旅限無(りょげむ)

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正体不明の挟み撃ち? 其の弐

2011-10-26 16:09:35 | 外交・情勢(アジア)

一川保夫防衛相は25日、来日中のパネッタ米国防長官と防衛省で会談し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先として日米両政府が合意した同県名護市辺野古沿岸部の環境影響評価(アセスメント)の評価書を年内に沖縄県に提出する方針を伝えた。パネッタ氏は「日本側の努力を評価する」と応じ、普天間移設を可能な限り早く進めることで一致した。両氏は世界的なサイバー攻撃への対処に連携していくことも確認した。一川氏は武器輸出三原則の緩和に向け検討を進める方針を伝えた。…… 

■「出来れば国外、最低でも県外」と言い出した前の前の総理大臣が「学べば学ぶほど」沖縄基地の抑止力の有り難味が分かったと、自分だけ納得して政権を投げ出してしまってから、次の菅アルイミ首相は無力の「全力」で沖縄現地にも行かずに機械的に先送り。鳩山サセテイタダク元首相が点火して一度燃え上がった沖縄県民の怒りと声は、野田ドジョウ首相の官僚作文の棒読みなどでは絶対に消せないでしょうから、米国の言いなりに事務的に移設作業を進めようとすると鳩山サセテイタダク元首相が言った「杭の一本も打ち込めない」騒動が起こることを危惧する声があちこちから聞こえているというのに、民主党政権の鈍感さを強引な姿勢に変えてうかうかと火中の栗を素手で拾おうとしているのが分からないのでしょうか?党内融和に全力を使い果たして「官僚主導」で政治を進めようとする野田ドジョウ政権の病的な内向き姿勢が足元から崩れていくかも知れませんなあ。前の総理大臣は「辞任はしない」と粘りに粘って国会を空転させましたが、今度のドジョウ首相は「解散総選挙はしない」と早々に断言して民主党全体で居座るつもりのようですから、政治不信はますます深刻になりそうです。

■民主党名物の唐突な言動から「武器輸出三原則の緩和」が飛び出したのは前原エエカッコシイ政調会長が米国を訪問した時だったと記憶しておりますが、日本に持ち帰って普天間基地移設問題に絡めてしまおうと最初から考えていたのなら、ちょっとした策士と申せましょうが、策士は得てして策に溺れてしまう危険がありまして、前原エエカッコシイ政調会長にはマスコミから「言うだけ番長」の異名が贈られてもおりますから、三原則の緩和がどこまで進むのかは予断を許しません。そこに「世界的なサイバー攻撃への対処」がさり気無く添えられているのが、今回の一川・パネッタ会談の特徴ではないでしょうか?特に防衛軍事情報に関しては、ずっと前から米国は日本の情報管理の杜撰さを知り尽くしていたので、重要情報は渡さないと決めていたはずですぞ。

■もしも、第三国からのサイバー攻撃に対処する事態になったとしても、日本には米国と共同で動ける技術も組織も無いでしょうし、米国が虎の子の最新技術を日本に提供することなど考えられませんから、この「世界的なサイバー攻撃への対処に連携」という話には中身がまったく詰まっていないことになりましょう。


普天間問題をめぐって米国では、普天間移設と関連する在沖縄米海兵隊のグアム移転計画が財政削減を求める議会の反発で頓挫しかねない状況にある。パネッタ氏は「グアム移転には普天間の具体的な進展を得ることが重要だ。両国で協力したい」と述べ、進展の必要性を強調した。……日本政府が欧米の3機種の中から選定を進めている航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)をめぐり、パネッタ氏は日米間の「相互運用性」に言及した。米国など9カ国が共同開発中のF35や米国製のFA18の選定に期待感を示した。
野田佳彦首相もパネッタ氏と首相官邸で会談し「日米同盟は、わが国の外交安全保障の基軸であるというのが私の信念だ。しっかり連携しながら安全保障、防衛面でさらなる強化をしていきたい」と述べ、日米同盟の深化に意欲を表明した。
2011年10月26日(水) 産経新聞 

■野田ドジョウ首相は、こうした発言が即座に世界を駆け巡り、目の前に座っている米国の国務長官を飛び越えて他国の政府に向かっての言葉に変わるという事実を認識しているのか?甚だ不安になるのでありますが、武器輸出三原則を見直して次期戦闘機を米国製に決め、普天間基地もさっさと約束どおりに移設してくれた上にTPPにも積極的に参加する。米国政府にとってこんなに「ウイ奴」は他に居ませんでしょうなあ。しかし、日本の国民にとっては放射能汚染の不安がどんどん膨らみ、震災津波の被災地では復興の目途がまったく立たず、歴史的な円高は変わらず、こんな迷惑千万な政権はかつて無かったかも知れませんなあ。

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正体不明の挟み撃ち? 其の壱

2011-10-26 16:09:06 | 外交・情勢(アジア)
■鬼が出るか蛇が出るか?世に言う「TPPお化け」を呼び出した野田ドジョウ首相は何も語らぬまま、外交日程を最優先に泥の中で眠った振りして独断専行で突っ走るつもりのようであります。隣の韓国が米国と自由貿易協定を結びそうだと言うので日本中がEPAだのFTAだの三文字用語が飛び交い始めて国会議員も含めて俄か勉強が真っ盛り。賛成派と反対派が一歩も譲らず国会も民主党内も真っ二つの様相を呈してはおりますが、余りにも情報が少ないために議論は噛み合わないまま白熱もせず、自由貿易と聞けばすぐに飛び出す「農業問題」、長過ぎた自民党政権時代の負の遺産が解決の糸口も見付からないまま、そっくりそのまま民主党政権にも継承されている恐ろしい現実が露呈してしまっているのは困ったものです。

■日本の財界に「バスに乗り遅れるな!」の声が上がった原因の米韓FTAを詳しく点検した研究者が警鐘を鳴らしている「ラチェット規定」と「ISD条項」という巧妙な罠の標的は決して日本の農業などではなさそうなのですが……。賛成派が鼻息荒く、まずは交渉に参加して日本の国益を堂々と主張して事を有利に進めよう!と空元気を出している様子を拝察しますと、かつての日米構造協議やらクリントン政権時代に仕掛けられた奇怪な高額訴訟の数々を思い出しまして、またまた日本は俎板の上のドジョウならぬ鯉にされて好き放題に料理されてしまいはせぬかと心配にはなりますなあ。


衆院議員のパソコンが外部からの攻撃を受け、コンピューターウイルスに感染し、衆院のサーバーが不正アクセスを受けていたことが25日、分かった。サーバー内には国会議員に割り当てられた電子メールのデータなどが保存され、盗み見された恐れがある。衆院は対策本部を設置し、情報流出の解明に乗り出した。防衛産業へのサイバー攻撃が相次いでいるが、同様の攻撃を受けた可能性もある。ただ、8月に被害が発覚していたものの、対応が遅れ危機管理意識の甘さを露呈した。…… 

■民主党が掲げる「政治主導」の看板が単なる素人集団の絵空事でしかなかったことは分かっているのですが、不正アクセスを知りながら1箇月間も放置していられる無神経さには呆れ果てます。自民党時代にも日米交渉の裏側で世界に名高いスパイ天国の日本らしく、米国側は盗聴やら不正アクセスの技術を駆使して交渉前にすべての情報を入手していたという恐ろしい話があったことを思い出します。もしも春から盛大に発覚しているサイバー攻撃事件の本丸がTPP交渉に関する情報収集だったとしたら、交渉のテーブルに着く前から勝負はついているようなものかも?


衆院事務局によると、ウイルス感染は8月28日頃に判明。サーバーの管理委託を受けた業者が「不正アクセスの痕跡がある」と事務局に通報した。経路を調べたところ、衆院議員3人に貸与したノートパソコンがウイルスに感染していた。議員のパソコンからサーバー自体にウイルスが転移した可能性もある。議員側がメールに添付されたウイルスを不用意に開いたことが原因とみられ、大規模な感染拡大を防ぐため、議員のパソコンとサーバー1台をネットワークから切り離したという。サーバーには衆院議員や公設秘書、事務局職員の計約2660人分のIDやパスワード、メールなどが保存されている。藤村修官房長官は25日の記者会見で「違法行為が確認されれば、警察が厳正に対処していく」と語った。衆院議院運営委員会の庶務小委員会(松野頼久委員長)は対策本部を設置し、各議員にパスワードの変更などを促す方針を決めた。
2011年10月26日(水) 産経新聞 

■日本の警察はサイバー犯罪に対して無力に等しいことは衆知の事実で、情報が1箇月間も駄々漏れになった後で「警察が厳正に対処する」などと寝言を言っているのでしょうか?でも、他に手段がないのが実態なのでしょうなあ。さてさて、国会議員や在外公館を狙ってサイバー攻撃を仕掛けているのは米国なのか?はたまたTPPは自国に対する経済的な封じ込め政策だ!と警戒感を強めているチャイナの北京政府なのか?或いは泰平の夢から醒めずに昼寝を続ける日本を戦場として両国が情報戦を展開していたらどうしましょう?残念ながら戦後の60余年を振り返れば決して米国は日本の良き同盟国ではなかった面も多多あり、ニクソン政権下でのドルショックやらバブル経済の狂乱を生んだプラザ合意、そして未だに傷が癒えないリーマン・ショックと、或る人の資産によりますと毎回毎回100兆円の国富が日本から米国に移転していたとか……。次なる100兆円の奪取方法としてTPPを使おうと悪知恵に長けた誰かさんが画策していないとも限りませんぞ。

やるべき事をやった後で…… 其の四

2011-10-18 15:39:04 | 政治
■国会が閉じてから野田ドジョウ新首相は泥の中に隠れたかのようにマスコミ取材を避けておりまして、既に空証文になっている「政治主導」の復活に期待する声もすっかり消えて、財務官僚の腹話術人形になり切って盛んに口をぱくぱく動かしている安住財務相の言動ばかりが目立つのが不気味であります。少しは自分の言葉を持っているらしい前原政調会長は夕焼け番長ならず「言うだけ番長」などと政治記者から渾名を付けられて冷笑されつつも、武器輸出三原則の見直しやらTPP参加に積極的な姿勢を見せて野田ドジョウ首相の露払い役を担っているようにも見えるのですが、前と前の前の政権があれやこれやを先送りしただけでなく更に政治課題を積み増しする大失敗を犯してしまった後継内閣なればこそ、大車輪で業績を上げて行かねばあと1年しかない党代表の任期が切れたらさっさと交代させられてしまうという個人的な事情もある野田ドジョウ新首相としては、短期決戦型で大きな仕事を立て続けに片付けてしまねばならないのでしょうが、身の丈に合わない無理をすると結局は官僚主導の奇怪なつぎはぎ縦割り政治が最悪の形で復活してしまいそうで、この10日間ほどは得体の知れない危惧の念に苛(さいな)まれて茫然自失状態であります。

安住淳財務相は12日、経団連会館で経団連の米倉弘昌会長と会談し、「来年には必ず消費税の法案を税と社会保障の一体改革とあわせて(通常国会に)出す」と語り、平成24年度の税制改正で消費税率の引き上げを目指す考えを示した。安住財務相は「少子高齢化に直面する日本が今後も直接税に依存していくのはもう無理」と表明。「消費税を国民の皆さんにお願いするしか道はない」と語った。米倉会長は「大いにやってほしい」と賛意を示し、双方は財政健全化の重要性で一致した。…… 

■財政に通じているという噂を聞いたこともなかった安住財務相が、不自然なほど自信たっぷりに増税論をぶって歩く姿は滑稽でもあり気味が悪いものを感じますが、どうして国民に向かって説明する前に経団連会長に妙な約束をしに行くのでしょうなあ?既成事実を積み上げて愚かな国民を煙に巻いてしまおうと誰かさんが策を弄しているとしか思えません。二代続いた愚かな政権の後ですから、目先の失敗を避ける知恵なら誰にも負けない官僚組織に頼り切って政党消滅を必死で回避しようとしているだけの事なら大問題でしょうなあ。経営者の団体であるはずの経団連の代表が長引く不況下で増税を「大いにやってほしい」などと言ってしまって、本当に良いのでしょうか?


……安住財務相はまた日本の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加問題について「メリットはなかなか目に見えないが、しっかりと説明し深く考えれば日本人は必ず結論を見いだしてくれると思う」と語り、参加に前向きな考えを表明。会談のなかで「将来を見据えて進んでいかなければならない。覚悟の問題だ」と強調した。……
2011年10月12日(水)11時11分 産経新聞 

■安住財務相こそ、「TPPのメリット」を深く理解しているのか?はなはだ心細い印象が強いのですが、「戸別補償制度」くらいしか農業政策を提示しえないまま政権を取ってしまった民主党にTPPに対応する農業大改革など出来るのかいなあ?と心配になります。今の民主党にこそ「覚悟」が有るのか?と問いたくなります。菅アルイミ前首相が「第3の開国だ!」「平成の開国だ!」と毎度のことながら唐突に言い出したのは1年前のことでしたなあ。既に発言の軽さに誰もが辟易していた頃でしたから、「ああ、また何か言っているよ」と聞き流されてお仕舞いでしたなあ。そして、安住財務相が妙に張り切って「覚悟」を語っていた日に、眼を疑うようなニュースが流れたのであります。


藤村修官房長官は12日午後の会見で、今月内にも初会合を行う予定の「国家戦略会議(仮称)」について、日本再生戦略など中長期的な問題を戦略的に考えていく組織になるとし、環太平洋連携協定(TPP)や税と社会保障の一体改革などの議論は入ってこないとの認識を示した。……今週中に会議に加わる民間人のリストを作成して要請するとの段取りを明らかにしたうえで「TPPは党の議論が始まっており、(政府の)議論は閣僚会合に預けることになった」と語った。さらに税と社会保障の一体改革についても、国家戦略会議には入ってこないと思うとし、「日本再生戦略を年内には発表したいというのが所信表明の中身であり、足元の問題というより中長期的なことをここ(国家戦略会議)で戦略的に考えていく。当面の課題を結論づけるという位置づけではないと思う」との見方を示した。また、国家戦略会議で、経済財政諮問会議のように骨太の方針を策定する予定もないという。
2011年10月12日(水) ロイター 

■税金を使って運営する組織の仕事を説明するのに「やらない事」を列挙するというのは実に変な話であります。新発売の自動車を発表する時に「この自動車は空は飛ばないし水にも潜れません」などと言うはずはないし、IT機器の説明で「できない仕事」を列挙することなど有り得ません。華々しくマニフェストに掲げた「鳩山政権の政権構想」として5原則・5策の第3策に「官邸機能を強化し、総理直属の国家戦略局を設置し、官民の優秀な人材を結集して新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する」と明確に書かれているのに、「税と社会保障の一体改革」には指一本触れられないまま「日本再生戦略」を作れるのか?これが野田ドジョウ新首相が言うマニフェストの「理念は生きている」という事の実態ならば、もう民主党の命運は尽きていると申せましょうなあ。

■年金制度の改悪案が公表されて日本中が大騒ぎになっておりますが、菅アルイミ政権の時代に取りまとめた「税と社会保障の一体改革」案の中にこっそり忍び込ませていたのを、故意か過失かは知りませんが、マスコミは足並み揃えて消費税引き上げ問題ばかりを大きく取り上げて国民もうっかり騙されてしまっていたのが真相だとか……。菅アルイミ首相が「やるべきことはやった」と虚しい自画自賛をして総理の座を降りた時、誰も数少ない業績の一つだった「一体化案」の検証をしようとはしなかったのは迂闊がことでありました。菅アルイミ前首相は何もしなかったのではなくて、実はトンデモない置き土産を残していたと改めて思い知るのであります。


政府は、年金記録の訂正申し出が妥当かどうかを判断する総務省所管の年金記録確認第三者委員会を13年度以降に廃止し、業務を厚生労働省所管の社会保険審査会に移す方向で検討に入った。当初、厚労省は業務移管を拒否していたが、社保審の人手不足解消策として第三者委の業務を引き受ければ組織を拡大できることもあり、方針を転じた。…… 

■これまた唐突な発表で、情報元の「政府」とは誰のことだ?と訝しく思えるほどですが、年金制度改悪案の念押し報道に合わせるようなタイミングを計っている頭のよい悪い奴が隠れていそうでありますなあ。


第三者委は07年6月、年金記録問題の発覚を受けて設置された。本来、確認業務は厚労省所管の社保審がやるべき任務だったが、事務局の設置場所について、安倍晋三政権は「旧社会保険庁や厚労省では国民の信頼を得られない」として、厚労省の抵抗を抑え総務省とした経緯がある。当時「審査の資格なし」と判断された厚労省が業務を引き受けることは、「焼け太り」との批判を招きそうだ。第三者委は設置から4年以上が過ぎ、処理件数は徐々に減っているが、10年度の件数は週平均1200件で、行政評価事務所からは「本来の行政監視業務ができない」との声が上がっている。このため、第三者委は今年6月にまとめた報告書で厚労省側への業務移管を求め、総務省が厚労省に移管を要請した。しかし、厚労省は国民年金保険料の未納問題への対応などで人手を割けないとして、いったん拒否。総務省は厚労省と協議を続ける意向で、来年度分の経費74億円を概算要求に計上している。…… 

■年金制度を世界で最も複雑で管理不能のシステムにしてしまったのも、グリーンピアなどの愚かな無駄遣いで1兆円以上もの損失を出したのも自民党政権時代の旧社会保険庁でした。人口ピラミッドが逆転するのを知っていながら制度改革を怠り、後の給付義務を忘れて積立金をハコモノばらまき政治に流用し続けた罪をすっかり忘れて「政権奪還」を夢想する自民党にも困ったものでありますが、保険料を負担する人口が急速に減る一方で元気なお年寄りが都市にも地方にもあふれるような少子高齢化問題をずっと先送りした上に国民からの信頼を失って保険料を支払って貰えなくなってしまった年金制度をどんなにいじくり回してみても現実に適応した制度になどならないのかも知れません。投票率が高く数の多い高齢者を喜ばせることで長期政権を維持した自民党が悪いのか、政治に興味を持てずに選挙権を放棄してしまった多くの若者が悪かったのか、判断は難しいところですが戦後の民主主義が残した大いなる負の遺産であることは確かでしょう。その証拠に自民党政権を支えてくれた世代は食い逃げに成功し、後に続く世代は保険料の納め損になる可能性が年々高まって行くのであります。


こうした中、厚労省は第三者委と同じ苦情処理機関の社保審が人手不足に陥っている問題を勘案し、総務省の要請を再検討した。健康保険や年金給付への不服申し立てを受け付ける社保審は、申立件数が10年度は1782件で1238件を処理できず、今年度に繰り越した。「能力の限界を超えている」(事務局)といい、第三者委の業務を社保審で引き受けることで組織を拡大する方向にかじを切った。総務省には13年度に設置期限を迎える「年金業務監視委員会」も設置されている。厚労省内には、第三者委と同時に取り込んで「年金審判庁」とする思惑まで浮上している。

◇年金記録確認第三者委員会
国に記録がなく、受給者側にも領収書など保険料を納めた証拠のない場合、本人の申請に沿って記録を訂正し、年金を支給すべきか否かを判断する機関。総務省本省に中央委員会、全国50カ所の行政評価事務所などに地方委員会があり、これまで約24万件の申し立てを処理した。弁護士や社会保険労務士などによる合議制で、有識者の合議制としている社会保険審査会と似ている。
2011年10月17日(月) 毎日新聞 

■年金制度の不備を補うために要する人的コストも莫大で、どこかバブル崩壊後に金融機関を公的資金で延命救済した構図に似ているようにも思えますが、国民の怒りを買った自民党は長年の与党政権の座を失うという最も重い罰を受けたのに厚労省や社会保険庁は実質的な罰は何も受けずに今度は「焼け太り」までして更に組織を肥え太らせようというのは、官僚天国そのものと申せましょうなあ。

やるべき事をやった後で…… 其の参

2011-10-03 15:02:57 | 政治
■発足して馴らし運転・安全運転を続けている野田ドジョウ新首相は、慎重な言動と実直・低姿勢に徹して粛々と誰かさんの指示通りに増税路線を突き進んでいるようです。民主党の三代目首相が誕生したことよりも経産省の改革派官僚だった古賀茂明氏が辞表を出したことの方が、日本の政治を考える上では遥かに重大な意味を持つと思うのですが、この件をずっと考えているうちにブログが開店休業状態になってしまいました。考え事の整理がつき次第、別項で取り上げようと思っております。

■さてさて、外交デビューを果たした野田ドジョウ新首相が帰国してワイドショー系の報道では首相夫人の方が注目されていたようですが、国連での初演説がパレスチナ代表の後という貧乏籤に当たったこともあって八百長問題の発覚以来ずっと閑古鳥が鳴いている大相撲の会場よりも空席が目立つ、実に寂しいものになったのは残念でありました。折角、菅アルイミ前首相の脱原発政策をなし崩しに無視する二枚舌演説で原発推進派の国々から拍手して貰おうと原稿を練り上げて臨んだのに無駄骨に終わってしまったようです。何事につけ前政権に比べられている限りは「マトモ」と思って貰える間が華なので、せっせと国連外交で点数を稼いでおきたかった計算が狂ってしまった野田ドジョウ新首相としましては、前前政権がぶっ壊して前政権が事務的に先送りして放っておいた普天間基地移設問題を筆頭に、2年余りの外交空白を大急ぎで埋める算段をしなければならず、財務省に続いて今度は外務省の官僚からいろいろと教えて貰わねばならなくなりそうです。幸か不幸か民主党の『マニフェスト』には外交と安全保障に関しては何も書いてないも同然ですから、独自色を出そうと少しばかり思い付きで動いても問題はないような気もしますが、2人の前任者のように知ったかぶりして慣れない事をして国益を失い大恥を掻くようなことはないでしょうなあ?

■その2人の前任者、菅直人前首相、鳩山由紀夫元首相は9月5日付けで民主党最高顧問に就任していたのですが、知っている人はほとんど居ないかも?これまでの民主党最高顧問は単なるお飾りでしたが、これからはかつての自民党時代のように「総理経験者」が現首相を囲んで会議をしたら、さぞやマスコミ受けして選挙向けの宣伝にもなるなどと能天気なことを考えてはいないでしょうな!?大失政を山のように重ねたという意味での大先輩2人から言われた事の正反対に行動すれば大過なく政権運営が出来る可能性は高いでしょうが、既に鳩山サセテイタダク元総理などが「ぶら下がり取材は鬼門だ」などと自分自身の愚かさを棚に上げて助言しているようですが、慎重居士の野田ドジョウ新首相は鼻も引っ掛けずに黙殺している由。自民党政権時代、小泉プレスリー元首相はぶら下がり取材を徹底的に利用して高い支持率を維持していたのですから、鳩山サセテイタダク元首相が辞任に追い込まれたのは発言がころころ変わって政治が大混乱したことが原因であるのは明らかです。御本人だけが真実を理解していないのは恐ろしい話であります。

■日本の憲政史上「鳩山は最低、菅は最悪」と身内の幹部からも断罪された片割れの菅アルイミ前首相の方は、影が薄いどころか総理大臣だったことさえも間も無く忘れ去られそうな気配でありましたが、やはり、他にやるべき事も無いらしく初めての「有言実行」となるお遍路さんを再開したのだそうです。まあ、政治資金規正法違反で告発されている身ですから本格的な取調べが始まり、起訴でもされたらお遍路さんなどしている暇はなくなるでしょうから、一つくらいは公言した約束を守ってみせるためにも今しか歩き出す機会は無いのかも知れません。


退陣してから約1カ月の菅直人前首相が、中断していた四国八十八カ所霊場巡りを再開した。白装束に「同行二人」と書かれた菅笠(すげがさ)をかぶり、3日には愛媛県今治市の五十四番札所「延命寺」を訪れ、歩いての札所巡り「歩き遍路」を再スタートさせた。SPを連れてはいるが、東京の事務所にも詳しい日程は知らせていない一人旅で、9日までかけて香川県へ入る予定。この日午前は、延命寺や五十五番札所「南光坊」など今治市内の札所を巡った。…… 

■鳩山サセテイタダク前首相を謀(たばか)って不信任案を否決して政権にしがみ付いていた頃から次の札所は「延命寺だ」と冗談みたいに報じられていたものですが、本当に延命寺から再スタートだったのですなあ。居座りに成功した最後の3箇月を延命寺のご本尊に感謝したかどうかは不明ですが、腐っても鯛ならぬ失政を重ねた前首相でも税金を使ってSPを付けなねばならないというのは行財政改革の範疇には含まれないようですなあ。原発事故で人生を大きく狂わされた被災者の中には菅アルイミ前首相を深く恨んでいる人物がいるでしょうから、山道を一人で歩かせるわけにも行かないのでしょうが……。


南光坊で取材に応じた菅前首相は心境を問われ、「東日本大震災からの復旧・復興と、犠牲者の冥福。それから原発事故の収束。それだけです」と穏やかに語った。更に脱・原発依存については「(首相)在職中にある程度、方向が示されたと思う。最終的には国民が決める」と述べた。菅前首相のお遍路は、年金未納問題で民主党代表辞任に追い込まれ、「自分自身を見つめ直す」と髪を短く刈り上げて04年7月に一番札所「霊山寺」(徳島県鳴門市)からスタート。その後も断続的に続け、党代表代行時代の08年7月に、五十三番札所「円明寺」(松山市)まで達していた。
2011年10月3日(月) 毎日新聞 

■四国のお遍路と言えばショーケンこと萩原健一さんが1990年代前半に突如として白装束に身を包んで密かに歩いていたことが芸能ニュースとして大きく取り上げられたことがありましたから菅アルイミ首相がお遍路姿になった時には軽薄な二番煎じのような印象を受けた記憶があります。その菅アルイミ首相はショーケンの4歳年上で、興味深いことに二人は厳密な意味での「団塊の世代」を前後に挟んでいるのであります。終戦後の第一次ベビーブームと呼ばれる1947年から1949年に出生した約806万人が団塊の世代とされているそうですから、1946年生まれの菅アルイミ前首相と1950年生まれのショーケンは巨大な集団を挟んで育って来たことになります。因みに初代民主党オーナー首相として散々な悪評のみを残した鳩山由紀夫さんは1947年(昭和22年)生まれで「団塊の世代」の代表でもあったのでした。そして、野田ドジョウ新首相は10歳年下で1957年(昭和32年)の生まれですから、小学校に入学した時には団塊の世代は全員が中学校に上がってしまい校内には残っていなかったことになります。順に鳩山・菅・ショーケン・野田と並べると手軽な世代論が作れるかも知れませんぞ。

■民主党最高顧問の菅アルイミ首相は神奈川県の住民らが政治資金規正法違反罪(虚偽記載)で、菅氏に対する告発状を東京地検特捜部に提出して受理されており、首の辺りにひんやりしたものを感じながら四国を歩いている一方、クラッシャー小沢一郎・民主党元代表の方は資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた衆院議員、石川知裕被告(38)ら元秘書3人の判決が26日午後、東京地裁(登石郁朗裁判長)で言い渡されまして、大方の予想を裏切って石川被告と大久保法規(50)、池田光智被告(34)の3人が全員「有罪」となりました。「政治とカネ」の問題を声高に叫んでは政権交代を成功させた最大の功労者であるクラッシャー小沢を生贄にして「反小沢」で支持率を引き上げようと躍起になって民主党内部に深刻な対立を作ってしまったのが菅アルイミ前首相で、その後始末を押し付けられた野田ドジョウ新首相は大変な苦労をしております。思いつきの「脱・原発依存」は継承されているとは思えず、「ある程度、方向が示された」などと陰湿な自画自賛に浸っていられるような状態ではありますまい。本当に菅アルイミ内閣は何をやっていたのでしょう?!既に思い出したくもない政権として記憶の外に排除されてしまいそうですが、民主党政権が続く限りは菅アルイミ内閣の問題は決して忘れてはならないと思うのであります。