国のアメリカがテロとの戦いに苦しんでいるのですから、突っ込んで来たのが自爆舟艇ではなかったのは不幸中の幸いと考えた方がよいかも知れませんなあ。

鳩山さん大丈夫? 其の壱

2009-10-23 15:42:07 | 政治
■数日間、ブログが開店休業状態になってしまいましたが、特に体調を崩したのでもなく、勿論、新型インフルエンザに感染してしまったのでもありません。政権交代が実現してからの目まぐるしい変化に驚き呆れてしまう一方で、仮免状態の鳩山サセテイタダク政権が「何もしない」だけでなく、「何をしようとしているのか」がさっぱり分からない内に、経済事情や国際問題が勝手な思い込みでせっかちに流動化して行く様子を眺めていたのでした。
 
■このところの報道記事から得られる情報は、緊急性と重要度の整理もされず玉石混交の垂れ流しが酷くなって来ているような気がします。脈絡もなくあちこちで起こる出来事が、どこか深いところか裏側でつながっているような気がしたと思ったら、続報を聞くと何の関係も無いようにも見える。そんな不思議な混乱がだらだらと続いているのも、政権交代という大きな変化に日本のマスメディア自身が右往左往しているからなのかも知れませんなあ。少なくとも複数の芸能人が薬物を使って変態生活を送っていたらしい「事件」よりも重大な出来事が国の内外で起こっていることだけは確かです。

■芸能界で起こる出来事すべてが取るに足らないものとは限りません。少なくとも『太陽の季節』で売り出した南田洋子さんの死去より加藤和彦さんが軽井沢で自殺した事の方が、今の日本を考えるヒントを与えてくれそうです。ただ、南田さんの病状と死去は 「太陽族」の生みの親と目されている原作者の石原慎太郎都知事のこれからを暗示しているような気がしないでもないのですが……。

■加藤和彦さんの生年月日は1947年の3月21日だそうです。ちょっと気になって確認してみましたら、鳩山サセテイタダク首相も同じく1947年(昭和22年)の2月11日とのこと。何となく容貌も雰囲気も似ているような気がしていた人も多かったかも知れません。やはり同じ時代の空気を吸って過ごした人達は似たような雰囲気を醸し出すようになるのか?一人は芸能界でもう一人は政界、どちらも世人の注目を集めて支持を得なければ生き残れない厳しい世界の住人で、どちらも凡人には理解できないユニークな結婚をしたという共通点はあるものの、それぞれの結末はまったく違っているようです。

■鳩山由紀夫さんが吹き込んだ幻のレコードが存在する!という馬鹿馬鹿しいニュースが流れたことがありましたが、紹介された歌声にはフォークソングを作っていた頃の加藤和彦さんのイメージに近いものがあったような気もしましたなあ。そう言えば、加藤さんは歌手業よりも音楽プロデューサーとして活躍していて、鳩山さんも何を勘違いしているのか、総理大臣の任務を「コンダクタター(指揮者)」に擬(なぞら)えた発言をしているとか……。仄聞するに、素人が指揮棒を振ったりすると世界的な名声を得ている交響楽団でもハチャメチャな演奏しか出来ないそうです。民主党がどんな楽団なのか?誰がどんな楽器を担当しているのか?はたまた連立を組んで参加している政党が立派な音楽家集団なのか?そして鳩山さんが振る指揮棒は何処を目指して振り回されているのやら……。存命中に加藤さんを官邸に招いて助言を受けておくべきだったかも?

■3度の結婚、2度の離婚、友人を失って孤独の中で鬱に苦しんだ加藤さんと、本業の政治は人任せにして奥さんと手に手を取ってあちこちのイベント会場を梯子して歩く鳩山さん。その二人には奇妙な共通点がもっとたくさんあるような気もしますが、鳩山サセテイタダク政権が混迷の度を深めて空中分解でもするのではないか?と懸念され始めた時に加藤さんが自殺するという不思議な一致にも、何かの予兆を感じてしまうのであります。

■あまりスポーツ関連の話題は取り上げないのですが、東北楽天ゴールデンイーグルスの時ならぬ快進撃という椿事にも、どこか民主党政権の迷走振りが重なって見えるような気がしましたなあ。政界ならぬ球界再編の嵐の中で正真正銘の寄せ集め球団として誕生してから、乱暴な監督交代があったかと思えば、突如として数人の選手がマスコミの寵児になってみたり、政権交代に向って驀進していた頃の民主党を思い出しませんかな?クライマックス。シリーズには出場できても日本シリーズには出られない公算が高いというのも、これからの民主党の将来を暗示しているような……。

■日本政府にとってのクライマックス・シリーズは予算編成で、日本シリーズは対米政策だと乱暴に仮定してしまえば、現政権の実態が何となく分かり易くなるような気がします。政治の世界では二つの試合が同時に進行しているところが大きな違いなのですが……。


公的資金による特別支援を受ける企業の報酬を監視するファインバーグ米報酬特別監督官は22日、銀行大手シティグループや保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)など7社の幹部や高額所得者の報酬を前年比で5割超削減すると発表した。経営リスクを顧みずに短期の利益追求を奨励する報酬制度を改めることで、企業救済のための税金投入や高額報酬に不満を募らせる国民に理解を求める。

■驚異的に高かった支持率が下がり始めたと騒がれている米国のオバマ政権ですが、世界で最も有言実行の能力が求められる米国大統領という地位を得た政治家は、変なマニュフェストを振り回して政権を取っておいて、いざとなったらしどろもどろの言い訳ばかりするような無様なことは許されません。首相に就任して1週間もしないで首脳会談を行なったことで、鳩山サセテイダク首相は日米関係について何か大きな勘違いをしてしまったのかも知れませんなあ。相手はやる時には徹底的にやる恐ろしい力と精神を持っていることを忘れて、誰も本気では聞いてくれない「友愛」で外交が進められるなどと考えてしまっているのならエライことです。


報酬削減の対象は各社それぞれ、役員5人と高額所得者上位20人で、合計175人。給与の現金支給分は年換算50万ドルに制限するとともに、ボーナスの現金支給は禁止し、長期保有が義務づけられる自社株式で支払う。これらの結果、報酬の現金支給は9割超カットされる。適用期間は2009年11、12月の2カ月分。10年以降については今回の決定を「基準」(ファインバーグ監督官)にする。
10月23日 時事通信

■ダムだのJALだの、長過ぎた前政権の置き土産ではあっても、現政権には解決する責務がありますから、弱音を吐いている暇はありません。ましてや首相が他人事みたいな評論を披露して公式のコメントとして報道されたら大変なことになりますぞ。

同床異夢の悪夢 其の参

2009-10-11 16:54:08 | 外交・情勢(アジア)
■鳩山サセテイタダク新首相が熱く語り合った温家宝首相のお膝元で何が起こっているのか?

「電子ゴミの終着駅」と呼ばれる広東省スワトウ市の貴嶼村。村の基幹産業である電子ゴミ処理業には村民の9割が従事するが、スワトウ大学教授が行った調査で、現地児童の血液中カドミウムと鉛濃度が異常に高いことが分かった。……貴嶼村には5500社余りの廃棄物処理工場があり、欧米や日本などの先進国から廃棄されたパソコンや携帯電話などの電子ゴミ、E-waste(電気・電子機器廃棄物)が大量に送られてくる。作業員たちは有害物質も含まれるこれら電子ゴミを素手で解体し、中から貴重な金属を取り出す。防毒マスクなどは一切使わない。工場からの廃水も河川などに垂れ流しの状態だ。

■水俣や四日市など、日本も高度成長期に各種の公害問題に直面しましたが、当時の政府が取った対応は決して世界に誇れるようなものではありませんでした。健康被害を受けて苦しんでいる人達が起こした裁判が半世紀以上も続いているのですから、大きな顔をして解決方法を伝授するわけにも行かないでしょう。そろそろ先の戦争に絡めた補償や援助を求め続けるのも如何なものか?と思われている時期に、鳩山サセテイタダク首相は「村山談話」の継承を早々と公言してしまいましたから、環境問題という新たな切り札を得たチャイナが「友愛の心」に付け込んで来たらどうするのでしょう?


……貴嶼村の児童154人と別の電子ゴミ関連業に従事していない村の児童124人の血液中カドミウムと鉛濃度を比較……「鉛中毒」と診断されたのは、同村70.8%に対し、別の村は38.7%。血液中カドミウムの濃度は、同村20.1%に対し、別の村は7.3%だった。……貴嶼村の妊婦と村から200km離れた福建省アモイ市の妊婦を比較すると、同村の方が死産の割合が6倍も多かった。同村の妊婦の早産の割合は62%にも達していた。
2009年4月12日 サーチナ

■世界で最も汚染された場所という恐ろしいランキングがあるそうですが、群を抜いているのが旧ソ連と今のチャイナだとか……。汚染物質は冷戦時代の歴史的な産物ではありますが、それを生み出して放置したのはもっともっと古くからの歴史が絡む深くて複雑な理由があるとも言われていますから、他国が一足飛びに解決するように強要するわけにも行きません。でも、「共同体」という甘くて大仰な構想を打ち出してしまったからには、地域内の環境問題を対岸の火事とは言っていられなくなるのではないでしょうかな?

■鳩山ビジョンに反米的な臭いを感じた有力者が、オバマ政権に警告やら注文やら厳しいことを言って迫っているのは、チャイナの経済成長の鍍金が剥がれる前に日本の技術力を引き込んで、あわよくば軍事転用を目論んで太平洋における米国の一極支配を突き崩そうとする戦略にうまうまと乗せられるのではないか?との疑念が生じているからとも言われておりますが、最初は環境汚染問の題、次に地球温暖化防止へと順に技術と資金の援助を引き出し、気が付いた時には日米安保体制を骨抜きにしてチャイナを盟主とする東アジア共同軍事同盟が頭を擡(もた)げる……などという悪い冗談を米国は決して受け付けないでしょうなあ。

■ご丁寧に鳩山サセテイタダク新首相は日中韓首脳会談の席で、日本の外交は米国に依存し過ぎていたと馬鹿正直に発言したそうですから、ノーベル平和賞受賞となったオバマ大統領も黙っていはいられなくなるのではないでしょうか?先の日米首脳会談では、信頼と友愛の分厚いオブラートに包んで物騒な懸案事項は丸ごと先送りして貰えたことを鳩山サセテイタダク首相は勘違いしているのだとしたら、新政権は外交、それも日米関係から崩壊して行くかも知れませんなあ。

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同床異夢の悪夢 其の弐

2009-10-11 16:53:42 | 外交・情勢(アジア)
2009年9月27日、米ニューヨーク・タイムズ紙は、欧州の電子ゴミが中国やインド、アフリカなど発展途上国に合法または非合法法なルートで毎年大量に運ばれていると報じた。……欧州環境局(EEB)の統計によれば、1995年から2007年の12年間で欧州から発展途上国に運び出された紙、プラスチック、金属などのゴミの量は10倍も増えた。欧州では、廃棄物は企業が回収するか環境を汚染しない方法で処理しなければならないが、こうしたコストを浮かせたい企業は多いという。

■日本からも膨大な量の古紙がチャイナに輸出され、国内価格が暴騰するという騒動がありましたし、リサイクル費用を客に負担させて回収した電化製品が闇に消えるという事件が何度も発覚しております。先進国で盛り上がる地球に優しい「勿体無い」運動の美談が、闇を通って海を渡るとトンデモない環境汚染の種に変わるという恐ろしい現実に「友愛の心」で対処できるのか?ネタ切れのテレビ局が大好きな日本各地に散在する「ゴミ屋敷」とは比べ物にならない深刻なゴミ問題が国際化しているならば、東アジア共同体が最初に取り組まねばならない課題はこれになるかも知れませんぞ。


……EEBのゴミ問題主席顧問は、「中国やインドなどの新興国がいわゆるゴミ貿易を促進した部分もある。一部の廃棄物は環境に無害であり、これらの国は原料を必要としている」と説明した。一方、中国の専門家は「電子ゴミはリサイクル価値がないとは言えないが、価値を誇張すべきでもない。電子ゴミによる環境汚染は中国にとって大きな問題だ」と述べている。
2009年9月29日 Record China

■国際的な外交儀礼上、相手国の恥部に当たる廃棄物処理の現場を国の代表が訪問することはないようですから、民主党のマニフェストにゴミ問題のグローバル化に関する対策が盛り込まれていないのも仕方が無いとも言えますが、杜撰に扱われる汚染物質は最終的には河川に流出して「友愛の海」に流れ込み、黒潮や対馬海流に乗って日本列島の背腹を洗うことになります。エチゼンクラゲは目に見えますが、水中に溶け込んだ重金属や危険な化学物質は見えませんから海水の水質調査に莫大な費用が必要になるでしょう。でも、恐ろしい結果が出たとしても相手が聞く耳を持っていなければ何もなりませんが……。


2009年6月6日、網易探索は、世界で毎年2000万~5000万トンの電子ゴミが生まれ、そのうちの約70%が中国へ、残りはインドやアフリカなどの発展途上国へ輸出され、現地で重大な環境汚染問題になっているとの専門家の指摘を紹介した。……「電子ゴミの終着駅」と呼ばれる中国広東省スワトウ市の貴嶼村や……発展途上国の一部では電子ゴミの解体や金属の回収が何の予防措置もなされないまま行われており、作業に従事する人々の身体や環境に深刻な影響を与えている。

■原子力発電に関する「トイレの無いマンション」という悪口がありますが、IT技術も同様の欠陥を抱え込んだまま発展しているようです。次々に開発されて販売される新製品の裏には大量に廃棄された使用済みの商品があるわけで、日本の店先で回収されたり戸別に業者が回って集められる不用品が海流の上流に集積されて汚染物質を垂れ流し続けるとすれば、尾籠(びろう)な比喩ではありますが、水洗トイレのパイプが最終的に上水道の給水管に連結されているようなものでしょう。


欧州連合(EU)が03年に定めた電子機器や家電製品の廃棄物を分別収集し再利用を図る「WEEE指令」の矛盾……EU各国は電子ゴミを分別処理してリサイクルシステムを確立するなどし、資源の乱用防止と環境汚染の低減を図らなければならないと定めている。しかし実際には、処理コストが約10分の1で済むため、先進諸国の多くが電子ゴミを「リサイクル」の名の下に、何の検査も実施せずに発展途上国へ輸出している。専門家は「発展途上国では、電子ゴミの処理基準が設定されておらず、鉛、水銀、カドミウムなど大量の毒素や廃棄物が無差別に放出され、大気や環境だけでなく、人々や住民にも深刻な影響を与えている」とその危険性を指摘している。
2009年6月9日 サーチナ

■さすがはEUと申すべきでしょうか?日本ではこの種の研究や報道に接したことがないような気がします。長引く不景気で在庫調整を最優先させて値下げ競争と宣伝合戦の声は大きくなるばかりですが、新政権の「内需振興政策」で買い替え需要を呼び覚ましたところで、買い替えで廃棄された品物が最終的に何処に行き、何が起こっているのか?それを忘れて一部の科学者から疑義が出されている地球温暖化問題に偏った政策に固執すると、不作為に環境悪化を進めてしまうことになる可能性も無きにしもあらず、というところでしょうか?

同床異夢の悪夢 其の壱

2009-10-11 16:53:17 | 外交・情勢(アジア)
■あれよあれよと言う間に鳩山サセテイタダク新首相は日本を留守にして米国やら北京やら、忙しそうに外国を飛び回って盛んに「友愛」の大安売りをしているようです。夢が現実になった先の総選挙では小賢しいマニフェストよりも「政権交代」という一枚看板に惹かれる心と「反・自民党」の怒りと怨念の感情が化学反応を起こして大爆発が起こったようなものです。有権者は不安がいっぱいでも「政権交代」を望んで自民党を政権の座から蹴落としたのでしたが、訳の分からない支離滅裂な国際感覚に凝り固まっている社民党と懐古趣味に浸る国民新党との寄り合い所帯の新政権には期待よりも不安感が増大中であります。
 
■そもそも第一党のマニフェストは外交・安全保障が空欄になっていたのですから、有権者は自民党がぶっ壊した日本を立て直して国内に山積した問題を少しでも解決して欲しい!と切望した結果が政権交代を実現させたのですから、選挙運動中も鳩山さんの「友愛」談義など誰も聞いてはいませんでしたし、「友愛」で国内問題を一挙に解決できるのなら誰も苦労はしないわなあ、と心の中では思っていたはずです。その証拠に選挙の鬼と化したクラッシャー小沢を筆頭に、民主党候補の誰も「友愛」の二文字を選挙ポスターに印刷もせず、立会い演説会でも熱く語ったことはありませんでした。

■選挙で大勝したからには日本国民全員を「友愛教」に改宗させられるとでも勘違いしているのではないか?と危惧する声も出始めるような予感がする鳩山サセテイタダク新首相の発言が、国会や国内での記者会見などの場ではなく外遊先から逆輸入されるというのは異常な事態ではないでしょうか?地球温暖化ガスの排出を25%削減するという話はマニフェストの42項に書かれてはいますが、その「具体策」 には「国内排出量取引市場を創設」との説明がありますから、この分野では既に欧州が実質的に寡占・独占状態だという現実を考えれば「国内」という二文字は有名無実化するのは時間の問題と言われているようですし、「具体策」の三番目には「地球温暖化対策税の導入」という増税策が書かれていることも消費税論議に絡む重要な論点になるに違いありません。

■マニフェストの第7節が「外交」で、実に興味深いことにこの節だけは「具体策」が一切添えられていません。従って何が飛び出して来るやら非常に心配されていたのでありますが、何故か鳩山サセテイタダク新首相は第52項にある「東アジア共同体の構築」の実現に異様な情熱を持っているらしく、東シナ海を「友愛の海」にする!とか何とか言い放ってしまったとか……。米国とは憲法9条を抱えたままで「対等な関係」になり、「在日米軍基地のあり方」を見直す!と大見得を切って見せる一方で、「中国、韓国をはじめ、アジア諸国」と「アジア・太平洋諸国」とを微妙に使い分けながら、信頼・協力・連携を取って行くのだそうですが、その中に「知的財産」はともかく、「環境・感染症対策」への言及があるのが非常に気になっておりました。


2009年10月9日、シンガポールの華字紙・聯合早報(電子版)は、村ぐるみで古着のヤミ取引に精を出す広東省の村を紹介した。……無許可で米国や韓国から香港経由で「衣類ゴミ」を仕入れ、加工を施した後、売りさばいており、年間1億着以上も売り上げる。カビ臭く汚れているのは当たり前。中には死体から脱がしたと思われるような血痕付きのものまであったりするが、それらを1着1着、丁寧にしわを伸ばし、ほつれを繕い、きれいにパッキングする。……「衣類ゴミ」は、「輸出用アウトレット品」として同じ広東省の東莞市や深セン市、湖南省や四川省にまで堂々と売られていく。状態が良いものは大都市へ、あまり良くないものは田舎へと流れるのが一般的だ。値段はTシャツなら1枚3元(約39円)とかなり安い。

■「勿体無い」を国際語にしよう!という掛け声が上がったこともありましたが、それも時と場合による事をしっかり認識しておかねばなりますまいなあ。こうした怪しげな「衣類ゴミ」が韓国と米国から流入する闇のネットワークが存在するのなら、安価な衣類が溢れて返っている日本が除外されているとは考え難く、それこそ「友愛の海」が危険な密貿易の舞台になっているのは間違いなさそうです。


これらの古着について、北京服装学院の王建明主任は「大腸菌などの病原菌が付着している恐れがある。もともとは唾液や排泄物、吐しゃ物で汚れていたり、輸送途中で鳥のフンや寄生虫が付いたりする場合もある」とその危険性を指摘している。
10月10日 Record China

■鳥インフルエンザや新型インフルエンザの故郷と想定されているのもチャイナ南部なのですから、「友愛の海」よりも健康・安全の海にするのが先決ではないでしょうかな?麻薬や武器の密輸が盛んな海域でもあるのですが……。

慎太郎さんの賞味期限 その参

2009-10-07 16:45:57 | 社会問題・事件
……日本は1964年東京大会、74年札幌冬季大会、98年長野冬季大会と夏冬合わせ3度五輪を開催したが、今回の東京の招致失敗で、五輪招致レースは通算4勝6敗(40年東京五輪は開催を返上し中止)となった。88年夏季大会は名古屋、2008年夏季大会は大阪がそれぞれ敗れるなど、夏季五輪の招致レースはこれで3連敗。1964年大会を、デトロイト(米国)、ウィーン(オーストリア)、ブリュッセル(ベルギー)を抑えて東京に招致し、アジアで初めて五輪を開催した栄光は過去のものとなった。

■東京五輪の思い出は強烈なものですが、物心共に熱狂した後に起こった「五輪不景気」を打開するために禁じ手とされていた赤字国債を発行したことを、マスコミは意図的に忘れているのではないでしょうか?その轍を踏まないようにと隣のチャイナは五輪の次には実に切れが悪いのを百も承知で建国60周年を強引に祝い、来年は上海万博を大成功させるんだ!と遮二無二突進中であります。では、それが終わったらどうなるの?と聞くのは厳禁とか……。

■戦前の1940年五輪が幻に終わり、苦い敗戦を挟んで戦後の復興を実感したい!と日本中が熱望したのが64年の東京五輪でした。新幹線の開業や高速道路の建設が大車輪で進められ、多くの家庭では高嶺の花だったカラーテレビを五輪見たさに無理して購入したものです。さてさて、2回目の東京五輪見たさに地デジテレビが爆発的に売れると本気で信じていた人がどれほどいたのでしょう?

■74年の札幌冬季五輪までは戦後復興と高度成長の余韻が色濃く残っていたので国民的イベントだった印象を残せましたが、バブルが崩壊してからの「失われた10年」に重なった長野冬季五輪は、首謀者?だった堤会長が失脚したり主催した長野に莫大な借金と黒い疑惑が残されたりとロクな結果になりませんでした。思えば東京と札幌で実った夢を他国に分けて上げるくらいの度量を見せて、有望な候補地に対してノウハウの提供や施設の建設などの援助をしていたら、ODA予算がもっと活きた使われ方をしたのではないか?と後知恵で考えるのですが……。福岡や大阪が手を挙げたのは、もっぱら地元の活性化という国内事情が背景にあり、国際的な知名度の低さと開催理由の希薄さを冷静に判断できていれば無駄なカネを使わずに済んだような気もします。


……第24回大会(1988年)の五輪招致には名古屋が名乗りを上げた。有力候補とみられたメルボルン(豪州)が招致を取り下げ、ソウル(韓国)との一騎打ちに。招致レースは東西冷戦下の77年から81年にかけて行われた。当時はソ連や東欧諸国が北朝鮮と親交が厚く、日本側は「仮にソウル開催となっても東側は不参加」と予測。IOC委員の投票行動にも影響が出ると踏んだ。投票直前には「名古屋が圧倒的に優位」との楽観ムードが漂い、JOCは、事務局の一角に祝勝会場を設けて、開催地決定の吉報を待った。しかし、韓国側の巻き返しは猛烈で、IOC委員への接待攻勢で情勢は一変。81年9月に西独で開かれたIOC総会では、名古屋が27-52と大敗する大どんでん返しが起こった。結局、ソウル五輪には東西両陣営が参加。歴史に残る大会になると同時に、日本側の目算違いという苦い教訓も残った。

■1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻して泥沼に引きずり込まれ、米国にはレーガン政権が誕生した時期に「冷戦」頼りに楽観ムードに浸っていたのは迂闊でした。北朝鮮は苦し紛れに大韓航空機を爆破して国際的な孤立を深めてしまったのも親分のソ連がソウル五輪にイチャモンを付けるだけのパワーが無かったからでしょう。外国からの視線の中に、東京・名古屋・大阪という地名のセットがどれほど浸透しているか?招致合戦の主体は開催都市でも実際の戦力は国家単位の総合力だと言われているのですから、中央の縦割り行政と地方の3分の1自治とが中途半端に協力しても、当時の韓国には太刀打ち出来なかったのではないでしょうか?

■今回の「2度目の東京大会」というのも誰かさんの一人善がりに多くの人々が引っ張り回されただけのことで、「南米初の大会を!」と端も外聞も捨てて招致活動を地道に続けたリオデジャネイロを破るのに、海のものとも山のものとも判断でき兼ねる新任のサセテイタダク首相を急遽引っ張り出したり、子供まで投入したりしての宣伝を自画自賛している程度の浅知恵で対抗できると考えたのは誰でしょう?子供か動物を主役にすれば映画は当たる!などと妄信できたのは石原裕次郎の全盛期の日本映画界だけの古いお話だったはずですぞ。今でも頭の切り替えが出来ない変な会社が柳の下で無様に泥鰌を探しているようですが……。

慎太郎さんの賞味期限 その弐

2009-10-07 16:43:03 | 社会問題・事件
■ご本人は言いたい事を言っただけなのでしょうが、IOCを敵に回すような結果になるとは想像もしていなかったのでありましょう。それが本当に「誤解」が原因なのかどうかは分かりませんが……。

……リオデジャネイロが、東京都の石原慎太郎知事に不適切な発言があったとしてIOCに抗議すると発表したことを受け、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長は7日、既にIOCやリオへの対応に着手したことを明かし「誤解を解く努力をしたい」と話した。……同日帰国した竹田会長は「直接状況を把握していないが(問題視された発言は)石原さんの真意じゃないと思っている」と語った。……
2009年10月7日 産経ニュース

■「誤解だ」「真意じゃない」と言い張っているのですから、竹田会長は石原発言の中で問題になっている箇所を知っていることになります。「直接状況を把握していない」などという上手にアリバイ発言を前置きにしているところは見事な処世術と申せましょうなあ。もしもIOCが正式に抗議を表明したりすれば、石原都知事は国内に残した大借金と買収した用地などの設備の後始末に加えて対外的な大問題を新たに背負い込むことになるかも知れません。

 
……総額150億円に及んだ招致費用の検証や会場予定地のあり方など、様々な課題も浮上する。……「負けた以上、金の使い道を都民にきちんと説明しないと、示しがつかない」。東京の落選後、ある民主党都議はこう語った。職員の海外派遣や国内イベントなどにかけた招致費用のうち、公費が100億円も投入されているためだ。08年夏季五輪招致で、北京に敗れた大阪市が使った公費は約48億円。都はこの約2倍をかけたことになる。招致レースが終盤に入った先月、ある都幹部は「赤字は何としても防がないと」と漏らした。招致費用が予算を上回れば、これを補填しなくてはならず、批判を招く恐れがある。招致委は、海外への職員派遣を絞り込むなど経費削減に努めたが、今後は都議会で、使途や最終的な使用額などについて検証が行われる見通しだ。

■150億円もの大金を、一体、何に使ったのだろう?と税金を納めている東京都民は改めて考え込んでいるのではないでしょうか?もしかするとそれ以外にも何だかんだと特別な名目で支出した関連費用も隠されているかも?


再立候補に意欲を示した東京だが、10万人を収容するメーンスタジアム建設を予定していた中央区晴海の都有地も、利用法が議論の対象になる。今回の開催計画に沿って再挑戦すると、4年間は、この土地が“塩漬け”になる可能性がある。「議会で相当、考えないといけない」。石原知事も2日、現地でこう語り、課題であることを認めた。

■五輪誘致を公約にした石原都知事を選んだのは都民ですから、今更、文句は言い辛いのかも知れませんが残り少ない任期が終わった後、すんなりと猪瀬副知事が後釜に座れるかどうか?押し出しの良さと弟の七光りを存分に利用して続けて来た石原都政も、これから厚手の鍍金がぽろぽろと剥がれ落ちて行く前兆が五輪招致の夢だったとしたら、二度と再び同じ夢を見ることなどないかも?


……「知事も都政も、最大の目標を見失った」。複数の都幹部は懸念する。 石原知事の任期は11年4月まで。2日の記者会見では、招致失敗の引責辞任を否定したが、今期限りの引退も改めて明言した。都幹部の間では、「残り1年半では、これまでのように大がかりな政策は打ち出せない」「求心力の低下は避けられず、再挑戦するにしてもどこまで推進できるか……」という声も上がる。
10月4日 読売新聞

■再挑戦どころか任期いっぱいで五輪招致の後始末が終わるかどうかが問題でしょう。手の平を返すが上手なマスコミが、裕次郎さんの法要も終わったことですし兄の都政が終わるのを待たずに、勝手に気の早い総決算を始める可能性は高いように思えます。その肩慣らしと言うか、手始めに五輪誘致の杜撰な計画を分析し始めている新聞社もあるようです。

慎太郎さんの賞味期限 その壱

2009-10-07 13:46:40 | 社会問題・事件
■拙ブログで「バッカス」のミドルネームを差し上げた中川昭一前大臣が死去しました。父親の一郎氏も謎めいた死に方をしたことを思い出し、その一郎氏と一緒に青嵐会というグループに属していた石原慎太郎東京都知事が五輪招致に失敗した翌日に息子の昭一氏が、これまた不思議な死に方をしたのですから、何やら因縁めいたものを感じます。息子と秘書として後継者の席を巡って骨肉の争いを演じた鈴木宗男議員は訃報を聞いて「政治は厳しい」と語ったそうですが、含まれている語られない事実がぎっしり詰まっているような暗くて重い発言なのでしょう。

■素人目にも無謀としか思えない東京への五輪招致を「夢」という便利な言葉で盛り上げようとした群れの中心には、間違いなく収益の悪化に苦しむテレビ局がいましたから、無残な失敗に終わった後もどこか石原都知事に対して同情が先行した報道が目立っていたのが気になります。東京が落選したことには驚きませんでしたが、米国のシカゴが最初の投票で消えたのは意外でした。そして、黒い噂を山ほど残して院政を始めた妖怪サマランチ前会長が薄気味の悪い影響力を見せ付けてくれたのには呆れてしまいました。これで国連やIOCなどの国際機関に関する幻想や甘い認識が日本から消えて無くなってくれれば良いのですが……。


シカゴへの五輪招致に向けコペンハーゲン行きを強行したにもかかわらず、1回目の投票でまさかの落選という結果に終わったオバマ米大統領への批判が、早くも噴出し始めた。このところ支持率低下に直面している大統領だけに、今回の失敗がさらにカリスマ性を奪う結果となれば、政権運営にも影響が出かねない。……期待が大きかっただけに、地元メディアからは手厳しい批判が噴き出している。シカゴ・トリビューン紙は「わがオバマ大統領の訴えに、国際社会は思ってもみなかった拒絶を示した」と意外性を強調した上で、「自らの政治的な強みを、細かなことに浪費しすぎるといった批判はますます強まるだろう」と断じた。

■米国の歴代大統領は自分の支持率が下がった時や経済状況がひどく悪化した時には大小の戦争を起こして切り抜けようとしたものですが、オバマ大統領は「チェンジ!」の大統領なので嘘でもよいから「平和の祭典」を利用して戦争ではない方法で支持率を上げようとしたのでしょう。しかし、傍迷惑なリーマン・ショックの恨みと世界で最も大規模テロに襲われる可能性が高止まりしている米国の国際的立場を考えれば、投票を躊躇するのは当然とも言えましょう。


……AP通信は「コペンハーゲンでの派手な失敗は、オバマ大統領は政治家というより有名人といった方がよいのでは、という批判を勢いづけることになるかもしれない」と分析。医療保険制度改革など、政治的な難題への取り組みにも水を差しかねないと指摘した。オバマ大統領自身は帰国後、「勝てなくてもすばらしい試合ができるのがスポーツの醍醐味だ」と虚勢を張るのが精いっぱいで、さすがに落胆を隠せない様子だった。
10月4日 産経新聞

■大統領夫人の出身地で自身も深い関わりのあるシカゴを売り込めなかったことで、彗星の如くに大統領候補となるまでのオバマ伝説の根幹が揺らぐことになりそうです。白人ではない大統領が誕生したという一事だけでオバマ大統領の歴史的役割は終わるとしたら、ちょっと寂しい話ではあります。シカゴを説得してリオデジャネイロを応援するくらいの「チェンジ」を求めるのは酷でしょうか?

■米国のマスコミとは対照的なのが日本の報道機関で、もともと石原都政を批判する空気が希薄だった上に、民主党の大勝と自民党惨敗による政権交代が起こる前兆となった東京都議選の扱い方も腰が引けているマスコミが多かったような気がします。新東京銀行という迷惑な置き土産と、五輪招致に絡めて築地市場を何が埋まっているか分からない埋立地に移転させる計画に多くの都民が反対の意を示したのが都議選だったとすれば、その段階で都民は五輪招致に賛成ではないことが分かっていたはずです。
 

2016年夏季五輪開催都市に選ばれたリオデジャネイロは5日、IOC総会での選定について不適切な発言をしたとして、東京都の石原慎太郎知事を批判する声明を発表した。石原知事の報道陣に対しての発言としているが、具体的にどの発言かには言及していない。……「(発言は)遺憾であることに加えてIOCのルールに反する」と指摘。「石原知事の失望させるような態度に驚いており、リオは6日にIOCに正式に通知する」としている。
2009年10月6日 産経ニュース

■「敗軍の将……」という諺もありますが、帰国時の会見は自己弁護に偏った苦しい言い訳のようにも聞こえましたが、確かに自分達だけは清く正しく素晴らしいプレゼンをやったのに、何処かの誰かさんは汚いことをやっていた、という意味にしか取れない発言があったようです。唐突に始まった2回目の東京五輪開催という話は、他でもない石原都知事自身の口から飛び出したアイデアでしたから、個人的に『太陽の季節』を懐かしんで何かを再現して取り戻そうという老人の妄想のように思え、実に不健康な印象を与えておりましたなあ。

民主党を襲う津波 其の壱

2009-10-01 13:37:31 | 政治
■新総理になったばかりの鳩山サセテイタダク首相が就任早々に国連に乗り込み、数々の首脳会談を重ねてG20にも出席して帰国したのでありますが、オンブに抱っこの同行取材を許された仲良しマスコミが厚化粧気味に初の外遊を「大成功」だと報道してくれた外地とは違い、週明け早々には難問山積の内政問題に取り組まねばなりません。民主党内でも具体的な内容に乏しいマニフェストだけを頼りに、妙に張り切って走り出した新閣僚たちが火種を掘り起こして油を注ぎ回っている上に、参議院対策の露骨な打算で成立した三党連立体制の方も滑り出しから軋む音が出ているようであります。
 
■楽しかった?米国での演説と会談と下手くそな始球式などの思い出は夢幻の如く消え去って、外交日程の都合で国内で早くも湧き上がった新政権の暗雲をどこか対岸の火事のように眺めている気分に浸れたのかも知れない鳩山サセテイタダク首相も、これからが大変であります。新閣僚が好き勝手に動いて語って齟齬が生じ始めているのですから、これから大急ぎで整合性を取り繕わねばなりません。党内に隠れている亀裂と連立相手の思惑のズレ、これらを「友愛」で乗り切れるかどうか?マスコミが手の平をくるりと返して民主党バッシングを始めるのも、そう遠い先の話ではないような気がします。

■週刊誌は民主党の暗部や下半身?などを根掘り葉掘り書き立て始めていますし、保守系月刊誌も民主党批判を始動し始めております。ちょっと先走って現在を切り取らねばならないテレビやラジオは、試運転中の新政権に対する「不安」を煽るより、いろいろと工夫を凝らして「期待」する話にまとめる努力をしているようです。ただ、日本のマスコミ諸兄が思い出したくもない事ではありましょうが、前回の政権交代が1年ほどで失敗に終わり、自民党が旧社会党を引っ張り込んで政権与党に返り咲いた時、世界中が驚いた天災と人災が連続して発生したのでした。人災は選挙で大敗したオウム真理教が起こした毒ガスによるテロ攻撃でしたし、天災は専門家も知らなかった断層が動いて起こった阪神・淡路大震災でした。似たような事が起こらなければよいが……と思っている人も多いのではないでしょうか?

■実は、ここまで書いたのはサモア島近海で巨大な海底地震が起こる数日前のことで、勿論、スマトラ沖の地震よりも前でした。次のような報道を目にしたことが直接の動機だったのですが……。


東海地震の想定震源域である静岡県西部で一昨年以降、プレート同士が強く固着している部分(アスペリティー)に、ひずみがたまり、過去30年で最も巨大地震が起こりやすくなっていることが26日、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)の松村正三・研究参事の研究で分かった。……震源域では、今年8月に駿河湾地震が発生するなど中、小規模な地震が増加。プレート境界がゆっくり動く「スロースリップ」と呼ばれる現象の活動域も広がるなど地殻活動にも大きな変化がみられるという。松村氏は「海側のプレートがゆっくり沈み込んでいるのに、アスペリティーだけが残っている危険な状態だ。引き続き活動を注意深く見守る必要がある」としている。

■いつ起こってもおかしくない東京直下型地震に関する話を封印して、今の東京都知事は五輪誘致に熱心なのも困ったことですが、鳩山サセテイタダク首相は米国に続いていそいそとコペンハーゲンに強行軍を覚悟で出掛けて五輪招致の宣伝合戦に参加するとか……。万が一のことを考えて日本のマスコミは表面的には東京での五輪開催を「全面的に支持」しているようですが、将来に多大な悪影響を及ぼす新東京銀行の大スキャンダルには目を瞑ってお祭り騒ぎの片棒を担ぐのは如何なものでしょうなあ?

■税金の無駄遣いを徹底的に無くす!と息巻いている民主党が、東京都政の無駄遣いを糾(ただ)さず、地方分権論にも微妙な影響が出て来そうな五輪招致騒ぎに巻き込まれるのは危なっかしい話に思えますが、いよいよ東海地震が起こる時にマニュフェストを振り回し過ぎた民主党政権が官僚組織を動かせず、国民の支持も失っているような事態になっていたら、救援活動が混乱したり、またまた自衛隊の出動が遅れたりするのではなかろうか?と心配にもなります。


松村氏は……マグニチュード1・5以上の地震活動を過去30年分にわたり解析した。その結果、震源域西側で一昨年後半以降、地震の発生数が特に増えていることが分かった。また平成12年から続いているスロースリップの中心領域は駿河湾付近だったが、西側の浜名湖付近へ移動。17年にいったん収まったが、18年以降は反転して北東に移動していることが判明。一連の動きを解析した結果、震源域のアスペリティー群だけを残し、周辺全体が滑っている可能性が高いことが分かった。

■素人の表現なら「あとは本番を待つだけ」ということになりそうです。それが次の総選挙までの4年の間に起こるのか?自民党が今度は共産党とでも連立して政権を奪還した後に起こるのか?嫌な予感が募るばかり……。