旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

広がる麻薬禍 その壱拾壱

2008-11-22 13:42:08 | 社会問題・事件
……関西大学では今春、大阪府吹田市の千里山キャンパスの正門が24時間開放されていることを利用し、工学部4年の男子学生が夜間に構内の中庭にある芝生広場で大麻を密売していたことが明らかになっている。……

■大麻商売で濡れ手に粟の大儲けをする経験をした学生が摘発された場合、決定的に不利な一般企業への就職活動を諦めて「昔とった杵柄」を本業にしてしまう危険は無いのでしょうか?だからと言って、厳しい不況に突入する企業が福利厚生どころか「更正」のために元売人の学生を率先して採用してくれるほど「寛容」ではないでしょうなあ。

■巨大化した大学に集まる学生たちも、就職戦線では互いにライバルとなりますから、大麻問題を起こした「大学」の学生と一括りにされたら迷惑でしょう。学部が違う!付属高出身ではない!などの自己アッピールが大切になるのかも知れませんなあ。同学同窓文化は破壊されますが……。


大麻の種の「輸入」や「所持」が日本では合法……。だが、無許可で種を発芽させて育てる「栽培」は大麻取締法違反に該当し、「7年以下の懲役」となる。営利目的の場合はさらに重くなる。……

■麻を栽培して麻布を織り上げるのは立派な農業の仕事ですから、許可を受けて栽培するのが合法なのは当然で、長く育った茎を収穫したらしっかり後始末することが義務付けられているようです。それを「法律の穴」だと思い込むのが間違いの元。茎から繊維を取り出すのは重労働で、それを布にしたり染めたりするのも大変な作業だそうですが、葉っぱを乾燥させて吸引用大麻に加工するのは非常に簡単だとか……。でも、二十歳そこそこで逮捕され、7年もの懲役刑を受けたら大変ですぞ。栽培などしないことです。


……値段はおおむね、送料別で10粒5000~7000円ぐらいで、10粒4万円程度の高級品もあるという。……栽培により捜査機関に摘発されるケースは、乾燥大麻などの「既製品」を購入するケースに比べれば少ないが、こうした状況が犯罪に走る垣根を低くしているのは間違いない。昨年11月に発覚した関東学院大ラグビー部員の事件では、2人が大麻栽培の現行犯で神奈川県警に逮捕されたことが摘発の契機になった。その後、ほかの部員12人も大麻の吸引を認めた。……

■大学生が読む専門書なら1冊か2冊分の金額で種を10粒買えるわけですなあ。それが高いのか安いのかは個人差があるでしょうが、危険な犯罪に走るより二度とない専門的な勉学に集中できる貴重な時間なのですから、同じカネなら図書費に回した方がよいでしょうなあ。仕送りしてくれる御両親が泣きますぞ。


……警察庁のまとめによると、大麻の摘発件数は年々増加する傾向にある。今年は6月までに約1200人が摘発されており、10~20歳代が半数以上を占める。ほかの薬物に比べて大学生が目立つのが特徴で、警視庁が1~8月に摘発した752人をみると、学生は9.2%を占める。……1つは、留学生などの外国人が大麻使用の一線を越えさせる“伝道師”となり、大学生に口コミなどで大麻が広がっていくパターン……また、「『レイブ』と呼ばれる音楽系の野外イベントなどで大麻が使われることが当たり前になってきており、若者に抵抗感が薄くなっている……

■60年代には『ウッドストック』という若者の祭典が米国で開催されたのは有名な話ですが、日本でも記紀万葉の頃から「歌垣」という歌と踊りと恋愛のナイト・イベントが盛んでありましたから、若者が大勢集まって歌や酒で盛り上がるのは決して珍しい現象でもなければ、「最近の若者」だけの特徴でもありません。でも、薬物まで利用して盛り上がらなくても十分に楽しめるでしょう。何万年も人類は火と歌舞と酒で楽しんで来たのですから。


……インドなどの海外旅行の際に遊び感覚で大麻吸引を経験した学生が、継続して手を出している可能性も指摘できる……慶応大の事件では、発覚直後に会見した学校関係者が「学生の良識を信じていた」と述べた。しかし、もはや性善説も限界を感じさせる状況だ。11月16日 産経新聞

■1960年代から70年代にかけて、麻薬類を求めてバック・パッカーがアフガニスタンを目指したものですが、そのアフガニスタンが紆余曲折の末に再び世界の麻薬生産輸出基地になっているそうですなあ。これが西や東に流れ出してインドや東南アジアで客に売られるというわけで、円高を利用して海外旅行に出向く日本人などを待ち構えている連中も増えているのでしょうなあ。御用心、御用心。

当たるも八卦、米国の予測 其の弐

2008-11-22 13:05:07 | 外交・世界情勢全般
世界が多極化するなかで、ライバルとなるのは、中国、インド、ロシアなどの新興国だと分析。とりわけ中国については、25年までに「世界2番目の経済規模と主要な軍事力を獲得する」と予測している。

■宇宙戦争の分野にも手を出し、地上では無人飛行機を飛ばし、海には原子力潜水艦を入れ、そろそろ航空母艦も建造しようというチャイナですから、台湾問題の解決を変に急いで墓穴を掘らない限りは順調に軍事力を強化して行けるはずです。しかし、経済成長が本当に続くのか?という疑問は残りますなあ。五輪大会を開催した独裁国家の宿命論を初めて超克する国になれるのでしょうか?


テロ組織は、25年までに組織再編を経てなお存続するとみている。大規模テロ事件は、生物・化学兵器の使用が懸念されるとしている。核兵器や放射性物質によるテロの可能性はやや低いものの、インド、パキスタンなどに続く実質的な核保有国の増加で、核拡散が進むことを懸念している。

■自力で核物質を入手して濃縮加工する手間を省いて、何処かの国から完成品を購入する国が現われたら時代はがらりと変わるでしょう。もしもイランが核兵器の自力開発に成功したら、対インド用のパキスタンの核とは違って初めて「イスラムの核」が出現することになりそうです。アフリカや中南米に核保有を決意する国が現われたら実にややこしいことになりそうですなあ。


日本については、自民党の優位が崩れ、内政・外交とも再構築を迫られるとみている。日米同盟は維持されるものの、米国の国力低下を受けて、「同盟の力は今日ほど強固ではなくなる」と予測。日本の地位は米中のパワーバランスの間で「板ばさみ状態」になるとして、日本が親米、親中に傾く可能性など4種類のシナリオを挙げた。
11月21日 産経新聞

■「自民党の優位」など今でも崩壊しているでしょうに?!野党第一党の民主党がポンコツ政党だから公明党のツッカエ棒で何とか立っている状態であります。大連立だの全面対決だの、解散だの延期だの、何も決まらないまま時間ばかりが過ぎていくような政治しか持てない日本が、内政・外交両面での「再構築」など出来る物でしょうか?米国の期待なのか、手前勝手な責任の押し付けなのか、判断に苦しむ「予測」であります。外交の「板ばさみ状態」にしても、米国が日本を見棄てるという意味が込められているような印象が強いですなあ。

■イラクの後始末とアフガニスタン問題の梃入れ、そして金融危機に対処するための「知恵」ではなく資金!いろいろと日本にタカって毟り取らねばならない物が有りそうですから、この先数年は日米関係が重要なのでしょうが……。
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当たるも八卦、米国の予測 其の壱

2008-11-22 12:53:27 | 外交・世界情勢全般
■年末の宝クジ発売が近づく時節です。アメリカが撒き散らしたトンデモ証券の毒に当たって世界中の金融機関が仕事が出来なくなり、資金が回らなくなった実体経済も揺らぎ始めているのですから、今年は例年以上に○億円の夢を見る人が増えるそうです。公的年金はテロが起こっても不思議がないほど国民からの信頼が得られない体たらく、金融危機に急いで対応するための第二次補正予算も野党が怖くて出せない政府、民間の保険会社も頼りになるかどうか分からなくなりそうですから、振り込め詐欺に狙われる前に全財産を宝クジに投げ込みたくなる向きもございましょうが、自暴自棄は慎みましょう。

■当たらないと評判の星占いオバサンの細木さんがテレビ界から消えて、世間の占い好きはスピリチュアルに傾いているそうですなあ。どうしても先の事を知りたい!少しでも安心したい!という不安に駆られるのも人情でしょうが、本当に先の事が分かってしまったら、案外と人生が詰まらなくなってしまうかも知れませんぞ。それでも占いより少しは的中率が高そうな「分析」や「予測」に対する需要と興味は尽きないらしく、シンクタンクや研究所などが盛んにあれこれと文書を発表します。

■日本では、この種の研究所の多くは保険会社と証券会社が運営しているため、本業が儲かるように世論を誘導しようとする商売っ気が混入するという説もあるようです。国家が運営する研究機関ともなると、国益に適う内容と政府の権威を高める目的とが混ざり合っているでしょうから、あまり真に受けない方が良いかも?とは言え、占いや予言というものは、多かれ少なかれ「現在」を未来に投影している面がありますから、現在の映し鏡として参考にすれば役に立つこともありそうです。


米国家情報会議(NIC)は20日、2025年の世界情勢を予測した報告書を発表した。中国、インドの台頭など世界の多極化が進むなか、相対的に米国の影響力が低下すると悲観的な判断を示している。また、韓国と北朝鮮は25年ごろの国家統一が予想されるものの、核開発の放棄が実現できるのかは「不確実だ」としている。

■未来を予告したり警告を発したりする「緊急出版」本なる物が、何故かいつも本屋さんには並んでおります。でも、この種の本を年に何冊も出しているような人に限って、自分が前に発表した予告内容の検証作業は一切やらないようです。中には数年前とまったく逆の内容を平然と発表する剛の者も居るようですなあ。米国家情報会議ともなれば、国の威信を懸けてまとめられているはずですから、個人的な見聞を基にした直感的予測などとは比較にならない豊富な情報を総合して分析しているのでしょうから、丸ごと全部が大ハズレになる可能性は低いかも知れません。


この報告書は、米中央情報局(CIA)などの情勢分析を踏まえたもので、5年ごとに世界の未来像を描いている。今回の報告書では、金融危機の影響や原油の先高傾向を織り込み、これまでの情勢予測を修正。向こう20年ほどが「新秩序への移行期にあたる」として、不安定化を警戒している。
 
■前回は05年に公表されたのだそうですが、その時の「予測」には、2020年まで「米国支配の継続」が続くと書かれていたそうですなあ。米国ではCIAと国防省の仲が悪いのは有名で、国務省も混ざると収拾が付かなくなるとか……。その上、CIA自体が変に高学歴化が進んで諜報能力はぐんと落ちているという噂は以前からあるようです。前回の報告書が発表されたのはイラク戦争に勝利してから2年、本国がハリケーン・カトリーナに襲われて復旧作業に当たるべき州兵がイラクに送られていた事が問題となるくらい、イラク占領に疑問が出て来た頃でした。それでも「米国支配」には揺るがぬ自信が有ったのでしょうなあ。


米国は、経済力や国際的な影響力低下が避けがたい半面、軍事技術の進歩に支えられて、なお世界トップの大国にとどまるとみている。さらに、「中東とアジアでは、依然バランサーとしての役割を求められる」と指摘した。

■中東和平プランを崩壊させ、北朝鮮の核武装を許したブッシュ大統領が去るのですから、次の大統領に対する大いなる期待を込めて「バランサー」の役割と強調したかったのでしょう。しかし、ブッシュ時代に当該地域のバランスは大きく崩れてしまっておりますから、それを扱い易い状態にまで戻せるのか?という問題に答えねばなりますまいなあ。