旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

北朝鮮の気になる鳴動 其の弐

2008-11-26 09:34:47 | 外交・情勢(アジア)
■「将軍様御不快」の情報が広まり始めてから、米国がテロ支援国家指定を解除したにもかかわらず、北朝鮮は変に内向きになっていく傾向が見えました。それは妥協の姿勢を見せてしまった米国に対して、核兵器やミサイルを使ってもっと有利に交渉を進めたいからだと解釈されていたのですが、どうもそんな悠長な事態ではないような気配が漂い始めております。

北朝鮮は24日、韓国の開城工業団地管理委員長、同工業団地入居企業、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)あてに各1通の通知文を送り、開城観光と南北間鉄道運行の中断、開城工業団地の韓国側常駐人員の半減など、強力な通行遮断措置を来月1日から取ることを通告した。これらの措置が取られれば、南北間の交流協力事業は開城工業団地事業を除き事実上全面中断となる。

■開城観光には年間10万人が参加しているという報道もありますから、年間50万人規模の金剛山観光が中止になっているのに加えて大きな収入源を失うことを意味するでしょう。あの国が「カネなど要らん!」と言い出した時が最も危険だという話もあるようですから、心配なことです。この中で最も重大なのは「鉄道運行の中断」だと思われます。実質的に鎖国体制を布くようなものですから、閉ざした扉の向こう側で何をやっているのか非常に気になります。まあ、そうやって周囲の気を引くための芝居かも知れないのですが……。


……北朝鮮はKOTRAのキム・ジュチョル代表にあて、「各種の協力交流と経済取引などを目的に陸路で北側に出入りするあらゆる南側民間団体と企業家らの陸路通過を遮断し、経済協力と交流協力事業者の軍事境界線通過を厳格に制限・遮断する」と通告した……。また、京義線列車の運行を中止する一方、開城の南北経済協力協議事務所を閉鎖して韓国側関係者を全員撤収させ、現代峨山による開城観光も中止する立場を示した。……ただ、工業団地の入居企業に送った通知書では「中小企業の難しい状況を考慮し、開城工業団地での企業活動を特例的に保障することにした」とし、今回の措置が開城工業団地の活動を中断するものではないことを明らかにした。……北朝鮮は各企業の常駐人員と車両の現況を同日午後3時まで知らせるよう要請した。
11月24日 YONHAP NEWS

■こうして見ると、妙に「自動車」の動きに敏感になっている様子が覗えますなあ。大量に撒かれた迷惑な「将軍様御危篤!」と書いて風船に詰めて飛ばすビラに神経を尖らせているとの報道がありましたが、国内を走る自動車にもビラか、それよりも危険な物を積んで走り回っている可能性があるのかも?想像を逞しくすれば、軍隊で運転技術を習得した誰かが平和ボケの出張中の韓国人から自動車を奪って反抗的な行動をとったのかも知れませんぞ。


北東アジア最大の鉄鉱石埋蔵量を誇る北朝鮮の「茂山鉱山」(咸鏡北道茂山郡)から中国への輸出や、中国から北朝鮮へのコメの輸出が9月から中断していることが20日、分かった。複数の関係筋によると、両国間の貨物列車の往来が今月に入って途絶えていることも判明した。……茂山鉱山の推定埋蔵量は30億トンで、中国が北朝鮮から輸入する鉄鉱石の最大産地。……昨年一年間の同税関を通じた鉄鉱石輸入量は70万トン。今年は8月までに67万トンに上り、大半は茂山鉱山産だ。……年末までの輸入総量は100万トンを超すとみられていたが、関係筋によると、陸上輸送による輸入は9月以降、ピタリと止まった。……

■北朝鮮における鉄鉱石の採掘利権をチャイナが独占してしまう!と一時は大騒ぎにもなった地下資源の大規模な切り売りでしたが、それが突然止まるとなれば、売り手と買い手のどちらが止めたのかが問題になります。世界的な景気の冷え込みで業界では「鉄冷え」が広がっているそうですが、その発端は北京五輪の開催準備と関係があるのかも知れません。鉄のスクラップ価格でも今年の7月第二週にピークになってから急落、何故か五輪が終わった後の9月初旬に一度は底を打って少しばかり反発はあったものの10月に入るとまたまた急降下しているのであります。

■円キャリートレードで大儲けしていた連中が、大急ぎで手仕舞いして迷惑な円高を引き起こしておりますが、投資ファンドに大金を注ぎ込めた富裕層や欲深者が先を争って解約して株式市場の底が抜けてしまったのも根っこは同じでしょうから、北朝鮮の地下資源で一山当てようと思って投資した連中がもともとリスキーな商売相手でもありますから、利益を失わないように鉄鉱商売から逃げ出しただけの話かも知れません。まあ、鉄材価格が急落したおかげで、日本のあちこちで金属盗難事件が激減したのは喜ばしい限りでありますが……。

最新の画像もっと見る