■クラッシャー小沢が条件付ながら政倫審に出席すると言い出し、岡田タリバン幹事長は条件付が気に入らないと憮然としているそうですが、小沢側から付けられた条件は煎じ詰めれば「一人では死なない」という捨て身の戦術が透けて見えまして、政倫審に参加する旨を宣言しておけば強制起訴となって現実的に参加せずとも「嘘吐き!」呼ばわりはされずに済みましょうし、逆に追い込んでいた側の仙谷・馬淵の問責コンビが矢面に立たされて菅アルイミ内閣は野党が放つ無数の矢がぶすぶす突き刺さって立ち往生……。背に腹は換えられぬと小沢一派も閣僚など要職に就けて「挙党一致・全員野球」の約束がやっと果たされる、というシナリオが見えるのですが……。
西岡参院議長は28日、国会内で民主党の岡田幹事長と会談し、来年1月の通常国会召集前に、参院で問責決議が可決された仙谷官房長官と馬淵国土交通相を交代させるよう求めた。……西岡氏は「通常国会が開会したら、仙谷氏らを代えるしかない」と岡田氏に伝えた。……自民、公明両党が辞任要求を強め、応じなければ通常国会で審議拒否に踏み切る構えを崩していない。民主党内でも、菅首相と距離を置く小沢一郎元代表らに近い議員から辞任を求める声が出ている。……西岡氏が仙谷氏の辞任に言及したことで、与党内で今後、仙谷氏や馬淵氏の辞任論が拡大し、通常国会前の内閣改造を検討する首相の判断に、影響する可能性がある。
2010年12月29日 読売新聞
■74歳という年齢と小型の猿を思い出させる容姿も手伝って、何となく地味な印象のある西岡武夫議長でありますが、ロッキード事件に際して自民党を離党して新自由クラブを旗揚げして以来、無所属を経て自由民主党に復党、再び離党して改革の会、自由改革連合を経て小沢一郎の新進党に参加。それ以降、自由党、民主党と共に歩んでいるなかなか立派な保守政治家であります。要所要所でびしっと物言える人物でもあり、血生臭い政局を経て培われた独特の勘が働く人でもあるようです。先日も司法から「一票の格差は違憲」との判決が出ると即座に独自案を発表したのが記憶に新しいはずです。
■影の総理などと呼ばれる仙谷ノーコメント官房長官の尖閣衝突事件に関する国会答弁についても、「法廷闘争的な答弁はしているが、政治的には通らない」との分かり易い批判を加えてくれたのも西岡議長で、小沢VS仙谷の痴話喧嘩を収めることが出来る人は、案外、西岡武夫議長みたいな人なのかも知れませんぞ。でも、政界再編とでもなれば昔取った杵柄で、巧みに濁流渦巻く政局を泳ぎ渡って見せるかも知れませんなあ。どちらにしても菅アルイミ内閣にとって煙たい存在であることは確かなようです。
■先に取り上げた駐ロシア大使の更迭が報道された翌日、今度は警視庁の公安部長の更迭が報じられました。外も中も日本の情報収集・管理・分析能力は地に落ちてしまっている証左でありましょう。
警視庁公安部外事3課が作成したとみられる国際テロ捜査資料が流出した事件で、警察当局が警視庁の青木五郎公安部長を更迭する方向で検討を始めたことが25日、警察関係者への取材で分かった。警視庁幹部の更迭は極めて異例。流出元は特定できていないが、警察当局は外事3課の不適切な情報管理を問題視。現場の最高責任者である公安部長の更迭が不可避との判断に達したもようだ。……
■「流出元が特定できていない」段階で公安部長に詰め腹を切らせるというのは聊か乱暴な気もしますが、今年10月下旬に情報の流出が発覚してから警察庁と警視庁の間で陰湿な罪の擦り付け合いが起こり、それに記者クラブが悪乗りして奇妙な憶測記事が飛び交ったこともありましたが、不思議なことに尖閣衝突事件の映像公開よりも遥かに重大な問題だったテロ情報の流出事件なのに菅アルイミ内閣は最後まで他人事みたいな顔をしていられたのでした。尖閣の時には見事に最高責任者の所轄大臣だった馬淵国交相を仙谷ノーコメント官房長官が庇い切ったものの、参議院で枕を並べて問責決議を受けてしまいました。今回も公安の最高責任者のアノ人!には不思議なほど責任追及の声が上がらないのはどうしてでしょうなあ?
外事3課では、捜査資料を作成するのに、(1)警視庁の庁内LANに接続しているパソコン(2)ネットワークにつながっていないスタンドアローンのパソコン(3)外事3課独自のネットワークで結ばれていたパソコン-の3種類を使用していた。このうち、(2)と(3)のパソコンで外部記憶媒体の使用履歴の管理が不十分だったものが一部存在したことが判明。警視庁は24日に公表した捜査の中間報告で、外事3課からの内部流出の可能性を示唆していた。……諸外国の関係機関からの通報内容も漏洩するなど、インテリジェンス(情報活動)の重大なルール違反が生じた。このため、流出元を特定できていない段階でも、公安部長の責任を問う必要があると判断。海外の情報機関との関係修復を図るためにも更迭は不可避との見方に傾いたもようだ。
■もしも公安部長の更迭劇の裏に菅アルイミ首相の指示や圧力があったのなら、少しは外交上の国際信義の重要性を真面目に考えるようになったのかも知れませんが、事件の全貌も分からないまま適当なポストに責任を丸投げして押し付けるというのは、「仏作って魂入れず」で単なる形式的な処分で本当の問題を隠蔽してしまおうとする官僚群の思惑にうまうまと乗せられてしまったとも言えそうです。
青木公安部長は昭和54年入庁。京都府警本部長などを経て、平成20年8月から現職。警察庁長官銃撃事件の時効を迎えた今年3月30日に、事件は「オウム真理教の信者らによる組織的なテロであった」との捜査報告書を発表している。……
2010年12月26日 産経ニュース
■街中の交番にいる警察官とは違い、一般の国民には馴染みの薄い公安ですが、警視庁公安部は以下のような組織になっているそうですなあ。
公安総務課=日本共産党、市民運動、反グローバリズム運動、オウム真理教などを捜査対象とする。
公安第一課=極左暴力集団(過激派)を捜査対象とする。
公安第二課=労働組合、革マル派等を捜査対象とする 。
公安第三課=右翼団体を捜査対象とする 。
公安第四課=公安関係統計、公安資料整理。
外事第一課=ロシア、旧共産圏のスパイを捜査対象とする。
外事第二課=東アジア地域、特に中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、共産圏諸国のスパイを捜査対象とする。
外事第三課=国際テロリスト、中東地域のスパイを捜査対象とする。
公安機動捜査隊=NBCテロ対策班を常設。
■今の総理大臣は市民運動出身として有名ですから、政治家になる前には公安総務課の捜査対象候補だったかも知れませんし、今の官房長官は学生運動の闘士(の支援者?)だったそうですから、こちらは公安第一課の捜査対象候補だったのかも知れません。特に官房長官はうっかり「暴力装置」という専門用語が口を衝いて出て来る人ですから、警視庁公安部に対して良い印象は持っていない可能性はありそうです。
■学生運動が下火になって自滅的に内ゲバ現象を起こして消滅に向かい、東西冷戦時代が終わり、巨大な公安組織は無用の長物扱いされていた時に発生したのがオウム真理教事件で、公安は息を吹き返して大喜びしたとかしないとか……。欧米諸国が対テロ戦争時代に突入したとて、日本も歩調を合わせて戦列に加わろうと複雑な中東情勢に関して何の基礎知識も無いままに「イスラム」を対象にしてしまった粗雑な捜査実態が明るみに出てしまったのは実に恥ずかしく、また、恐ろしい話であります。
西岡参院議長は28日、国会内で民主党の岡田幹事長と会談し、来年1月の通常国会召集前に、参院で問責決議が可決された仙谷官房長官と馬淵国土交通相を交代させるよう求めた。……西岡氏は「通常国会が開会したら、仙谷氏らを代えるしかない」と岡田氏に伝えた。……自民、公明両党が辞任要求を強め、応じなければ通常国会で審議拒否に踏み切る構えを崩していない。民主党内でも、菅首相と距離を置く小沢一郎元代表らに近い議員から辞任を求める声が出ている。……西岡氏が仙谷氏の辞任に言及したことで、与党内で今後、仙谷氏や馬淵氏の辞任論が拡大し、通常国会前の内閣改造を検討する首相の判断に、影響する可能性がある。
2010年12月29日 読売新聞
■74歳という年齢と小型の猿を思い出させる容姿も手伝って、何となく地味な印象のある西岡武夫議長でありますが、ロッキード事件に際して自民党を離党して新自由クラブを旗揚げして以来、無所属を経て自由民主党に復党、再び離党して改革の会、自由改革連合を経て小沢一郎の新進党に参加。それ以降、自由党、民主党と共に歩んでいるなかなか立派な保守政治家であります。要所要所でびしっと物言える人物でもあり、血生臭い政局を経て培われた独特の勘が働く人でもあるようです。先日も司法から「一票の格差は違憲」との判決が出ると即座に独自案を発表したのが記憶に新しいはずです。
■影の総理などと呼ばれる仙谷ノーコメント官房長官の尖閣衝突事件に関する国会答弁についても、「法廷闘争的な答弁はしているが、政治的には通らない」との分かり易い批判を加えてくれたのも西岡議長で、小沢VS仙谷の痴話喧嘩を収めることが出来る人は、案外、西岡武夫議長みたいな人なのかも知れませんぞ。でも、政界再編とでもなれば昔取った杵柄で、巧みに濁流渦巻く政局を泳ぎ渡って見せるかも知れませんなあ。どちらにしても菅アルイミ内閣にとって煙たい存在であることは確かなようです。
■先に取り上げた駐ロシア大使の更迭が報道された翌日、今度は警視庁の公安部長の更迭が報じられました。外も中も日本の情報収集・管理・分析能力は地に落ちてしまっている証左でありましょう。
警視庁公安部外事3課が作成したとみられる国際テロ捜査資料が流出した事件で、警察当局が警視庁の青木五郎公安部長を更迭する方向で検討を始めたことが25日、警察関係者への取材で分かった。警視庁幹部の更迭は極めて異例。流出元は特定できていないが、警察当局は外事3課の不適切な情報管理を問題視。現場の最高責任者である公安部長の更迭が不可避との判断に達したもようだ。……
■「流出元が特定できていない」段階で公安部長に詰め腹を切らせるというのは聊か乱暴な気もしますが、今年10月下旬に情報の流出が発覚してから警察庁と警視庁の間で陰湿な罪の擦り付け合いが起こり、それに記者クラブが悪乗りして奇妙な憶測記事が飛び交ったこともありましたが、不思議なことに尖閣衝突事件の映像公開よりも遥かに重大な問題だったテロ情報の流出事件なのに菅アルイミ内閣は最後まで他人事みたいな顔をしていられたのでした。尖閣の時には見事に最高責任者の所轄大臣だった馬淵国交相を仙谷ノーコメント官房長官が庇い切ったものの、参議院で枕を並べて問責決議を受けてしまいました。今回も公安の最高責任者のアノ人!には不思議なほど責任追及の声が上がらないのはどうしてでしょうなあ?
外事3課では、捜査資料を作成するのに、(1)警視庁の庁内LANに接続しているパソコン(2)ネットワークにつながっていないスタンドアローンのパソコン(3)外事3課独自のネットワークで結ばれていたパソコン-の3種類を使用していた。このうち、(2)と(3)のパソコンで外部記憶媒体の使用履歴の管理が不十分だったものが一部存在したことが判明。警視庁は24日に公表した捜査の中間報告で、外事3課からの内部流出の可能性を示唆していた。……諸外国の関係機関からの通報内容も漏洩するなど、インテリジェンス(情報活動)の重大なルール違反が生じた。このため、流出元を特定できていない段階でも、公安部長の責任を問う必要があると判断。海外の情報機関との関係修復を図るためにも更迭は不可避との見方に傾いたもようだ。
■もしも公安部長の更迭劇の裏に菅アルイミ首相の指示や圧力があったのなら、少しは外交上の国際信義の重要性を真面目に考えるようになったのかも知れませんが、事件の全貌も分からないまま適当なポストに責任を丸投げして押し付けるというのは、「仏作って魂入れず」で単なる形式的な処分で本当の問題を隠蔽してしまおうとする官僚群の思惑にうまうまと乗せられてしまったとも言えそうです。
青木公安部長は昭和54年入庁。京都府警本部長などを経て、平成20年8月から現職。警察庁長官銃撃事件の時効を迎えた今年3月30日に、事件は「オウム真理教の信者らによる組織的なテロであった」との捜査報告書を発表している。……
2010年12月26日 産経ニュース
■街中の交番にいる警察官とは違い、一般の国民には馴染みの薄い公安ですが、警視庁公安部は以下のような組織になっているそうですなあ。
公安総務課=日本共産党、市民運動、反グローバリズム運動、オウム真理教などを捜査対象とする。
公安第一課=極左暴力集団(過激派)を捜査対象とする。
公安第二課=労働組合、革マル派等を捜査対象とする 。
公安第三課=右翼団体を捜査対象とする 。
公安第四課=公安関係統計、公安資料整理。
外事第一課=ロシア、旧共産圏のスパイを捜査対象とする。
外事第二課=東アジア地域、特に中華人民共和国、朝鮮民主主義人民共和国、共産圏諸国のスパイを捜査対象とする。
外事第三課=国際テロリスト、中東地域のスパイを捜査対象とする。
公安機動捜査隊=NBCテロ対策班を常設。
■今の総理大臣は市民運動出身として有名ですから、政治家になる前には公安総務課の捜査対象候補だったかも知れませんし、今の官房長官は学生運動の闘士(の支援者?)だったそうですから、こちらは公安第一課の捜査対象候補だったのかも知れません。特に官房長官はうっかり「暴力装置」という専門用語が口を衝いて出て来る人ですから、警視庁公安部に対して良い印象は持っていない可能性はありそうです。
■学生運動が下火になって自滅的に内ゲバ現象を起こして消滅に向かい、東西冷戦時代が終わり、巨大な公安組織は無用の長物扱いされていた時に発生したのがオウム真理教事件で、公安は息を吹き返して大喜びしたとかしないとか……。欧米諸国が対テロ戦争時代に突入したとて、日本も歩調を合わせて戦列に加わろうと複雑な中東情勢に関して何の基礎知識も無いままに「イスラム」を対象にしてしまった粗雑な捜査実態が明るみに出てしまったのは実に恥ずかしく、また、恐ろしい話であります。